霧隠れの狂人   作:殻栗イガ

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大反逆

 7つの花弁状に広がる水の鏡はその中心で空へ向かって突き上げられた十拳剣を写し取り、7本の虚像を造り出す。

 流石に…偽物とすぐに分かってしまうがそれでも目の前の光景に心が躍る。

 

 中心の──オリジナルの十拳剣に事前に突き刺さしておいた小南さん(当然、言うまでもない事だが紙分身だが)は刀身に吸い込まれる最中に鏡から出現した7本の刀に突き刺さりそれら全てに全身を吸い込まれていく。

 

「…素晴らしい、流石は四代目水影様の扱った術…贋作である事は一目瞭然ではあるけれどその性質には劣化は見られず本物と全く同等の性能…惜しむらくは極短時間の存在に過ぎない事だけれど…私がその仮初めの存在に器を与えて永遠に──」

「刀に然程詳しくない私でもあの刀を複製出来る事が凄い事なのは何となく分かるが…自分が串刺しにされた上に飲み込まれていく光景を嬉々として見られるのは複雑だ」

「ともあれ実験はこれで成功ね。それで村雨、本当にこの虚像の器を用意なんて出来るのかしら?」

「原理としては"魂刀・屍鬼切"と同じなので恐らく大丈夫です…特殊な素材はやはり必要になりますが…」

 

 十拳剣に対しての水鏡の術を解き四代目水影様の杖を片付け始めたハレンチ博士にそう答える。

 

「素材? また何か変な事させる気ぃ?」

「大丈夫、既にあるものだから」

「…これの事ね」

 

 ハレンチ博士が取り出した筒の中には保存液に浸かった8つの写輪眼──そう、今回の作品で必要となるものがあった。

 

「サスケを手塩掛けて育ててまで手に入れようとした写輪眼なのに。…どういう風の吹き回しなのやら」

「私が欲しかったのはサスケ君の身体ごと手に入れた写輪眼よ。これは別のもの…それに器が手に入らなかった以上それとは別の面白い使い方をしてみたくなっただけのこと」

「それにしてもあんな浪漫溢れる企画を持ち込んで頂けるとは──刀匠冥利に尽きます」

「なに、そのやり取り…凄く不穏で嫌な予感がするんだけど…」

 

 水月が何やら警戒している様だが今回はハレンチ博士の持ち込みの企画だ、何も問題はないだろう、ただ一つだけ懸念があるとすれば──

 

「ただ…イタチさんは十拳剣を万華鏡写輪眼の能力で扱っていたのですよね…出来る事ならこの眼全てを万華鏡写輪眼にしたいところではあるのですが…難しいですか?」

「万華鏡写輪眼はうちはの人間でさえ開眼したのは極少数…その開眼条件も少々厄介な条件らしいわ」

 

 …やはり、か。

 ハレンチ博士が敢えて渡した状態のままで保存している事からしてそうではないかと思っていたが、その予想の通り、あくまで通常の写輪眼のままで挑戦しなくてはならないという事か…。

 

「あ! でも万華鏡写輪眼を開眼したサスケ君にこの眼を移植したら案外サスケ君側に引っ張られて万華鏡写輪眼になったりするのでは? とりあえず一度両目移植して変化があればそれを繰り返し──」

「ほら来た! すぐにそうやって倫理観を投げ捨てようとする悪い癖!」

「悪くはないけれど…写輪眼はチャクラの消費が大きい。万華鏡写輪眼になれば猶更よ。それを8つなんて戦略的とは言えないわね」

「なるほど確かに…しかしそうなると上手くいくかどうか。──時間はないですが試行錯誤を繰り返すしかないですね」

 

 開戦前の僅かな時間──間に合う保証はない、ならば一刻も早く始めるしかないだろう。

 戦争前に造る最後の作品…そのつもりはないが戦争が始まればそれが私の最後の作品になる可能性だってある──持てる力全てを注ぎ挑むとしよう。

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

 鍛冶場に引き籠って5日後…仮に完成させるならそろそろと思ったのか──それともそろそろ空腹で死ぬ頃だろうと思ったのか、リンゴを片手に久しぶりに顔を見せにきた水月に正直に明かす。

 

「無理そう」

「そりゃ霊剣を実体の剣に組み込むとか…まぁ既に一回やってるけどこっちからすれば意味不明だしね」

「屍鬼封尽は霊体といえど術者に憑依する仕組みで造られた忍術…つまりは刀に人の細胞を埋め込んでおけば憑りつかせるのは可能だったけど今回はあの時以上に難しい…霊体として単体で存在している忍具を憑依させるには器も…繋ぎ止める為に必要なチャクラ量も尋常じゃない」

 

 これを人の身で行っていたというのだからイタチさんの力量には感服するばかりだ…一体どれ程の負担に襲われていた事か、既に亡き人物に思いを馳せながらリンゴを齧る。

 

