ポンコツ魔術の青春活劇   作:ハレル家

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 個人的に過去最大の文字数になりました……一万近くになったのは初めてですね……

 遅くなって申し訳ありませんが、どうぞ!!


二話:『筋肉』という名の負羅夫

 

 十六夜が目を覚ますと、周囲が暗闇に包まれていた。自身の経験から誘拐だと気付くと突然自身の頭上が明るくなる。

 眩しさに目を細めると目の前に人影が見え、慣れてくるとマジックショーで見かけるような服装を着た男性がいた。

 

「手荒なマネを申し訳ありませんレディ・イザヨイ」

「……ふざけた言い方をしなくていい」 

 

 男性は被っていた頭のシルクハットを手に取って謝罪すると、十六夜は不機嫌な表情で答えた。

 

「おやおや、その様子からして理解していると?」

「生憎と慣れてしまってるからな……お前達の目的は私の眼だろ」

「話が早くて助かります。私達の目的は……貴女の瞳でございます」

 

 おどけた様子のシルクハットの男性にイラついた十六夜が目的を話せと急かすとシルクハットの男性は十六夜を--正確には十六夜の両目を指差した。

 

「世界三大魔眼の一つ『シュレーディンガー』……我々が心から欲する力を持った瞳を是非、貸していただきたい」

「断る」

 

 シルクハットの男性の言葉に拒絶で返す十六夜。その表情には侮蔑が込められている。

 

「……理由を聞いても?」

「……はん……聞くまでもない。お前達の目的なんて全員同じだからな……帰らせてもらう」

 

 まるでどうしようもない人物を見るような目でシルクハットの男性を見ながら語り、慣れた調子で魔眼の能力を起動しようとする。

 

「……!?」

 

 しかし、能力が突然停止し、今まで無かった事態に十六夜は戸惑った。

 

「申し訳ありませんが、対策済みです……貴女にはこれから、我々の手足として動いて貰わなければいけませんからね」

 

 シルクハットの男性は十六夜の様子にほくそ笑み、礼儀正しく協力を促してきた。そして、十六夜は男性の手に握られていた道具に気付いた。

 

 ……魔眼封じ用の道具か……!!

 

「抗うのであれば、貴女のご家族に……言いたい事はわかりますね?」

「…………」

 

 逃げ道をふさがれ、熟孝する十六夜。

 目の前のシルクハットの男性の目的は自身を道具として扱い、目的を果たす……隙をつけば形勢逆転できるが相手は易々と簡単に見せず、逆に人質を取られた状態である。

 こんな瞳を持っても愛情を与えてくれる両親を見捨てたくない彼女は苦虫を潰した表情でゆっくりと口を開いた。

 

「……わかった。私は--」

「ボス!! 失礼します!!」

 

 実質的な降伏宣言を言おうとした瞬間、男性の後ろの扉から構成員らしき人物が現れ、シルクハットの男性に声をかけた。

 

「何事ですか? 騒がしいですよ」

「そ、それが……変な(やから)が外にいて交渉しに来たと……」

 

 男性の言葉に怪訝な表情を見せるシルクハットの男性。

 

「交渉だと?」

「はい。映像を繋げます」

 

 現場の映像を繋げ、壁に映す。そこには、灰色のローブとどこぞの星の戦争に登場する世界的に有名な大悪役の仮面を着けた男性がいた。最初はわからなかった十六夜だが、聞き覚えのある声から自身がテロリスト予備軍と呼んで罵倒した星丸がいた。

 

『おーい、聞こえるかー?』

 

 予想だにしない人物に言葉をなくす十六夜。そんな十六夜に気付かず星丸は続きを言う。

 

「何故、ここがわかって……」

『聞こえるかー? 聞こえなくても続けるぜ……今すぐに十六夜を解放しないと爆破するぞー』

 

 シルクハットの男性は居場所が知られた事に疑問を感じるも星丸の言葉に内心鼻で笑った。

 

 ……ご丁寧に忠告をするなんて、この人物は賢く無いようです……すぐに部下を向かわせて捕獲し、場所を探し出した方法を聞き出しましょうか……最も、この道具とは違って人道的ではありませんが……

 

 シルクハットの男性は十六夜を横目で一瞥し、星丸を可哀想なモノを見るような目で見つめる。

 

「ブラフです。無視しなさい……さて、それでは続きを--」

『カウントするぞ……じゅーう……きゅーう……』

 

