平和的に輪廻眼を頂くにはどうすればいいのか…早速思い付いた策を実行するべく水月達の荷造りが終わる前に手早く必要な物を準備する。
近くの薪と手持ちの刀を利用して綺麗な四角形を作ると次にいつも持ち歩いている手帳に筆を走らせる。
1から6のパターンをそれぞれ記入して、その後木製の立方体にそれぞれ1から6の目を書くと小南さんに良く見える様に突き出す。
「では小南さん! 今からサイコロを振りますので出た目に応じた内容でお願いします!」
1:雨隠れに移動後に支店を構えさせてほしい
2:新生七人衆に加入お願いします
3:いつか自来也さんに何かと謝罪したいので仲を取り持って下さい。
4:その不思議な紙の身体をじっくり調べさせて下さい
5:折り紙の剣の造り方を教えて下さい。
6:長門さんの両眼を下さい
各目の項目を書いた手帳を小南さんに見せると同時にサイコロを構える。
これならば長門さんの両眼を欲しがる厚かましさもお礼をサイコロに委ねるという茶目っ気に隠されて多少中和されるし、敢えて6番に書いたことで特に思いつかなったから数合わせに入れたのかな? 感も出るというもの…まぁ実際にはそれは5の目なのだがそれはそれ。
勿論、輪廻眼を手に入れるには6分の1を引き当てる必要があるが分の悪い賭けではない…ましてや輪廻眼は正しく神の力とも謳われる代物、ならば天運に委ねるというのも一興だ。
それに1~4の目も決して悪いものではない、普通に空き時間にだって頼める内容の5さえ出なければそれば良いんだ。
「ちょっと待て、この内容──」
「それではいざ!!」
小南さんの静止を振り切って勢い良くサイコロを石畳の上に転がす。
カラカラと音を奏でるサイコロは突然の要求に狼狽える小南さん、祈る様に両手を結び「6出るな6出るな」と呪詛の如く繰り返す香燐さんに見守られながら回転を続ける。
静かに眠るリーダーさんに視線を向けながら回るサイコロに思いを馳せる。
神となろうとしたリーダーさんに宿っていた神の如き力、それを得る為に私は神に祈る──実に面白い話だ。
さて…神の意志というのは果たして本当に存在するのでしょうか?
もしも存在するのならば6の目を──
既に亡きリーダーさんにそんな問いかけと祈りを投げかけた時…ふと目の前で眠るはずのリーダーさんが私の右隣りに、更に何故か木ノ葉の忍に敗れたはずの飛段さんが左隣りに、果てにはどういう訳か先日お腹を引き裂いた屍鬼封尽の死神様までもが背後に寄り添って? くれているのを幻視する。
神…かどうかは定かではないが神秘的な存在を感じ取ったのと同時にサイコロはピタリと止まるのだった。
石畳の上で6の目を天へ向けるサイコロに息を飲む。
まさか本当に6の目が出ようとは…これも神の思し召しという奴なのか? だとするならばこの結果は自らを神であるとしたリーダーさんの意志そのものと言っていいだろう。
「…や、やばい、ろ、6」
なにやら香燐さんが賽の目と小南さんを交互に見て顔を青ざめさせているが、とにかく私はその意志に深く感謝してその瞳を頂くと──突如背後で激しい爆撃が鳴り響き心臓が跳ね上がる。
「何をしている水月!?」
「い、いやこの練習用の傀儡を巻物に戻そうとしたんだけど何故か起爆札付きクナイが…」
「…そいつを巻物に戻す時は左中指を下、右親指を左に動かした後右手を後ろに引くだバカ、どうせ最後を指を閉じると間違えたんだろ」
「あーもう傀儡面倒くさ!!」
突然の爆発に慌てた様子の重吾さんと、原因の推測をあっさりと果たし呆れたサソリさんの声が聞こえて納得する。
移動の準備で爆発を起こしてしまうなんて水月も案外うっかりさんだ…まぁ傀儡の術の複雑さは齧った程度の私でも良く知っている、別に庭で爆発が起こった程度気にすることでもない、…アジトで爆発を起こしても許して下さったハレンチ博士の様に寛容に──
「…あ」
爆発の振動で止まっていたサイコロがコロコロを動き出し、背後に向けていた視線をサイコロに戻せば賽の目は5を示していた。
「ナイスだ水月」
…夢の輪廻眼が折り紙教室に変わってしまった、どうして…
「なぁ、悪い事は言わねぇからこの女を買いかぶらねぇ方が良いぞ。何があったのか知らねぇけど絶対良からぬことを考えてた結果偶然アンタらの得になっただけで」
「…そのようね」
