ポンコツ魔術の青春活劇   作:ハレル家

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 これにて、『ポンコツ魔術の青春活劇』はお仕舞いとさせて頂きます。

 最後まで、お読み頂ければ幸いでございます。


最終話:この青春活劇に祝福を!!

 六月。

 金剛の抱えていた闇を解決してから一ヶ月近く経った。その間に様々な出来事が日常のようにやって来て騒々しい日々が起こった。

 そして、夏休み前のテストが終わり、何時もより早く下校した星丸と十六夜はとある河原の土手を歩いていた。

 

「やっと終わったなぁー」

「たく、こっちは元引きこもりだぞ……問題簡単にしろよ」

 

 テストに対しての愚痴を言い合う二人。知り合って一ヶ月とは思えない仲の良さをみせる。

 

「夏休み、皆で海に行かねぇか?」

「気が早いだろ。まだ一ヶ月も先だろ」

「ち、ち、ち……甘いな十六夜」

 

 星丸の提案に十六夜は呆れる。そんな様子の十六夜を星丸は人差し指を立てて左右に動かして否定する。

 

「こういうのは、早めに計画を建てときゃ良いんだよ」

「いつもそんな感じにしとけよな……ん?」

 

 遊ぶ事に関してはマジメになる星丸に呆れて空を見上げる十六夜。ふと、空に何かを見つけた。

 

「どうした?」

「いや、あれ……」

 

 疑問から声を投げ掛ける星丸に十六夜は指を指す。その何かは徐々に大きく、こちらに向かって落ちてきていた。

 

「ちょ、こっちに落ちてきてるぞ!!」

「くっ……!」

 

 十六夜は急いで魔眼を開放し、空気にゴムのような柔軟性を付与してクッションがわりにその何かを受け止める。

 

「……は?」

「……え?」

 

 受け止めたものをうまくキャッチし、その正体を見て、二人は愕然とした。

 

「あ、赤ん坊!?」

 

 その何かは--スヤスヤと健やかに眠る紺色のくせ毛が特徴的な赤ん坊だった。

 

 

     --□■□--

 

 

「これが、空から落ちてきた赤ん坊?」

 

 星丸は急いでクラス全員に緊急連絡を送り、教室に戻るとクラスメイト全員が待っていた。その際に赤ん坊を見たクラスメイトが騒いでちょっとした騒動(ハプニング)に発展するのだが、割愛するとしよう。

 今は件の赤ん坊を囲んで見守っていた。

 

「眠ってるな……」

「……手が、ぷにぷにです」

「スンスン……朗らかな香りですわね」

「こらこら、あまり触ると起きるわよ」

「V字開脚!」

「やめなさい」

「アウチ!!」

 

 恐る恐る赤ん坊に見たり触れたり嗅いだりする田沼とユキムラ、ドーライズの三人。その様子に小さく注意するゴーゴンこと金剛。

 金松はふざけすぎて金剛に力強いチョップを脳天に食らった。

 

「……ゴーゴンちゃん加減しなくなったね……ううん、でも分かってる。ゴーゴンちゃんは本当は優しいもんネ……四季ちゃん分かってるよ……」

「DVの現実を受け入れない若妻のフリはやめなさい。これはただの純然たるバイオレンスよ」

「そこは謝りながらそっと抱きしめるところだよ!  ねぇ!  アナタ!!」

「眉間!」

「回避!」

「……変わったのう……」

 

 おふざけする金松に(物理的な意味で)躊躇なくツッコミを入れる金剛の姿に鬼刃島は温かい眼で見守っている。

 

「……あの、本当に空から?」

「あぁ、(おれ)と十六夜が証人だ」

「ほ、ほんとうか? 二人の隠し子じゃなくて?」

「ひっぱたくぞ」

 

 ユキムラと雷道の疑問に答える星丸。扱いの差が出ているのは割愛した騒動を起こした本人に対する態度だけ言っておこう。

 

「のう、十六夜……お主の魔眼でこの子の過去を遡って見る魔術を再現して親が誰か見れないのかのう?」

「……試したが、無駄(・・)だった」

 

 鬼刃島の疑問に十六夜は答えるが、違和感のある答え方に鬼刃島は首をかしげた。

 