 入ってきた部下にハンドサインを送って捕獲を命じると星丸はカウントを始めた。

 後は待つだけだと考え、シルクハットの男性は十六夜に聞けなかった返答を聞こうとする。

 しかし、シルクハットの男性は勘違いしていた。映像に映る件の男性を『可哀想なモノ』で判別するのは間違いだった。

 

『……ヒャア! ガマンできねぇ! 極星大爆発(アルマゲドン)!!』

 

 頭に『危険すぎて』を付けるべきだった。

 星丸の言葉にシルクハットの男性はおろか、十六夜も男性の部下も硬直していた。

 落ち着いて星丸の言葉を理解しようと動かし、思考を諦めた……その理由は星丸が口にした言葉にある。

 

 『極星大爆発(アルマゲドン)

 光属性白魔術に部類する数少ない攻撃魔術。

 キラキラと光る閃光と共に長い射程と高い威力の爆発が特徴だが、その威力は明らかにオーバーキルで爆風に巻き込まれるため近距離では使えず、消費魔力がとても大きいため1日1回撃つのが限界。

 

 オブラートにもお世辞にも包むことが出来ない広範囲の魔術に目を点にする三人だが、周囲が白く光輝いて本気だと理解した瞬間、ようやく起動した。

 

「……え……え!?」

「なっ!? 正気ですか!?」

 

 まさかの脅しではなかった魔術に慌てる三人だが、光は強く輝き始める。

 逃げ場がなく慌てる三人だが、十六夜の側で突然人影が現れ、十六夜にかけられていた拘束具を斬ると同時に担ぎ上げられ、部屋から飛び出した。シルクハットの男性と部下が十六夜がいない事に気付くと同時に周囲が光に包まれ、爆発音が響いた。

 

 

       --□■□--

 

 

 近い内に取り壊される小さなオフィス街のビル群にて、一ヶ所だけ強い爆発により崩壊した跡地を一人の青年が眺めていた。

 星丸陽平(爆破テロを起こした張本人)だ。

 

「……うんうん。いつ見ても見事な爆発だな……お、来た来た」

 

 自身の魔術によって小さなビルがあった場所を見て感慨深く頷く星丸。すると向こうから十六夜を担いで走る鹿島……ただし、頭部には中世貴族が身に付けてそうな目元を隠す仮面を装着している姿で近寄ってくる。

 見た感じ怪我してない十六夜を見て安心し、星丸は手を差し伸ばした。

 

「よ! 無事で何よ--」

「死ねぇ!!」

「--ぶげらっ!?」

 

 その隙を狙って十六夜が星丸の頭部目掛けて頭突きを食らわした。

 全身のバネを活かした渾身の頭突きを仮面越しとはいえマトモに食らった星丸は一瞬だけ視界が白黒に反転し、激痛に悶えた。

 

「……頭が……割れる……中々の頭突きじゃねぇか……嫌いじゃないぜ」

「割れてしまえ変態テロリスト! 普通に爆破させるヤツがいるか!! 変な覆面しやがって!! 鹿島が迫り来る爆発の余波を斬らなかったら終わってたわ!!」

 

 仮面を貫通してきた衝撃と痛みから頭を押さえる星丸に十六夜は感情をぶつけた。助けに来てくれた戸惑いと感謝はあるが、それ以上に彼の無茶苦茶な方法に対する怒りが大半を占めていたからだ。

 

「ふふ、ここにい……落ち着け、流石の(おれ)でも拳大の岩で殴られたら無事ですまない。理由があって爆破したんだ」

「……理由?」

 

 星丸の言葉に十六夜は疑問を浮かべ、拳大の岩を持っていた手を降ろした。

 

「別れる際に鹿島に頼んだんだよ。当日になってお前が約束を破る可能性があったから、その場合は引きずってでも連れて来てくれってな」

彗威突唄公倶(スイーツバイキング)という戦場を案内してくれると約束してくれた。他の女子と楽しみにしている」

 

 『まさか拐われたなんて思わなかったけどな』と星丸は苦笑する。意外に手回ししていた策が予想外の結果を生み出していた事に対する笑みを他所に何かが近付いてくる気配がした。

 

「貴様ァ……ふざけたマネを……」

 

 視線を向けるとシルクハットの男性が大勢の部下を引き連れて来た。しかし、服装は爆発の余波で所々がボロボロである。

 

