霧隠れの狂人   作:殻栗イガ

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結成! 新生・忍刀七人衆

 瞬間、現実と幻が交差した。

 自身の死という"不都合な現実"を"夢"へと書き換え、傷も毒も、何一つ負わなかったうちはマダラが再び現実に具現化した。

 

 前触れなく死体が消滅し、そのすぐ傍から新たに出現すると同時に一気に向かってくるマダラに勝利を確信していた水月達は一手遅れ、一瞬で彼らの真横を通り抜け霊堂へと向かう。

 

「させん!」

 

 唯一、不覚をとってみせたマダラに違和感を感じていた角都のみが自身の両腕を射出し捕らえようとするもその手はマダラの身体をすり抜けて空を切るだけだった。

 

「クソ! 俺達と戦うつもりはなかったか!?」

「長門!!」

 

 以前からトビとして見せていたすり抜ける能力と死を偽装する謎の術で悉く戦闘を避けて輪廻眼の回収を狙うというマダラらしからぬ行動に角都は戸惑い舌打ちしつつも、すぐにマダラを追いかけた小南の後に続き霊堂へと戻る。

 

 しかし彼らが戻った時には既にマダラは霊堂に安置された長門の亡骸に触れ、時空間忍術にて吸い込んでいる最中だった。

 

「やらせない!」

「いいや、手遅れだ」

 

 無数の紙を束ね攻撃を仕掛けようとする小南はマダラのその言葉で霊堂の部屋の四隅に起爆札付きクナイが突き刺さっている事に気付く。

 

「いけない! 戻って!」

 

 自身の後について霊堂に戻ってきた角都達に警告を出しつつ自らはマダラのすぐ傍、長門の隣で安置された弥彦の亡骸へと駆け寄る。

 あまりに歯痒いことだがマダラの時空間忍術に飲み込まれつつある長門はともかく、霊堂が崩壊すれば物言わぬ弥彦の亡骸が無事で済むはずがない。

 

 爆発が起こり無数の瓦礫が降り注ぐ中、必死に弥彦の亡骸に駆け寄り覆い被さる様に庇う小南の姿を長門を吸い込み終えたマダラは瓦礫をすり抜けながら無言で見つめる。

 既に死んだ者を守るというある意味では無意味な行為、それでも仲間を庇い瓦礫に埋もれるその姿をただ無言で彼は見つめ続けた。

 

 しかしそれも崩落が終われば済んだ事。

 身体の殆どを瓦礫に潰され小南が紙の身体に変化する前にその頭へとクナイを突き付ける。

 

「これでつまらん裏切りも終わりだ。あの世で精々長門と後悔するが良い──ナルトの戯言に乗せられ、村雨の口車に心変わりした事をな」

「ぅ…く…」

 

 何度も瓦礫に打たれ朦朧とした意識ではチャクラも碌に練る事も出来ず、迫る刃に抗う術はなかった。

 

「──ヤバい!」

 

 崩落に巻き込まれない様に戻りかけていた霊堂から再び外へ飛び出していた分水月達もマダラと小南の位置から僅かに離れてしまっていた。

 既に間に合わないであろう事を否応なしに理解させられながらも駆け寄ろうとした瞬間、足元の水が大きく波打った。

 

「ッなに!?」

 

 小南にクナイを振り下ろす寸前、激しい水音と共に足元の瓦礫が突き上げられ、その下から巨大蛇がマダラに向かって突進してくる。

 寸前に別の瓦礫の山に飛び移って逃れたマダラはその巨大蛇へと視線を向ける。

 

「またしても俺の邪魔をするか、それにしても早い到着だな──大蛇丸」

 

 その呼びかけに巨大蛇が口を開き、中に潜んだ人物の姿をその場に晒す。

 長い黒髪に不気味に感じる程に真っ白な肌、そして蛇の如く光る琥珀色の瞳──大蛇丸が傍らにうちはサスケを控えさせ、そこにいた。

 しかし呼びかけに応じ姿を現した大蛇丸はどこか訝しげにマダラの見つめた。

 

