オレの普通科から始まるヒーローアカデミア   作:高木橋 ユウ

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まさか続くなんて(呆れ)。
なんか妙に長いですが中身はお察しの通りクソです。


次に向けて

「そうか。じゃあ、自分のヒーロー名とコスチュームの案をこの紙に書いて、明日までに出してくれ。ただ、コスチュームに関しては間に合わないと思ってくれ」

「…あ、はい」

 

 自分のヒーロー名?!コスチューム?!そ、そんなの考えたことなかった…!

 ど、どうしよう…この際適当に付けちゃうか?

 

「ああそれと、ヒーロー名を適当に付けたりすると将来苦労するからよく考えろよ」

ヒュッ

 

 ままままマジか!えー…、まあ、一旦置いといて、帰るか。

 

「えっと、それじゃあ、その、ありがとうございました」

「ああ。明日ちゃんと出せよ」

「はい」

 

 どうしよっかな…。

 

 

 

 ♢♢♢

 

 

 

「ただいまー」

 

 …ん、あれ?なんか焦げ臭いな…。

 

「…お、お帰り〜…」

 

 奥から母ちゃんが顔を出してくる。…なんか、煤けてる…?

 

「母ちゃん、なんか焦げ臭くない?」

「え、あ〜ははは…。その〜…ね?軽くなにか作ってみようと思ったんだけど、失敗しちゃって…」

「何作ったん」

「た、卵焼き…」

「見せて」

「うぅ…、こ、これ…」

 

 黒色の固まりが乗った皿を差し出して来たけど…。なんというか、どうやって作ったのか気になる出来だ。

 

「ちょ、ちょっとだけ火が強かったっぽいんだよねぇ〜…」

「だからってこんな、ダークマターみたいなの出来る訳ないじゃん」

「ご、ごめん…」

「…怒ってる訳じゃないんだけど…。まあいいや、夕飯の準備するから、母ちゃんはよく見てて」

「はい…」

 

 

 

 ♢♢♢

 

 

 

「ヒーロー名とコスチューム?」

 

 夕飯を食べて後片付けをしながら、相澤先生に言われたことを母ちゃんに相談する。あんまりいい案が出ないからな。

 

「ん〜…、ヒーロー名ならいいのあるよ」

「ほんと?どんなの?」

「ルーラーってどう?」

「るーらー?」

「そ。支配者って意味があるの」

「オレは支配者なんて合わないけど…」

「あはは、違う違う。もっと意味を丸くして、場を治める人とか、みんなをまとめる人って意味、というか、そういう風になれるといいよねってこと」

「なるほど…」

 

 ルーラーか…。

 

「よし。それにしよう」

「え、いいの?割と適当だよ?」

「大丈夫でしょ。うーんでもコスチュームはどうしようかな〜」

「コスチュームは掴が何やりたいかで決めたら?とりあえず仮の物だろうし、動きやすい物でも良いんじゃない?」

「あ〜…、じゃあとりあえず動きやすい物でって要望に書いておくかぁ…」

「楽しみだね!」

「え?まあ、うん」

 

 変な物にならなきゃいいんだけど…。あ、そうだ。顔見られるのヤだし、仮面かなんかは欲しいな…。

 

「それより母ちゃん。明日出発でしょ?準備は出来てるの?」

「もちろん!掴が帰って来るまでに終わらせたよ」

「そっか。……で、結局どこまで行くの?昨日はいくら聞いても答えてくれなかったよね」

「だ、だって、昨日言っちゃったら掴絶対着いていくって言うと思ったから…」

「…で?」

「……あ…」

「あ?」

「…アメリカ…」

「…はあ?!ちょっ、嘘でしょ!?母ちゃん英語喋れないじゃん!オレも休みに様子見に行けないし!」

「えへへ…」

「えへへじゃないよ!どれくらい滞在するの!?」

「半年ぐらい…」

「半年!?大丈夫なの?!」

「大丈夫大丈夫!向こうに知り合いもいるし!」

「えぇ…」

 

 ぜ…全然安心できない。やっぱりオレも着いてった方が…。

 

