銀魂風に書こうと頑張ったけど無理でした……やっぱり書くのは難しいですね……
夕方。
美術室の騒動から十六夜とユキムラ、そして騒動の中心だった金剛は美術室から離れ、アストラ学園の近くにある喫茶店へ場所を移動した。
喫茶店の内装は洋風だが派手ではなくシックな感じで、老若男女問わずに受け入れる雰囲気が来店者を出迎えてくれる。
「……え、えっと……始めに聞きますね……」
重い雰囲気に耐えられず、ユキムラが喋った。
「……金剛さんも……魔眼持ちなんですね……」
「…………………………そうよ……………」
ユキムラの言葉に金剛は躊躇って答えるが、金剛の喋り方が変わった事に二人は目を点にする。
「な、なんか……」
「いつものセクシーキャラはどうしたんだよ。セクシーコマンドー金剛」
「一昔前のギャグ漫画みたいな呼び方やめてくれないかしら……練習したのよ……こんなつっけんどんな態度じゃ嫌われるからって思って……」
重いため息を吐く金剛にユキムラは話しにくそうにするが、十六夜はユキムラと違って気にすることなく話しかけた。
「ふーん。参考にしたモノとかあるのか?」
「え、そうね……私の好きな映画のキャラからだけど……」
「……それって、どんな映画なんですか?」
「……私達が小学生だった頃に流行った映画よ。古代遺跡に眠る宝を巡って女冒険家が謎の組織と戦うヤツ……あんな女性に憧れてたのだけど……」
「……金剛さん……」
また重い雰囲気が流れ始め、話しにくくなる事に十六夜は歯痒い思いを持ち始める。
「お待たせしましたー! 地獄曼荼羅・
「ちょ、おま、こんなの頼んでねぇぞ!?」
突然、山と思わんばかりの巨大なスイーツを乗せたパフェが自分達の机に運び込まれ、十六夜は注文してない事を言おうとして、店員の顔を見た。
「四季さんのオススメですのよ?」
しかし、店員の顔は美術室で石像になっているハズのクラスメイトだった。まさかの人物に十六夜はおろかユキムラと金剛も驚愕の表情となる。
「はぁ!? お前ら、石化してたんじゃないのか!?」
「ふふふ、四季ちゃんは不滅なのだー……まぁそれは冗談で、本当は鬼刃島の後ろにドーライズちゃんと一緒に隠れてたのさ!」
「注文はあるでしょうか?」
どうやら、大きな体を持つ鬼刃島の後ろに隠れた事で石化を
「となると、
「時間はかかるようですが、はしゃぎすぎた罰としてあの方達は反省すればいいですわ」
「それよりもこんな事めったにないから、四季ちゃんは女子会を提案するねー! 店長、休憩入りまーす!」
グイグイと十六夜達と同じ席に座り、パフェのスイーツを取り分け始める金松。ドーライズも座る時には全員に配り終わっていた。
「ねーねー、好きな人とかいる?」
「いきなりブッコミすぎだろ」
「四季ちゃんはー……四季ちゃんはー……」
「聞けよ」
十六夜が諌めるもゴーイングマイウェイな金松は知らぬ存じぬで語り始める。
「そーだなー。賢くて私にいつもアドバイスをくれてー、私のそばにずっと寄り添ってくれるような」
「あら、意外とロマンチックですわね」
意外な人物像に少し驚く十六夜達。金にがめついクラスメイトの一面に少しだけ見直す。
「そんな、脳だけの人」
「脳だけの人!?」
前言撤回。どうやら、マトモじゃなかった。
「それは人じゃないですわ!」
「え、そう?」
「それアリなら私は五条悟と付き合いたい」
「十六夜さん、それ別作品です」
そこを口火に騒々しくも賑やかな会話が始まった。どこかで『女三人寄れば姦しい』と言うが、五人でも充分である。すると、金剛が席から立ち上がった。
「……ありがとう。もういいわよ」
