ポンコツ魔術の青春活劇   作:ハレル家

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 やってやろうじゃねぇか!!(フリです)


一話:プロローグはテロリスト予備軍により爆裂しました。

 世の中はクソだ。

 

 百年前に剣と魔法のファンタジーな異世界が現代社会と融合し、最初は警戒していた人々は意外に友好的な異世界人と同盟を結んで魔法と科学が発展を遂げる事に成功した。

 

 それでも、人の悪意は消えない。

 

 とある中学校で、ある理由によって私はイジメを受けた。

 

 信じていた先生からも、親しかった友人からも掌を返して裏切られ、毎日が地獄だった。

 

 高校に入ってからは両親にアストラ学園を進められたが、どの道ここもあの学校と同じなのだろう……信用できない……

 

 今日も今日とて私は部屋に引きこもり、ゲームをしていたある日……コンコン、部屋をノックする音が響いた。

 

『もっしもーし?』

 

 それは、私の未来を大きく変える出会いがやって来た音だった。

 

 

      ーー■□■ーー

 

 

「もっしー? ノックしてもしもっしー?」

「……出てこないな。寝てんのか?」

「いえ、それは無いですわ」

 

 扉の前で灰色のローブを羽織り、左目に意味ありげな黒い眼帯を着け、紺色のミドルヘアと空色の瞳が特徴的な青年--星丸(ほしまる)陽平(ようへい)がノックを繰り返していた。

 返事がない様子に銀色の髪をおでこのあたりで結んでおり、制服の袖をまくっている青年--田沼(たぬま)土彦(つちひこ)が寝てるかもしれないと疑うが、側にいた黒髪ロングに猫耳と尻尾が生え、へそが少し見えるセーラー服を着た赤目の少女--アリア・ドーライズが否定した。

 

「ここの寮長さんが言うにはゲーム三昧でいますわ。ただ、徹底的に引きこもっているらしく部屋の鍵を勝手に交換する程のようですわ」

「鍵まで!?」

「自宅警備員としては将来有望だな」

 

 ドーライズの説明に驚く田沼と件の少女の行動力に舌を巻く星丸。すると、廊下の向こうから金髪のツンツン頭と金色の瞳の中には太陽を象った模様が真ん中に入っているが、ボディビルダーも顔負けの筋肉モリモリマッチョマンの肉体が目に向いてしまう男性--鬼刃島(きばじま)V(ヴィナシウス)大我(たいが)が歩いてきた。

 小脇には、青年が担がれており、表情はどこか暗い。

 

「遅れてすまない」

「遅かったな大我」

「雷道を引き剥がすのに手間取ってしまった……儂の筋肉もまだまだ未熟じゃ」

 

 そう言いながら、鬼刃島は小脇に抱えていた男性を床に下ろした。引き締まった体躯と色味の薄い金髪、切れ長の鋭い目つきが特徴の美少年--雷道(らいどう)ジャンは暗い表情のまま、ポツリポツリと悲壮感溢れる声色で喋りだした。

 

「……うぅ……酷いんじゃねぇの……俺はここの美人な寮長さんをナンパしてたのに、引き離すなんてよ……」

「安心しろ。ジャン」

 

 悲しみに暮れる雷道に星丸は優しく肩に手を置き、まるで小さな子供に語りかけるように話しかけた。

 

「どうせ失敗してた」

「それが友にかける言葉かぁー!!」

 

 励ますどころか崖に突き落とした言動に雷道は怒りで右手に電気を纏った拳を外道(ほしまる)に放つも避けられる。

 

「安心しろ。俺もそこまで下衆な男じゃない」

「外道ではあるがな」

「もし、この部屋の主の説得に成功したら……知り合いの女性を紹介してやろう」

 

 説得するが田沼に余計なことを言われつつも、雷道に囁くと動きを止め、少し考えてから顔を上げた。

 

「……ふっ……俺に万事任せな親友(マイフレンド)

「……紹介できる女性なんているのですか?」

「あぁ、いるぞ。(おれ)達も知る女性だ。名前は高橋花子……己達が通うアストラ学園の教師の一人だ」

「その人物って、確か婚期を気にして生徒相手に単位を盾にして交際を迫っている人なんじゃ……」

「やはり外道じゃのう」

 

