報告はありますが、それは話の後で良いですね。今言う必要はありませんので……
それではどうぞ!
あの騒動から数ヶ月経った。
幸運にも星丸達が十六夜を救う為に行った行動は世間にバレず、無事にクラス写真を撮り終えた星丸達は十六夜をクラスに迎えた。
多少はギクシャクしたぎこちない感じだったが、十六夜自身が魔眼を説明し、星丸達の雰囲気によって問題なくクラスに馴染むこととなった。
そして、彼らは今--
「山! 川! オリエンテーションダァぁぁぁ!!」
『『イェエェエエェェェェェ!!』』
「うるせぇ! 叫ぶ暇があるなら魚でも釣ってこい!!」
--とある山に来ていた。
新しくなったクラスが馴染む為のオリエンテーションのような企画のようだが、これを聞いた担任は胃痛薬を常飲するようになったとかなってないとか……
ただ、一部を除いたクラスメイトのテンションに鬱陶しく思った十六夜が魚を釣ってくるように言い、バタバタと忙しなく動く星丸達の背を見送ってから、オリエンテーションの一環であるカレーを作り始めた。
「はぁ、全く……テンションだけは子供かよ。そういやアリアは玉ねぎ平気なのか?」
「平気だよー……日光が気持ちよ……」
「寝るなよ」
「あ、あの、十六夜さん」
テキパキとカレーを作りながらドーライズに注意していると左目を隠している跳ねた黒髪ショートの少女--アガサ・ユキムラが十六夜に声をかけた。
「えと、火をお願いできますか……?」
「おう。ついでに水もいるか?」
「あ、ありがとうございます……」
火が使える魔術が自分以外いないことを察した十六夜は魔眼による発火を起こすついでに水を鍋に入れる。
「本当に便利な魔眼よね」
その様子を見ていた背中まで伸ばしたゆるくウェーブの掛けた黒髪に、垂れ目気味の黒い瞳。その瞳の側にある泣き黒子がその人物の色気を出し、スタイルも非常に良いが健康的というよりも退廃的という言葉が似合うタイプの色白の女性--
「その眼に出来ない事はないんじゃないかしら?」
「いや、そうとは言えねぇんだよな……」
金剛の言葉に十六夜は喉に魚の骨が刺さったような表情になる。
「私の魔眼は出来ない事が多そうに見えるけど、実は出来ない事の方が多いんだよな」
「それは何故だ?」
「……私の魔眼“
そう言いながら、十六夜は自身のまでの大きさのどこか見たことある生物を四体ほど具現化させた。
具体的に言えば、引っこ抜かれて戦って食べられるで有名な生物だ。
その生物に食器を準備するように指示し、四体は素早く近くの机に食器を並べ始める。
「……それはどういう意味かしら?」
「例えば、私が誰も知らないドラゴンに形を与えるとするだろ? そうなった場合、魔力の塊とはいえドラゴンは具現化する」
十六夜が先程具現化させた四体の生物を指差しながら説明する。十六夜の言葉にユキムラと金剛は首を縦に頷く。
「でも、これが異世界の場合だとドラゴンは当たり前にいるから具現化は出来ないかもしれない」
「……はい。確か世界が融合する前の異世界はドラゴンが当たり前にいたって聞いたことがあります」
「もちろん。具現化できるかもしれないが、私はそこまで興味はない……なんか難しく話しちまったけど、要するに誰でもできる事は出来ないし、出来ない事は制限がかかって自由に出来ないんだよ」
具現化した四体の生物が十六夜に頼まれた事を終えた事を伝えると青白い粒子となって宙に霧散する。
それを確認した十六夜は要点だけをまとめて大雑把に結論を話した。
「思ってた以上にめんどくさ……もとい手間がかかる魔眼ね」
「だろ? その点を考えるなら私はアガサのような魔術が良かったと思うな」
「ぼふるっ!?」
まさかの指定にユキムラは驚き、大きく動揺した姿をみせる。
「あ、あたし!? いや……で、でも、毒だったり、速くなったり、気配がなくなる地味な……ヤツだよ?」
「充分だろ。私が出来るスピード関係の魔術は光速で相手に激突して自身の体を強制的に爆発させる魔術だぞ」
「……嫌な魔術ね……それ……」
唯一できるスピード関係の魔術が自爆特攻な事を言うと金剛がどこか呆れた視線を向ける。するとカレーの匂いに反応して寄って来た鹿島といつの間にか眠っていたドーライズが起きた。
「む。いつの間にかカレーが出来たぞ」
「美味しそうですわ」
「あのテロリスト予備軍と愉快な仲間はどこで道草くってるんだよ」
「しょうがないから、人数分は残しておきましょう」
「その方が良いと思う」
帰って来ない星丸達に呆れながらも十六夜達は一足早くカレーを堪能することにした。
しかし、彼女達は知らない。星丸達が大冒険を繰り広げていることに……
そして、十六夜自身は気にしてなかったが、ピクミンに似た生物に形を与えたが、
