オレの普通科から始まるヒーローアカデミア   作:高木橋 ユウ

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続くと思ってた?作者は思ってなかった。
まあ例に漏れず数日かけて書いたけどクソです。


後日談

 体育祭の翌日、翌々日は休日で、いつも通りゴロゴロして過ごした。母ちゃんは普通に仕事に行ってたけど、二日目に帰って来て『これから大変になるだろうけど頑張ってね』って突然言われたのには少しビックリした。母ちゃんはオレと似たような個性で見えないし、本当にビックリした。でも大変になるってなんだ?なんか変な事したっけ?

 

 どういうことか聞きたかったけど、帰ってきてすぐ寝ちゃったから結局聞けなかった。気になるけど、明日から学校だし、オレも早めに寝よう。

 

 

 

 

 ♢♢♢

 

 

 

 

 朝、四時頃起きて二人分の朝食の準備をしてサッと食べて荷物を持って家を出る。母ちゃんは起きてから自分であっためて食べるはずだ。少なくとも家に帰る頃にはなくなってるし。母ちゃん待って遅い時間に出る位なら母ちゃん置いて先に出るに限る。あんな混沌とした電車乗るとか考えただけで吐きそうになるもん。

 それに今日は雨だ。雨の日は人があんまり外に出ないから過ごしやすい。学校内は少し怖いけど、今日も頑張ろう。

 

 

 

 

 ♢♢♢

 

 

 

 

 体育祭があっても、普通科からベスト4が出ても教室の雰囲気は全く変わらない。オレは授業はちゃんと聞いてても休み時間は寝ているからかな。でも視線はいつもより多いから、ちょっと息苦しいかな。

 そんなこんなで放課後。一週間後にヒーロー科の職場体験が始まるからか、学校中がソワソワしていて微妙に気持ち悪い中、オレはいつもなら即帰る所を呼び出しをくらい、職員室に来ていた。なんで?

 

 

「…お前が手取掴、か」

 

 

 ピリッ…?警戒?

 

 

「はい。えっと、先生、は…?」

「…お前の個性で読んでみろ」

「え」

「出来ないか?」

「あ、いや…わかりました」

 

 

 えっと、相澤消太、イレイザーヘッド…この辺りだけでいいか。

 

 

「相澤消太先生、で合ってますか?あ、イレイザーヘッド?」

「ふむ」

 

 

 少しの驚きと、さっきより強い警戒?なんなんだ?…っう、ちょっと気持ち悪くなってきた…。

 

 

「今お前に対して俺の個性を使ったが効果がなかった」

「は、はぁ…それがなんなんですか?」

「お前の個性は常時発動型の個性か...それとも…」

「?知らなかった、んですか?」

「いや、改めての確認みたいなものだ。それで本題だが、体育祭でお前を普通科だと言ったにも関わらずお前に指名をしてきた輩が何人かいてな。校長に報告したら、この際お前も職場体験に行ってこいとの事だ」

「…えっと、職場体験ってヒーロー科のやつですよね?一週間の」

「ああ」

 

 

 一週間、一週間か…母ちゃん家事全般出来ないし言わないと夜ご飯食べずに寝ちゃうし…うーん…

 

 

「その、ありがたいんですけど、お断りさせて頂けないでしょうか?」

「…何かあるのか?」

「一週間も家を空けたらかあちゃ…母が生活出来そうにないんです。なので、お断りさせて頂こうかと」

「…そうか。まあ気が変わったら声をかけてくれ。週末までにならなんとかなる」

「あ…はい。ありがとうございます。それでは、失礼します」

 

 

 職員室を出て廊下を歩く。

 先生の個性については見なかったからわかんなかったけど、消せなかったって言ってたし、個性の発動を阻止する個性、か?それなら言ってた事も納得出来るし。でも、なんでそんなことしたんだ?オレの個性については役所にも正確に伝わってる筈なんだけど…うーん…

 

 

「おや、君は」

「え?」

 

 

 急に声をかけられた?えっと、あ、

 

 

オールマイト

「…やっぱり、君は知っていたんだね。ついて来てくれ。向こうでゆっくり話そう」

「で、でも…その」

 

 

 強い自己嫌悪と謝罪、そして圧倒的な怒り。

 

 

ひぅ…

「…リカバリーガールのところで話そうか」

「は、はい

 

 

