提督ですが、人類は滅亡してしまったようです。   作:クソザコナメクジ

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9頁目.建造と編成

 こちら横須賀鎮守府、提督カッコカリです。

 皆が張り切って海に出てくれるので資材は順調に溜まっている。また妖精さんが運営する田畑の方も順調に育っており、「塩害……自然の法則……」と五十鈴、漣、叢雲が頭を抱えようになった。毎日のように魚は釣れるし、領土の方も地道に広がりつつある。皆の報告を聞くには、どうにも攻略した海域が領土として元に戻っているという話だ。「そんなことある?」と叢雲が胡乱げに問い直すも、そうなっているから仕方ないという事で結論が出た。

 さておき、そういうことなら艦娘を幾らか増やしても構わないだろうってことで結論が出た。

 

「えっと……四人編成の艦隊が二つ、だっけ?」

「ええ、そうよ。資材単位を30を一回。二回目は300、30、400、300よ」

「……ごめん、その言い方だとわかんない」

「はあ? これくらい分かりなさいよ。……まあ、予め資材は分けといたから放り込むだけで良いわよ」

「……あ、ありがとうございまひゅ…………」

 

 私の隣に立つのは白い長髪で、なんとなしに兎に似た艤装を持つ艦娘。叢雲だ。

 なんというか言葉の当たりが強くて、好きくなれない。でも決して嫌いという訳ではなくて、むしろ私の方が嫌われて然るべきで、どっちかっていうと苦手なタイプの人だった。とりあえず妖精さんを呼んで、ポイポイッとプールに資材を投げ入れる。後は妖精さんにお任せだ。絶対に見てはいけませんよ? と和服妖精さんがカーテンを閉じて、バッサバッサと音を立てながらカタンコトンと生地を織る音を立てる。衣服でも織っているのかな? そういえば、艦娘達って何時も同じ服を着ているな。隣の叢雲をスンスンと鼻で嗅いでみたけど、特別、臭いってことはなさそうだった。

「何をしているのよ?」と白けた目で見つめてきたのでビクビクと身を震わせた。

 

 今、鎮守府には五十鈴を旗艦とした六人編成が一部隊だけ配備されている状況だ。

 ちなみに部隊に編入されているのは電、叢雲、漣、吹雪、五月雨。その全てが駆逐艦だ。私には駆逐艦とか軽巡洋艦の違いがよく分からない。ついでに云うと正規空母と軽空母の違いも分からなかった。ちなみに正規空母が建造されたら資材の最低単位で追加建造して欲しいを言われている。私には深海棲艦の強さが分からない、だから現場で戦う彼女達の意見に従うようにしている。「いずれ戦艦も建造しないといけないわよね……」と考え込む叢雲の隣で「戦艦? 戦う艦って全部、戦艦じゃないの?」と首を傾げるのが私だ。

 両手でキュッと頰を摘まれて、ぐにぐにと伸ばされた。痛い、やっぱり叢雲は好きくない。

 

 待つこと一時間程度、沈黙も一時間程度、造船場の外で待っていると妖精さんから呼び出しがあった。

 中に入れば、椅子に座っている新しい艦娘の姿を見て「うげっ」と叢雲が露骨に嫌な顔をする。見た感じ、可愛いと云うよりも綺麗で格好良い人だった。五十鈴の時、そうしたように彼女の手に触れると、パチリと目を醒ました。目が合った、ふええっ……

 そして彼女は胸元で両手をギュッと握り締めた後、ブルブルと堪えるように身を震わせ――

 

「やっ! せっ! んー―――っ!!」

 

 ――と両手を振り上げながら勢いよく立ち上がった。

 そんな彼女のことをポカンを見上げる私と、呆れたように叢雲が額に手を当てる。

 夜戦馬鹿で忍者被れ。それが叢雲から教えて貰った彼女、川内の評価だった。

 

「あれ、壊れてない? ここ、襲撃を受けたみたいになってる!」

 

 造船所内を見渡した川内が驚いたように声を上げる。

 彼女への説明は、たまたま通りかかった漣に投げた。

 

 もう一人分、ドバドバッと資材を放り込んだ後、陽キャの癖に夜戦夜戦と煩い彼女と嫌々夜の訓練に付き合う約束をした。

 それから約三時間後、再び妖精さんに呼ばれたので叢雲と一緒に造船所まで赴いた。なんで今日はずっと付いてくるのだろうか? おずおずと問いかけると「何? 私じゃ不服って訳?」と言われたので、違うんです、誤解なんです。と土下座する。決して嫌いな訳じゃないんです、生まれてきてごめんなさい。そんな感じで拝み倒すと叢雲は呆れるように溜息を零し「今日の秘書艦は私ってだけよ」と言われた。よく分からない、彼女は一言足りない気がする。電か五十鈴に会いたい、漣でも良い。吹雪は会話が続かないし、五月雨とはそもそも会話が始まらない。

 そんなこんなで造船所まで足を運んだ私を待ってたのは、ふっさりとしたツインテイルの少女だった。

 駆逐艦娘と呼ばれる彼女達よりも年上っぽいけども、軽巡洋艦と比べると幼い感じがする。特に胸が独特のシルエットをしていた。ちょっと親近感覚える。「あら、龍驤じゃない。てっきり飛龍辺りが来る気がしたのだけど」と叢雲が不思議そうに首を傾げる。飛龍って誰ですか? 胸がでっかいお姉ちゃん? 胸、ですか。容姿を語って、先ず胸なんですね。いえ、そんなこれから成長するとか……、これでも二十歳超えてますし……ちょっと、その顔は流石に傷付きます。