「この極楽幻想教の教主である私に歯向かって無事だと思うなぁァアァァァ!!」

「思わねーよ。己は弱いからな、悪いが……」

 

 ドスが効いた大声で星丸達に吠えるシルクハットの男性--教主に対し、星丸は冷静にスマホのメッセージアプリを開いて教主達に見せるように向ける。

 

「……助っ人を頼んだ」

 

 『緊急案件! 助けに来るヤツは覆面被れ!』というメッセージと位置情報の画像が張られたスマホの画面を見せ、星丸の後ろから突如大きな人影が現れて突進してきた。突然の事に教主はギリギリ回避できたが、部下の一部は突進に巻き込まれた。

 突進の際に大量の砂煙が発生して見えないが徐々に晴れていき、姿が露になる。

 頭部はどこかの映画で見たことある……具体的に言うならば『夢の国シリーズで氷の力を持ってしまったヒロインによって意思を持った愉快な雪だるま』に似ているが、被り物のサイズが小さいのかストッキングを頭に被った芸人みたいにピチピチしてた。

 ピチピチの覆面に反して肉体は一言で『巨峰』であった。

 鍛え抜かれた筋肉は巨峰のように大きく、鋼よりも堅く、頭部の覆面にも負けない存在感を放っていた。

 要するに--

 

「なんかバイオハザードのタイラントみたいな化け物出てきたァァァァ!?」

 

 --未知との遭遇である。

 思わず叫んだ十六夜の言葉に星丸と鹿島の二人を除く全員の心が一致した。

 

「……あれは、その、ほら……アナ雪で有名な負羅夫(オラフ)だ」

「嘘つけ! あんなオラフがいてたまるか! 遺伝子実験の失敗で生まれてしまった悲しきクリーチャーの方がまだ納得したくないけどできるぞ!! てか、あの大きさからして鬼刃島のヤツじゃ--」

「いいや! あれは負羅夫(オラフ)だ! それ以上でもそれ以下でもない! マスコットキャラクターの負羅夫(オラフ)だ!!」

「アンデッドクリーチャーの間違いだろうが!!」

 

 星丸の苦しい言い訳にツッコミを入れる十六夜。その言葉に負羅夫(オラフ)もとい鬼刃島が反応する。

 

「オッス、ワシ、負羅夫(オラフ)! ギュウと堕鬼死滅弖(だきしめて)?」

「見た目からして、祟り殺されそうだなオイ!!」

 

 意外にもノリの良いリアクションにツッコむ十六夜。しかし、その隙を狙われ鬼刃島の首に攻撃的な魔術が被弾する。

 

「鬼刃島!?」

「はん! ナメたマネをするからだガキ……が……」

 

 マトモに当たった鬼刃島を心配する十六夜。被弾した鬼刃島を罵倒する教主の部下だが、煙が晴れると“無傷”の鬼刃島がいた。

 

「良き魔法だな! だが、儂の筋肉も負けてはおらんぞ! どうら、儂も一つ披露するとしようか! ウオオオ……『筋肉太陽(マッスルシャイン)』!」

 

 唖然とする教主の部下に対して鬼刃島は気合いを入れてボディビルのポージングと共に灼熱の光を放ち、周囲にいた部下を焼いていく。

 

「くそ! なんだあの肉達磨は! 全然歯がたッ……」

 

 戦車のごとく蹂躙していく鬼刃島に戸惑う部下の一人だが、突如紫電が走った瞬間にまるで糸の切れたマリオネットのごとく前のめりに倒れた。

 

気絶電撃(エレクトリカルアタック)……成敗!」

 

 パプアニューギニアの呪術師のような仮面を着けた雷道が電気を纏う拳を突きだした状態で構えていた……どうやら、高速の突きで部下の顎に当てて脳を揺らして気絶させたようだ。

 

「な!? こいつ、どこから……」

「……おいィ……お前らァ……十六夜ちゃんを誘拐したんだろォ……そうなんだロォ……」

「そ、それがどうした!」

 

 いきなり現れた雷道に戸惑う部下だが、雷道の威圧感ある言動と獲物を狙う狩人のような視線に圧される。

 仮面の迫力も相まって戸惑う部下……瞬間、仮面越しでわからないが雷道が力強く目を見開いた。

 