 怖い。オレそんなに怒らせるようなことしたかな…それとも、ガリガリの骨みたいなオールマイトを知っちゃったからかな…うぅ…帰りたい…。

 

 

「さ、入って」

「し、失礼します」

「おや、あんたらが一緒って事はやっと話をしたってことかね」

「いえ、これからです。彼女が二人っきりが嫌なようだったので」

「すいません」

「お前さんが謝ることじゃないよ。こいつがそもそもの原因さね」

「ちょ、つつかないでくださいリカバリーガール」

「ふん!」

 

 

 優しい空気…ここだけこの学校の中じゃないみたいだ。

 

 

「あの、それで話って…なん、なんですか?」

「ああ、そうだね」

「まずは座りな。話はそれからだよ」

「あ、はい。ありがとうございます」

 

 

 オールマイトが正面に、リカバリーガールがオールマイトの左側に座る。

 

 

「…私はね。君が私の事についてよく知っていると、リカバリーガールに聞いたんだよ。それで、どこで知ったのかとか、誰かに言ったのかという事を聞きたくてね。でも、前に会いに行った時は、随分と怖がらせてしまったみたいで…申し訳ない事をしたね」

「前に会いに来た…?」

「体育祭の時さね。お前さんが準決勝で倒れた後に来てただろう?」

「あっ、あの時…いえ、すみませんでした。何か怒っていたみたいでしたし、今も…。その、オレは誰にもオールマイトの事は話していないし、身体の事もオレの『個性』が原因ですから…許してください…出来るだけ誰にも関わらないようにするので…これ以上は」

「…。君は、あらゆる物を掴む事の出来る、『掌握』という個性らしいね」

「…っ、はい…」

 

 

 怒りと悲しみ…。

 

 

「君はその個性で、様々な人の感情を見てきたんだね」

「…えっと」

「私はね。君に対して、怒りの感情を覚えた事はないよ」

「君に抱く感情は、感謝と謝罪、それ以外にはないよ」

「え、え?じゃあ、誰に、何に…?」

「私が怒りを抱くとすれば、私自身か、それかあの男へ対してだけだよ」

「…」

「私が不甲斐ないばかりに、君には無理をさせたみたいで…すまなかった」

「…いえ。オレが勝手にやったことですから…」

 

 

 深い、深い謝罪…。

 

 

「頭を、上げてください。オレは、貴方のような本物に頭を下げさせるような人じゃ無いです」

「…君は、ヒーローを本物と、それ以外で区別しているようだけど…。どうしてなんだい?」

「……こんなこと言うのも、あれなんですけど…。自分の命を賭して人を救える人は、長生きしません。ヒーローは…特にそうです…。自分の命を賭して人を救ったヒーローは、ヴィランに殺されたり、建物の倒壊に巻き込まれたり、燃え盛る火に囚われたり、激流に呑まれたり、土砂に埋まったり、逆恨みで一般人に殺される事だって、あります」

「…」

「ヒーローは職業です。お金を稼ぐ為の手段です。多くの若者達はヒーローに憧れます。でも、その憧れには種類がある。多くの収入を得られるからヒーローを目指す人、自分の『個性(ちから)』を合法的に使いたくて目指す人、貴方のように、自分の『個性(ちから)』を誰かの為に使いたい人、貴方のように、多くの人を救いたい人、今、ヒーロー業界の上に立っている人達は少なからず、自分の手が、足が、届く範囲で多くの人を救っている。でも誰も、貴方のような、そこにいるだけで誰もが心穏やかに居られるような存在はいない。貴方が自分達を絶対に助けてくれると信じているから。絶対に助けてくれると思えるから。人々は安心していられるんです。だから、皆の心の支えだから、貴方が本物なんです」

 

 

 身内以外に、こんなにも本音をはいたのはいつ以来だったかな。個性が出る前は、普通に喧嘩をして、心の内をさらけ出すなんてよくあったのに…。今じゃ、そんなことも滅多に無くなったんだよな…。

 

 

「貴方の次が、必要です。貴方はもう戦える身体じゃない。そんな身体でヒーローをやるなんて、自殺行為だ」

「……。君は、私の『個性』について知っているかな?」

「いえ…それが、何か?」

「いいのかい。教えちまって」

「はい。彼女には、知っておいて欲しい事です」

「そうかい。なら何も言わんさね」

「ありがとうございます。私の『個性』はね、代々受け継がれてきた物なんだ。一代一代、鍛えられてきた個性、ワンフォーオール。それが私の『個性』さ」

「受け継がれてきた、個性…」

 