「……無駄? 無理ではないのか?」

「一応やってみたんだが……黒く塗り潰されてて、何も見えなかった」

「ふむ、変わった事じゃのう」

 

 ありえない現象に頭を悩ます十六夜に対し、興味深い反応をみせる鬼刃島。過去が見えるハズなのに見れない現象に考察していると、赤ん坊に動きがあった。

 

「あ、起きましたわ」

 

 ドーライズの言葉に全員が赤ん坊に視線を向ける。赤ん坊は右と左を見てから、ゆっくりと目尻に涙を溜めて、大きな声で泣き始める。

 

「え、エヴ……うぇえぇぇぇぇぇ!!」

 

 予想よりも大きな声に全員が慌て始める。

 

「な、泣いた!? どうしたらいい!?」

「……え、えっと、よ、よしよし……?」

 

 初めての赤ん坊に慌てる田沼とユキムラ。

 

「どうしよ! 俺のミルクを与えた方がいい?」

「出ないしやめなさい!」

「よし、儂が高い高いをしよう!」

「やめて! 校舎を突き抜けるから!」

「しょーがない! 特別価格で四季ちゃんのぼにゅぐる!?」

「いないいない、ばぁ~……ダメですわ……」

 

 慌てすぎて変な事を言い出す雷道、善意から泣き止まそうとする鬼刃島、完全にふざけた金松、三者三様な対応で返す金剛。

 しかし、赤ん坊は一向に泣き止む気配がない。

 

「お前、どうしたんだよ。教えてみろって……ん?」

「……ヒグ……グスッ」

 

 赤ん坊を抱き、念の為に首を支えながらあやす星丸。十六夜が横から涙を優しく拭き取ると不思議な事に赤ん坊は泣き止んだ。

 

「な、泣き止みました……」

「あんなにグズってたのに……」

「や、やっぱり隠し子なのか!?」

「なわけあるか! あ、よしよし大丈夫だからな」

 

 好き勝手言うクラスメイトに文句を言おうとして、赤ん坊が泣きそうになって急いであやす星丸。

 

「どこから来たんだお前は……たかいたかーい」

「きゃきゃ、うーぷー!」

 

 あやすついでに赤ん坊を上に持ち上げる星丸。赤ん坊はキャッキャッと喜んでいる。

 そして、星丸の頭上に黒く丸い孔(・・・・・)が開いた。

 

「……え……ぶわぁ!?」

 

 突然の孔に驚く星丸に孔から大量の水が現れ、星丸をずぶ濡れにする。幸いにも孔は大きくなかったので赤ん坊は濡れていない。

 

「ちょ、星丸大丈夫かよ!」

「あぁ、なんとかな……この子魔術が使えるなんて驚い--」

 

 濡れた星丸に駆け寄る十六夜。星丸は自身が平気だと伝えようとした瞬間、自身の足元に大木な黒い孔が開き、駆け寄った十六夜を巻き込んで孔の中に落ちていった。

 赤ん坊を抱いた星丸と十六夜が孔の中へ落ちていき、孔は瞬時に消えた。

 

「……え?」

「ほ、星丸さん!? 十六夜さん!?」

「き、消えた!? どこに行ったの!?」

「急いで探すのじゃ!」

 

 突然の事に呆然とする鬼刃島達だが、すぐに事態を把握して消えていった三人を探す為に部屋から飛び出していった。

 

 

 --□■□--

 

 

 一方、黒い孔が空間から現れ、赤ん坊を抱いた星丸と十六夜が中から出てくると同時に孔は消えていった。

 

「ここは……あの時の河原か?」

「とりあえず連絡を……あ、こら!?」

 

 星丸は周りを見渡し、件の赤ん坊を受け止めた場所に移動したと理解した。十六夜は連絡をクラスメイトに入れようとしたら、赤ん坊に携帯を奪われる。

 

「返せって、私の携帯!」

「……うぅ……」

「落ち着けよ十六夜。赤ん坊に怒っても意味ないだろ」

「……でもよ……」

「ま、寝転がって待とうぜ。場所は遠くないだろ」

 

 赤ん坊に携帯を離すように言うも赤ん坊は頑なに離そうとしない。星丸は十六夜を宥め、河原の土手に寝転がった。星丸の言葉に一理あったのか十六夜も渋々地面に寝転がった。

 

