素材の山の中から組み合わせを考慮し選び抜いたものを使い、刀造りを始めると同時に今回は選ばなかった…というより、情報不足で先送りにせざるを得なかった素材を次回作では使える様に傍にいるサソリさん、角都さんにそれとなく聞き込みを図る。
「…それにしても、尾獣を見るのは2度目でしたが八尾は三尾以上の力を感じました。人柱力という存在は尾獣の力を大きくするのでしょうか?」
「少し違うな。尾獣が持つ力は強大だがチャクラのコントロールはただ大きければ良い訳ではない。重要なのは肉体と精神エネルギーとの練り込み…それに関しては人柱力となった忍の方が上手い場合もある、特に尾獣を完全に手懐けたと言われる八尾の人柱力なら猶更な」
「なるほど…」
つまり人柱力は尾獣の力を高めるのではなく、"より上手く引き出す"という言うべきなのか。
だから人柱力をもたない三尾と比べ八尾からはより強い力を感じたということか…
しかし角都さんの言葉の通りそれは本当に特別な忍に限るのだろう…実際に我愛羅君にナルト君、彼らは私が知る限りでは並外れたチャクラや実力を見せてはいたが、それほどまでに尾獣を手懐けていたという印象はなかった…。
「…やはり尾獣のコントロールというのは特別なものでしょうか?」
「完璧なコントロールという意味では八尾の人柱力であるキラービー…先代の水影であるやぐら、後はマダラと柱間ぐらいのものだろうな。だが制御という意味では他にも何人か扱えた者もいた」
「そうなのですか?」
「俺と飛段が狩った二尾の人柱力も尾獣化までは出来ていた、力は八尾と比べて劣っていたがな…あぁそれと変わり種ではあるが金角銀角という連中がいたな」
「金角と銀角!?」
予想もしなかった名前が出て思わず作業の手を止めて角都さんの方に視線を向けると彼の方も私の反応が意外だったのか少し驚いた様子だった。
「…古い連中だと思っていたが、霧の里出身のお前が良く知っていたな…木ノ葉、雲の出ならまだ分かるが…」
「七星剣を始め、六道仙人の忍具を扱ったとされる忍ですよね」
「あぁ…そうか、そうだな…」
まさかあのご兄弟が人柱力だったとは…里に残された数少ない資料では"特殊なチャクラを持ち六道仙人の忍具を扱った"とされていたが…そうか、それが尾獣のチャクラだったということか…ん? いやでも──
「変わり種とは? 他の人達とは違ったのですか?」
「連中は一度九尾に喰われたことがあったそうだ、その際に生き残る為に逆に九尾の腹の肉を喰ったらしく、それで吐き出されて以降九尾の力を身に宿し、尾獣化までは出来ずともそのチャクラを衣として身に纏うことが出来た…仲の良い兄弟で片割れが敗れた時などはさながら小さな九尾の様だったな」
「尾獣の一部を食べて!?」
何て面白い話だ、八尾の一部…はリーダーさんの為に渡す予定だがその前にこっそり取っておいた三尾の一部どう使ったものか悩んでいたが、そんな使い方が…
「ちなみに、その金角と銀角を真似て雲の里では八尾の一部を喰った連中がいたそうだが、皆息絶えたそうだ…あの兄弟が特別なだけだ…サソリからお前が三尾の一部をくすねているのは聞いている。妙な考えは起こすなよ、只でさえ俺に対して前科があるんだ貴様は」
妙に話してくれるなと思ったらこの忠告の為か…それにしてもサソリさん、しっかり角都さんに報告していたのか…いや、むしろ協力的な角都さんにだけ報告を留めてくれている事に感謝しよう。
しかしそうか、今晩の夕食にでも混ぜようかと思っていたが普通の人体で耐えられないであれば仕方ない。
何かしら別の手段が必要か…だが封印を施して身に宿す以外に尾獣のチャクラを扱えた人がいたと分かったのは僥倖だ。
人の身体に尾獣の一部を封印する様な高度な術は私には無理だがやり方次第では可能性が──
「あ! ──そういえば…」
ふと私の記憶に焼き付いた刀の事を──そしてそれとは別に素材の山の中に積まれたとある細胞を思い出す。
"大刀・鮫肌"
チャクラを削り喰らうあの刀に秘められたもう一つの能力。
持ち主との融合…人の身に刀を宿す異質な能力、あれがあれば刀に宿したチャクラを持ち主に与えることが出来る。
そしてもう一つ、ハレンチ博士のアジトから持ち帰った素材の一つ、左近さんの細胞。
自らの身体を粉々にし、他者の身体と細胞レベルで融合する特異な忍術だ、これならば未だ未知である鮫肌の融合能力を模倣出来る…以前左近さんの能力を聞いた時そう考えたことがあったことを思い出す。
来た。
革命的な発想、最高のインスピレーションが…。
自らの発想とすぐにでもそれを実行できるまでに状況が整っていることに心臓が高鳴ってくる。
…が、それはそれとして今造っている刀の方に集中だ。
良い発想が浮かんだとはいえ既に着手している子を蔑ろにしてはいけない。
今回はツルギ・ミスミという人の細胞を使ったものに挑戦だ。
伸縮する刃はハレンチ博士の持つ草薙の剣を始め、他にもチャクラで疑似的に伸ばす形式のものがあるがグニャグニャ曲がるというのは中々斬新だ。
…それに何より元の人物の名前が実に好みだ、良い名前だツルギさん。
木ノ葉崩しとサスケ君の情報収集を目的にカブトさん、それとヨロイさんという方と共々中忍試験を受けさせたそうだがカブトさんを除き、中忍試験中に敗北し切り捨てられたそうだが今頃どうしているのだろうか?