打ちひしがれる私を他所に香燐さんと小南さんは私との話は終わったと2人だけで別の話を進めていた。
おまけに小南さんの中で私の印象が悪化している…いや悪化というよりは正常な評価に落ち着いたというべきなのだが、これで輪廻眼を求める事は困難になったと見て良い。
…千載一遇のチャンスを逃した、その遠因ともいえる水月には流石に少し怒りたくもあるが──
「…まぁ、いいか」
こんなサイコロで本当に6が出たところで何の強制力もない、これで輪廻眼を頂けるかなど到底無理な話だった。
だとしたら、もっと良い方法で交渉を図るだけだ。
「──サソリさん、角都さん。お二人は暁の正規メンバーとは別に部下の方々がいるのですよね?」
「なんだ突然…あぁいや、そうか、連中と袂を分かつなら情報源になりそうな奴らは処分が必要か、俺の方は記憶を消してあるから然して問題はないが…」
「俺の方は帳簿係が何人かいるな…大した連中ではないではないが心臓のストックもそろそろ埋めたいところだったし末端の処理のついでに使ってやるか」
「すみません、出来れば2人ほど譲って頂けませんか? ──少し、試したい事が」
思い出すのは両腕の治療を懸けてのハレンチ博士と、綱手様の交渉。
今は亡き大切な人を蘇らせることが出来るという強力な交渉カード…即ち穢土転生の術。
その鍵となる蘇らせる対象人物の細胞も亡骸ごとここにある──つまり後は生贄さえ確保すればリーダーさんともう1人…弥彦さんも蘇らせることが出来る。
この条件ならばリーダーさんの輪廻眼と交換でも悪い話しではないのではないだろうか?
「…村雨」
「ッ! 何でしょう?」
そう思い部下の切り捨てを検討する角都さんに打診しているといつの間にか小南さんがすぐ傍に来ており思わず肩を跳ね上げてしまうが咄嗟に平静を装う。
「正直に言うと、アナタが長門の輪廻眼を欲しがるであろうことは分かっていた。…というよりアナタが基本的に欲望任せで行動しているだけなのはとっくに知っているのだから」
「うぅ…」
面と向かって言われると少し辛い…何せそもそも私が暁の皆さんと関わる切っ掛け自体がその欲望任せの行動の結果なのだから一切否定できないのだから。
「…その上で言っておくけれど、長門の輪廻眼は私達雨隠れの忍の、そして里の宝…アナタに渡すことは出来ない。少なくとも彼が望んだ世界を──彼が信じた男がこの忍の世に平和を齎す日をその眼で映してあげるまでは決して誰にも奪わせはしない」
「──分かりました」
小南さんの言葉に確信を抱く。
彼女は既にリーダーさん達の死を受け止めている…どれ程の悲しみがあったのか、それまでは推し量れるものではないが小南さんは亡きリーダーさん達との未練も全てナルト君へ託したのだ。
肉体的な生ではない、平和を望んだ彼らの意志こそがナルト君の中で生きているのだと信じてその死を受け止めた…強い人だ。
これは…穢土転生の術とて交渉にならないと確信するには十分だった。
「──小南さん、雨隠れの里への移動が落ち着いたら折り紙、教えて下さい…昔お店の壁に折り紙の手裏剣を飾ろうとしたんですが全然上手く出来なくて」
「勿論、そのぐらい構わない。──たとえ偶然であっても、そんな偶然でなくては長門があれ程救われることはきっとなかったのだから」
折角の機会だと考えるとちょっとだけ物足りなさもあるが、私にとっては別に感謝されるような事をしたわけでもない…小南さんの言う様に偶然の関係なのだからこのぐらいが丁度良い。
そう思い小南さんと笑みを交わすと傀儡を片付けた水月が突然パン! と手を鳴らした。
「あぁ! 昔君の店の壁にあった紙を切っただけの変な星、あれ手裏剣のつもりだったんだ!」
「…水月うるさい」
どうしても綺麗に折れないから諦めて鋏で切って作った今にして思えば本当に恥ずかしい作品を思い出されて古い付き合いというものを初めて煩わしく感じた…然して覚えることではないと思うがまさか鬼鮫さんも覚えていたりしないだろうか? …あまり考えたくない。
それにしても、穢土転生の術…中々使いどころが難しい。
強力な術であるが故に有効に使えるタイミングというのを掴むのが難しい、本当にカブトさんも難儀な手土産をくれたものだ。
果たしてこの強力な忍術を上手く扱える日は来るのだろうか──
「──あれ?」
そういえばカブトさんは今どこで何をしているんだ?