「──またしても…とは妙な言い方ねトビ、いやマダラだったかしら? 一体何の事かしら?」

「何だと?」

 

 村雨を殺そうとした時邪魔をして連れ去っていったのは間違いなく蛇だった、関係性からしてもその蛇の主は大蛇丸と断定したマダラだったが大蛇丸の様子は誤魔化そうとしている素振りは見受けられず、かといって他に思い当たる人物はおらず自分の想定していない敵対者の存在を感じ顔を顰める。

 

「大蛇丸様、何でここ──」

「サスケェ! お前今までどこにいやがった、心配、なんてしてねぇことしてねぇけど一体どこでなにしてコノヤロー!」

「…あぁ、忘れてたこの面倒くさい感じ」

 

 以前村雨が一度遭遇したという報告以来一切音沙汰のなかった一応の上司の出現に戸惑いながらも確認を取ろうとした矢先にそれを押しのけて思い人へ勢い任せに呂律の回ってない言動をぶつける香燐に水月はげんなりとした表情を浮かべ大蛇丸、そしてサスケへと視線を向ける。

 

「──うちはマダラ、お前がイタチと結託しうちは一族を全滅させたというのは本当か?」

「うちはサスケか…兄の真実を求めて俺を追ってきたか?」

「イタチの真実はもう知っている──だがお前とイタチの関係はダンゾウの知らない事だ、だからお前から直接答えてもらう」

「…といっても私からすれば既に貴方がうちは全滅に関与している事は間違いないと断言できるわ。貴方が先程使った術、あのイザナギを安易に使うなんてよほど写輪眼をストックしていないと出来ないからね…そしてそれ程写輪眼を集めるとなれば、うちはの人間が全滅したあの事件程絶好の好機はないでしょう」

 

 大蛇丸のその言葉に仮面の奥の写輪眼が僅かに揺らぎ──諦めた様にため息を吐く。

 

「うちはサスケ…俺の本来の予定ではお前には俺の計画の為に何かと働いてもらう予定だったんだがな」

「──本当だったという事か?」

 

 自身の問いかけを否定しないマダラに対してサスケははっきりと敵愾心を露わにする。

 水月達も同様、既に瓦礫の山から小南を救出し全員が仕掛けるタイミングを窺っている。

 

(流石にこの人数を片目を失った状態で相手にするのは面倒だ、小南には"神威"を、大蛇丸には"イザナギ"を多少なりとも知られている、これ以上の戦いは無駄だな)

 

 既に輪廻眼の回収という最優先の目的を果たしている事も含めてマダラはこの場での戦いを早々に切り捨てると自身の身体を時空間忍術によって消していく。

 

「逃げる気か…マダラ?」

「この場はな、流石に今の俺ではお前達全てを相手にするのは厳しい、この場は失礼させてもらおう」

「あのうちはマダラが戦わずして逃走とはな、やはり貴様は俺の知るマダラとは違うようだ」

「クク、ある意味ではそうかもな。…柱間との戦いに敗れ、力の大半を失った俺は自らの代わりに動く者にうちは一族の力の象徴たる両眼さえも預ける事にした──そう、長門の輪廻眼こそが俺の本来の眼だ」

「!? どういう事?」

「お前達も知る"あの魔像"、俺の代わりにアレと契約をする者が必要だったのだ。だがそれももう済んだ、これから始まる第四次忍界大戦には俺も本来の眼を使わせてもらう。──角都、このうちはマダラの本来の力をそれ程見たいのならばその時にでも相手してやろう」

 

 そう告げるとマダラの視線は長門の両眼の真実に戸惑ったままの小南へと向く。

 

「貴様もだ小南…まだこの俺に抗う気があるというのなら──クク、長門に貸してやっていた眼で、そしてお前達が集めてくれた尾獣共の力を以て今度こそ殺してやろう。お前達にとっても敵である忍連合とやらに与して俺と戦い消されるか、それともこの雨隠れにこのまま隠れ潜むのか…好きにするがいい」