その言葉に騒々しくも賑やかな会話が途絶え、また重い雰囲気が流れ始める。
「気を遣わせたなら謝るわ……私は大丈夫だから」
「大丈夫って……気を遣わせたつもりは……」
「いいの。慣れてるから」
ユキムラの言葉に微笑で答える金剛。しかし、その表情にはどこか悲しさが混じっていた。
「そんなつもりないですわよ」
「そーそー。星丸達を別に気にする必要は……」
「……それでもよ……」
ドーライズと金松が気にしないように言うも、金剛は答えを変えない。
「……で、でも……」
「それ以上は言ってやるな」
続けて言おうとしたユキムラを十六夜が止める。
「い、十六夜さん……だけど……」
「こういう痛みは、魔眼持ちにしかわからねぇ部分があるんだよ」
そう呟きながら自身が身に付けている魔眼を封じる眼鏡を指で軽く叩く。金剛は十六夜の言葉に心当たりがあるのか沈痛な表情になる。
「……金剛……私も魔眼持ちだから気持ちはわかるけどよ……あの馬鹿どもを信じてみたらどうだ?」
「……十六夜さん?」
「……」
ゆっくりと話す十六夜。十六夜の言葉にユキムラはどこか実感が籠った言葉に首をかしげ、金剛は静かに店の出入り口に足を運び始めた。
「少なくとも、お前が会ったヤツらよりもいい性格してると思うぜ?」
その言葉を背に受けた金剛は返事を返す事なく店から出ていった。
ーー□■□ーー
翌日。学園に登校する十六夜が学園の玄関口でユキムラとドーライズに出会う。
「……きっつ……」
しかし、表情は良くなく、ユキムラとドーライズも十六夜と同じようにどこか具合が悪そうに見える。
「……まさか、地獄曼荼羅・
「……うにゃあ……」
まだ息が甘く感じて表情を曇らせるユキムラとドーライズ。
なお、件のパフェを持ってきた人物はこう語った。
『ウチは基本的に、余裕を持ってたいの! お金の余裕は心の余裕、財政状況が緊迫してなければ自然と人とのコミュニケーションにも余裕が生まれる! それが四季ちゃん流の考え! ……だ〜か〜らぁ〜! 四季ちゃんはお金を稼ぐ! 子供のうちはこの超絶怒涛の可愛さと若さで! 大人になったら安定した職と大人っぽい色気を持った天元突破の可愛さで! ……とゆーわけで、奢って♡』
その後、四人が協力して時間ギリギリに食べ終えたが、その日に体重計に乗った時は悲鳴をあげたそうだ。
「……今度会ったら、卍固めしてやる」
「オーッス! 今日も可愛さ天元突破なキューティクルガール四季ちゃんの登じょアァァァァァァ!?」
小さく呟いた十六夜に金松が現れ、十六夜は有言実行と言わんばかりに金松に卍固めを行った。
ふと、ユキムラは教室の前でウロウロする金剛を見つけた。
「あ、金剛さん」
ユキムラの声に大きく反応し、ワタワタと慌てる金剛。
「……入らないのですか?」
「……その……」
「……大丈夫ですわよ。彼らは貴女が会った人達とは個性が違いますわ」
「……でも……」
「……まだるっこい……」
理由を着けて入ろうとしない金剛に苛立ちを隠さない十六夜は金剛のシャツの襟を掴み、教室の扉に手をかけた。
「みなどもー!! 金剛恵那様のお通りダァァァ!!」
「ちょ、十六夜やめっ!」
扉を勢いよく開けながら、大声で金剛を教室内に引きずり込んだ。
「あ、その……」
一斉に向けられる視線に金剛は言葉を失う。そんな様子に星丸が挨拶を投げてきた。
「おはよう。昨日はゴメンなゴーゴンさん」
「……ゴーゴン?」
自身の事なのか、ユニークな名で呼んでくる星丸に首をかしげる金剛。そんな金剛に星丸は頼まれてもないが、あだ名の解説を始めた。
「石化が解けた後に己達で考えたあだ名だ……強いしカッコ良くて、ピッタリだろ?」