 さておき、龍驤と呼ばれる少女の手を取った。パッチリと目を醒まし、私と目が合った。ひええ……

 

「……なんや、随分とちんまいのが提督やってるんやな。まあええ、うちは軽空母の龍驤や。よろしゅう頼むな?」

「あ、はい。よろしくお願いしましゅ……」

「随分と元気ないなあ。ちゃんとご飯食べるんか? あかんで君、ちゃんと食べんとおっきくなれんで?」

 

 どうやら随分と世話焼きな人が来てしまったようだ、電とはなんだか違う感じの世話焼きさんだ。妙に近い距離感で話す彼女に、あうう、とか、ふええ、とか、龍驤の言葉に返事が出来ずにいると「そんなんでよう提督になれたなあ、なんか訳ありか?」と龍驤は半壊した造船所を見渡し、そしてゆっくりと目を閉じた後、大きく息を吸い込んだ。

 

「なんやこれぇー―――――っ!? 壊れとるやないかぁー―――――――――いッ!!?」

 

 龍驤の渾身のツッコミが造船場内に響き渡った。

 

 

 川内と龍驤、新たに二人が加わったことで会議が開かれることになった。

 諸々の説明を済ませた後、今後について話し合う為に皆で食堂に集まっている。私なんか必要ないんじゃないかな? そう考えて、そそくさと自室に戻るかと思ったが、叢雲に首根っこを掴まれて食堂まで文字通りに引き摺られた。艦娘って皆、力強いよね。狡いよね。進行役も秘書官の叢雲、ホワイトボードに文字を書き込む彼女のを姿を見つめながら、そろそろ皆の目を盗んで逃げ出そうか――とか考えていると「失礼するのです」と電が私の隣に座って、にっこりと微笑みながら手を握ってくる。あ、うん。これ。私のことを逃してくれるつもりはないですね。あうあう、と涙目にながら五十鈴に助けを求めるも「いい加減、諦めなさいよ」と呆れ混じりに見放された。

 ホワイトボードに書き込まれる水雷戦隊、航空戦隊。そして、三水戦隊の文字。どや顔で水性ペンを持つ川内の頭頂部を、叢雲が頭の突起物でどついた。

 

「それじゃあ明日からの編成について、始めるわよ」

 

 川内が大きなたんこぶを作る中、叢雲の主導で会議が進んでいった。

 

「水雷戦隊の旗艦は五十鈴。以下、電、吹雪、そして私、叢雲」

 

 それぞれの名前を言いながら真っ黒な水性ペンでホワイトボードに書き連ねる。五十鈴には何度か指揮を執った経験がある為、旗艦に置いたということか。魚雷による近接戦を行う為か、心なしか駆逐艦も度胸のある面子で揃えられている。

 

「航空戦隊の旗艦は龍驤。以下、川内、五月雨、漣」

 

 航空戦隊の中核は空母となる為、必然的に軽空母の龍驤が旗艦という事か。軽巡洋艦の川内を航空戦隊の方に編入して、戦力を偏らせたのは龍驤と川内の経験不足を補う意味もあってのことか、そこに駆逐艦の中では最も広い視野を持つ漣を入れる事でバランスと取っている気がしないでもない。ちょっと頼りない部分もある五月雨のフォローを漣にさせる意図もあるんだろうな、とか思ったり思わなかったりする。

 

「この編成に異論がある者は……」

「はいはーい! せめて水雷戦隊の方にして欲しいんですけどー!」

 

 早速、手をあげたのは川内だった。

 

「航空戦隊とか夜戦ないじゃん! 絶対、嫌! やーだー!」

「バランスを考えるとこうなるのよ。川内さん、感情でものを言わないでくれない?」

「それでも嫌なものは嫌!」

 

 ぶうぶうと口先を尖らせる川内に叢雲は溜息を零し、残る面子で苦笑する。

 私個人としては良いようにしてくれたら良いのだけど、今の印象だと川内よりも五十鈴の方が信用できる気がする。

 なんだかんだで五十鈴は落ち着いてるし、なんとなしに安心感がある。

 

「うちは五十鈴の方が嬉しいけど……そういう訳にもいかんのやろ?」

 

 龍驤が叢雲に目配せしながら問いかけると「それをするなら吹雪が航空戦隊に回った方が良いじゃない?」と返された。

 それから少し話されるも結局、川内の異動は叶わなかった。

 

「あーもう! 良いもん! 提督、夜戦に付き合ってくれるって言ったよね!」

「……そんなこと、言ったっけ?」

「惚けないでー! 絶対言った! 付き合って貰うもん!」

 

 確かに夜の訓練に付き合うとは言ったが、艦娘の訓練に私が付き合えることなんてほとんどないはずなんだけどなあ。そんなことを思っていると隣に座っていた電が、何かいいことを思い付いたかのようにポンと手を叩いて口を開いた。

 

「提督さんとの夜戦に勝ったら、私と交代してあげるのです」

「ホント!?」

「あ、ちょっと電。何を勝手なことを言ってるのよ!」

「よーし、やる気出てきたぞー! 何で勝負するのか知らないけど、絶対に勝ってやるんだから!」

「叢雲、大丈夫なのです」

 

 微笑む電に胡乱げな叢雲、そして張り切る川内。

 どうして、そういう話になってしまっているのか理解できない。

 その晩、何故か電からマフラーを手渡される。




この二人までは初期構想で出す予定が決まってました。
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