 

 それだけ言い残してマダラの姿はその場から消え去った。

 暫く再び出現し不意を突いてくるやも…と皆が警戒するもその素振りはなく戦闘の緊張感はなくなり残ったのは出し抜かれた事による悔恨や近く起こるであろう戦争への懸念とそれぞれだが、それを差し置いてでもサソリは大蛇丸へ鋭利な視線を向ける。

 

「…それで、お前は何をしにここへ来た」

「勘違いしないでほしいけれど、私は貴方達に危害を加えるつもりはないわ──そもそも今の私は彼、サスケ君の行動に付き合っている身でね…彼がうちはマダラと会いたいと望んだから奴を追っていたの」

「あの男に? 君とはうちはイタチの下へ向かわせたっきりだけど一体何があったわけ?」

「お前達には関係のない事だ。──大蛇丸、奴の次の行先に見当はあるか?」

 

 仮にも目的の為に同行させていた仲間から状況確認の質問を跳ね除けて大蛇丸に半ば命令する形で問うサスケだったが大蛇丸は肩を竦める。

 

「残念ながらもうダメね。あの男は近々起こす戦争の準備をすると言った。ならば機が熟するまでもう姿は現さないでしょうね。闇雲に探し回って忍連合軍の偵察隊と出くわすぐらいなら戦争の最中に迫った方が確実でしょうね」

「……そうか、ならアンタの適当なアジトに連れていけ」

「な、おいサスケ、ウチらは!?」

 

 早々に立ち去ろうとするサスケに香燐が呼び止めるがサスケは無関心そうな視線を向ける。

 

「俺の目的にお前達はもう必要ない、"蛇"の小隊は解散する。今まで通りそいつらと一緒にいろ」

「な!?」

「相変わらず勝手だね君は」

「サスケ、お前に何があったのかは知らないが目的があの男ならば彼らと同じだ、無理に別に行動する必要はないだろう」

 

 単独行動を冷静に諫める重吾の言葉に首を振ったのはサスケではなく大蛇丸だった。

 

「実際、サスケ君の無茶振りには私も苦労しているからそれが出来たら助かるのだけど…そうもいかないのよ」

 

 ちらりとサソリへ視線を向けて大蛇丸はそう語る。

 暁に所属していた際に一時は組んでいたものの当時から険悪な関係な上、天地橋では直接戦闘を行いもした両者が共通の目的だからといって結託することは到底無理な話だった。

 

「確かに、でも貴女達が彼と行動したいのならば好きにしなさい…元々貴女達は彼女の仲間として同行してもらっていたのだから」

「…そういえば、あの娘の姿が見えないのだけど、何かあったのかしら?」

「干柿鬼鮫の監視と勧誘を1人で受け持って…恐らくだけど…」

「そう、相変わらず無茶をしたものね──もう少し、先を見せて欲しかったのだけど難しいかしら」

 

 状況が状況、あの破天荒な娘でも生存を信じる事は絶望的、殺しても死なない様に思える者が死んでいくのが忍世界の日常だと受け止める事は大蛇丸や角都達からすればとっくに慣れた事だった。

 それでも若い世代である水月、香燐、重吾などはあの狂人があっさりと殺され、その死さえも利用されかけたという事に本の少しだが消沈している様にも見れた。

 

 

 ──故にこそ角都は口を開く。

 

 

「…こんな時に言う事ではないかもしれんが──お前達と八尾の戦いを手助けする報酬として俺がお前に払う予定の"魂刀・屍鬼切"の代金3億両を肩代わりするという申し出が村雨からあったんだが…」

「こんな時に金の話か!?」

「その話の切り出し方で本当に今言う事じゃない事話しかけられたの初めてなんだけど!?」

「角都、金の話は一度後にしなさい。今後の動きを先に決めたいから」

 

 空気も読まず金の話を持ち出す角都を気まずそうな表情のまま後ろに下がらせて小南は大蛇丸と向き直る。

 