「儂の筋肉も無力じゃッたからのう……手も足も出んかったぞ」
「ちなみに、ゴーゴンは絶世の美女だった所から俺が名付けたんだぜ!」
「そうそう、十六夜達にも聞きたいんだけど……誰のポーズが一番良かった? 個人的には杖を構えた己のポーズが一番だと……」
金剛に話しかける星丸達。まるで石像にされた事を覚えてないように話しかけてくる姿に金剛は謎の疑問とーー
「アンタ達、何、考えてんの?」
ーー怒りを感じた。
自身の目のせいで石にされた事を気にしない様子に金剛は問いかけた。自身の経験からあり得ない現状を認めたくないようだ。
「ん? 何が?」
「……アンタ達……昨日の事を忘れたとも言うつもり!!」
「昨日と言えば……」
首をかしげる星丸達に自身がした事を思い出させようとする金剛。その言葉に星丸達はしばらく考え、答えを口にした。
「学園の裏山の一部を
「学園長の銅像を筋トレに利用した事かの?」
「クラスメイトの母親にナンパした事か?」
「お前らそんな事やってたのかよ……美術室の石膏を一つ壊した事に決まってるだろ」
「違うわよ! アンタ達を石化した事に決まって……おいそこ! 『あぁ、あったなそんな事』みたいな表情で納得するな!!」
思いっきり的外れな答えに金剛が叫ぶとハッとした表情になる。石像になった全員が気にしてない事に謎の苛立ちを持ち始める。
「なんなのよアンタ達! なんで普通でいられるのよ!? 石になる感覚を思い出してみなさいよ! 私のこの眼はメガネが外れただけで石化させるような魔眼なの! 怖がるのが普通でしょ!?」
苛立ちながら星丸達に自身の魔眼について叫ぶ金剛。しかし、その叫びはどこか悲痛な声に聞こえる。
そんな様子を理解してないのか星丸達は未だに首をかしげる。
「……怖がる事なんかコレって?」
「驚く事だが……怖がる必要はないと思うの」
「美女に石にされるのは、我々の業界ではご褒美です!!」
「聞いた事ねぇし、お前と一緒にすんな! ……まぁ、元はと言えばボケた星丸達を蹴った俺も悪いけど……」
「己はボケてねぇぞ田沼」
「なお悪いわ! ……それに、アンタは巻き込まれた側であって、悪いことしてないだろ」
各々に話し始める星丸達。随所にふざけているとしか思えない言葉もあるが、彼らの声色は真面目だった。そして田沼が金剛に指摘する。
「……は、ハァ!? ふ、普通に考えたら魔眼でアンタ達を石にするのは、わ、悪いことでしょうが!」
まさかの言葉に唖然し、反論する金剛。彼女の脳裏には呪縛とも言える過去の記憶が通りすぎる。
……--『ぼ、ぼくのからだが石になっていく!?』『離れろ! コイツは化物だ!』--……
……--『お前が金剛? 石にするとか使えるじゃん』『俺達と連れようぜ? ま、帰さないけど……ハハハハハハ!』--……
……--『申し訳ありません』『今後はこのような事がないように言って聞かせますのでどうか……』--……
……--『ごめんなさい……ごめんなさい……』--……
まるで蛇のように自身を締め付け、苦しめる過去の記憶に金剛は泣きながら許しをこう。自分がこの眼を持ったせいで起きてしまった悲劇に彼女は眼を抑える。
……誰もが私を人じゃなく化物として見る……両親が責められる……誰も私を……なら……いっそのこと……
眼鏡を掴み、クラスメイト全員を石にすれば自身を怖がると思い、魔眼を開放する金剛。
「それはダメじゃよ」
しかし、いつの間にか鬼刃島が目の前にいた。金剛は急いで魔眼を止めようとするも眼鏡を持った手ごと鬼刃島は掴んで離さない。