「……こうやって空を見上げるのは、久々だな……」

「……まぁ、色々あったからな……」

 

 赤ん坊を挟んで会話する星丸と十六夜。二人はこの一ヶ月であった出来事を振り返った。

 

「金松が甘酒出したけど、少量の媚薬が混ざってて大変だったよな」

「おっさん同士のキスを思い出させるな」

「学校の怪談巡りも悪くなかったな」

「本物が一つ混じってたなんて思わなかったがよ」

(おれ)の実家に来たは何時もより騒がしかったな」

「あんな魔境は二度とゴメンだ」

「ハハハハ、録でもねぇのばっかだな!」

 

 あまりいい思いでとは言えないが、星丸にとっては良い思い出らしく笑っていた。

 

「……なぁ、星丸……」

 

 十六夜が星丸に話しかける。

 

「なんだ、十六夜」

「……その、えっと……」

 

 十六夜を見る星丸。見つめる星丸を十六夜は照れ臭そうに静かに話し始める。

 

「……今だから言えるけど……その、ありが」

「見つけたァァァァァァア!!」

 

 十六夜が言おうとした瞬間、河原に大声が響き渡った。勢いよく体を起こすと黒髪の青年がこちらに目掛けて走っている。

 

「なっ!? なんだ!?」

「十六夜はその子を頼む!」

 

 十六夜に赤ん坊を任せ、星丸はスペアの折り畳み式の杖を取り出して構える。

 

「さぁ、どっからでもかかって--」

「すいませんでしたぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「--……へ?」

 

 杖を構えた星丸の前で青年は勢いよくスライディング土下座を行った。まさかの行動に目を点にする星丸と十六夜、そして二人を見つけた鬼刃島と金剛が駆け寄って来る。

 

「……見つけたが……どういう状況じゃ?」

「……どうやら、聞く必要があるようね」

 

 目の前の状況に対し、それしか言う言葉が見つからなかった。

 

 

     --■□■--

 

 

「えっと……つまり……この赤ん坊はお前の弟で、喧嘩したら魔力が暴走して、二人まとめてバラバラに飛ばされてしまったって事か?」

「……はい……そうッス」

 

 その後、クラスメイトに連絡して青年から事の発端を詳しく聞き出した。

 時間は既に夕暮れ。周囲は橙色の光に包まれていた。

 

「……俺ん家(おれんち)って両親がとある研究所で共働きなんス……弟を護れるのは俺だけなんだと考えて……気を背負っててたら弟が駄々を捏ねて……それで……」

「……なぁ、お前は一人なのか?」

 

 徐々に暗くなる青年の表情を見て、星丸は青年と同じ視線に合わせて語りかける。

 

「な、何がッスか?」

「お前を大切に思ってくれているヤツは……お前だけじゃないんだぜ……両親もそうだし……友達だってそうだ……」

 

 戸惑う青年に星丸は続けて語る。嘘偽りない星丸の言葉に静かに耳を傾ける青年。

 

(おれ)は迷惑かけてばっかりだ……それでも一緒に悩んだり、考えたり、手を伸ばしてくれる仲間がいる……少なくとも、お前にも一人いるよ」

 

 そう言って赤ん坊を青年に手渡す星丸。赤ん坊は暗い表情を見せる青年の顔に触れ、優しく撫でる。

 

「……だぁーうー……?」

「……そっか……馬鹿だなぁ……俺って……」

 

 赤ん坊を優しく抱き締める青年。その声色には後悔と同時に嬉しさを噛み締めるような感じがした。

 

「……情けない所を見せて申し訳ないッス!!」

「おう、気にすんな」

「そんじゃ……頼むぜ。マー坊」

「だーうー!!」

 

 涙を乱暴に拭い、青年が赤ん坊に頼むと赤ん坊は大きく声をあげると空間に黒い孔が現れた。それは、星丸と十六夜を河原に飛ばした時とお馴染み孔だった。

 

「変わった魔術じゃ」

「銀魔術“天元突破(オーバーホール)”ッス……未だわかってない部分がある魔術で空間移動が得意な魔術ッス」

「また悩んだら、相談に来いよ」

「それは無理ッス」

 