「彼らは元々村雨の仲間で貴方の配下だ、連れていくのなら止めはしない──ただし、うちはマダラに戦いを仕掛けるのならばその前にこちらに連絡を入れてほしい。協力は出来ないし、こちらから頼みもしないけれど互いの作戦の邪魔をする必要もないはずだ」

「それは確かに…協力というよりは一時休戦…という事で構わないかしら?」

 

 大蛇丸、そして小南はそう言ってサソリへ視線を送る。

 サソリはその視線に何も答えず「ふん」と鼻を鳴らすだけだったが、それは一応の納得であると両者ともに受け取った。

 

「村雨については雨隠れの人間に捜索の命令を出しておく…民間の者ならば少なくとも五大国の忍から狙われる事はないはずだ」

「そうね、私の配下の人間はどこかの誰かが解放したみたいで人手がないから任せるわ」

「すみませんねぇ! 完全に死んだと思ったものなんで!」

 

 大蛇丸がサスケに取り込まれ一時的に表に出る事が出来なくなっていた際に牢屋の人間全て解放した挙句、その死を広めさせ各地のアジトで一斉蜂起が起きる原因を作った事を唐突に持ち出され水月は逆ギレに近い形で謝罪する。

 

「次からは確証がないのに死んだと思い込まないことね…さっきもそれで不覚を取ったのだしね──まぁ…クク、あのイザナギという術は少し特殊な例だからしてやられたのも仕方ないけれど…ね」

 

 そう笑いながら言う大蛇丸の視線は水月ではなくその奥にいるサソリへと向いていて、一時休戦を語っておいてあからさまな挑発行為にサソリは懐から傀儡の巻物を一つ取り出し、大蛇丸もまた組んでいた腕を下ろし臨戦態勢をとり、気が付けば両者に挟まれる形になった水月はあわあわと首を動かす。

 

「いやいやいや、さっきまでの流れでなんでそんな感じになるのアンタら? 角都もそうだし暁に所属する奴って会話の流れも空気も読めないわけぇ!?」

「──それは言い過ぎ水月。少なくとも私は正式に暁に加入してからの空気感は別に悪く思わなかった」

「そりゃ君が誰よりも空気読めてないから…って、え?」

 

 聞き覚えの在り過ぎる声がいつの間にか自然に会話に混ざってきた事に遅れて気付いて水月達が一斉に同じ方向に視線を向けると崩壊した霊堂の瓦礫を押し除けて村雨、そして薬師カブトが生えてきた。

 

 恐らく崩落に巻き込まれていた"閃刀・黄華"の位置に時空間移動してきたのだろう。

 

 それは分かる…が、どうしてあの2人が? 

 村雨はマダラ、そして鬼鮫に殺されたのでは? と水月の脳内で次々と疑問が湧き上がるのを気にも留めず村雨は別れた時と変わらぬ調子でペコリと頭を下げた。

 

 

「──ただいま、皆」

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

 

 驚いた、ふと閃いた手段で当初のカブトさんの見立てよりも早く両腕を治し、更にカブトさんも人体改造と仙人モードによって液体化が可能になったという事で"閃刀・黄華"を利用して飛んできてみれば水月達だけでなくハレンチ博士とサスケ君も合流している上に、サソリさんと一触即発になっていた。

 おまけに水月も暁の方々への偏見を口にしているし、折角私が親しくさせて頂いている人達が揃っているのに争うのは困る。

 

 その為にもまずはこの緊迫した状態を変えようと彼ら全員へ声を掛ける。

 

「ただいま、皆」

「ただいまじゃないっての! 何で生きてんの君! どうせ殺されても化けて出てくるだろうとは思ってたけど何で生きてんの!?」

「死ぬのも化けて出るのも前提なのはどういう事…」

 

 水月の中で私のイメージはどうなっているのだろうか…とはいえカブトさんがいなければ死んでいたのは事実、もしかしたら化けて出るなんて事をしていたかもしれないし変に言い返さない方がいいかもしれない。

 