 

 嘘はない。あるのは尊敬と感謝と安堵。

 

 

「私の力の後継はもういる。彼なら、人々の支えになれるだろうという少年がいる。だから安心して欲しい。もし心配なら、君もヒーローになるといい。近くで彼の支えになってくれ。良き友として、ね」

「……。その…」

「なんだい?」

「その人の、名前って…」

「ああ、彼は緑谷出久。ヒーロー科一年A組の子だよ」

 

 

 緑谷出久…。

 

 

「…」

「…私の事を案じてくれた事は嬉しい。だが、ヒーローとして、教師として、一大人として、君には自分の意思で将来を決めて欲しいんだ」

「オレの、意思…」

「君が雄英を選んだのは、ヒーローになりたいからじゃなく、安定した収入の得られる仕事に就きたかったかららしいじゃないか。ヒーローは安定している。とは言い難いと思うけど」

「…そ、それは…その…」

「まあ、焦って決める必要は無いさ。ゆっくり、君のペースで決めて欲しい」

「…」

「私の話はこれでおしまいさ。随分と話混んでしまったね。時間は大丈夫かい?」

 

 

 時間…。少し急がないと、夕飯遅くなるな…。

 

 

「えっと、その…今日はありがとうございました…。もう急がないといけないので、失礼します…」

「ああ、こちらこそありがとう。あっ、私の『個性』については口外しないでくれると助かる!」

「…はい。それでは…」

 

 

 …ヒーローを目指すか、目指さないか。

 オレも、オールマイトの事情抜きでヒーローになりたいと思った事はある。でも、すぐになれないと思った。というか、ならない方がいいと思った。ヒーローは危険な仕事で、いつ死ぬか分からない。それで母ちゃんを悲しませたくなかったんだ。オレが死んだら、母ちゃんは一人になっちゃうし、それが一番嫌だったから。それにオレの個性はそういう事には向いていないし。だから、安定した収入を得られるような、いい仕事に就きたくて色々考えたんだ。それで、雄英を選んだ。雄英なら色んなところにコネがあるし、その時はまだヒーローになりたいって思いを引きづってたから。

 家族を取るか、他人の命を取るか...。

 その選択なら、オレは母ちゃんを選ぶ。知らない人じゃなくて、家族を取る。やっぱり、ヒーローにはなれないかな。本物じゃあないし…。緑谷出久…A組の人がやってくれるでしょ…。だからオレは、オレは……。

 

 

「“オレ”は、どうしたいんだろ……」

 

 

 家族を選んだら家族のため、他人を選んだら他人のため。じゃあ、オレは?オレのためにやりたいことって、なんなんだ?

 

 

 

 

 

 

 ♢♢♢

 

 

 

 

 

 

「随分と歪んじまった子だったさね。あんな個性だ、仕方ない部分はあるけど、さすがにねぇ…。いつヴィランになってもおかしくないよ、あの子」

「そう、ですね…。ヒーロー科なら、いろいろ改善出来る時間を取れると思うんですが…」

 

 

 彼女は自身の個性を制御しきれていない。二人はそう考えていた。だが、その部屋に入って来た人物の言で改めて考える事になる。

 

 

「難しいと思いますよ」

「相澤くん?どういうことだい?というか何故ここに?」

「婆さんが経過見せろってうるさかったんですよ。それで、やつの個性についてですよね。やつの個性は典型的な発動系の個性じゃないんですよ」

「どういうことだい?」

「他人の思考を読む個性は他にもいくつかありますが、どれも本人の意思によって発動する物です。俺の個性を異形系の個性に対して使った時と同じ結果が出たんで、やつの個性は常時発動型。もしくは、無意識下で勝手に発動させてるんだと思います」

「…なるほどね」

「それは…」

「加えてやつは、自分の個性が常に発動している事に疑問を持っていなかった。無意識下ってなると、改善するのにどれだけ掛かるかわからないですよ」

 

 

 考え込んでしまう二人だったが、先にオールマイトが動いた。

 

 

「よし!やっぱり彼女には、ヒーロー科に入ってもらおう!」

「本人が拒否したらどうするんですか」

「そこは、ほら…。何とかして…」

「はぁ…」

「まあ、仕方ないさね。そういう事が出来るやつじゃないよ」

「そうですね」

 

 

 一人空回りする英雄だったが、意志は固そうであった。

 

 

 

 

 

 

 ♢♢♢

 

 

 

 

 

 

「ただいま〜」

「おかえりー」

 

 

 丁度、夕飯の準備が終わった頃に母ちゃんは帰ってきた。今日はいつもより早い。何かあったのかな?