サスケ君を追うと言っていたが彼と合流したハレンチ博士はカブトさんと一緒とは言っていない…単純にカブトさんが捜索に失敗しているだけなのか?
あの人に限って正規の忍達に見つかる様なことはなく心配は無用だとは思うがこんなにサスケ君との合流に失敗しているとも考え難い…
そんな疑問が浮かぶもだからといって何か出来る訳でもなく、気にはなりつつも偽雨が遺した茶屋から新たな拠点へと移動を開始するのだった。
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「…にしても、こんな雑な移動を大所帯で移動して大丈夫なの?」
「7人…まぁ小隊の基本、フォーマンセルと比べると見つかりやすいのは確かだな」
茶屋の周辺の竹林を抜け、小川の上を水面歩行の業で移動しているとふと水月がそんな事を呟いた。
言われてみると多い人数での長距離移動、しかも森林に身を隠すのでもなく水面を移動するとは…隠密行動のセオリーからは実に掛け離れている。
「それに関しては問題ない、マダラ…トビの仲間には地面や木々と同化し索敵するゼツがいる…むしろこの移動の方が良い。それに人数に関しても今は五影会談が決まり、どの里の忍も外出は自粛している」
「五影会談?」
「アナタ達が八尾を襲撃した事で雷影が他里へ招集を掛けたらしい…議題は恐らく、暁に対する対策」
「なるほど…つまりトビさん達と袂を分かつには丁度良い機会というわけですね」
暁対策の本題となるのは尾獣狩りだが、私達はもうそれはしない。
それで彼らから許されるはずはないが、彼らが人柱力の方々を如何に護衛するか決めたところで私達には何の不都合もない…むしろその議題で各地に点在する忍達が動きを止めてくれるならこれ程都合の良いことはない。
あとは暁をどうやって掃討するのか…その作戦から上手く逃れるかが鍵だが…それは雨隠れの里についてから落ち着いて考えれば良い。
「とりあえず、今はトビさんとゼツさん、そして五影会談に臨まれる五影と護衛の方々にさえ遭遇しなければ良い訳ですね」
「なんだろう、君がそんな事を言うと途端に不安になるんだけど」
「分かってる、絶対安全とは言い切れない以上警戒を緩めないのは大切」
「いやそういう事じゃなくてね!?」
不意に他里の忍達と遭遇する可能性はないとはいえそれも絶対ではない。ならば警戒心は無くさない。
両耳に意識を集中すれば小川の両側から小鳥の囀りが、両眼に意識を集中すれば足元の川を泳ぐ魚達…先の河原で水筒に水を汲む若い男女、そしてそれを少し離れた位置で見ているご老人の3人がいた。
中でも目を引くのがご老人が被る"土"の字が刻まれた笠。
それが何を意味するのかは──明らかだった。
思わぬ邂逅に言葉を失っている内に水を汲んでいた少女が水筒を放り投げて臨戦態勢をとり、となりの大柄の男性もそれに続いた。
「じじい、あいつら!?」
「あの装束、暁のものだに」
「……どうしてこうなるの?」
「こっちが聞きたいよ、何で君と遠出すると毎回ヤバい連中と出くわす訳ぇ!?」
私のせいではない…と言いたいけれど直近でも水月達と雲隠れに向かう最中に青さん達と遭遇した…ならばとそれ以前の事を思い出そうとするが…何というか、色々思い出して悲しくなってきた。
とりあえず今回の件も私のせいだと認識し、ただ嘆くのではなくこの場を切り抜ける方法を模索していると小柄なご老人、土影様は"土"の字が刻まれた笠を傍の岩の上に置いてこちらを真っ直ぐに捉える。