--■□■--
「……」
「釣れねぇなぁ……」
「ヒマー……四季ちゃん、ツチノコ狩りに行っても良くない?」
「良くねぇよ」
一方、意気揚々と十六夜達と別行動を取った星丸達は魚釣りに勤しむが成果はあまりよろしくなかった。
近くの草を弄る星丸、
魚が釣れない事を愚痴にする雷道、
別行動を取ろうとする茶髪と金髪が織り交ざった肩ほどのポニーテールで童顔気味だが、万人受けするタイプの美人であるもだらしない様子をみせる少女--
そして、釣竿を持って静かに魚を待つ田沼。
共に来ていた鬼刃島は別の場所で釣りをしているそうだ。
「……おい、何してんだ……?」
「草トラップ……ちなみに森の出入り口にも仕掛けておいたぜ!」
「ガキじゃないんだから……」
「
子供っぽい行動を取る星丸に呆れる雷道と金松。すると田沼の釣竿に変化が訪れる。
「お、来た!」
「まじか!!」
反応する釣竿に驚く雷道と金松。魚とのつばぜり合いに勝利した田沼が釣竿を大きく上げる。しかし、釣竿にかかった小魚を見て、田沼と金松のテンションが勢いよく下がった。
「……ちっさ……」
「得にならないわね」
「良いんだよ! 俺は地道に成果をあげるタイプだからな!」
「ぬ、そっちも釣れたようじゃな」
「鬼刃島、そっちは--」
言いたい放題言う二人に反論する田沼。すると後ろから別の場所で釣りをしていた鬼刃島が帰ってきた。成果を聞こうと星丸が振り返ると絶句した。
「うぬ。儂も釣れたぞ」
何故なら、鬼刃島が自身の身長と同じぐらい巨大な魚もとい怪魚を肩に担いでいたからだ。
「鬼刃島それヌシ! 川のヌシ!」
「地域の信仰に関わってそうだからリリースしろ!!」
『オノレ、コノ
「キェェェェェェ、喋ったァァァァ!?」
「あ、だったら先ずは見世物小屋で稼いで……」
「やめろ! 祟られるぞ!!」
あまりの大きさにビビる田沼と雷道、川にリリースするように言った直後に人語を話し始めた様子に驚く星丸。その様子に金の匂いがしたのか提案しようとする金松を田沼は却下した。
結局、怪魚を元の川に返し、十六夜達の方へ戻ることにした。
「もぉー、折角のチャンスだったのに逃がすなんて勿体無いわよ!」
「そうだそうだ! 折角のおもしろいモノを鬼刃島が獲ってきたっていうのによ!」
「……まぁ、色々言いたい事はあるけど、ひとまず置いとくとして……一つだけ質問したいんだけど……」
子供のようなブーイングをする金松と星丸の二人に田沼は呆れながら、自身が一番気になる事を口にした。
「……何かおかしくないか風景……」
田沼の気になっている事は自身の周囲の環境である。
ただの森ならば気にしないが、よく見るとパナナやヤシに似た木が生えており、さらに言うとウサギや猫を捕食しそうな大きさの植物も生えている事にも気付いた。
「日本の山ってこんなんだったっけ……アマゾンみたいな未開の大地みたくなってっけど……」
「あぁ、知らないのか? ここって元々十王の一人が実験場として使用していて、最近になって解放されたんだよ」
「初耳だけど!?」
星丸の口から衝撃の事実が飛び出て驚く田沼。
「……じゃあ……なに……我々は何も知らないまま、魔境に足を踏み入れてしまったというわけですか……」
「魔境は言い過ぎだろ。流石に危険生物は存在するハズねぇし、大丈夫だろ」
不安を見せる雷道に星丸は笑いながら問題ないと答えた。
「ほら、単に植物が気持ちでっかくなる程度で……」
ぺし【星丸が近くの木を軽く叩いた】
ドグシャァッ!!【突然、星丸の頭上に大きな何か落下した】
ズドォッ【落下したモノの重さに耐えきれず、うつ伏せの状態で勢いよく地面との熱いキスをする】
「星丸ゥゥゥゥゥゥゥ!?」
「何!? トゲ付き鉄球!?」
「いや……栗だコレ! イガグリ!」
突然、星丸の頭上に落下してきたバスケットボール大の大きなイガグリに動揺する田沼と金松。
「生きてるか星丸!」
「……眼帯が無かったら即死だった」
「守れてない上に守備範囲狭いだろ……」
「……む?」
頭部から出血してるが奇跡的にも軽傷で済んだ星丸に安堵する田沼。しかし、ホッとしたのもつかの間徐々に震動が大きくなっている事に鬼刃島が気付く。
「……え……え……地震……?」
大地を震わす震動に動揺する星丸達だが、自身の足元に黒くて丸い影が現れ始める。それは徐々に数を増やして小さかった影が大きくなっていく様子に全員が察して全速力で駆けていくと同時に先程の星丸の頭部に直撃した同じイガグリが大量に降ってきた。
『『『ワ"ァ"ア"ァ"ア"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!』』』