「掴は着いてきちゃダメだよ。……大丈夫だって。前にも仕事でアメリカ行った事あるし、心配しないの!掴は、来週の職場体験頑張ってね!おやすみ!」

「…うん。おやすみ」

 

 オレも、寝るか。

 

 

 

 ♢♢♢

 

 

 

 翌日、いつも通りの時間に目を覚ますと既に母ちゃんの姿はなく、テーブルの上に『コスチューム出来たら写真送ってね!』という置き手紙が残されていた。

 

 放課後に相澤先生の所へ行きプリントを渡すと、コスチュームの所で『正気か?』って言われたけど『多分大丈夫です』と言って帰ってきた。

 

 夕飯を食べ終わって片付けをしている時にスマホに母ちゃんから連絡が来たけど、一言『Help me』と書かれていてどうしようかと思った。ただ、こっちから何か出来る事はないから『Sorry』とだけ返しておいた。…もしかして向こうの母ちゃんの知り合いからの連絡だったのかもしれないけど、どっちにしろ出来る事はなかったからこれで良かったはず…。

 

 

 

 そんなこんなで数日経って、職場体験当日。集合場所である駅でオレはA組の面々に囲まれていた。

 

「ねえねえ!普通科の人だよね?体育祭で私と当たった!」

「ああ!爆豪の爆発投げてた!」

「ああ!?」

「常闇をボコボコにしてた人!?」

「む」

「え、えと…」

 

 は、早めに来いって言われたから早く来たのに…どうしてこんな事に…。

 

「おいお前ら、一旦落ち着け」

「あ、相澤先生…!なんで手取さんがいるんですか?」

 

 あ、名前覚えてくれてる人がいる……。

 

「体育祭でベスト4に入っただろう。それで指名がいくつか入っていてな。本来なら普通科の生徒には職場体験の予定はないんだが、校長が許可を出した。手取」

「あ、えと、手取掴です。職場体験先であったらよろしくお願いします」

「まあ、各自出発まで時間があるだろうから、交流位しておけ」

「えっ」

「体験先ではくれぐれも失礼の無いようにしろよ」

 

 え、あ…行っちゃった…。

 

「手取」

「…あ、常闇…さんと芦戸、さん。この間は、その…ごめん。あの時はちょっと色々あって…」

「いやいや!体育祭では私も悪かったし!」

「ああ。俺ももう少し配慮が出来れば良かったんだが…」

「ほんとにごめん…」

「もういいよ!それよりさ、あの時私の酸を取ったのって、やっぱり手取の個性なの?」

「ああ、うん。そうだよ」

「やっぱり!」

「なるほど、掴む個性か…。だが、俺の動きを読んでいたのは?あれも個性か?」

「うん。ダークシャドウにも意識があったのにはちょっと驚いたけど…。えへへ、ヨシヨシ」

 

 常闇の腹から顔を出していたダークシャドウの頭をしゃがんで撫でる。んん、なんか独特な手触り…。

 

「クスグッタイ」

かわいい…

「意識があった、というのは?」

「ん?いや、ただの個性じゃなくてしっかり意思があって多少なりとも自分の感情やらなんやらを持ってるのは珍しいから。自我のあるものを生み出す個性って珍しいんだよ?」

「いや、そういうことではなく…」

「も、もしかして手取さんの個性って、相手の思考が読めたりするの?!」

「…えっと、そうだけど、君は?」

 

 緑色のもじゃもじゃ頭…。どっかで見たことあるような…。

 

「あ!えっと、緑谷出久です!」

「君が…」

 

 この人がオールマイトの…。

 …強い憧れに、焦り。それに、

 

…あんまり強そうじゃないな…

「え?」

「なんでもないよ。よろしく」

「ああはい!よろしく!それで、思考を読む個性って、いつも読んでたりするの?!」

「今は別に…。見たいと思った時は見てるし、必要ない時は見てないよ。失礼だし」

「あ、そっか。確かに…」

「俺や芦戸との試合の時は、思考を読んで戦っていたのか」

「うん。それでダークシャドウのことに気づいたんだ」

「スゲーな。あ、俺ァ切島!よろしくな!にしても、なんでヒーロー科に来なかったんだ?体育祭の結果見る限りじゃ普通にヒーロー科に来れたんじゃねえか?」

「…それは」

おい…

「ひゃいっ!」

 

 ななな、なんか凄い殺気が…!

