霧隠れの狂人   作:殻栗イガ

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治療の代償

 静寂が支配した場で睨み合う両者を何とか諫めようと思いながらもその為の言葉が思い浮かばず二の足を踏む。

 毒のスペシャリストとして協力を求めただけなのにどうしてこんな事に…今となっては私がどちらに声を掛けたつもりだったかはどうでも良い、そんな事よりもこの場を如何にして治めるかが重要だ。

 例えば今更私がどちらを名指ししたとしても致命的な亀裂は残ったまま、何ならより深いものになるやもしれない。

 

 決して優劣で選ばれた訳ではないと双方に納得と理解をして頂いた上で平和的な解決を導き出さなければ…。

 

 ことの発端である"お名前からしても毒のスペシャリスト"という文言…あれのせいでハレンチ博士とサソリさん両者ともに自分の事と思ってしまった訳だが裏を返せばあくまで"蛇"と"蠍"の毒に着目しているだけであってお二人の扱う毒のどちらが勝っているのかは重要ではないという事を伝えれば──よし、それでいこう。

 

「──水月、ハレンチ博士とサソリさん関係なしに蛇と蠍って毒性生物としてどっちが優れている?」

「知らないよ! そんな事よりあの2人止めて今すぐ!」

「止める為にその知識が必要」

「そんな雑学でどうやって止めるの!? だいたい蛇と蠍の優劣なんて誰も知りゃしないよ!」

 

 それはそうだ、忍として毒物について学ぶ機会はあるが精々が主な毒物の種類や解毒されるまでの応急処置のやり方ぐらいだ。医療忍者などになればより深く学ぶのかもしれないが戦闘要員の忍としては不必要な知識だ、この場でそんなニッチな知識を持つ人なんて──

 

「蛇は世界で3400種以上存在し、その内毒蛇に分類される種は800~900種近くいるとされている」

「凄い、まるで蛇博士…」

「君も君でどっから拾ってきたのその雑学は!?」

「調べただけだ、大蛇丸を倒す為にな」

 

 まさかのサスケ君の豊富な蛇知識に感服する。

 蛇ってそんなに種類いるんだ…と思わず脱線しそうになるが、先程のサスケ君の言葉からある可能性が浮かび上がり八ッとする。

 ハレンチ博士を倒す為に蛇について詳しく調べた──ならば以前にサソリさんを倒す計画を練っていた人物も同様なのではないだろうか、そう思いカブトさんへと視線を向ける。

 

「カブトさ──」

「ボク蠍博士じゃないよ」

 

 出鼻を挫かれ言葉が詰まる。

 思わず無言でカブトさんを見つめ続ければ彼は神妙な面持ちで首を振って再び口を開く。

 

「ボク…蠍博士じゃないよ」

 

 二度も言われたら残念ながらそうなのだろう。

 思えばサソリさんも特に動物の方の蠍を口寄せしたりした覚えもない、わざわざ調べたりもしないだろう。

 しかしこの場に蛇博士しか居ないのならば比較も出来ないこの仲裁は無理だ…つまりもう打つ手はないのか? 

 

 八方塞がりな状況に絶望の二文字が浮かび上がるがそれでも何か手はないものかとハレンチ博士とサソリさん、睨み合う両者に視線を戻すと意外な展開を見せていた。──ハレンチ博士が両手を肩程まで上げて降参の素振りを余裕の笑みを浮かべたまま見せていた。

 

「何の真似だ?」

「生憎、私は私で個人的にやっておきたい事でいくつかあってね。これまでサスケ君に付き合っていたから手が回らなかったけれど、この開戦直前の余暇に済ませておきたいの」

「──何をするつもりですか?」

 

 それは私の作品造り以上に優先すべき事なのか。

 ハレンチ博士が身を退いてこの場が収まる──それはさっきまで望んでいたはずなのに思わず不満げな声で口を挟んでしまう。

 

 我ながら勝手な嫉妬ではあるがそれでもハレンチ博士が一体何に興味を惹かれているのか気になったのだが、そんな子供の様な性根が見え透いたのだろう、ハレンチ博士はほんの少し肩を震わせて笑った。

 

「なに、戦争に勝つ為の準備をしておくだけよ。同じ新生・忍刀七人衆とやらのメンバーに不都合はない事は誓っておくわ」

 