「だから言ったでしょう、確信もないのに死んだと思い込むべきではないとね。──と言っても今回ばかりは私も死んでいる可能性の方が高いと踏んでいたけれど…貴方のお陰かしらカブト?」

「なに、お陰…というよりは借りを返しただけですよ。お久しぶりです大蛇丸様、壮健そうで何よりです」

「えぇ…ところで、暫く見ない内に随分私に似た風貌になったじゃない…それどころか私もまだ出来ていない仙人モードになれている様ね…私もまだ出来ていないのに」

「冗談で無駄に圧を掛けないで下さい大蛇丸様、どうせ今はもうそこまで興味もないでしょう…」

「さてどうかしら、私は目移りして優先度を変えることは多いけど欲しいと思ったものは欲しいままよ? ──まぁ今暫くは貴方の中の私の細胞は預けておいてやろうかしらね」

 

 そうか、よくよく考えたらカブトさんとハレンチ博士は久しぶりの再会か、心なしか二人ともどこか楽しそうで良かった。だが問題はもう1人の方だ──

 

「サソリさん、こちら少し見た目が変わっていますがカブトさんです。サソリさんも以前面識があったそうですが…」

 

 手で指し示しながらサソリさんにカブトさんを紹介する。

 以前カブトさんはサソリさんの部下を装い2重スパイをしていた…それはもう既にサソリさんも知っているからこそサソリさんが動く前にこちらから声を掛けるが、サソリさんは私の事など意にも介さずカブトさんに冷たく、鋭い視線をぶつけた。

 

「お前、俺の前に顔を出して殺されないとでも思っていたのか?」

「──えぇ、少なくとも共通の敵であるあのマダラを倒す前に潰し合う程お互い愚かではないでしょう。大蛇丸様ともそういう話で落ち着いていたのでは?」

「…ふん、分かっているのなら精々俺の気分を変えない様に気を付けておけ」

 

 最悪すぐに殺し合いになるやもと心配していたが結果は驚く程にあっさりと両者共に矛を収めた。

 これは…先程のカブトさんの推測からしてもそういう事か!? 

 

「流石ハレンチ博士にサソリさん! …トビさんを倒す為に"共闘"される事にしたんですね!」

「え?」

「あ?」

「いえ、直接言うべきではないと思いますがお二人には何かと確執があるものですからてっきり殺し合いになるのでは…と心配していましたが杞憂だったみたいで安心しました。…でも考えてみたら確かにカブトさんが言う様に共通の敵がいる状況で争うなんて普通はしませんね」

 

 しかしそれにしてもお互い思うところはあるだろうに状況を鑑みて即座に手を組めるとは正しく目的を果たす為ならば己の感情を殺す一流の忍そのものだ。

 

 憎しみ、恨み…いや、もう少し健全な言い方をすれば対抗意識というべきだろうか? 

 なんであれ、そう言った容易に飲み込めぬであろう感情をも必要とあらば律して合理的な判断を下す事こそが"感情を消す"という事なのだろうとアカデミーの頃の教えを思い出し、それを実行してみせた2人へ心から礼賛の言葉を送る。

 

 何故かハレンチ博士とサソリさんがどちらも渋い表情を浮かべているのが少し気になるが間違いなく気のせいだろう! そんな事よりも重要なのがこの場に対トビさんという目的を同じくし、ハレンチ博士とカブトさん、サソリさん、角都さん、そして水月と私にとって大切なメンバーが揃ったという事だ! 

 

「水月、いつか言っていたハレンチ博士と暁の方々の共闘が今実現しようとしている──これがどういう事か分かるでしょう?」

「…え──いや、待って…それは…」

 

 元はハレンチ博士に造った物ではあったがその後譲り渡される形で継承された極めて危険な毒と呪印が刻まれた"蛇刀・蝕"を持つカブトさん。

 

 巨大かつ強力な爆発刀を十全に扱える様に尾獣に匹敵するとされる特殊な生命体"五源龍"の肉体を改造し建造された"巨大傀儡人刀・櫛儺娜"とそれを完璧に操るサソリさん。

 