 

「テメェーとの決着はいずれつけるから覚悟しとけよ先読みヤロー…」

「うぇ、ば、爆豪!?」

「文句あんのか?ああ!?

「ひぃ!ないですないです!」

「…ッチ」

 

 な、なんであんなに怒ってるんだ…?

 

「ああ、あんま気にしなくていいぜ。アンタとの勝負が中途半端で終わって、その後も散々だったから気がたってんだわ」

「えぇ…」

「つーかそろそろ時間ヤバくねえか?」

「あ!ほんとだ!僕もう行くね!ありがとう手取さん」

「いや…。あー、ちょっと待って」

「え?なに?」

「一つアドバイス。特別な物だって思わない方がいいよ。もっと、普通の物だって思った方がいい。みんなは当たり前に使ってるから」

「それってどういう…」

「オレもそろそろ行かないと。常闇さん、芦戸さん、ありがとう。またね」

「ああ」「マタナ」

「またねー!」

 

 また会えるといいな。

 …これから新幹線かぁ…。ヤだなぁ…。都内のヒーロー事務所にしとけば良かったなぁ…。はぁ…。

 

 

 

 ♢♢♢

 

 

 

 電車とは別の混沌とした車内で揺られること一時間、そこから多少人の減った電車でさらに三十分。オレが行く事になったココロノ事務所は、駅から数分の所にある二階建てのビルの二階にあった。

 …なんか、表札にココロノ「探偵!」事務所ってなってるけど、ここで間違いないよな…?とりあえず、インターホンを鳴らすか…。

 

「…はーい。どうぞ〜」

 

 …。入って、みるか…。

 

「お、お邪魔しま〜す…」

 

 中は…なんか、本とかファイルとか、資料っぽい物が至る所に置いてあるな…。ヒーロー事務所…?

 

「やあやあ、よく来たね!君が手取掴さん、ああいや、ルーラーだよね?」

 

 奥から資料とかを上手い具合に避けて入口に来たのは、ズボンにベスト、シャツ、ネクタイを締めている髪の長い女の人。

 

「…えっと、はい」

「私はロケート!このたん…、ヒーロー事務所のオーナーだ」

 

 たん…?…あ、

 

「表札に探偵って書いてありましたね」

「あー、ははは。申し訳ない。元は探偵やってたから、ヒーローになってもみんな探偵として頼って来ちゃってね。前の依頼人の子供が表札に書いちゃったんだ」

「なるほど…?」

「とりあえず散らかってるけど、奥に荷物置いて着替えて来て。そしたら仕事の説明とかするから」

「はい。わかりました」

 

 探偵って事は、ヒーローとしてもそういう関連の仕事してるのかな?

 

 

 

 ♢♢♢

 

 

 

 荷物を置いて、コスチュームがないから持ってきた学校のジャージを来てロケートの所まで来たが…、

 

「うーん、聞いてはいたけど…」

「ダメですか?」

「ダメではないんだけど、ちょっと待ってて、昔使ってたの持ってくるわ」

 

 まあ、確かにジャージでヒーロー活動するのはおかしいしな。…でも、昔使ってたってサイズで合うかな?

 

「えーっと、とりあえず、下にそれ着といていいから、こっちのシャツとジャケットにズボン、着てね」

「…わかりました」

 

 普通のシャツに紺色のジャケット、ズボン…。なんか普通だ。サラリーマンっぽい。とりあえず着るか。

 

「よし、問題なさそうだね。それじゃあ…パトロール行こうか!」

「え?」

 

 

 

 ♢♢♢

 

 

 

「パトロールとは言ったけど、散歩みたいなものだから気楽にね」

「それでいいんですか?」

「いいのいいの。ヒーローが街を歩いてるってだけで、多少は犯罪率下がるんだから」

 

 …うぅむ、本当に散歩気分なのがなぁ…。オレも、少しは力抜いて行くか…。

 