 果たしてその発言は何やら秘め事を行う上で元暁の方々に対する宣言なのか警告なのか、どちらかは定かではないがそういう事ならば私が食い下がるしかないだろう。

 

「──そっちはそっちで楽しそうではあるけれど、出来上がりに期待するという楽しみ方も悪くはない…気に食わないでしょうけど、よろしく頼むわサソリ」

「チッ」

 

 傍から見ればどちらが優れているのかという勝負にハレンチ博士が勝ちを譲ったかの様な印象にもなるだろう、それはきっとサソリさんにとって不愉快極まりない事のはず。

 或いはハレンチ博士にとっても「よろしく頼む」と願うのも好ましくはないかもしれない。

 

 それでも尚ただ舌打ちするだけで済んだというのは奇跡──なんて都合の良いものではないはずだ。

 ハレンチ博士もサソリさんも普段と変わらない様子ではあるがそれでもどこか普段と比べて緊迫感を覚えずにはいられない。いや2人だけではない、角都さん、小南さんも同様だ。

 

 指折りの実力者である彼らであっても、いやそんな彼らだからこそ"あのうちはマダラさんが輪廻眼を手に入れた"という事実を何より重く見ているのだろう。

 だからこそこうして浅からぬ因縁のある者達が集まってなお最後の一線を越えず保ったまま同じ部隊に属する事を飲み込んだのだ。

 

 私達よりも遥かに過激な時代を生き抜いたからこそ、これから起こる大戦を生き抜き、勝ち抜く事を見据えている──流石だ。

 戦争が起こる前に内部崩壊するかも…なんて彼ら程の人物を見誤るにも程があった。

 

「小南さん、ここ雨隠れで鍛冶場をお借りする事は?」

「問題ない、この里の者達は皆私に、ペインの意思に従う。すぐに貸し与える様に指示するわ」

「ありがとうございます。あ、でも大切な場所をお借りするのですから私からも直接顔を合わさせて下さい」

 

 皆がこの戦争に本気で臨んでいる。

 ならば新生・忍刀七人衆として彼らを誘った私も、いつまでもその結成に浮かれてはいられない。早速小南さんに鍛冶場の間借りを要求すれば心強い返事を頂けた。

 

「それでは早速──」

「ところで、意味不明な展開が続いたせいで聞きそびれたんだけど君どうしたわけ、その髪?」

「あ、これは──」

 

 早速鍛冶場へ向かおうとした矢先水月に呼び止められ足を止める。

 暫く前の木ノ葉の小隊がハレンチ博士のアジトに潜入してくる一件が起きるまでの3年近く鍛冶場に籠りっきりで前髪が邪魔になったら整える程度だったせいで後ろ髪は膝裏辺りまで伸びたままだったのが今では肩の辺りまで短くなっているのだから気付かれないはずがないのは分かっていたが特に気にしたりはしないだろうと思っていたから少し驚いた。

 

 しかし既に両腕の処置の済んでいるのだから両腕を刺された説明をして余計な心配をされるのも気が引ける。ここはそれとなく誤魔化そう。

 

「…出家」

「せめてイメチェンって言え誤魔化す気あんのかテメェ!?」

 

 何とか絞り出した誤魔化しはあっさりと香燐さんに看破されて軽く叩かれる、出家というには断髪が半端だから苦しい言い訳と思ってはいたがやはり通用しなかったらしい。

 それにしてもイメチェンか…咄嗟に出て来なかったが確かにそう言った方が遥かに現実味がある…こんなところでお洒落への疎さを実感させられるとは。

 

「はぁ…ま、この際君の髪はどうだって良いけどその両腕の包帯は? 鍛冶場を借りるつもりみたいだけど怪我してんじゃないの?」

「ああ、これは…大丈夫、両腕の傷はカブトさんに治して貰えた──これはそれの副産物? …といったところ」

「また何かろくでもない事を…ってか結局のとこやっぱり殺されかけてんじゃんか君」

「あ…」

 

 さっきからボロを出し過ぎた、そもそも髪の毛を一気に切って両腕に包帯を巻いているという風貌の激変からして隠すこと自体無理があった。

 そんなあまりの杜撰っぷりに水月達ももう完全に呆れた様子だ。

 