もしかしたらハレンチ博士の配下として捕虜になっているのかもしれないが…まぁハレンチ博士の事だ、切り捨てに使う配下に大した情報は握らせていないのだろう。
そして木ノ葉もいつまでも情報のない捕虜を捕虜で残しておくなんてコストの掛かることはしないはずだ。
処刑となっていれば仕方ないが、木ノ葉崩しに直接関わっているわけでもないので案外木ノ葉の労働力として使われる程度ではないだろうか。
中々難しいとは思うがもしまた木ノ葉に行く機会があれば探してみても良いかもしれない。
…あぁ、でも今頃木ノ葉にはリーダーさんが着いているはずだ…大丈夫かな木ノ葉。
▼▼▼
仙人蝦蟇夫婦の片割れ、シマによる逆口寄せにて木ノ葉に帰還したナルトが見たのは里中のあちこちで上がる火の手、そして里の中心に聳える火影塔のすぐ傍の戦闘痕だった。
建物はいくつも崩れ、血を流し地面に倒れた者達の多くは苦悶の表情を浮かべ、中には既に事切れた者さえいた。
仙人モードを習得し研ぎ澄まされた感知能力はそれをはっきりと認識していた、そしてそれ故に分かってしまったことがもう一つあった。
「…綱手のバアちゃん、バアちゃんがここにいるってことはエロ仙人の治療は済んだのか?」
ペインとの戦いで重傷を負ったエロ仙人は綱手のバアちゃんが医療忍術を掛け続けてなきゃいけなかったはずだ。
それなのにバアちゃんがここにいるということは無事に治療が完了したということなのか…それとも──
「………」
「──そっか」
綱手のバアちゃんからの返答はなにもなかった。
それがどういう意味なのか分からない程バカではなかった、だからこそそれ以上は何も言わず、目の前に立つ男を仙人モード特有の蝦蟇の如き瞳で睨む。
「お前を待っていた、うずまきナルト」
「決着つけてやる!」
師を意識不明の重体に陥れ、里を、仲間を滅茶苦茶にした男…ペインの前に降り立てばそんな言葉を口にする。
だがそれはこっちのセリフだと叫ぶ──しかしペインの反応は想像していたものとは違った。
「決着か…お前がそれを望むのならば俺もお前の九尾を力尽くで奪ってやっても良いが、どうだ、少し話でもしないか?」
「な…ふざけんな、里と皆をこんなにしてなんで今更話なんかしたがるんだってばよ!?」
「少し誤解があるな、俺は元々お前と話がしたくてここにきたつもりだったんだ。…そこの連中には、いや正確には相談役にとって信頼出来なかったようだがな」
「…不本意だが、そいつの言っていることは本当だナルト」
「バアちゃん?」
「連絡用の蝦蟇にお前を呼び戻させている間、そいつはただ待っていた…話をするつもりというのは本当らしい」
到底信じられなかったことだが綱手のバアちゃんがそう言うのなら嘘じゃないのか?
半信半疑のままペインに向き直るとやはりどうしようもなく怒りが湧いてくる…だけどそっちが話し合いが目的だってんなら──乗ってやる。
「分かったってばよ、話し合いがしてぇってんなら受けてやる。けどその代わり、これ以上里にも里の皆にも攻撃すんな──それとお前の話を聞いてやんだ、俺の聞きたい事にも答えやがれ」
「質問か? 良いだろう、先にそちらを済ませてやる、何が聞きたい?」
「お前は…暁は一体何がしてぇんだ! 何でこんなことをしやがる!?」
今まで何度も対面した暁のメンバー、そのいずれも会話をする余地がなかったが今は暁側からそれを望んできた。それもその相手は暁のリーダーだ。
ここで洗いざらい全部聞き出してやろうと問い掛けると、ペインは僅かに考える素振りを見せ口を開いた。
「俺の目的は自来也先生でも成し得なかった事を成すこと──平和を生み出し正義を成すことだ」
平和? 正義?