「暁の連中がこんなところで何をしてるんじゃぜ? ──五影会談に向かう影達を闇討ちか?」
想定外な遭遇にも臆することなくこちらの真意を探ろうとするその眼差しはご年配ながらも揺るぎない力強さを宿し、土影としての貫禄を感じずにはいられなかった。
ただならぬ威圧感にこちらの方が怯みそうになる中不意に角都さんが隊の最も前に歩み出た。
「オオノキの小僧か、久しいな」
「うん? ──お前は確か…元滝隠れの角都じゃな?」
「こちらはただの移動中だ、五影会談に向かうお前達に用はない…この場は退け」
隊の最前に出た角都さんは土影、オオノキさんの視線を受け止めて毅然とそう告げるがお供の少女は嘲る様に嗤った。
「アタイらがそんな命令に従う理由はねぇな…じじい、五影会談の土産にこいつらの首を持っていけば他の影どもに一発かましてやれんじゃねぇの?」
「随分と血の気の多いの娘を護衛に選んだものだな小僧…とはいえ、お前なら俺の言葉に従うメリットも理解しているだろう?」
「…ふん」
角都さんの言葉にオオノキさんは鼻を鳴らし、お供の少女を腕で制した。
「な!? おいじじい何で!?」
護衛の少女は戸惑った様子で土影様に問い掛けるが私としても同感だった。
土影様の意外な行動、その疑問に答えたのは角都さんだった。
「雷影主催の五影会談、その目的は暁の討伐だろう。ならばこの場でお前達岩隠れだけがリスクを冒してまで俺達と戦う必要などない、それで万が一お前や選りすぐりの精鋭である護衛どもに深刻な負傷が残ればむしろこの後の会談で不利な立場になるのは明白だ」
なるほど…確かに土影様は影の名を背負う程の御方であり、その実力の高さは疑うまでもない──しかしこちらも戦闘のプロ集団、暁のメンバーが3人…それに水月に重吾さん、香燐さん、単純な人数差でも倍だ。
対暁の会談がどの様に纏まるかは謎だがそれでも何かしらの取り決めが出来るはず、そんな状況で今ここで彼らだけが私達と戦うというのはリスクの高い愚行だ。
そして私達が彼ら岩隠れと戦うのもまた、岩隠れの到着が遅れれば他の里の者達から何かあったと判断し増援に来る可能性があるリスクの高い行為だ。
私達としても今彼らと戦うのは本意ではない──というのは彼らにとっても明白、つまりこの場で会った事はなかったことにした方が互いにとって都合が良いのはお互い分かり切っているというわけだ。
理屈としては簡単だが、双方のメリットを瞬時に判断し相手に持ち掛けるとは…お金の価値を重んじる性分が成せることなのか、角都さんの損得の計算は素晴らしいものだ…これが年の功というものなのか?
かなりご年配と見受けられる土影様を小僧呼びしている事も含めて信じ難い程の長寿も嘘ではないのだと改めて思う。
「言っておくが、貴様ら見逃すのは今回だけじゃぜ。どうせ会談の後にはお前らの討伐が本格的に始まる──精々上手く隠れておくことじゃぜ」
そう言うとオオノキさんは土影の笠を被り直して護衛の人達を連れて先へと進んで行く、この場は助かったということか? とはいえ不穏な忠告はされてしまったが…
実際、雨隠れの里に隠れるとは言っても既に木ノ葉の自来也さんは一度雨隠れの里に侵入しリーダーさんと交戦したことがある以上隠れる場所としては少し不安が残る。
流石に民間人をも巻き込む大規模な作戦をすぐに始めるとは考え難いがそれでも何らかの手は打っておきたい──ッ! そうだ!
少し惜しい気持ちはあるが既に"同系統の作品"は完成した…出来ればこちらも使いたかったが後々の事を思うとこの使い方に賭けてみるのも良いかもしれない…よし!!
