林の中で見かけるとは思わなかった人物、ペインさんの姿を見つけ急ぐ足を止めて彼の傍に降り立つ。
「リーダーさん、どうしてここに?」
「…少しお前と話をしたくてな、構わないか?」
出来れば今は急ぎたいところだが明らかに只ならぬ雰囲気を醸すリーダーさんに何も言えず頷く。
「──お前が雨隠れの里を去ったすぐ後だ。自来也が里に侵入してきた」
「自来也さんが?」
「…そういえば、お前が我々と関わる最初の切っ掛けはあの男だったな、ハレンチ博士…自来也の弟子だなどと偽って」
「あ…その節は、その」
「もういい、今にしてみれば我ながらよくそんなウソを信じてしまったものだ…もっともハレンチ博士とやらが自来也でなく大蛇丸という事実もそれはそれで未だに信じ難いが」
そういえば…確かに私が勘違いを利用して誤魔化したという要因もあったが、そもそも暁の皆さんが何故かハレンチ博士という呼び名を自来也さんのものと勘違いしていた。
今にして思えばいくら紛らわしい要素が多かったにしたって暁の方々がそれだけで私を自来也さんの関係者だと確信するだろうか?
…ひょっとして何か私の知らない事情があったのではないか?
そう思い至った私の視線に気づきリーダーさんは感傷に浸るように目を閉じて告げた。
「自来也はかつて俺と小南の師だった…自来也先生は戦争で身寄りを失くし孤児となった俺達を3年間保護し、忍術や生きる術を教え、導いてくれた人だった」
「…え?」
「だからあの人の事は良く知っている。ドジで騒がしい…だが道を踏み外しそうな者には寄り添い導いてくれる人だった──お前が以前に語った"ハレンチ博士"の特徴とよく似ていた」
思わぬ言葉に戸惑う。
自来也さんがリーダーさんの師? 何故木ノ葉の忍である自来也さんがリーダーさんを? …ハレンチ博士や私の様にそれぞれ里から抜けた者同士ならばともかくにしても、何故自来也さんはリーダーさんを弟子に?
良く分からないが、ひょっとして私はとんでもなく失礼なことをしていたのでは?
…あれ、もしかして私…殺される? と、とにかくまずはリーダーさんを話に集中させよう。
「リ、リーダーさんと自来也さんがそのような関係とは思いもしませんでした…しかし、それなら何故リーダーさんは暁という組織を結成されたのですか?」
「…自来也先生は当時、この世に蔓延る憎しみを、争いを何とかしようとしていた…平和とは何か、その答えを求めてた。…そしてあの人はその答えを六道仙人と同じ眼を持ち、3年間の修行で成長した俺に託し俺達の前から去っていった」
「憎しみと争いの根絶…そして平和、ですか」
難しいことだ。
忍の世界は殺し合いが続き、憎しみが生まれ続けている──その程度ならば或いは何とか出来るかもしれない。
しかし時として人間は憎しみ以外でも争いを生む。
たとえ憎しみを持ってなくても利益を求め欲望のままに人は争いを生む…まぁ私自身のことなので人間という大きな括りで言うのは大多数の人に失礼な事かもしれないが、とにかく争いの理由とて人それぞれだ。
自来也さんは、それでも平和を願っていたのだろうか?
もしかしたら、おでん屋での私への忠告も私が争いを生み、争いの中で死にそうだと思ってのことだったのだろうか?