「チャクラというのは皆がイメージしているよりも更に応用が利く…たとえ霊体であっても強力なチャクラならば繋ぎ止める楔になり得る…ただし霊体の持つ力が強ければ強い程必要なチャクラも多くなる。…写輪眼の持つチャクラならばそれを満たせると思ったけれどこれは想像以上だった」

「なるほどね…ってか良くそんな事調べたもんだね、大蛇丸の研究?」

「実体験、リーダーさん…ペインさんに魂を抜き取られかけた時に無我夢中で魂を追いかけてチャクラで繋ぎ止めた経験からの知識」

「……もう今更ツッコまないよボクは?」

 

 自らの体験を通して得た知識を語っているのにどこにツッコミどころがあったんだ? 水月の感性は時々分からない。

 

「で、結局どうすんの? 君の事だからお手上げ…って訳ではないだろうけど代案あるの?」

「代案…というよりは、追加投資なら一応」

「…どういう事?」

「これを見て」

 

 作業台に並べた7本の試作品の刀の内1本を手に取ると食べ終えたリンゴの芯に切っ先を突き刺す。

 刀は当然芯を貫くが動作はそれで終わり──これではただの刀だ。

 だがそれとは別に鍛冶場の端に安置してある霊体の瓢箪にチャクラを注ぎ込むとジワジワと刀身の中へとリンゴの芯は吸い込まれていく。

 

「──これが十拳剣の能力か、複製出来てるじゃん?」

「複製自体は最初から出来てる、"水鏡の術"で造った複製体を器となる刀に封印術で付与して、その能力を写輪眼から供給したチャクラで行使している…だけど──」

 

 やがてリンゴの芯を吸い込む動作が止まり、それどころかゆっくりと刀の中からリンゴの芯が元に戻ってくる。

 

「これが問題。"水鏡の術"で造った影響か、オリジナルの十拳剣が存在を維持出来なければ複製体の能力は失われてしまう…つまりオリジナルの十拳剣が近くになければこの複製体達はただの刀に成り下がってしまう」

「5秒も維持出来てないし…おまけに封印途中に能力が解けたら途中で止まるどころか戻っちゃってるし…流石に話になんないよこれ」

「当然、オリジナルの十拳剣を出現させているのも私のチャクラでなく写輪眼から得たチャクラを使っているんだけど…それでもこの有り様。勿論オリジナルにも複製品にもそれぞれに直接写輪眼を埋め込めば多少は供給量も効率も上がって少しは改善が見込めるけど…それでも飛躍的な改善とは決してならないのは明白」

 

 お手上げ…というよりは行き止まりだ、現状のやり方だとここが最終地点、これが最善の状態なんだ、だからこそこれより先を望む事が出来ない、と嘆息する。

 

「…で、追加投資ってのは?」

「出来れば避けたいやり方…下手をすれば私は死ぬかもしれない」

「君が死の危険をちゃんと察するレベルで!? ──どんなろくでもない方法なわけ?」

「多分、前提も知らない方が良いと思う…だからそれをする前にもう一つだけ、私の中にある選択肢の是非を聞きたい」

「…なに?」

 

 こうして行き止まりに差し掛かっている状態で私が悩んでいる時点でもう一つの選択肢もかなり危険なものだと理解しているのだろう、警戒した様子の水月の目の前に写輪眼の入った容器を置いて口を開く。

 

「この写輪眼を使ってうちはの人間を穢土転生する…そうすれば写輪眼から無限に得られる瞳力のチャクラを動力に──」

「ブラック過ぎるダジャレやめろって! サスケ辺りにぶっ殺されるよホント!」

 

 うん、まぁそうなるだろうな…とは私も思っている。だからこの手段も取れずにいるんだ、残念ながらこの選択肢も選べるものではないだろう。

 

「──じゃあやっぱり、仕方ないか…」

「…いや、うちはの連中を言いなりゾンビにするのと同じレベルで悩む選択肢も仕方ないで選ぶもんじゃないと思うけど…何する気?」

「ハレンチ博士に反逆する」

「……は?」

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

 

 暫くぶりに鍛冶場の外へ出ると入浴から着替えまで身だしなみを整えて単身ハレンチ博士のいる宿屋へと足を運ぶ。

 

 何分こちらの考えが及ばない方だ、私が鍛冶場に籠っている間に何かしら動いていて宿どころか雨隠れの里にすらいない事も考えたが杞憂に終わったようで安堵する──が、本当の意味で危険なのはこの先だ。

 