迫り来るイガグリに星丸達は命がけで走るも運悪く下り坂だったようで、木から落ちてきた大きなイガグリは運命の悪戯なのか……星丸達の後を転がりながら追い始める。
「ア"ァ"ァ"ァ"ァ"! クソはェ"ェ"ェ"ェ"!!」
「イガグリのトゲがスパイクの役割をしてやがる!!」
方や軽快にバウンドしながら、方や鋭いトゲによる加速しながら、自身の後ろから轟音を鳴らしながら迫り来るのは生きた心地がしなかった。
「……はぁ……はぁ……」
「……ヴェアァ……」
「……ふぅ……ゲホッゲホッ……」
「……ぜぇ……ぜぇ……」
「……大丈夫か……お主ら……」
なんとか振り切り、落ち着いて呼吸を整えようとする星丸達。だが、何か来る正体不明の恐怖からうまくできない。
「……星丸。早急に山を下りるぞ」
田沼が星丸に提案する。その言葉に星丸と同じように周りも同意する。
「俺達は散策に来たのであって、大スペクタルアドベンチャーしに来たんじゃないんだ」
「そうだな。早く帰るぞ」
そう言って立ち上がる星丸だが、大きな震動が起こり始めた。
「うわ!?」
「ま、また地震!?」
震動の強さから立っていられなくなって尻餅をつく金松と雷道。
「……ぬ……この震動、何かおかしくはないか?」
「そ、そういや、地震と少し違うような……」
ふと、震動に違和感を覚える鬼刃島に田沼が同意する。
「……ん?」
ふと、金松が自身の後ろが気になり始め、振り向いた。
そして、後悔した。
「ギャアァァァァァァ!?」
女性としてどうかと思う表情で悲鳴を叫ぶ彼女に反応して振り向く四人はすぐに気付いた……いな、気付かざる得なかった。
それは、一言で“巨峰”であった。
山のように大きな体をゆっくりと動かす様子は格上の刻み込み、遠目で見ればタケノコのような体に黒曜石のような黒く頑強な肌に大きさに比例する厚くて大きな四肢、全てを見透かすような瞳、そして……頭部に生えた一輪の花。
そう、岩ピクミンに似た巨大生物がそこにいた。
『『『何かデカイの出たァァァァ!?』』』
あまりの大きさに驚く星丸達。
余談ではあるがこの生物の正式名称は『クロタケノコイワピクミン』であり、十王会談でピクミンをプレイした十王の一人がピクミンを気に入ったあまりに創り出した逸話があるが、星丸達にとっては知るよしもない。
「さっきの震動はコイツが移動した余波か!!」
「いやまて! 何かくる……ッ!!」
地震の正体が目の前の巨大生物が原因だった事に気付く星丸だが、鬼刃島が別の震動を察知し、後ろを振り向いた先にソイツは現れた。
それは、一言で“大樹”だった。
干魃した地面のような乾いた木の肌がその生物が永く生きた事を表し、かつて地球の古き時代で大空の下で大地を闊歩していた恐竜の犬のように進む姿は竜のように威厳ある姿であり、その視線は目の前の敵を映していた。
そう、ヨッシーに似た巨大生物がそこにいた。
『『『増えたァァァァぁぁァァァァ!?』』』
またも余談ではあるが、正式名称は『ムンチャクンパスヨシザウルス』で竜ではなく、イグアナの仲間である。
これも十王会談でヨッシーストーリーをプレイした十王の一人がヨッシーを気に入ったあまりに創り出した逸話があるが、星丸達にとっては知るよしもない。
そして、ピクミンを作った十王と殴り合いの喧嘩が勃発したことも知る必要がない。
対峙する二匹の巨大生物。瞬間、二匹はその巨躯から考えられないスピードでぶつかり合った。
「付き合いきれるか!! 今の内に下山するぞ!!」
「場所はこっちだ!!」
あまりの衝撃に吹き飛ばされるもすぐに体勢を整えた星丸達は急いで二匹から離れる為に無我夢中で走った。
息が乱れ始め、体が限界であるも鞭を打ちながら走っていると目の前に
「……お……ッ!! 出口だ!!」
「本当に出口だよな? 山の怪物が化けてないよな?」
「どこのホラー映画ですか!?」
縁起悪い事を言いながらも一刻も早く森を出たい星丸達。その出入り口は幻想ではなく本物だった。
「よし! 一気に走り抜ッ--」
星丸が言おうとした瞬間、何かに足を取られる感覚に襲われる。
そのまま前に転ぶ最中に足を取った正体を見るために目線を向けると、自身がよく知るモノだった。
……己が仕掛けた草トラップやん……
まさに自業自得。
直後、山に汚い高音の悲鳴が響いた。
「……遅いなアイツら……」
「どこで道草食ってるんだか……全く……」
奇跡的に星丸達が生還したのは十六夜達が下山してから五時間後のことであった。
それでは報告です。
後は軽いと言いながら、実は五千文字ぐらい書いてるんですよね……おもしろくしようと考えてたら、いつの間にか膨れ上がってて……
あと、この調子だと物語が今年中に終われないので、少しばかり急ぎます。
以上です! それではメリークリスマ……え? 昨日だったの?