提督ですが、人類は滅亡してしまったようです。   作:クソザコナメクジ

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記録4.拾イ子

 断崖絶壁今何処、

 今日も今日とて悠々自適に海中遊泳、今や七つの海は深海棲艦のものであり、何処を泳ぐも自由気ままだった。

 そして、その海も範囲を広がりつつある。私はのんびりしているのが好きだった。昼間は日当たりの良い場所で全身の力を抜いて、ぷかぷかと浮いて流されるのが好きだ。そのまま目を閉じれば、ゆるりゆらりと心地良くて、意識はすぐに夢の中へと落ちる。そんなこんなで浅瀬の近くまで流れて、ぽっかぽかの太陽に天日干しにされながら目を醒ます。

 此処は何処? 私は戦艦レ級。そんな戯言をよく口にしている。

 

「オカアサン、起キタ?」

 

 私の顔を覗き込む誰かの影、目を擦って見直すと頭にお団子を二つ乗っけた私の子供のひとりがいた。

 

「軽巡棲鬼?」

「ハイ! 貴女ノデキタ娘、せんチャンデス」

 

 軽巡棲鬼は右手を胸元に添えながらどや顔を決める。

 アイドルのセンターポジションだからセンちゃん。アイドルというのはよく分からないし、本人もよく分かってないけど、なんとなしに彼女はそう名乗り続けている。彼女は私と同じように自由気ままを信条にする深海棲艦であり、自ら積極的に動いて陸地を海に沈めようとは考えない珍しい子でもあった。珍しいだけで私達と同じように独自行動を続ける子は他に二人ほど知っている。

 彼女は自らの見聞を広める為、海に沈めたパリとかロンドンの観光に向かっていたはずだ。

 

「ソレデあいどるガ何ナノカ掴メタ?」

 

 なんとなしに問うと軽巡棲鬼は困ったようにはにかんで「マダマダデス」と答える。

 

「劇場トカ観ニ行ッタケド、アアイウ場所ヲ観ルダケジャ、ヤッパリあいどるニツイテワカラナイカナ?」

 

 うんうん、と頷く彼女の言葉に耳を傾けながら周りを見渡す。

 この辺りは知らない海だ。でも、なんとなしに懐かしさを感じる。

 それは海の温もりか、空気の感じなのか。

 

「此処ハ何処ナノダ?」

 

 事のついで、となんとなしに問いかける。

 

「ハイ、日本ノ秋葉原デス! あいどるノ聖地デス!」

 

 オタクでは? と思ったけど、その言葉の意味がいまいち思い出せなかったので黙っておくことにした。

 軽く世間話を交える。軽巡棲姫は今、私よりも強いやつに会いに行く、と台湾の悪魔を追ってインド方面に向かっており、駆逐棲姫は北方棲姫と北方棲妹に会いに行くために北アメリカ大陸へと渡っているようだ。現状、深海棲艦が抱える戦線は全方面において、順調に侵攻中、とりあえず私の子供達は今んとこ一人も欠けていないようで安心。深海棲艦の本能とか、野望とか、そんなのはどうでも良いからみんな無事で、できることなら幸せに、そして健やかに生きて欲しいと思っている。

 勿論、もう引き返せないところまで来ていることは分かっている。

 

 何処か遠く、この水平線の先に居るはずの我が子を想っていると見知らぬ子が波に拐われているのを発見した。

 

「オカアサン、ドウシタノ?」

「アノ子、新シイ子ダナ」

 

 そのまま少女は私達のいる浅瀬まで流されてくる。

 真っ白な長髪に赤色の瞳、そして額からは日本の小さな角を生やしており、左側頭部にもまた三本の角が花の髪飾りのように連なって生えていた。まだ眠る彼女のことを御姫様抱っこで掬い上げる。「可愛イ子ダネ」と軽巡棲鬼が微笑み、私も頷き返す。見つけてしまったからには放っておくことなんてできず、とりあえず近場の落ち着ける場所まで連れて帰ることにした。

 今の御時世、陸地の近くは危険がいっぱいだ。彼女が独り立ちするまでの間、日本があったこの海域に腰を落ち着けるのも良いかも知れない。

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