「つまり、尋問と称して十六夜ちゃんをあんな事やこんな事やチョメチョメして、さらに○○○や■■■な事をしたんだろうがァァァァァァァァァうらやまァァァァァァァァ天誅ゥゥゥゥゥ!!」

「こいつ意味不明なこギャアァァァァァ!?」

 

 確実にセクハラ発言で暴走しながら教主の部下達を一網打尽にする雷道。その様子に『あれからナンパ負け続けたから暴走してるな』と呑気に考える星丸、言葉の意味を理解しているのかそれとも怒りで顔を赤く染める十六夜、言葉の意味を理解していないのか疑問符を浮かべる鹿島。

 

「な、なんだこれは!? 沼!?」

「ハッハー引っかかったな! そこは俺が既にぬかるみにしておいたのさ!」

「テンションがキモいですわ」

「……あふん」

「さあ、戯れの時間ですよ我が『下僕』たち。そのうっとうしい小蝿の身と心を無邪気に荒らしなさい」

 

 虎を模した覆面を着けたドーライズの言葉と同時に暗闇が現れ、そこからライオンに似た生物が目の前の烏合の衆となった人達に勢いよくじゃれついた。

 

「ふざけんな! 銀魔術に太刀打ちできるかよ! このぬかるみも地味に面倒だ!」

「間違いなく地味にイラつくぜ!」

「地味なヤツから放たれた事だけあって地味に厄介だな!」

「地味地味地味地味、言うんじゃねーよコノヤロー!!」

 

 地味と言われてキレ気味に部下達を無力化していくアメコミ風な蜘蛛男の覆面を着けた田沼。方や怪力乱神な力の蹂躙、方や迅雷疾風な速さの殲滅、方や大地と獣の制圧で大勢いた教主の部下達が減っていく。

 

「形勢逆転だな……それで、歯向かったらなんだっけ?」

 

 ……バカな……こんなハズでは……

 

 信じたくない現実に戸惑う教主へ星丸は意地の悪い笑みを向ける。

 教主は悔しそうに顔を歪めるも何かを思い付き、口角を上げた。

 

「……ハハハ……確かにナメ過ぎたな……だが、その小娘を助けても意味は無いぞ」

「はぁ? 何言って……?」

「……めろ……やめろ……」

 

 突然の言葉に首を傾げる星丸だが、十六夜は何かに気付いたのか顔色を青く染める。

 

 ……狙い通り……神はまだ私を見捨てていない……あの小娘のトラウマを刺激させて魔眼を暴走させれば逆転できる……

 

 胸に黒い感情を抱きながら教主は言葉を続けようとし、その様子に十六夜は体が震え始め、足が支えきれず地面に崩れ落ちるように座り込み、彼女に刻まれた記憶が断片的に浮かび上がった。

 

 ……--仲が良かった親友や教師が自身を化け物を見るような目--……

 

 ……--根も葉もない噂や誹謗中傷の文字--……

 

 ……--多くの怪我人--……

 

 ……--血だらけの自分--……

 

「……やめろ……やめてくれ……!!」

「……ふふ、そいつはなァ! 中学のゴッ!?」

 

 魔眼が起動し始める様子に下卑た笑みの教主は続けようとするが、突如飛来した拳大の岩が頭部をえぐり込むかのように直撃した。

 激痛に悶え苦しむ教主に呆然の十六夜、視線を動かすとその近くで側に転がった石を拾って二投目に入ろうとする星丸(一投目の犯人)がいた。

 流石に同じ手は通用しないのか今度は避けた教主。岩を投げた犯人である星丸を睨み付けると、星丸は渋々言った。

 

「……他意はない」

「悪意しかねぇだろ!!」

 

 キレ気味に言う教主に対してどこ吹く風の様子の星丸。十六夜はポカンとしており、いつの間にか魔眼が沈静化していた。

 

「……というか、お前は勘違いしてるぞ」

「……なに?」

「人なんざ、生きてたら遅かれ早かれ問題の一つや二つ抱える。欠点が無い人間が存在しないと同じように問題にぶち当たった事が無い人間もいねぇよ」

 

 十六夜のトラウマを刺激させようとした教主に対し、星丸は異議を唱えた。

 ちらりと他に目を向ければ、教主の部下を沈静化したクラスメイトが星丸にピースサインを向けていた。

 

「その点を考えると己達のクラスなんてまさにそれだ。どいつもこいつも人柄や魔術に欠点ばかりの問題児集団(ポンコツども)だ」

 