「んーと、仕事の説明、だよね?えっとそうだな〜、まず、私達ヒーローは国からお金貰って成り立ってるんだよ。だからまあ、一応公務員だね」

「公務員…」

「そ。んで、実務…仕事が、犯罪の取締り。事件あると応援要請が来るから、ちゃんと行かないと怒られる。後は…ちゃんとその事件について申告しないといけなくて、その後貢献度とかで給料に差が出るね」

「給料の差…」

 

 これはヤバいかも。たとえヒーローになれたとしても、しっかりやらないと生活がヤバいな…。

 

「ああ、もう一個あった。副業が認められてるよ。私の場合は探偵ね」

「探偵って儲かるんですか?」

「えぇ…直球だね…。うーん、人によると思うよ?私は生活出来る程度には稼げてたけど、今はヒーローやってるからあんまりそっちの依頼受けてないなぁ」

「そうですか…」

 

 そういえば…。

 

「あの、なんでオレに指名入れたんですか?」

「ん?探偵業に役立てられる個性だと思ったからってのと、一人くらいサイドキック欲しいなぁって思ったから」

「…え、それって」

「そう。君が卒業してヒーローになったら、うちに来ない?っていうこと」

「え、あ、でもオレ、普通科だし…」

「あ〜そこはまぁ…。別にあれだよ?普通科を卒業して、探偵助手としてうちに就職してもいいんだよ?免許だって、卒業してから取れないわけでもないし。まあ、考えてくれると嬉しいな!ってだけ」

「あ、ありがとうございます…」

 

 本気で言ってるの、凄い嬉しい…。

 

「おんや、翔子ちゃん。散歩かい?」

「橘のおばあちゃん。一応パトロールだよ。最近はどう?」

「なんもさ。翔子ちゃんはどうなんだい?」

「私も大丈夫だよ」

「そうかいそうかい。ええことやんなぁ」

「そうだね。じゃあ、またね」

「はいはい。そっちのお兄さんも頑張んりんしゃいね」

「あっ、はい!」

 

 散歩のついでに町案内をしてくれた。そして行く先々でロケートは話しかけられていた。お年寄りや子供ち。ゴロツキっぽい人達でさえ、ロケートが来ると笑顔を浮かべて挨拶をしていた。

 みんな、ロケートに対して感謝や憧れ、尊敬の思いがある。ここら辺では、ロケートはヒーローなんだ。みんなにとっての身近にいるオールマイト。

 うん、せめて、なれるなら、こういうヒーローになりたいな…。

 

 

 

 職場体験一日目は、目指したいカタチが朧気ながら見えた、そんな日になった。

 

 

 

 ♢♢♢

 

 

 

 職場体験二日目、この日は一日中迷子の猫探しをしていた。夕方になってちゃんと見つかったから良かったけど、ロケートが道行く猫に近づく度に逃げられなければもっと早く見つかったと思う。

 

 そんな二日目は、日常の近くにいるヒーローの活動を知ることができた

 

 

 

 ♢♢♢

 

 

 

 そして職場体験三日目、何故か朝から保須市に来ていた。

 

「あの、なんで保須に?」

「えっとね…あー、ヒーロー殺しステインって知ってる?」

「まあ、はい」

 

 確かテレビで犯罪率がうんぬんかんぬん言ってたのを聞いたような…。

 

「そのステインが今まで事件を起こした場所で必ず四人以上のヒーローに危害を加えてるんだ」

「…つまり、まだここに現れる。と?」

「理解が早くて助かるよ!…出来れば昨日の内から保須に入って、いつでも動けるようにしておきたかったんだけどね…」

「あはは…」

 

 昨日最初に見かけた猫が依頼主の探してた猫で、駆け寄ったロケートに威嚇してすぐ逃げちゃったからなぁ。夕方まで逃げ回られたんだし、仕方ない。

 

「あ、勝手に動き回っちゃダメだからね。ステインの発見と事件の阻止が今回の目的だけど、普通に危ないから。全身に刃物携帯してるんだよ?」

「…はい」

「…ちゃんとわかったよね?」

「だ、大丈夫ですよ…」

「絶対離れちゃダメだからね…!」

 