「師から学んだ教えに従い、未だ戦争の続く中俺と小南ともう一人、弥彦という仲間は暁を結成した。武力には極力頼らず平和を構築しようとする思想に戦火に巻き込まれた多くの者が賛同してくれた」
「暁?」
「フ、今や随分と様変わりしたがな」
「…それは何故?」
武力に頼らない組織"暁"が今は戦争市場をコントロールし、武力を以て世界を征服しようという組織に変わったのか。なぜ、征服という平和と言えるのか分からない形での争いの根絶を何故目指す様になったのか、問わずにはいられなかった。
「力を付け過ぎた暁という組織をかつて雨隠れの主権を握っていた半蔵という男は恐れたのだ、奴は己の主権を守る為、木ノ葉で火影の座を狙うダンゾウという男と組んで同盟交渉を結びに来た俺達を騙し討ちをした。──その結果、当時暁のリーダーだった弥彦は殺された」
あぁ、やはりか。
半蔵という人もまた、憎しみではなく己の利益の為に争いを生むことを選んだ。…それを悪だと私は言いはしない、だってその人は己の造る組織、地位という作品を守りたかったのだ、自分にとって大切なものを守りたい、その思いそのものは決して悪ではないだろう。
ただ間違えた。騙し討ちというやり方を選んだことで争いを生み、その結果己の命諸共守ろうとした大切なものを失ってしまった──雨隠れの里でリーダーさんが神と崇められていることからして、そういうことなのだろう。
…それはそれとしてカブトさんのお話に続いてまたダンゾウさんが出てきたのだがあの人争い生み過ぎでは?
いや半蔵についてもダンゾウさんについても私の生き方と共通することも多い、むしろ彼らこそ私にとって明日は我が身と思い学んだ方が良いのかもしれない。
「俺は弥彦に代わって暁のリーダーになった。だがその後も何人もの仲間が死んでいった…何人も、何人も。火の国を始め多くの大国の民は小国を犠牲にしている事実を知りながらも偽りの平和を口にし享受している…人は生きているだけで他人を傷付け憎しみを生む。この呪われた世界に本当の平和など存在しない、自来也の言っていたことは虚構でしかない──そう思い至り俺は痛みによる平和を目指し、尾獣を狩り、自来也を葬ることにした」
「──ッ!?」
「かつての教えも綺麗事だと知った今、もう未練もなかった。俺は奴の腕を狩り取り喉を潰し、その心臓を潰した」
「…それが手段が違えど平和を目指すリーダーさんの選択ならば、私はそれを否定しません」
「フッ、勝手に話を進めるな。確かに心臓を潰したが、それでも自来也は息を吹き返し俺の情報を少しでも残すつもりだった…俺が再会したあの人は昔から何も変わっていなかったよ、昔と同じドジで…何一つ諦めない人だった」
リーダーさんの声がほんの少しだが柔らかくなったのに気付き彼の次の言葉に固唾を呑む。
「…その姿とお前の記憶を見て確かめたい事が出来た、だから俺は自来也を見逃した…もっとも致命傷を与えた以上、今も生きているかは分からないがな」
「生きていますよ、あの人はきっと」
「だろうな」
「それで…確かめたい事というのは一体、それに私の記憶を見たってどういう事ですか?」
私の記憶を見たというのは恐らくだが雨隠れの里に訪れた際にリーダーさんのご兄弟さんに頭を掴まれた時だろう…あの時薄れた意識の中で自分の中の何かが抜き取られていきそうな感覚があった。だが、それはともかくとしても正直自来也さんとの戦いと私の記憶に繋がりが見えない、一体リーダーさんの確かめたいことというのは何なんだ?
「…まっすぐ、自分の言葉は曲げない──それが俺の忍道だ」
「え?」
「お前の記憶を見た時、自来也先生と一緒にいた…うずまきナルトの言葉だ」
「あ!」
そうだった。
ハレンチ博士に連れられて綱手さんに会い、交渉が決裂して戦いになった時にボロボロになりながらもカブトさんに立ち向かい勝利した…あの時のナルト君の姿は実に記憶に焼き付くものだった。
そんな私にとって好印象な少年という、ある意味ではたったそれだけのナルト君に関する記憶だが、リーダーさんにとってはそれは少し違ってくる。
自来也さんの弟子だったリーダーさん。
そして同じくして自来也さんの弟子であるナルト君。
リーダーさんから見た私の記憶のナルト君は──果たしてどの様に映ったのか。
勿論、リーダーさんからしたらあの時のナルト君の力量など取るに足らないものだったはずだ、だが強さよりも何か感じ至るものがあったのか、それは部外者である私に推し量れるものではないだろう。
「…うずまきナルト、自来也先生に弥彦…それにかつての俺にどこか似ていた…きっと自来也先生が死に瀕しながら何かを託そうとしていたのは木ノ葉という組織ではなく己の弟子であるナルトに対してのものだと、お前の記憶を通して奴を見たことですぐに分かった」
「…確かめたいことというのは──つまり」