「…しかし、両腕が一度は傷を負ったということは干柿鬼鮫はやはりうちはマダラの仲間で間違いはないという事か?」

「あ、…そうですね。残念ですがその様です。何とか鬼鮫さんから逃げようとした際に突然現れたマダラさんに阻まれて…」

「いやもうほんと何で君生きて帰ってこれたの? …そりゃ生きてることは何よりだけどさ、いよいよ君を狂人なんて仮にも人の括りに入れるのも嫌になってきたよ」

 

 そればかりは本当に全てカブトさんのお陰だが…だからといってそんなお化けか何かを見る様な目で私を見るのはやめてほしい。

 しかし私の様な一刀匠が鬼鮫さんはおろか、あのうちはマダラさんと対峙して生き残ったなど、たとえ助けてくれる人がいたという前提ありきにしても到底信じ難い事、いっそ死んで蘇る方がまだ可能性があるかもしれないと思うと否定するのも難しい。

 

 

 仕方ない、ここは否定するのは諦めて重吾さんの問いに答えて話を進める事にしよう。

 

「…出来れば違っていて欲しかったんですが…鬼鮫さんはマダラさんの計画に心から賛同している様子でした。勧誘は…もう難しいかもしれないです」

「そ、まぁボクとしては好都合だけどね。元々あの人は倒すつもりだったんだ、敵でいてくれた方が容赦なくやれる」

 

 そう、鬼鮫さんを打ち破る事は水月からすれば最初から決めていた事であり、私もまたそのつもりで協力していた…だから鬼鮫さんが敵であると分かったところでどうということはない。

 

 どうということはない…が、それでも出来る事なら、殺し合いでなく同じ七人衆としての競い合いという形式での決着であってほしかった。

 それならば水月も鬼鮫さん、どちらかが死ぬこともなく七人衆のメンバーの質も更に良い物になったことだろう。

 

 

「…悔しいな」

 

 どうして鬼鮫さんはマダラさんの計画に乗る事を選んだのか。

 鬼鮫さんとは…親しくして頂いていると思っていたのだが、あの人の事情を何も知らず、何も教えて貰えていなかったのだと理解させられ、思わず誰にも聞かれることのない様に小さな声で呟いた言葉は再び降り始めた雨の音と重なり消えていった。

 

 

 

 その後は小南さんが自らの身体の一部を無数の紙へ切り離すことで作った折り紙の蝶の案内で、ここに居る間の宿泊先へ向かう皆と別れ、私は小南さんと共に雨隠れの里特有の鉄塔建ち並ぶ街中へ足を運んだ。

 

 先程の小南さんの言葉の通りこの里の方々はリーダーさん、小南さんの事を慕って、いや崇拝していると言っても過言ではないのだろう。

 それ故に小南さんが突然街中に姿を見せた事が戸惑いにもなるのだろう。時折「天使様がなぜここに?」等と疑問を口にする人達もちらほらいる。

 

 そして遂には「あの…」と断りながらも恐る恐ると歩み寄る男性が現れた。

 抜け忍の証である横一直線の傷が入っているが雨隠れの額当てをしている事からして彼は周りの民間の人達と異なり忍のようだ──周囲から崇められている小南に委縮しながらも話掛けられる事からしてもある程度の繋がりはあるのかもしれない。

 

「遣いの天使様…失礼ですが、何故この様な場所に? 数日前に侵入者がいたと噂もありましたがもしやまだ何か…」

「侵入者の件は既に済んだ、もうその件で心配は要らない。ここには別件でだ」

「そうですか…そちらの方は、もしや例の暁という組織の…」

 

 少し意外だったが考えてみれば里全体がリーダーさんの管理下である事を考えれば彼らが暁について知っているのはおかしくはない、そんな風に納得している内に小南さんが彼の問いに肯定しつつ私以外にも暁のメンバーが滞在することを説明してくれており、これならば暫くすれば雨隠れの里内ではある程度自由が利く様になるだろうと内心で安堵する。

 

 戦争が起きるまでどこかの一室に隠れるなんてなればストレスもかなりのものだろう…私はともかく水月達が快適に過ごせるならそれに越したことはないと、そんな風に考えている内に小南さんの話も終わったらしく改めて小南さんの紹介の下、間借りさせて頂く鍛冶場へと訪問するのだった。

 仕事場である鍛冶場を貸し出せという無茶な要求だが小南さんからの頼みである事から男性は快く承諾し、すぐさま明け渡しの準備を始めた。

 