 …そんなに念押しされても、単独でどうにかなると思えないから離れないけど…。

 

「わかりましたって」

「…。まあいいよ。パトロール行こうか」

「はい」

 

 

 

 ♢♢♢

 

 

 

「どこいったんだあの人…」

 

 日が沈み出した夕方、薄暗さの増した路地裏でスーツ姿の掴が途方に暮れていた。それもそのはず、同行者にして職場体験先のヒーローとはぐれてしまったからだ。

 

(突然路地裏に行ったと思ったら直ぐにいなくなっちゃうんだもんなぁ)

「はぁ…」

「うわぁぁぁーーー!!!??」

 

 どうしようかと思案顔で歩き出したその時、遠くない場所から悲鳴が聞こえてきた。

 

「!?あっちか…!」

 

 声がした方向へ走り出す掴。

 幾度か道を曲がると、目の前には全身に刃物を携帯している不気味な男と肩から血を流して座り込んでいる男がいた。

 

「…!何やってるんだ!!」

 

 掴が声を上げた瞬間、不気味な男一一ステインが携帯していたナイフを掴に向かって投げて来た。

 間一髪でそれを避けた掴だが、次いで飛んで来たもう一本のナイフが腕に突き刺さってしまった。

 

「ぃづ…!?」

「…子供…か?何をしに来た…」

「悲鳴が、聞こえたんだ…!行くさ」

 

 腕に刺さったナイフを、涙目になりながら抜いて言う。

 

「目標は…ヒーローなんだから…!」

「子供が立ち入っていい領域ではない…」

「…見逃せない!本物なら、絶対に逃げない!!」

 

 その言葉に、ステインは口を歪ませ笑う。

 

「良いな…」

「何が…!」

 

 言葉と共に走り出した掴、迎え撃つ形になったステインは持っていた刀を横なぎに振り、同時に空いた手で腰につけたナイフを抜き放った。

 それをステインの股下を抜けることで避けた掴は、勢いそのままに座り込んだ男に近づき口を開く。

 

「動けますか!?」

「いや…、体が、動かないんだ…」

「くそっ!面倒な個性して!」

「…ハァ」

 

 無言のまま走って来るステインを後ろ目に、座り込んだ男を表通りに向けて引きずり投げる掴。その後走って来たステインへ向かい直し、振り下ろされていた刀をスレスレで避け、後ろに飛んだ。

 

「うおっ?!」

「…ハァ」

「あっぶね!」

「邪魔をするな…、その男は、ハァ…正しき社会の為の供物だ…」

 

 それを聞いて、そして、見たのだろう。顔を顰めて、掴は言った。

 

「確かに本物じゃあない。けど、ニセモノでもないよ」

「何…?」

「みんな、誰かにとってのヒーローなんだ。勝手に否定するだけじゃ、ダメなんだ」

「…だが、世間に必要なのは本物だけだ。その男を殺すことに変わりはない」

「そうか…。じゃあここで、止める」

 

 走り出しながらステインの次を知る為に個性を使う掴。

 そうして知り得た行動を潰しながら、倒れている男から離すようにステインに攻撃を続けていたが、全身に切り傷が増えていっていた。

 

(こいつ、俺の個性を知っているのか…?血を舐めようとする度に攻撃の手が増える。だが…)

(クソ!どんだけやったってオレの殴る蹴るが効く訳じゃない!早く効果が切れて加勢してくれ!)

 

 自身の個性でステインの個性を知った掴は、効果時間が切れて後ろで倒れている男が加勢してくるのを待っていた。

 しかし、望んだ結果は訪れず、全く別の、それこそ、この状況を最悪にまで持っていくかのような事が起きた。刀が掴の顔を切った時に飛んだ血が、ステインの顔に飛んだのだ。刀に付いた血ではなく、自身の傷から出る血でもなく、ステインの顔に付いた血では防ぎようがない。

 ステインはその血をすぐさま舐め取り、掴は動けなくなってしまった。

 

「っぐ!?(不味い!)」

 

 ステインは動けなくなった掴を無視し、その背後にいる男に刃を向ける。

 