「──ハレンチ博士」

「久しぶりね村雨、遂に完成した…という訳ではなさそうね、その様子では」

「話が早くて助かります。理論自体は完成、試作品もテストそのものはクリアしたのですが実戦運用するには写輪眼から得られるチャクラでは到底足りないようです」

「…そうなる可能性は考えていたけど…やはりそうなったのね…それで私にそれを言いに来たのは依頼を断るという事? それとも何か要望でも?」

「勿論後者です…ハレンチ博士の協力があれば恐らくこの問題は容易に解決できるものと思います」

 

 技術者として、自分の見立てに自信を持ってはっきりと伝えるとハレンチ博士も笑みを控えて真剣な眼差しでこちらを窺い出す。

 

「──ハレンチ博士、サスケ君にイタチさんの万華鏡写輪眼の移植手術を行ったんですよね?」

「えぇ、本人も最初は望まなかったようだけど、ナルト君との戦いに備えてね。…まさか例のサスケ君に写輪眼の移植を繰り返す実験を手伝えと?」

「…ここまで言って誤魔化す必要はないでしょう?」

 

 そう告げてもハレンチ博士の顔色は変わらない。

 …あくまでも、こちらが踏み込まなくては答えない…というおつもりか。

 

 だが、こちらももう後には引けない。

 覚悟を決めてこの場ではっきりと問う。

 

 

 

「ハレンチ博士、サスケ君の元の眼…隠していますよね?」

 

 

 

 その一言でハレンチ博士が真剣な表情から更に一変、冷酷な視線をこちらに向け、瞳が合った瞬間に自らの首が跳ね飛ばされる光景が脳裏を過り吐き気が込み上げる。

 だが──所詮は幻覚だ、この話を切り出した時点で実際に殺される事だって覚悟していた…胃液の不快な味を舌と喉に焼き付けながらもハレンチ博士の視線から目を逸らさずに向かい合う。

 

「──イタチさんの血縁であるサスケ君の写輪眼ならばそのチャクラの波長もイタチさんのそれと近しいはず…必ず今よりずっと良い楔となるはずなんです」

「それで、私に念願の写輪眼を手放せと?」

「うちは一族の人間の肉体ごと手に入らなかった以上別の使い方をしてみるのも面白いと…そう言ったのはハレンチ博士です、それに今回の作品のアイディアもです」

「確かに…でもそれは私がうちはの人間の肉体を手に入れる事を諦めた場合の話でしょう」

 

 それは…そうだ。

 今はその気はないようだが裏を返せば成功するかはともかくいつでも再びサスケ君の肉体を奪いに掛かる事は可能であると言える…それに、サスケ君に限らずトビさんの肉体であってもそれは同じだ。

 

「──しかしその場合は今のサスケ君、もしくはトビさんの写輪眼も肉体と一緒に手に入るという事…かつてのサスケ君の写輪眼に拘る事はないはずです」

「必要はないわね…でも、それが手放す理由になるかしら?」

「………負けました」

「思った以上に張り合いないわね」

 

 そうは言われても…ここ最近は私も何かと希少な物を集める経験もあってそれを手放す口惜しさたるや深く知るところだ。

 ましてや今回に関しては私の実力不足が原因…はっきりと嫌と言われたら強要するのは気が引ける。

 

 残念ではあるが仕方がない。

 とりあえず術式を組み直してチャクラの伝導率を上げて維持時間を延ばすところから目指してみるか…と、出来る限りの算段を立てつつハレンチ博士に一礼する。

 

 

 

「…仮に、サスケ君の写輪眼を使えたとしたら…確実に完成すると、この場で誓えるかしら?」

 

 

 

 不意に告げられたその言葉に驚きながらも顔を上げる。

 

「…刀匠として、私の誇りに懸けて…完成させると誓います」

 

 確かな証拠を提示する事は出来ない。

 それでも迷いなくそう答えるとハレンチ博士は「そう」…と満足そうに頷くと私が預かった写輪眼の入った筒より随分と厳重に保護がされた別の筒を袖の中から取り出した。

 

 ──その中に浮かぶ写輪眼は先程まで私が扱っていた巴模様の写輪眼とは違う、幾何学的な紋様の特殊なものだった。

 

「確かに、貴女の言う通りうちはの肉体を得るのなら結果的にこれとは別の写輪眼も手に入る…なにせ生き残ったうちは一族であるサスケ君もマダラも万華鏡写輪眼を持っているのだからね…だから、この眼に拘る必要はない」

「──では?」

「とはいえ、手に入れる為に3年近くも掛かった写輪眼を二つ返事であげるというのは些か面白いものではないわ」

「…私は…その代わりに何を差し出せば良いのでしょうか?」

「納得よ。そもそも今貴女が造っている刀は私の要望で造られる私の武器…だから代わりに何か別の物が欲しいという訳ではないの。ただ惜しい物を手放すだけの納得が欲しい…だから、これが欲しければ実力で勝ち取ってみせなさい」

 