 有難い事だ、本当に、感謝してもしきれない程に…それでも先程の民間の人達にしてもこの男性にしても皆小南さんの紹介に"ペイン様の直属の部下の方々ならば喜んで"と躊躇うことなく歓迎の意を示す姿を見ていると感謝の気持ち以上に物悲しい気持ちになってくる。

 

 三つの国による争いの戦場となり深い傷、深い悲しみが刻まれたこの雨隠れの里に他里にさえ無い程の巨大な建造物をいくつも建ち並べ、多くを失った人々に神として"縋る事の出来る存在"として彼らの心の支えとなったリーダーさん。

 そのリーダーさんが既に亡くなられたと知った時彼らは、そしてこの里は果たしてどうなってしまうのだろうか…。

 

「…村雨?」

「あ、すみません──リーダーさんは本当に皆さんに慕われているんですね」

 

 思わず考え詰めてしまっていたのが気付かれたのだろう、小南さんに名を呼ばれハッと顔を上げる。

 歪で一時のものに過ぎずともここに築かれていた平和、それが既に崩れている事は事実だとしてもリーダーさんが成した事が消えた訳でなく、今もこうして私達の行動を後押ししてくれている。

 

 だからこそ、リーダーさんの為ならばと自分にとって大切な仕事場であろう鍛冶場を整理する男性の背中を今度こそ感謝して見つめる。…まぁ同業者としては里長から貸し出せと言われて簡単に承諾するのは正直どうなのかと要求した身で実に理不尽ながらもちょっと思ってしまうが。

 

 しかしお陰で仕事場が確保出来たのは確かだ。

 整理を終えた鍛冶師の男性が小南さんの手配した宿へ向かったのを確認した後、貸し出して貰った仕事場を見渡してみれば流石に環境の違いかハレンチ博士のアジトや前の竹林の中の鍛冶場と比べると些か設備の質は劣る…が、問題はない、その分私自身の腕の質も上がっている。

 

 …正直腕の質の上がっているというのは技術向上的な意味合いで使いたかったのが本音だがまさか肉体改造的な意味合いで使うことになろうとは思いもしなかった。

 だがそれもまた良し。

 思いもしなかったことを成したという事はそれまで自分の想定していた事以上の事が出来たという事だ。

 

 さて、一度大きく息を吸い込んでみれば設備の質が劣ろうと変わらぬ鉄と灰の匂いが身体の中に沁み込んでくるのを感じる。

 これならば問題ない、そう判断すると両腕に巻き付けた包帯を引き剝がして鱗に覆われた皮膚を露出させる。

 

 鬼鮫さんによって3ヶ所深手を負った両腕を治して貰う際に、2ヶ所目の治療に差し掛かった最中にどうせならと処置を受ける為に動けないのを利用して仙人モードになっていた。

 自然エネルギーを取り込み練り上げる仙術チャクラは全身を活性化させる…実際身体能力の向上は著しいがそれが髪にまで影響があるかは定かではなかったが少なくとも仙術チャクラ自体は込められていたのだろう、仙人モード中の髪で再構築された肉体は怪我をする以前よりも強いチャクラを感じる様になった。

 

 しかしその一方で、やはり鍛冶場以外の環境で自然エネルギーを取り込むのが苦手なのに無理やりに試みた結果身体の七割近くが蛇化した不完全な仙人モードだったのがまずかったのか、それとも仙人モードの髪を使うという発想が駄目だったのか…はたまたただでさえ大掛かりな医療忍術の最中に唐突に仙人モードを利用するという無茶振りをしてしまったからなのか、治療が施された両腕は蛇の様な鱗に覆われてしまった。

 

 これはこれでハレンチ博士の師弟関係と表れと思えば悪くはないと思ったがカブトさんの見立てではこれも練り込んだ仙術チャクラを使い切ってしまえば元に戻ってしまうらしく残念ながらあまり長期の恩恵は受けられないらしい。

 しかし一時的なものであってもこれで私の仙人モードの欠点を補う事が可能となった。

 