「多少遅くなったが、ハァ…死ね。贋物よ…」

 

 そしてステインがその刃を振り下ろす瞬間、アーマースーツを着た何者かがステインを蹴り、その一刀を食い止めた。

 

「…ッ!」

「…血のように紅い巻物と全身に携帯した刃物……。ヒーロー殺しステインだな!そうだな!?」

 

 蹴りを放ち、刃を向けられていた男の前に立ったアーマースーツの男一一飯田天哉はそう問いただす。

 何とか首を動かし、それを確認した掴はその思いを見てもなお声を上げた。

 

「その人を連れて、逃げてくれ…!」

「!?…君は…!」

「また…邪魔が入った…」

 

 ステインは飯田の動きを止めるべく動き出し、怨敵たるステインが向かって来た飯田は掴との会話を中断し、迎え撃つ体勢をとる。

 

(不味い!不味い不味い不味い!このままじゃ飯田がやられて終いだ!オレはまだ動けない!最低時間でもこんなに長いなんて…!何か…何かないのか!?)

 

 未だ冷静にステインの攻撃を何とか受けている飯田だが、限界が既に迫っている。それを見逃すステインではないのもわかっている掴。焦りが募るが、その体は動かない。一番いいのはプロヒーローの到着だが、突然この現場に来てしまった掴が通報する時間はなく、飯田が通報していないのもわかってしまっていた。次善の策も尽く自身の体が動く事前提。何も出来ず、その一方的とも言える戦いをただ見ていることしか出来なかった。

 そして遂に飯田が切られ、その血を舐められ動きが止まった。

 最悪の状況も見えてきたその時、新たな人影がステインの顔面を殴り飛ばした。

 

「緑谷……くん…!?」

「助けに来たよ、飯田くん」

「何故…!?」

「ワイド……でやっ……!……」

「……!」

(あっやばい…意識が…。ここまで、なのか…?)

 

 個性の使用による意識の低下が起こり、外界の情報を上手く取得できなくなっていく掴だが…一

 

 

 

 ♢♢♢

 

 

 

(……、…………)

 

 …え?今のは…。

 

「…!」

 

 あれ…体が、動く…。なら、まだ…やれる…。せめて、少しでも情報を…。

 

「緑、谷…」

「!?手取さん!?どうして…!?」

「…」(時間か…)

「血ぃ…舐められる、なよ…」

「血?…そうか!血の摂取が個性の発動条件…!」

 

 助かるよ、緑谷…。お前がそういう奴で…。それがわかったら、お前ならどうとでも動けるはずだ…。

 

「後は、頼む…」

「手……ん!……」

 

 血ぃ流しすぎたかな…。

 

 

 

 

 

 

「…ん」

 

 ステインは…捕縛済みか…。

 

「あ、おい。起きたぞ」

「手取さん!大丈夫!?」

「緑谷。…轟?」

 

 ああ、来てくれたのか。ヒーローにも連絡済み、と。

 

「助かった。ヒーローはまだか?」

「あっ、ああ。まだだ」

「…そうか」

「手取くん…」

 

 飯田か。礼と、注意…ぐらいしておくか。

 

「事情はどうあれ来てくれたのは助かった。だが」

「…っ!」

「ステインは気づいていた。私欲より人命を優先したから、標的にならなかっただけだ。…まあ、その…熱くなりすぎるなよ。冷静さが売りなんだろ」

「…!!…ありがとう…!」

 

 さて…。

 

「ステインを任せてもいいか?」

「え?!手取さんはどうするの!?」

「ちょっと人を探してて…あ〜」

 

 ロケートの目的がステインだし、探さなくてもいいのか。ちゃんとわかってた割に緑谷の足切られてるし。

 

「やっぱり今の無し。オレも残るよ」

「そ、そっか」

「ところで緑谷、お前動けるか?」

「…ごめん。ちょっと厳しい」

「だろうな。よいしょっと」

 

 緑谷を背負う。以外と軽いな。

 

「え、えぇ!?いや、いいよ!」

「そんなこと言ったって仕方ないぞ」

「う、ありがとうございます…」

「ネイティブさん」

「!?な、なんだ?」

「まだ動けないですか?」

「あ、ああ」

「ふむ」

 

 最大八分らしいし、後数分は動けないか。

 

「轟、悪いけどネイティブさんを背負ってくれないか?」

「わかった」

「すまない…」

「いえ、いいっすよ」

「飯田、ステインを任せてもいいか?」

「…っああ!任せてくれ!」

「じゃあ、大通りに向かおう」

「おう」「ああ!」

 

 煙の臭い…。火が上がってるのか。…複数人と単独の人が近づいて来てるな。応援かな?