 鬼刃島の疑問を解説する青年。星丸が青年に気を遣うが、青年は星丸の言葉を否定する。

 

「俺達、未来から来たんで」

 

『『『………………は…………?』』』

 

 しかし、青年から出た言葉に全員が呆然とした。

 

「未来かぁ……確かにそいつは無理だな」

「そうッスよね。でもありがとうッス……家に帰ったら親父達に話してみます」

「そうしろ。話した後と前じゃ後悔する重さが違うからよ」

「てか、俺の親父は爆発魔術が得意なんスけど……これを機に他の魔術も使うように説得してみるッス」

「そうか? 爆発魔術いいのになぁ……」

「え"、親父と同じ爆発魔術使いかよ……世の中は狭いなぁ……」

 

 訂正。星丸は普通に会話していた。彼は根が図太いのか、それとも彼にとって未来は気にしていないのだろうか……多分、前者だろう……

 

「う、嘘だろ……お、おい……じょ、じょうだんだよな……」

「……マジかよ……」

「こ、これは……流石に……」

「成る程のう……通りで過去が見れないわけじゃ……」

「ちょ、ま、せめて宝くじの番号だけでも!!」

「……なんか、頭痛くなってきた……」

「ま、つまりアレですわね……蛙の子は蛙」

「それでは皆さん。さよならッス! お世話になりました!」

「あーぶー!!」

 

 各々が反応を見せるなか、青年と赤ん坊は孔の中に入り、手を振りながら星丸達と別れを告げ、次第に孔は小さくなって消えていった。

 

「……行っちまったな……アイツら……」

「……はぁ……なんか異常に疲れた……ファミレスで飯でも食おうぜ」

「そうだな! 食ってらんねぇよ! ちくしょう!」

「……なんで、少しキレ気味?」

「モテない男の嘆きですわ」

「ふむ。儂は賛成じゃ……ゴーゴンもどうかの?」

「べ、べ別に喜ばしくもなくもなくもないに決まってるわよ!」

「恋愛下手だねぇ……まぁ、奢ってくれるならいいよ!」

 

 別れを惜しむ星丸とは別に青年と赤ん坊の正体を知ってしまったクラスメイト達は謎の疲労感からファミレスに寄ろうと和気藹々(わきあいあい)に話し合う。

 

「……なぁ、星丸」

 

 十六夜は星丸を呼び止める。他のクラスメイトは先に進んでおり、今この場には十六夜と星丸の二人しかいない。

 

「……ありがとうな」

 

 十六夜の声を星丸は静かに耳を傾ける。

 

「……お前が、お前達があの日、私をあの部屋から引きずり出して、この世界が素晴らしい事を教えてくれた……馬鹿みたいに明るく照らすお前に出会えて……私は恵まれた……」

 

 空は夕暮れで十六夜の表情がよく見えないが、星丸は彼女から目が離せなかった。

 そして、顔を挙げた時にその表情が見えた。

 

「ありがとう。星丸」

 

 優しい微笑みの彼女に、星丸は自身の体が熱くなった。

 

「……おう」

「……なに赤くなってんだよ。照れてんのか」

「て、照れてねぇよ!? これは、あれだよ。体内で爆発魔術が暴発したんだよ!」

「ハイハイ、そういうことにしといてやるよ」

「おーい、二人とも!」

「先に行くわよ!」

 

 赤くなった事を否定する星丸をヘラヘラと笑って流す十六夜。遠くから鬼刃島と金剛が二人を呼ぶ声が聞こえる。

 

「あ、わかった今行く!」

「おー、悪い悪い!」

 

 急いでクラスメイトの元へ走る星丸と十六夜。

 これから先、彼らは多くの出会いと出来事を経験し、大きく成長して後世にバトンを託すのだが、それは縁があったら語るとしよう。

 彼らの素晴らしき世界に祝福を!

 これにてお仕舞い。ポンコツ魔術の青春活劇!

 また、お会いしましょう。





 これにて『ポンコツ魔術の青春活劇』を終わらせて頂きます。

 応援して頂き、ありがとうございました。最初は戸惑っていましたが、激を飛ばして頂いたお陰で無事に完走できました。

 最後まで読んでくれたあなたに最大の感謝を……もう一度、ありがとうございました!!

 それでは皆様。良いお年を!
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