 歴代火影達の魂さえも喰らう最強の封印術"屍鬼封尽の術"、その死神の小刀と腕を奪い取り造り上げた霊剣"魂刀・屍鬼切"を宿した角都さん。

 

 そして…サスケ君に闇討ちされた際に落とされていた君磨呂さんの形見とも言うべき彼の力の結晶、"壊刃・遺骨"をハレンチ博士へ手渡して、再び水月と向き直る。

 

 まだ2枠、残念ながら今はいないがそれでもこの場にこれ程優れた作品とそれに釣り合う最高のメンバーが集まっている事実に水月も歓喜に打ち震えている様だ。

 気持ちは分かるが今から一時的であっても本格的に動き出す部隊長がそれでは格好もつかないだろう。

 

 水月が背負う"断刀・首斬り包丁"を取り上げて彼に握らせそれを大きく天に向かって掲げさせると何という偶然か、以前に訪れた時に説明された止む事のないとされる雨隠れの里の雨雲が晴れて大きく虹の掛かる青空が開かれる。

 

 悪くない偶然、いや、あるいはこの雨隠れの里における神、リーダーさんが祝福されているのだろうか。

 ありがとう、死してなお私達に奇跡を見せてくれて…ならばあの方にも届くように大きく宣言するとしよう。

 

「我らはトビさん主導である暁と袂を分かち雨隠れの里本来の"暁"として、そして崩壊していた音隠れの忍としてこれより名を改め行動を始める。その目的はただ一つ、"月の眼計画"の阻止! 我々は──」

 

 虹の掛かる空を一羽の鷹が甲高い叫びを上げながら飛び去っていくのを眺めながら、幼き頃より思い描いていた組織の名をここに宣言する。

 

「"新生・忍刀七人衆"として水月をリーダーとして共闘を開始する──」

「──わけないだろこのアホ!!」

「何で!?」

 

 脳天目掛けて振り下ろされた首斬り包丁を間一髪で回避する、折角九死に一生を得て帰ってこれたというのにあんまりだ。

 

「言っとくけどあいつ等共闘する気全ッ然ないから! 君が来る前殺し合い一歩手前だったからね!?」

「──そこから止めてくれたのだから大丈夫なのでは?」

「どんだけプラス思考なんだよ! だいたい何でメンツが暁と音隠れの特級犯罪者集団でボクがそのリーダー!?」

「"新生・忍刀七人衆"の結成とその隊長となる事は私を誘った時の水月の夢でしょう、忘れたとは言わせない」

「メンバー! メンバーの問題! もっかいあの連中を冷静に見てボクに従いそうな奴いると思う!?」

 

 …確かに里抜けやかつての上司を殺害した経験のある癖の強い人達が集まっている、素直に従うかと聞かれると返答に困るが──

 

「…大丈夫、ハレンチ博士やサソリさんが共闘するのはトビさんという共通の敵がいるからというのは分かっている。だからこれは一時的な組織、これから起こる戦争が終われば自然と消滅するであろう幻の如き存在。だからそんなに気負わないでいつか造る"新生・忍刀七人衆"を率いる練習と思えば良い、幸い皆さんこれ以上の無い実力者だから少しミスをしてもそれを補うだけの力は持ち合わせている…でしょう?」

 

 水月を安心させる様に言い聞かせ、ハレンチ博士達の方を見れば──おかしい、どうして皆そんな呆れた顔でこっちを見ているのだろうか? 