 掌を返して親友呼びする雷道。しかし、実態には気付かず田沼と鬼刃島から同情の視線を向けられるも気付いていない。

 

「俺の魔術を応用すれば簡単に……」

「すげぇ! すげぇけど犯罪一歩手前だ!!」

「一歩どころかオーバーしてっけど!? 平和の赤信号をブッチギリで無視してるけど!?」

 

 電気を応用し、電磁石の要領で鍵を開けようとする雷道。

 なお、普通に犯罪ですので、良い子も悪い子も絶対にマネしないでください。

 すると、雷道は自身の指に違和感を感じ始める。

 

「……ん? なんか……ミギャァアァァァ!?」

「な、なんだ!? どうした!?」

「な、なんか、突然激痛が……」

「まさか最新型の魔術封じの鍵か!? あれって十万ぐらいするハズだろ!?」

「む? ドアの隙間から紙が……」

 

 瞬間、雷道の指に激痛が駆け出した。

 突然の絶叫に驚き、狼狽えているとドアの隙間から紙が出てくる所を鬼刃島が拾うと文章が書かれていた。

 

『帰れ。さもなくば貴様達の名前でSNSのアカウントを作って炎上発言乱発させるぞ』

 

「なんか陰湿すぎる脅しがきた!?」

 

 明らかに社会的に抹殺する予告状めいた脅迫状に慌てる田沼。しかし、星丸は効果がないように見える。

 

「ふ、その程度の脅しで屈すると思うか! どうせ己達に対する周囲の人達の評価は社会的に死んでいるから問題ねぇ!! むしろ気持ちよく思う!!」

「「「お前と一緒にすんな!!」」」

 

 訂正。効果が無い以前の問題だった。

 

『なんだ文句あるのか! 文句あるんだな! ぶつけろよ! 嫌いじゃないからぶつけろみろよ! 己の肉体にお前達のいきり立つ文句(それ)をぶつけてこいよ!!』

『気持ち悪い言い方すんじゃねぇよ!!』

『ならば我が肉体にもぶつけてみるがいい!!』

『張り合うんじゃねぇよ!!』

『俺はどっちかと言うと男よりも女体に--』

『言わせねぇよ!! 俺一人じゃツッコミきれるか!!』

 

 部屋の中にいた件の少女はドアの向こう側に聞こえる声にほくそ笑み、安堵の表情を見せた。

 

「……ふふ、これでしばらく……ん?」

 

 ふと、部屋の中に気配を感じた。

 しかし、部屋の中には自身しかいないハズ……それなのに背中を撫でるかのような視線を感じ、ゆっくりと後ろを振り向いた。

 

「…………」

 

 そこには、暗い空間に浮かぶ二つの目が浮いていた。

 

 そんな恐怖に耐えられず、とある寮にかん高い悲鳴が響き渡ったのは必然だろう。

 

 

      ーー■□□■ーー

 

 

 暫くし、星丸達は件の少女が恐怖から部屋を飛び出し、助けを求めてくるも正体がクラスメイトだと知り、件の少女はさっきの行動を忘れる代わりに部屋に入れてもらい、座っている。

 

「……えーと……十六夜(いざよい)日美子(びびこ)さんでいいですわね?」

「……ああ……」

 

 ドーライズの質問に膝裏まで届きそうな艶のある長い黒髪に赤い縁の眼鏡を着けた日本人形のような白い肌、整った顔立ちのハズだが、眉間にシワを寄せた不機嫌な表情が台無しにしている少女--十六夜(いざよい)日美子(びびこ)が拗ねた様子で答えた。

 十六夜の視線の先には紺色がかった黒のボブカットに体型はやせ気味の少女--鹿島(かしま)京子(きょうこ)が正座していた。

 

「驚かせてすまない。父上からドアが閉まってたら天井から入るように教わってな……まさか一般常識ではないとはな……」

「そんな常識あってたまるか」

 

 どうやら、彼女があの怪奇現象の正体のようだ。申し訳なさそうな様子の鹿島に十六夜は不服な様子を見せる。

 