 

「む!?んなっ…何故おまえがここに!!!」

「グラントリノ!!!」

 

 知り合…知り合いか…。

 

「座ってろっつたろ!!!」

「グラントリノ!!」

 

 顔面蹴られたな。大丈夫か?

 

「まァ…よぅわからんが、とりあえず無事なら良かった」

「グラントリノ……ごめんなさい」

 

 緑谷…。程々にな…。

 

「細道…ここか!?あれ?」

「エンデヴァーさんから応援要請承った。んだが…」

 

 ヒーロー達も到着したな。これで一安心だ。

 救急車がどうこう言ってるけど、そこまで重傷って訳でも無いはずなんだよな。飯田は腕酷いけど、危ないところはギリギリ避けられてるし、まあ念の為行った方がいいのか。

 

「君も血まみれじゃないか!」

「大丈夫なの?」

「大丈夫です」

 

 多少深く切られたところはあるけど、ある程度止血してるし、最悪個性で無理矢理体動かせば動けないことはないからな。

 

「…ッ」

 

 ん?なんか高速で近づいて来てる?

 

「伏せろ!!」

 

 ッ!!緑谷が狙われてる!?んならぁ!!

 

「うわぁあ!?手取さ…手取さん!!」

 

 代わりにオレが捕まって、!!!

 

「偽者が蔓延るこの社会も…徒に〝力〟を振りまく犯罪者も…粛清対象だ…ハァ……ハァ…」

 

 ステイン!?こいつ、無茶して…!

 

「全ては、正しき社会の為に」

 

 肺に肋骨刺さってるし、これ以上動くと死ぬぞこれ!

 

「助けた…!?」

「バカ人質とったんだ」

「躊躇なく人殺しやがったぜ」

「いいから戦闘態勢とれ!とりあえず!」

「何故一カタマリでつっ立っている!!?」

「!」

「そっちに一人逃げたハズだが!!?」

「エンデヴァーさん!!」

 

 エンデヴァー!?今、この状況で!?

 

「エンデヴァー…」

「ヒーロー殺し一一一!!!」

「待て轟!!」

 

 …!

 

 「贋物…」((贋物))

 「正さねば一一…」((正さねば))

 「誰かが…血に染まらねば…!」((誰かが血に染まらねば!!))

 「〝英雄〟を取り戻さねば!!」(( ヒーローを取り戻さねば!!))

 「来い。来てみろ 贋物ども」((来い、来てみろ贋物ども!!))

 「俺を殺していいのは((俺を殺していいのは)本物の英雄だけだ!!」(オールマイトだけだ!!))

 

 声が二重に聞こえる…?っぐぅ、頭に響く…!

 

「く…そ…」

 

 体も上手く動かせないし、視界もチカチカしてる。ステインを早く拘束して治療して貰わないといけないのに!

 

「はぁ…はぁ…」

 

 不味い、また…意識が……。

 

 

 

 ♢♢♢

 

 

 

 目が覚める。と同時に、目を開けていないはずなのに周囲の景色が見えるという奇妙な現象にあった。それにいつもより鼻が利くしよく聞こえる。なんだろう、いつもより情報が多い気がするけど、変な感じはしない。

 目を開けてみる。…変なものが見えるとかじゃないか。なら、大丈夫かな。

 

 しばらくして、医師と看護師がやってきた。

 腕の刺し傷等多数の切り傷があり大きなものもあったが、気絶の原因は血を一気に流してしまったことらしい。また、傷口が多すぎていつどこが開くかわからないためしばらくの間運動等の禁止を言い渡された。

 