「師を傷付けられた憎しみと、師から託された信念と──うずまきナルトが何を選び、平和に対する答えをどう導き出すのか、今はそれを確かめたい。その為に俺は木ノ葉へ向かう!」
九尾の人柱力であるナルト君を狩る為ではなく、自来也さんの弟子として…それがリーダーさんの出した結論なのだろう。
「…まったく、お前の情報を抜き取り始末するだけのはずがこんな事に気紛れを起こす事になるとはな」
「リーダーさんの選択肢を増やす事が出来たのなら殺されかけた甲斐がありました」
「…お前、時々凄く嫌な言い回しをしてくるな…はぁ」
リーダーさんに深くため息を吐かれてしまう。
確かに殺されかけたという言い方は少々悪意を感じさせてしまうが、かといって命を懸けた甲斐があったと言おうにも別にあの時命を懸けてリーダーさんに会いに行った訳でもない…むしろ輪廻眼を貰うことしか考えてなかったから他に言い方も…
「──お前から見てうずまきナルトはどう思えた」
「真っ直ぐな良い子…という言い方は少々不適切ですね…そうですね、揺るぎない信念を、諦めない強さを持った立派な忍…それが私が見たうずまきナルト君という忍者の印象です」
「…そうか。──手間を取らせてすまなかった、お陰で重要な事を聞けた」
重要な事…ひょっとしてリーダーさんはナルト君について聞く為に私のところに来たのだろうか?
もしもそうなのだとしたら…リーダーさんはナルト君と自来也さんに、自分とは違う答えを期待しているのか?
リーダーさんの先程までの佇まいからは一切の迷いは感じられない、自らの持つ"痛みによる平和"という夢は未だに揺るぎないのだろう。それでもなお、ナルト君の事を答えを持つ者同士での戦いをとその果てにどちらが正しいのかという証明こそを求めているというか…あくまで、私の推測でしかないが。
しかしだとすると、私としても確かめておきたい事がある。
「リーダーさん、実は少し前にマダラさんとお会いしました」
「あぁ、マダラ本人から聞いた」
「そうですか。…ではお聞きしたいのですがペインさんとマダラさん、どちらが暁のリーダーなのですか? 仮にマダラさんが本当のリーダーだとしたら、以前に語って頂いた暁の計画や世界征服の夢のどこまでがペインさんのものなのですか?」
気になるのはそこだった。
先程の話からしてもペインさんがただマダラさんの思想を口にしているだけという感じはしなかったし、暁という組織もペインさんと小南さん、そして弥彦さんという方が結成したということなのだから間違いなくペインさんがリーダーさんのはずだ…だがペインさんとは別に私達に指示に出すマダラさんの存在がこの暁という組織に疑問を抱かせる。
「世界征服は俺の夢だ、始まりは弥彦の夢だったがな。暁の計画はその手段であり、それはマダラの計画だ…暁とマダラは協力関係だがそういう意味では実質的なリーダーは奴の方だ」
「…なるほど」
つまりはリーダーさんの夢とマダラさんの計画が一致した結果が今の暁という組織が形成されたということか…そういうことならばリーダーさんでなくマダラさんの判断で私達に指示が出されるのも納得だ、その内容が私達を使い捨てにするつもりなのは些か不満だが。
「──でも、そういう事なら…リーダーさんは今の計画そのものは然程拘りがないということですか?」
「どういう意味だ?」
また言い方が悪かったのだろう、僅かに殺気が含まれた声に少し自分の発言を後悔するが言い出したことを引っ込めるわけにもいかない。
「言葉通りの意味です。リーダーさんにとって大事な事は平和を掴むこと…暁が行っている尾獣狩りはあくまでその手段」
「極論だな…そんな大雑把な話ではないぞ」
「目的の為の手段は幾らでも変えていい…いえ、むしろ目的が壮大であればあるほど達成の為のアプローチの更新は必要になる時もあります、だからもしもナルト君と相対し手段を変えたくなっても、それはきっと間違いではありません」
「……本当に、変わった奴だな、お前は」
僅かに笑いリーダーさんは私が良く言われる言葉を口にする。
変わり者という評価そのものはいまいち実感もないが、それでも周囲から良く言われるその評価をされたのなら今度こそは誤解とそれを利用した私ではなく、ありのままの私でリーダーさんと言葉を交わせたということなのだろう。
「言っておくが、俺は今のやり方に迷っている訳ではない。人と人が分かり合えるなどという絵空事、時代遅れの理想主義などではないこの計画こそが平和への唯一の道なのだ」
「…戦争を知らない私には、本当の意味で平和の尊さも理解出来ていないのかもしれない。だからこそ私はリーダーさんのその思いこそを尊びます。計画を変えずとも、あるいは変えたとしてもその夢が変わらない限り最後まで貴方が描く作品を見届けます。私も暁のメンバーの1人ですから」
「……つくづく、変な奴を引き入れてしまったものだ」
どうして変わり者から変な奴に変わってしまったんだ?