「──土影様、今回の五影会談、角都さんが言う通り雷影様主催であることは間違いないのですか」
「お前は? …たしか最近手配書で…まぁ良い。何じゃぜ、まさかお前の様な小娘が雷影に何か言伝でもあるのか?」
「はい、雷影様にご迷惑をお掛けしましたと、こちらをお願いをします」
話が早くて助かる。
土影様の言葉に頷くと"魂刀・屍鬼切"の封印鞘から移した魂を納めた巻物を既に幾分か離れた位置にいる土影様へ投げ渡す。
「私達が回収した八尾の一部です、恐らく今回の雷影様の行動理由はそれなので全てお返ししますと」
「ハァ!?」
「あぁそうだ! 一緒に私達一同はマダラさんが率いる今の暁とは袂を分かったと議題に上げておいてください」
「マ、マダラじゃと!? 奴が暁のリーダー!? 何故奴がまだ生きておる!?」
慌てた様子の土影様に「やってしまった」と反省する。
ついマダラさんと言ってしまったが本当に伝説の人物、うちはマダラであるかは疑わしいというのが角都さんの見解だった…ならばこの場ではトビさんと言った方が良かった──そう思った頃には角都さんに抱えられその場を立ち去ってしまっている最中だった。
背後から土影様が呼び止める声が響くのを無視し、私達…というより角都さん達はその場を全速力で立ち去るのだった。
土影様一行から距離をとった暫く後、悪い事をしてしまったと思っていると角都さんが呆れた様子で話しかけてきた。
「──まったく、つくづく搔きまわすのが上手いなお前は?」
「…え? どういう事ですか?」
五影会談の主催者が雷影様である以上、事の発端である八尾の魂を返却することで多少なりとも怒りを抑えつつ、五影の方々に私達とトビさん達が袂を分かった事を伝達することが出来る…更に八尾の魂を返却によってその信憑性も増せると踏んでの事だったが?
「俺やオオノキの小僧の様にうちはマダラを実際に見た者にとってその名自体が力だ…万が一にも奴が生きているとなれば警戒せずにはいられない程にな」
「なるほど…本当に悪い事をしてしまった」
「おまけによりにもよって土影に八尾の一部を渡すとは…どうせそんなつもりはないだろうがとんでもないことをしたものだな」
いや、確かに権威ある五影の1人土影様を配達代りに扱うのは些かどうかと思ったがそれほどの事なのかと疑問を浮かべているとサソリさんもまた呆れた様に口を開いた。
「土影の奴は度々俺達暁を傭兵として利用していたんだよ。軍縮の時代だ、自里の忍だけでは立ち行かない事も多い、特にかつての大戦で"黄色い閃光"に優秀な手練れの多くを討たれた岩隠れはな」
「そんなことが、ん? それではつまり…」
「仮に五影会談の場で土影が雷影に八尾の一部を渡してみろ。岩隠れが暁を利用して八尾を襲い、失敗…五影会談に発展したことで岩隠れが大ごとになるのを恐れて返却したとしか思えねぇだろ…まさか会談に向かうまでの道中で偶然出くわした暁から返却物の配達を頼まれたなんて誰がバカ正直に信じる?」
「過激派な雷影の事だ、これが切っ掛けで岩と雲の戦争になる可能性も十分あるぞ」
「忍史上最も馬鹿馬鹿しい戦争だな」
鼻で嗤うサソリさんの言葉に全身から嫌な汗が噴き出す。
え? …戦争? 刀の需要が高まるのは刀匠としては有難いことだが手放しで喜べるわけではない…ましてやその引き金が自分なのだから猶更だ。
「ホント凄いね君、これで霧、砂、木ノ葉、雲、岩…五大里全部に喧嘩売った訳だ。コンプリートおめでとう、何か感想ある?」
「どうしてこうなるの?」
「だからこっちが聞きたいんだよ!?」
まさかこんな事になろうとは…幸い地図的には雲と岩の戦争で雨隠れの里が戦場になる可能性は高い訳ではないだろうが相手国に迂回して奇襲しようとすれば経由する可能性は十分あるし、そうでなくとも雨隠れの里と同様の被害を他の小国が被ることはほぼ確実だ。…これではリーダーさんに顔向けできないな。
…いや! まだだ、まだ希望は残っている!
「そうだ、五影会談ということは…その場には風影の我愛羅君もいるはず。彼なら私の意図に気付いて…きっと戦争を止めてくれるはず」
「他力本願な上に無茶振りだなぁ!?」
偽雨の遺した日記やその後のサソリさんからの報告で我愛羅君が一度は尾獣狩りを受けながらも今なお風影として健在であることは知っている…決して真っ当な友人関係だったとは言えないがそれでも交流はあった…あの頃の日々を風影となった今も覚えてくれているならばきっと…
3年近く会ってないしその上一度は私の同一体が命を奪った知人を信じ、(周囲の皆からの冷やかな視線を感じながらも)彼へ平和への願いを託すのだった。
八尾のタコ足キャッチ&リリース(テロ)