 

「…おい、念の為に聞いておくが俺達の戦う相手は輪廻眼を得たうちはマダラだ。それをお前は"今後の練習"として、その通過点と見做すというのか?」

「勿論です。私があの方の計画を拒むのはあの方の唱える"月の眼計画"が私達の夢を否定するから。夢を掴む為に戦うのだからこれから起こる戦争はその為の通過点でしかない。──違いますか?」

「クク、つくづく──いや、貴女はそれで良いわ」

 

 ハレンチ博士が満足そうに頷いた。

 他の方々も相変わらず、いやますます呆れた様に笑みを浮かべているが不思議と先程と比べて不快感はない。

 

「はぁ…水月だったか? 安心しろ、この蛇ヤローとくだらねぇ小競り合いするのも妙に馬鹿馬鹿しくなった。…この通過点とやらを超えるまでは大人しくしておいてやる、でなきゃその狂人が次に何をするか分かったもんじゃねぇからな。代わりにそいつしっかり監督しとけ」

「最後のが目的だろ絶対!」

「まぁ、精々上手く使ってみなさい。これはこれで楽しませてもらうわ」

「上司が部下になる側は全ッ然楽しくないんですけど!」

 

 何だかどこか妥協するような形で納得された感もあるが何であれサソリさんとハレンチ博士が纏まってくれた様で何よりだ。

 カブトさん何かは水月の肩を何度もポンポンと叩いて気遣っている様子だしこの調子ならば案外上手くまとまるかもしれない──水月にはああも言ったが内心としてはずっとこのメンバーで続けていきたいのが本音だ、実に良い傾向だ。

 

「それではこれにて"新生・忍刀七人衆"結成です。そうと決まれば早速カブトさんの"蛇刀・蝕"の調整をさせて頂きます」

「調整? これをかい?」

「はい、元々ハレンチ博士が咥えて使う事を想定していたので柄のサイズをカブトさん様に調整するのは勿論、以前に綱手様と戦った際には毒蟲をそのまま使っている事で解毒されてしまったのでやはり毒は自作の物の方が良いと思っていまして…今の毒蟲をベースに少し改良したいな…と」

 

 流石に綱手様は特殊なケースだとは思うが解毒出来る人がいるというのはそれはその毒が周知されたものであるという事に他ならない。

 それでは毒の本来の強みが活かせているとは言い難い、刀の能力も最高の仕上がりになってこその至高の作品と言えるのだ、そこに妥協はあってはならない。

 

「…でも毒の調合は刀造りとは全くの別物だよ、大丈夫なのかい?」

 

 カブトさんの懸念はずばり正しい。

 というか、それが出来ないからこそこの刀を造った時に毒蟲をそのまま利用することに決めたのだ、だが今ならば──タイミング的に先程の"新生・忍刀七人衆"の結成がまるでこれの為にやったことの様に思えて少し気が引けてしまうがそれでもここで臆してはいけない。

 

「それは…その、こうして皆さん集まって、お名前からして正に毒のスペシャリストというべき方がいらっしゃるので是非とも知恵を貸して頂きたいと思いまして…何卒、よろしくお願いいたします」

「仕方ないわね」

「仕方ねぇ」

 

 そんな必死な思いが通じたのか、快い返事が2つ聞こえて深く下げた顔を跳ね上げて──ん? 何で今返事が2つあったんだ? 

 

「──あら?」

「──あ?」

 

 無数の毒蛇を従え、自らの真の姿も空気に触れる事で気化する強力な痺れ毒を有するハレンチ博士。

 天才傀儡造形師として、あらゆる傀儡を作成しその多くに毒仕込みを搭載されているサソリさん。

 先程までの落着感はどこへやら、ピリピリとした緊迫感が支配した空間で両者ともに睨み合う光景が飛び込んできた。

 

「あ…」

 

 やってしまった。

 そう思った時にはもう遅い、誰しも自らが専門とする分野で自分よりも他の誰かが評価されること程気に入らない事はない。

 そんな事は他でもない私自身が良く分かっているはずなのに。

 

 自身の言い回しを深く後悔するもそれでこの場が好転することはない。"新生・忍刀七人衆"結成から30秒──部隊崩壊の危機が訪れた。





遂に本作も3年目。
いつもご愛読、感想・評価、誤字報告を下さる皆様方、大変ありがとうございます。
ゆっくり更新で続いてきた本作ですがいよいよ最終章に突入致します、といっても今後も牛歩な更新になると思いますので完結まで気長にお付き合い頂ければ幸いです。

良ければ感想・評価よろしくお願いします。
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