意味合いとしては近くてもニュアンスが全然違う、せめて変わり者のままでいたかった。
「…マダラの奴はお前とその仲間達に八尾狩りを命じたはずだが、お前だけがここにいる辺り大方マダラの目を盗んでサソリ達の協力を仰ぐつもりだったか?」
「流石ですね…」
「少し待て──すぐそこの街の銀行に角都がいる。協力する様に連絡した、すぐに合流しろ」
「っ! ありがとうございます」
リーダーさんに一礼して彼の傍を通り抜ける。
話は長くなってしまったが、リーダーさんの方から協力する様に交渉してくれたのならむしろ交渉もスムーズに済む、有難い。
ハレンチ博士やリーダーさん、思わぬ人達に助けられた。
だからこそ私も必ず水月達を助けてみせよう!
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村雨と別れた後、大蛇丸はそこから少し離れた位置にある大岩に隠れた地下アジトへ帰還していた。
普段根城にしている様々な設備を揃えたアジトと違い各アジト間の移動時や緊急時に使用する一時的な隠れ家の様なものであり、その分部下でさえ殆ど知らない場所だが今は自分が留守中にもずっと居座っている者へと視線を向ける。
外出する前には折角の眼を虚ろにし、抜け殻の様な状態でその分早まった行動をとりそうだと思い縄で縛り上げておいたのだが、どうやら自力で抜け出していたらしい。
うちはサスケのその様子からして…ある程度は考えも纏まったのかと思い声をかけてみる。
「戻ったわ…近くに来ていた忍達の狙いは私達ではなかったわ」
「…その包みは何だ? 出て行く時は持っていなかったろ?」
「途中で貴重な薬草を見つけてね。何かと使えそうだから取っておいただけよ」
実際には写輪眼が沢山入っているのだが…意識を取り戻した直後は散々疑われて漸くまともに話は聞いてくれる様になったのにまた面倒な状態に逆戻りされては堪ったものではない。
あれ程欲しがっていたものが厄介な土産物になった事実に世の理不尽さを嘆きたくもなるがそれはそれとして訝しげにこちらを見るサスケ君へ別の話題を投げかける。
「さて…考えは纏まったかしらサスケ君?」
「あぁ──今なら少し、昔の事を思い出せる。あの夜の事、それに忘れようとしていた記憶もな」
「なら私の言ったことを信じるということかしら?」
「いやアンタの話はともかく、アンタ自身が信用できない」
「まぁ当然ね。私は元々貴方の身体を狙っていた者なのだからね。…じゃあやはり穢土転生の術を?」
それは最初に出した案の一つだ。
私ではなく、真実を知る者達を穢土転生の術を使い甦らせる…そうすれば真実の確認も容易いのだと。
「その術は生贄がいるんだろう…そんなものは必要ない、真実を知る者がまだ他にいるのなら話はそいつに聞く」
「なるほど、つまり…」
「今すぐ木ノ葉へ向かう──相談役、そしてダンゾウ…奴らにイタチの真実を問い質す!」
【祝・100話!!】
遂に100話という大台に乗らせて頂きました、これも全て皆様のお陰です!
何かと語りたい事も多くありますが、長くなりそうなので活動報告にて本作品の話を交えながら投稿しようと思い、この場では手短にお伝えさせて頂きます。
これまで感想、評価、閲覧、本当にありがとうございます。
次回も何卒よろしくお願いします。