 それから少しして、来客がいるとのことで別の病室に移動した。移動した先には緑谷達と来客がすでにいて何やら話をしているようであった。

 

「失礼します」

「あっ、手取さん!」

「みんななんともないみたいだね」

 

 来客の人達は緑谷の体験先のグラントリノさん、飯田の体験先のマニュアルさん、保須警察の所長の面構犬嗣さん。あとロケート。

 

「君がこの件に関わっている最後の雄英生徒だワンね」

「はい。それでどういう風にこの件を丸く収めるおつもりですか?幸いと言っていいのかわかりませんが、目撃者はヒーローとここにいる我々雄英生徒のみですが」

 

 資格未取得者が、相手がヒーロー殺しという凶悪犯だとしても『個性』を使用して危害を加えたのなら、規則違反で処分が下るはずだ。

 

「…そうだワンね。簡潔に言うのなら君達が関わらなかったということで収めるつもりだワン」

「なるほど。みんなも納得しているようですし、それでお願いします」

 

 なんだろう、大小あるけど所長さん達も含めてみんな驚いているような。

 

「…君は、それでいいのかワン?」

「問題ありません。私がいなくてもヒーロー殺しを仕留めることは出来ました。結果を見るのなら戦闘途中で気絶した私は邪魔者でしかなかった。いてもいなくても結果は同じだったのです。なら邪魔者であった私の意見は必要ないでしょう」

 

 結果は変わらなかったはずだ。轟は緑谷の連絡を受けて駆け付け、ヒーロー達をよんだ。三人いたんだ。ネイティブさんがもう少し傷を負っていた可能性はあるけど、それでも命に係わるほどの傷には……あれ、なんで可能性の話なんて?

 

「…わかったワン。だけどこれだけは言わせてもらうワン。君がヒーロー殺し逮捕に貢献したこともまた事実。だからこそ感謝を。ありがとう!」

「…ありがとう、ございます」

 

 頭を下げられたから下げ返す。普通、こちらが先に頭を下げるんだけど、タイミングを見失った。

 

 その後、ロケートを除いた警部達が帰るということで見送り、そのままロケートと話をすることにした。

 

「ロケート」

「っ!何!?」

 

 思った以上の反応だ…。謝罪の思いがあるのはわかってたけど、罪悪感と不甲斐ないって感情まであるとは…。

 

「…えっと、その、すみませんでした。離れるなって言われてたのに離れて、ステインとの戦闘を避けないでこんな風になっちゃって」

 

 体中包帯でグルグルだ。ヒーローになるなら、いちいちこんなことになるわけにはいかない。もっと強くならないと…。

 

「君が謝ることじゃないよ!…私が、もう少し君に配慮しておけば…。君は…いやごめん、何でもない」

 

 強い後悔と無力感、昔を見てる目だ。オレを見て、別のだれかを幻視してる。でも懐かしんでいるだけで、そんな自分が嫌になってる。

 

「それで?まだあるんでしょ?」

「はい。医者からしばらく運動は禁止だと言われました」

「それって」

「はい。これ以上の職場体験は厳しいと思います。だから、お礼を。短い間でしたがありがとうございました」

「ううん。私も、ありがとう。短い間だったけど、君と一緒に仕事が出来てよかった。また、一緒に仕事しようね」

「…はい。その時は、よろしくお願いします」

 

 握手をして、ロケートは帰っていった。最後には罪悪感とかそういうのはなくなっていて、少し嬉しくなった。

 

 

 

 オレにとっての職場体験最終日は、少しの後悔と今後への考え方を知る日となった

 

 

 




上半分なくてもいいんだよなぁ…。
ロケートの個性は暫定で『捜索』です。
範囲を指定してその中に指定した条件の合う物や人物を探し出します。
まあ例に漏れず範囲が狭いほど条件を複数入れることができて、範囲が広いと少ない条件しか入れることができません。これで探偵としてやってました。探偵を始めた当初は助手というかもう一人の探偵とタッグでやってたらしいけど、今は一人。はて、どこに行ったんすかね?(すっとぼけ)
今回手取に強化フラグが建っちゃったんで、次回があれば強化が入ります。では。
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