「は、離して! 手を離しなさいよ!! 早く私から離れなさいよ!! じゃないとアンタは石に……石……に……い……しに……え……?」
自分から離れるように言う金剛だったが、一向に石にならず、ずっと金剛の魔眼を見る鬼刃島。そして、金剛は金色に輝く鬼刃島の瞳に太陽を象った模様が描かれている事に気付いた。
「ま、魔眼!?」
「えぇ!? うっそぉ!?」
「鬼刃島、魔眼持ちなの!?」
「え? お前ら知らなかったの?」
金剛は鬼刃島の魔眼に驚き、クラスメイト全員はまさかの人物に魔眼があった事に驚愕した。しかし、星丸だけは知っていたかのような口ぶりで答える。
「お前は知ってたのかよ」
「まぁ、騒動してる内に教えてくれてな……鬼刃島の魔眼は“明星の魔眼”と言って、能力は『生成される魔力による生命力の増強』と『一部の魔術に対する強い抵抗力』の二点だ」
「そういや……」
星丸の説明に十六夜は以前、自身を助けに来た際に攻撃を受けても無傷だった姿を思い出した。
「……離して……お願いだから……私は……アンタ達を石にしたのよ……許されるハズなんて……」
「いいや、許す許さない以前の問題じゃ。お主は勘違いしとるよ」
弱々しく言う金剛にある部分を指摘する鬼刃島。心当たりがなく、鬼刃島の瞳を見る金剛。
「だってお主、悪いこと何もして無いじゃろ」
蛇が砕け散った。
ガラスが割れるような音と共に自身を締め付けていた記憶が割れる音が響き、彼女を苦しめる要因が消えた。
呆然とする彼女だが、初めて自身を許された事に少しずつ理解し、瞳から温かい雫がこぼれ始める。
「う、あ、ううぅ、ば、バカよ、本当のバカよアンタたちぃ……う、うあぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
抑えていた感情が決壊し、人前であろうと関係なく泣き始める金剛。十六夜は初めて彼女の素が出たように見えた。
「え、ちょ、ど、どどどどうしたゴーゴンさん!? 己達は変な事言ったか!?」
「し、知らぬぞ!? 田沼よ。儂は変な事言ったか?」
「……少なくとも、言ってはないな」
「腹を切ってお詫び致します」
「
「自分は……女を泣かせたクズです……ブヒィ!」
「おい誰かコイツを止めろォ!」
まさかの展開に戸惑う星丸達。泣き崩れる金剛。その様子に互いの顔を見合わせ、微笑んで騒動を止める女子達。
少なくとも、この場に不快な思いは無かった。
ーー■□■ーー
後日談。というよりは今回のエピローグ。
「ほう、中々おもしろそうな映画じゃのう」
「すごいかっこいいのよ! 男を手玉に取りながらすっごいアクションで敵をドンドン倒していくシーンなんてスカッとするもの!」
「ゴーゴンさんなら、演技できそうではないですの」
「……や、やめてよ。今更あんな演技できる訳無いじゃないの。う、うぅぅぅっ」
好きな映画について語り合う鬼刃島と金剛、演技してた頃を弄るドーライズに金剛は恥ずかしそうに答える。
「……お前が人助けするなんて、変なモノでも食べたか?」
「殴ってやろうか? そんなんじゃねぇよ……互いにめんどくさいモンを抱えた同士のよしみだ……それに……」
軽口を言う星丸に十六夜も返す。笑いながら明るく鬼刃島と話す金剛を見ていた十六夜は星丸を見る。
「……それに……なんだよ?」
「……なんでもねぇよ……」
自身を見つめる十六夜に首をかしげる星丸。その様子に十六夜は少し笑い、金剛を見る。
「……ん?」
ふと、鬼刃島を見る金剛の視線に熱があることに気付く。それはまるで……
「…………マジかよ……」
思わず呟いた感想は誰にも聞こえず、そのまま消えていった。
次回、最終話!