 なるほど、一見めちゃくちゃな要望の様だが理解は出来る。

 サスケ君の写輪眼はハレンチ博士がずっと焦がれていたもの…それが自分の為に別の使われ方とするというのはやはりどこか抵抗感があるのだろう。

 そして、だからこそ惜しむ気持ちに踏ん切りを付ける一種の儀式が必要なのだろう──それは分かる。

 

 だが一つ、問題があるとすれば──

 

「私にハレンチ博士と戦えと?」

「それが実力で手に入れるという事よ…と、言いたいところだけど…流石に貴女にそれを求めるのは酷というもの…なら、貴女の代わりの誰かに頼んでみなさい」

 

 良かった、流石に私などではハレンチ博士と戦ったところで勝負など成立しないなど、いくら儀式を望むハレンチ博士といっても承知してくれていた。

 …しかし、つまりは私が選んだ代理とハレンチ博士が戦って、代理の誰かが勝てばサスケ君の写輪眼が手に入り…そうでなければあの写輪眼はずっと使われないまま…という事になるという事か。

 

 それは──勿体ないにも程がある。

 基本の写輪眼とも異なる、恐らくあれこそが万華鏡写輪眼と呼ばれるものなのだろう…あんな貴重なものがただ埋もれていくだけなんて駄目だ。

 

 それはきっとハレンチ博士とて同じ考えのはずだ。

 しかしうちはの人間の肉体がない以上、ハレンチ博士にとって最も優れた使い方が出来ないでいた…だからこそ今、その使い方を私に託す決心をしてくれたのだ。

 

 それがどれ程光栄な事なのか…それを知る以上、この勝負に負ける訳にはいかない。

 その決意と共に一度ハレンチ博士と別れて頭を悩ませながら雨隠れの里を練り歩く。

 

 果たして誰に私の代理を頼むべきか…ハレンチ博士本人の強さもさることながら直接の部下であるカブトさんは勿論、水月も立場からして戦い難い。

 サソリさんならばそんな事もお構いなしに戦ってくれるかもしれないが…勝敗がどっちに転がったとしても一悶着ありそうなのが厄介だ…。

 

 角都さんにお金を払って戦ってもらうのが一番無難だろうか? 

 でも今私の財布で角都さんが動いてくれるだろうか…

 

「ッ! 小南さんの紙を操る術でお札を量産して──」

「…何を言っている?」

「あ、小南さん、丁度良いところに、実は今お金が沢山欲しくて」

 

 そこまで言ったところで小南さんからとても冷ややかな視線が向けられている事に気付く。

 …どうしてだろう、リーダーさんが亡くなられた後私達に会いに来た時と比べて最近小南さんからの信頼が極端になくなっている気がする…この短い間に一体何があったのだろう。

 

 …思い返すとこの短い間に私が何度おかしな行動をとったのか知る事になりそうだ、あまり考えない事にしておこう。

 

「──あ、えっと…お金が欲しいといっても別に私利私欲の為では…ないとはいえませんが健全な使い方ではある…とは思うのですが」

「…とりあえずこの男を牢に入れてから話を聞こう」

 

 その言葉の通り、見れば小南さんの背後に控えた彼女の部下らしき男性2人が意識の無い大きなシュノーケルを身に着けた男性をそれぞれ腕を掴み連行していた。

 

「…その人は?」

「旧雨隠れの残党だ…最近雨が一度やんだろ? ペイン様に何かあったのかと思って首を出してきやがった」

 

 …全てを把握した訳ではないが何となく事情は理解した。

 捕まった男性はかつてこの里で覇権を握っていたという半蔵さんの部下の人で、ペインさんの不在を明確に知っている訳ではないだろうが、何らかの異変があったと感じ取って動き出したのだろう。

 

 やはり、まだまだこの里は内乱が続くのかもしれないな。

 

「……あ!」

「どうした?」

「小南さん、良ければその男性、私に預けて下さいませんか? …それと出来れば用意して頂きたいものが──」

 

 そこから先の話は小南さんの部下には聞かれない様に小南さんの耳元でこっそり話す。

 天使として崇められる小南さんへの無礼な行動と部下の方が一瞬構えるのを小南さんが抑えると──その後小南さんは暫く悩む素振りを見せて捕虜の男性を残し部下の人達を立ち去らせた。

 

 

 

 それは今から行うこの世の理への反逆を容認、協力してくれるという意思表示だった。

 

 

 

 そこから20分後、ハレンチ博士の元へ戻った私は自信満々に師へと向かい合う。

 

「それではハレンチ博士、こちら、今回私の代理で戦って頂きます長門さんです。…お二人とも、よろしくお願いします」

「「………えぇ…」」

 

 絶対に負けられないハレンチ博士との勝負。

 未だこの里に残る問題。

 その二つを同時に解決させる会心の一手であると、そう思う私の耳に届いたのは師とかつての上司の心底呆れたと言わんばかりの困惑の声だった。

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