「えっと『クラス写真があるので出席して欲しいって先生が参加をお願いしてる』らしいだけど……」

「はん、私は参加しない」

「なんでですの?」

 

 田沼の言葉に十六夜は否定の意思を強くする。その様子にドーライズが質問する。

 

「信用できないからだ」

 

 断言する十六夜の瞳には、強い憎しみと怒りが宿っているのが見え、言葉を失う数人。

 

「人なんて簡単に裏切る。例え親しい間柄でも我が身かわいさなら、簡単に見捨てる。容易に裏切る……信じるに値なんて無いようなモノだ」

 

 口から放たれる言葉には棘がまとわりついており、強い拒絶が犇々(ひしひし)と伝わってくる。

 

「……お前らも教師に交換条件で言われてきたんだろ」

「……まぁ、そうだな……」

 

 向けられた視線に嘘をつく事は失礼だと感じた星丸達は正直に答えた。

 

「テロリスト認定されたくなかったら、呼んでこいと言われた」

「同級生数人を筋肉信者化させた責任で呼んでこい言われたぞ」

「暇だったから着いて来ましたの」

「帰る準備してたら巻き込まれた」

「ナンパしてたら巻き込まれた」

「……特に無いな」

「予想以上に酷すぎるだろ」

 

 予想以上にくだらなく、下手すれば危ない理由に十六夜は思わず呟いた。

 

「第一、己達はお前を裏切ったりしねぇよ」

「根拠が無いくせに言うな」

「あるに決まってる」

 

 否定する十六夜に星丸はドーライズに差し出されたお茶をノドに流し、その根拠を答えた。

 

「裏切る暇があったら、爆発魔法を極めたい」

「見捨てはせんよ。共に筋肉を鍛えようぞ!」

「そんなことより、来週ぐらいに俺とお茶をしない?」

「クソみたいな理由なのに説得力ありすぎだろ!! 納得したくないのにわかってしまうのがなんかやだ!!」

 

 思わず力強く叫んだ十六夜の言葉に田沼とドーライズは深く頷く。鹿島はわかっていないのか首をかしげていた。

 

「……はぁ……めんどくさいのに出会ったのが運の尽きか……わかったよ。クラス写真だけだからな」

 

 疲れた表情でクラス写真にする事を伝えると星丸は花が咲いたような笑みを見せた。

 

「おお! ありがとうな!」

「わかったわかった。わかったから、部屋から出ろ」

「心遣いに感謝するぞ」

「わかったから腕立て伏せやめろ。汗臭くなるだろ」

「今度、お茶をしようぜ」

「断る。早く帰れ……いつまで乙女の部屋にいやがる」

 

 手を掴んで握手する星丸を流し、腕立て伏せをする鬼刃島を急かし、雷道を流し、他の三人も部屋から出ていかせようとするが、最後まで残ろうと星丸達は抵抗する。

 

「早く出ろやテロリスト予備軍!! さっさと出ていけ!!」

 

 業を煮やし、部屋から星丸達を叩き出した十六夜は素早く窓に移動し、寮の前で解散して別れる星丸達を見てようやく一息ついた。

 

「……ふん……全く……騒がしい奴らだ」

 

 そう言いながら、ドーライズが勝手に入れたお茶を少し飲み、コップの中のお茶を見つめる。

 

「……もし……出会ったのが……って、なに考えてんだ私は! バグってるのかよ!」

 

 自分らしくない言葉に呆れながらベッドに倒れ、天井を見つめる。頭に過るのは騒がしいクラスメイトとクラス写真についてだった。

 

「……明日か……」

「悪いですが、中止ですよ」

 

 呟いた言葉に返したのは聞き覚えの無い男性の声だった。

 誰もいないハズなのに背筋が冷たくなり、十六夜は素早く飛び起きた。

 

「な!? お前はだれ--」

 

 瞬間、十六夜の言葉を夜のように黒い黒煙が遮った。黒煙は部屋中を包みこみ、煙が晴れたときには、十六夜と怪しい男の姿は消え、部屋には誰もいなくなった。

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