 どこからか『お前に言われたくない』と言う野次が聞こえるも星丸は続ける。

 

「全員が不器用で、不恰好で、不細工で、不公平で、不合理で、不良で、不躾で、不完全で」

 

 杖を地面に力強く突き立てる。コンッ、という気持ちの良い音が周囲に響いた。

 

「故に強い……だからさ……」

 

 フラフラと座り込む十六夜に対して近寄り、まるで幼い子供を慰めるように優しく不器用ながら二回触れる。

 

「引きこもり一人が背負う宿命なんぞに潰れる程、(オレ)達はやわな問題児(ポンコツ)じゃねぇよ」

 

 ストン、という音が十六夜の中で鳴った。

 初めて、過去を気にせず触れようとする人物に言葉が出ない……いや、言葉が見つからない。周囲のクラスメイトは彼の人柄を理解しているのかやれやれと仕方なさそうにする人や友人であることを自慢に思って胸を張る人、星丸らしいと苦笑する人ばかりだが、誰一人嫌な表情を見せていない。

 ふと、十六夜は自身の頬に暖かい雫が流れているのに気付き、自身は泣いているのかと遅くながら理解した。

 その様子に星丸は少しだけ微笑み、杖を構えた。

 

■■■■■(ダブルリロード)

 

 その言葉と同時に杖からガション、という音と共に銃で使われそうな薬莢が二個ほど地面に金属音を奏でると同時に星丸の魔力が急激に跳ね上がった。

 

「な、なんだと!?」

「……大いなる輝きは産声を上げ、脆弱(ぜいじゃく)な光は四方(しほう)の闇を貫く……」

 

 先程の爆発魔術で確実に魔力切れのハズなのに瞬時に回復した事実に驚く教主を他所に星丸は詠唱を始める。

 

「晴天を超え、星天(せいてん)()く……目覚めるは祝福を(うた)う喝采の星団……永遠(とわ)に光る星々は一つ、また一つ旅人を導く灯となり、大いなる大火となる……」

 

 教主は脳裏に爆発魔術が浮かび上がり、止める為に説得し始める。

 

「ま、待て!? ここでそんな魔術を使えば、貴様の仲間全員が無事ですまないぞ!!」

「……まだ理解してねぇみたいだな……そんなお前にわかりやすく言ってやるよ」

 

 教主の言葉に自分達も巻き込まれると気付いた鬼刃島達(クラスメイト)。そんな様子に星丸は教主に指摘する。

 

「いつだって己は蛍のように輝き、蝶のように舞い、蜂のように刺し、そしてジバクアリのように派手に()ぜる! それが己の生き様だァー!!」

『『『そんな害虫滅んでしまえ!!』』』

 

 最大の敵は身内にいた。

 仲間ごと自分も爆発魔術を唱えようとしている星丸に鬼刃島達は止めようとするも詠唱は佳境に突入していた。

 

「廻れ、廻れ、廻れ、廻れ、廻れ、繰り返す毎に生は輪転し、魂は天を焦がす……」

「やめろォォォ!! マジでやめろォォォォォ!!」

「十六夜さん止めてくださいな!!」

 

 自爆テロを始めようとする問題児に絶叫する田沼。ドーライズは星丸の側にいた十六夜に説得するように頼み込んだ。

 

「……星丸……遠慮はいらねぇ! やっちまえ!!」

「違うそうじゃなくて!!」

「おう!! まかせとけ!!」

「まかされるな! 嫌だぁぁぁ! 女のコとデートもしたこと無いのにぃぃぃぃぃ!!」

 

 逆効果でヒートアップする様子に嘆くクラスメイト達。教主が無理矢理止めようと走り出したが、すでに遅すぎた。

 

「明日に煌めけ!! 輝ける燦々とした黄金と共にィィィィィィィ!!」

「やめろォォォォォォォォォォォ!!」

 

 星丸の高らかな詠唱と共に教主とクラスメイトの絶叫が廃墟のオフィス街に響き渡る。

 

極星大爆発(アルマゲドン)!!」

 

 瞬間、光に包み込まれて大きな爆発が周囲を巻き込んだ。

 

 

 --□■□■□--

 

 

「……あれ……?」

 

 もう、終わりだと諦めて目を閉じていた田沼。しかし、何時まで経っても爆発の余波が訪れない事に疑問が浮かび、恐る恐る目を開く。

 