 

 

「早かったね。何かあったの?」

「ふっふっふ…なんと母ちゃん、出張が決まりました〜!」

「え"っ」

 

 

 思わず手に持っていた菜箸を落としてしまう。

 

 

「ど、どこまで?数時間で行って帰って来れる所?!」

「やだな〜掴を連れていく訳ないじゃん!一人で大丈夫だよぉ〜」

「母ちゃんが一人で生活出来る訳ないじゃん!」

「うぐっ…、だ、大丈夫だよ…?お金さえあればコンビニでお弁当買えるし、飲み物だって…。ほら、洗濯だってコインランドリー行けばいいし!」

 

 

 そんなこと言うって事は、長期滞在するんだろうけど…。

 

 

「本当に大丈夫?ただでさえ方向音痴なのに初めて行く場所なんて…」

「それは文明の力で何とか…。と、とにかく!母ちゃんは一人で大丈夫だから!掴は来週の職場体験、行ってきな!」

「な、なんで知ってんの?」

「ふふふ…根津校長とは知り合いなのだよ…」

 

 

 校長先生と?!

 

 

「…掴はさ、母ちゃんのこと気にかけすぎだよ」

 

 

 母ちゃんは靴を脱いでオレの前まで来ると、落としていた菜箸を拾い、オレに渡して来る。

 

 

「はい。いつもありがとね」

「いや…別に…、当然のことをしてるだけだし」

「…ふふ。母ちゃんをとるか他人をとるか?」

「っ!」

「そんなこと言わないで、どっちも選びなさいな!ヒーローになりたいならね!」

 

 

 そっとオレを抱きしめてくれる母ちゃん…。

 

 

「母ちゃんも掴に甘え過ぎてたんだと思う。この出張を期に母ちゃんも家事とか頑張るから。掴は、掴のやりたい事をやりな。ヒーロー目指したかったんでしょ」

「う、うぅぅう

 

 

 涙が自然と出てきた。

 

 

「泣かない泣かない。母ちゃん相手だからいいけど、弱さはあんまり外に出しちゃダメだぞ〜。よしよし」

 

 

 頭を撫でられる。少し、心が軽くなった気がした。

 

 

 

 

 

 

 ♢♢♢

 

 

 

 

 

 

 次の日の放課後。オレは相澤先生に職場体験に行きたいという話をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでくれた人のためにちょっとした設定紹介のコーナー。

常時発動型ってのはほぼ作者の考えによる物です。原作ではしっかり話されてないだけで、異形型以外にもあるんじゃねーかなーと思ってぶち込みました。
手取の母ちゃんの個性は『予測』です。触れた物や人の今現在までの行動を閲覧して、延長線上にある行動を見るという物ですね。ナイトアイの予知に近いですが、完全に同じ行動を対象がとるわけではないので別物です。母ちゃんはこれで占い師的な仕事をしてます。え?個性使っていいのかって?免許あんだから免許取ってれば使えるだろJK。え?占い師に出張があるのかだって?母ちゃんの個性の内容知ったらどこぞの社長とか金持ちが自分の未来を知りたがるのは当然だよなぁ?まあ、つまりはそういうことです。数年おきに出張してます。
実は手取、当初の構想では男の子でした。しかもバリバリの格闘派で普通にヒーロー科受験してそこそこの点取ってヒーロー科で入学させるつもりでした。なんで変更してこんなになったかって言うと、作者が原作のA組B組が好きだからです。あの面子じゃなきゃダメだった部分が原作にはあったと思うんすよ。それに何気青山気に入ってるので消し飛ばしたくなかったというか…。だったらいっそ心操くんみたくすればええやんって思って…ね?手取の言動が男っぽいのはそれが理由の一つです。もう一つあって、それは、長い間周囲の感情を読んだりしていたので、自分を周囲から孤立させて負担を減らそうという自己防衛本能っすね。
あ、次回があったら次回はステインと遭遇させます。あと誤字脱字を報告してくれたりするとすっごく助かります。では。

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