俺の師匠を、仲間を、木ノ葉の里を滅茶苦茶にした奴がそんなことを偉そうに言ってんじゃねぇと憤る──しかしそこから語られたのは暁のリーダー、ペインと雨隠れの里が受けた戦争の歴史だった。
大国間の戦争に巻き込まれた小国が受けた痛み。
痛みによる復讐によって生まれる更なる復讐…憎しみの連鎖。
人は決して理解し合うことなど出来ない、忍の世は憎しみに支配されているのだと──
「うずまきナルト…お前としたかった話とは1つ、お前はこの憎しみとどう向き合いどうやって平和を掴み取る?」
忍の世に蔓延る憎しみをどう晴らすのか──それはかつて修行の最中にエロ仙人が話していたことだった。
エロ仙人自身にも分からないその方法をどうするのか、その答えを俺に託そうと言われた時、ただ弟子として認められたことを嬉しく思うだけだった自分を今になって後悔する。
「お前の答えを聞こう」
「──分かんねぇ、そんなこと…」
答えは──出せなかった。
「俺はな、その憎しみの連鎖を止める為に暁を立ち上げた」
尾獣を利用し大国さえも一瞬で崩壊させる禁術兵器を作り、その痛みの恐怖を以て戦争を止めるのだとペインは語った。
そんなものは平和なんかじゃない、ただの嘘っぱちだ…だけど──
「──答えを示せないのであればお前にはもう用はない。少し残念だが、元よりただの気紛れだ。大人しく捕まってもらうぞ」
「クソ!」
こんなはずじゃなかった。
仙術をマスターし、今までと比べ物にならない程強くなったこの力で暁のリーダーを倒して里を救う…その自信があったのに。
黒い武器を構え襲い掛かる6人のペインに拳を握り対峙する──それでも平和への答えを出せなかった事実に頭にモヤが掛かったままだった。
▼▼▼
木ノ葉の地下、"根"の忍共を黒炎で焼き払うと逃走を図るダンゾウの肩を千鳥刀で刺し貫く。
事情は知らないが片腕を失い、忍として機能をなくした老醜を捕らえるなど容易いことだった──その容易さが尚の事憎しみを湧き上がらせる。
「ぐ…うぅ」
こんな程度の男にうちは一族を、イタチの運命を歪められたのか?
千鳥刀で麻痺し動けないダンゾウにゆっくり歩み寄ると忌々し気に睨まれる、その視線さえも神経を逆撫でする。
「うちはサスケ…貴様にとってイタチの真実など然程重要でもないのだろう? お前は手当たり次第に自分の憎しみをぶつけたいだけだ…貴様はうちは一族の犠牲を無駄にしている」
「貴様がうちはを語るな!」
怒りのままに千鳥を振り降ろそうとした刹那、眼に激しい痛みが走る。
配下の連中を退けるのに"天照"を多用した反動か、激痛に一瞬手が止まった瞬間に脇腹に迫る鋭い蹴りを紙一重回避すると、体勢を立て直そうとするダンゾウの足に手裏剣を放つ。
「ぬぅ!」
「お前を逃がしはしない──死ね!」
右足に手裏剣が刺さり血を流すダンゾウに今度こそ止めを刺そうと左眼の写輪眼にチャクラを込める。
目視した存在に着火し、その存在が燃え尽きるまで消える事のない黒炎、"天照"、そのピントを合わせるべくダンゾウに視線を向けた瞬間、ダンゾウの異変に気付く。
「貴様、その眼は!?」
先程眼の痛みに一瞬眼を閉じた時だろう、ダンゾウが自身の右目を覆う包帯は外していた。
その包帯に隠されていたのは赤い瞳、写輪眼、それも基本の巴型じゃない──万華鏡写輪眼だった。
何故ダンゾウが写輪眼を──イタチに殺させた一族の亡骸から奪ったのか?
疑問…そしてその答えを無意識に推測してしまい僅かに攻撃が遅れた。
「『別天神』」
万華鏡写輪眼同士が交差したその時、かつてうちは一族の中でも優れた才覚を魅せた男が死の直前に奪われた最強幻術が放たれた。