「……なんとも……ない……」

 

 無傷である自身の体を見て、最初は自身の体が幽霊になってると思っていたが、頬を摘まんだ際に痛みがある事からその線は消えた。

 遅れて、他のクラスメイトも現状に気付いて驚いている。

 

「……不発したのか?」

「いえ、爆発の跡や周囲の瓦礫がなくなってる所から発動はしていますわ」

「じゃあ、どうして?」

「私がやった」

「十六夜さ、その目!?」

 

 まるで化かされたような感覚に首をかしげていると、十六夜が答えた。しかし、彼女の瞳は大きく変わっていた。

 

 例えるなら、それは虫の複眼だった。

 彼女の両目は黒目はおろか白目の部分を侵食するかのように正六角形を隙間なく並べたような模様で赤く染まっていた。

 その赤は綺麗な赤ではなく、腐った林檎のような()れ過ぎて黒が混ざった赤だった。

 まるで、蝿の複眼を彷彿させる瞳になっていた。

 

「お主、魔眼持ちであったか」

「……永遠のエネルギーを司り、内部はおろか外部のエネルギーに干渉して自由自在に操作できる『永究機関(マクスウェル)』……ありとあらゆる知識が与えられ、どんな状況や疑問、謎でも瞬時に「答え」を出せる『万理解明(ラプラス)』……そして……」

 

 その言葉と同時に右手に魔術を発生させるが、その魔術に全員が驚愕した。

 相反する共存不可と言われた炎と氷がテニスボールサイズの一つの球体として現れた……それも半分ずつではなく、コーヒーにミルクを中途半端に混ぜたような状態だったからだ。

 

「……存在しないまたは存在できない事象や生物、魔術に形を与える『存在返姿(シュレーディンガー)』……それが私の魔眼だ」

 

 『爆発は私の魔眼で絶対透過の魔術に形を与えて避けた』と言うが、話が入ってこない。

 そもそも、この世界で一つの属性で別の属性を持った魔術を使用することは出来ない……水から氷、地から鋼にする応用はあれど風から雷、炎から氷なんて自然界でも変換出来た事無いモノを変換するのは不可能である。

 無理にやれば尻から炎が出たり、両腕がブロッコリーになったり、最悪死ぬ事態となる。

 故に魔道具で変換する手段が主流だが、目の前の女性が持つ魔眼はそのルールすら覆した……絶対透過も透明になることはできても、そこに存在する限り通り抜ける事は不可能なのだ。

 

「……まぁ、己の爆発魔法が上だけどな!!」

「どこが!? 圧倒的な差で負けてるけど!!」

「確かに強いが、こっちには中学校を半壊させた輝かしい実績持ちだぜ!」

「恥ずかしい犯罪歴の間違いだろ! おい、鬼刃島。このバカを抑えろ……爆発魔法に巻き込んだお礼参りしぬぇと……」

「フッハハハ! その程度の暴力など己にとっては快感を与えてくれる御褒美にすぎ、あ、眼帯は掴むな! やめ、や、ヤメロォ!! それを引っ張ったまま離そうとするな!! いくらMの己でもそれは御褒美に入らなイッタイメガァー!?」

 

 星丸は謎の自信で反論するも完全な差に覆せない事を指摘され、さらに雷道が自爆テロに巻き込んだ怒りで星丸の眼帯を引っ張りゴムパッチンの要領でお仕置きを始める。

 

「やれやれ、長い夜でしたわ……十六夜さん?」

「……ふふ……ふ……ふ……ハハハははハハハは!!」

 

 いつの間にか夜空が明るくなってきた様子に呆れるドーライズ。すると、隣の十六夜は笑い始めた。

 

「い、十六夜さん?」

「急に笑ってどうした?」

 

 いきなり大きく笑い始めた十六夜に呆然とする星丸達。一頻り笑った十六夜はそんなクラスメイト達の様子に笑って答えた。

 

「なんでもねぇよ。バーカ」

 

 それは、太陽のように明るい笑顔だった。

 




 次からは文字数もそんなに多くなくなると思いますので、早くなると思います……今月中に半分以上はいきたいんや……(……ザワ…ザワ……)

 余談ですが、教主と部下達は十六夜が『衝撃だけ襲いかかる魔術』を施したので怪我はない代わりに衝撃によって気絶し、ロープで縛って警察に連絡して押し付けました。
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