 どうやら私は刀造りで培った経験故か集中力はあるらしく"動かず自然エネルギーを取り込む"という技術はあるらしく、また通常のチャクラ以上に強い力を持つが故の仙術チャクラによる肉体への負担も水化の術との併用で耐え得る事が出来ることから仙人としての素質はそれなりにあるらしいのだが何分忍としての素質、要するにそもそものチャクラ量が足りないせいで自然エネルギーを取り込んでも混ぜて練り上げる仙術チャクラ量は仙人モードを極めるには不足しているというのだ。

 

 その辺り"選栄蛇酒"は口寄せ蛇から抽出した仙術チャクラを取り込める分自然エネルギーの調達以外にもチャクラ量の不足を補うという役目も果たしてくれていたのだが今は既にこの両腕に予め仙術チャクラがストックされているようなもの──あぁ、そう考えればこれは綱手様の額に溜められたチャクラに近しいのかもしれないな。

 

 あれも素晴らしい技術だがそれを仙術チャクラで再現出来たのならばこれは中々革新的な技術なのかもしれない。──いや、仙人モードになった本人の髪で再構築した肉体にストックするというという事は結局のところ本人が仙術チャクラの練り上げを習得してなければ出来ないということだ。

 

 私の様なチャクラ量が足りない者ならばともかく、まともに扱える人ならば普通に必要分練り上げればいいだけだし、そうでなければ今のカブトさんの様に仙術チャクラを練れる動物と一体化すれば良い。

 おまけにこの方法には自分以外に優れた医療忍者に肉体を再構築してもらう必要もある…そう思うとあまり汎用性には欠けるか。

 

 ──いけない、少々思考が脱線している、ちゃんと集中するとしよう。

 とにかくこれで私が"完璧な仙人仕様"になるだけのチャクラ量が漸く確保できるようになった。

 三尾の甲殻の様な頑強な素材ならばともかく今から扱う素材は万が一にも傷付いたら途端にダメになるはずだが感知能力に優れた仙人モード、その完成状態ならば恐れるものは何もない。

 

 素材を纏めた巻物の中から2本の筒を取り出すとその中に保存液と共に収められた赤い瞳と目が合って思わず笑みを浮かべてしまう私を小南さんが目を見開いて信じられない物を見る様な目で見る。

 

「村雨、貴女その身体…それにその眼は──」

「写輪眼。木ノ葉のダンゾウさんから頂いたものですが眼なんて元々繊細なものな上に写輪眼ともなれば貴重な代物ですから使い道は既に決めていてもそれを実現させる為にもう少し感知能力が欲しかったんですが…今ならそれが出来る」

 

 写輪眼を作業台の上に慎重に置くとその傍らに写輪眼に掛け合わせる素材を取り出して並べる。

 近く確実に起こる戦争、始まってしまえば私に出来る事は殆ど何もないだろう──当然だ私は忍ではないのだから。

 

 私は刀匠、戦う者達を生かす為の、そして殺す為の武器を造る者だ。

 だからこそ──私の戦争は皆より一足先に、今ここから始まる。

 

 必要な物を出し終えた巻物をバッグに戻し、そのついでにバッグの中に押し込んでいたいつもの作業服を取り出すと暁の衣を脱ぎそれに着替え──ようとした私を小南さんが目を見開いて信じられない物を見る様な目で見る。

 

「村雨、貴女その格好…」

 

 絶句する小南さんに一体何事かと首を傾げるがすぐに合点がいった。

 そういえばカブトさんの治療を受ける際に下半身が蛇化する不完全な仙人モードになった事で下に履いていたのは駄目になっていたんだった。

 

 幸い暁の衣装が丈が長いお陰で上手く誤魔化せられたのかカブトさんにバレてないようだったから黙っていた上に水月達と合流した後は色々あって完全に忘れてしまっていたが私こんな格好で七人衆結成の宣言をしたり雨隠れの里を歩き回っていたのか…いや、問題はそこではない。

 すぐさま暁の衣を纏い直して小南さんと向き合う。

 

「──忘れて下さい!」

 

 しかし私の懇願は叶う事なく小南さんに先の皆と別れた単独行動と今回の身だしなみを合わせて色んな意味で無防備な行動を慎む事、そして暁の衣の赤い雲模様の意味やその成り立ちを踏まえた上で大切な衣装を変質者的な着用をするなと長時間説教されるのだった。

 

 

 

 私の戦争が始まるのはまだ先になるらしい。

 それはそれとして先に着替えさせてほしかった…。

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