霧隠れの狂人   作:殻栗イガ

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推参! 新生・忍刀七人衆

 忍連合軍本部にて忍連合軍の戦闘部隊連隊長でありかつての人柱力として一尾の下へと向かった風影・我愛羅、大名達の護衛役として彼らを守る水影を除く他の五影達と作戦立案役のシカクは前触れなく各地で起きた尾獣の出現に出現地点の近辺の里に避難勧告と誘導、尾獣自体に対する戦闘部隊に移動指示と同時に各尾獣に対する有効策を伝達と慌ただしく指示を飛ばしていた。

 

 完全に先手を取られ、こちらは起きた事象に対処するばかりで状況を好転させようにも肝心のマダラの居場所が掴めないままでいた。

 尾獣が出現、つまりは口寄せの術を使った場所として尾獣の周囲こそが現状最も可能性が高いとして戦闘部隊に配属されている感知タイプに同時に捜索を命令はしているが、一方でマダラの使う未知の時空間忍術の情報を鑑みるに未だにマダラがその場に留まっている可能性は薄く、開戦直後にして既に焦燥感が募り始めていた。

 

「尾獣との戦いが長期化すればマダラに当てる戦力が一気に減る。──ナルトの仙人モードで超広範囲の感知をしてマダラの居場所を探らせるべきだ」

「それはナルトに戦争が始まった事を伝えるのと同義だ。奴が開戦を知れば飛び出していく性格なのは知っているだろう」

 

 現状打破の為の綱手の発案にエーは静止を掛ける。

 万が一にも人柱力がマダラの手に渡れば世界が終わる以上、ナルトとビーの2人は戦争終結まで隠し通すと決めており、その静止の声にオオノキも同意する。

 

「そうじゃぜ、尾獣どもを各地に口寄せしたのもこちらの戦力を分散させる事で強力な戦力である人柱力を戦場に出させようとするマダラの手招きと見た方が良い…しかし、むしろこれはチャンスじゃぜ」

「尾獣を一体でも失えばマダラの計画は破綻する…尾獣は時間を掛けて復活する特性がある以上完全に月の眼計画が潰える訳ではないですが、延期はせざるを得なくなる」

「その為には尾獣の元に素早く辿り着く機動力と尾獣さえも確実に葬れる破壊力が必要…ワシも戦場に出る。狙いは…元自里の四尾と五尾──それならば良いな奈良の者よ」

 

 五影達は皆、忍連合軍の最高戦力。

 その存在は戦場の忍達の士気に直結する…それ故に人柱力達と同様に万が一は許されない、しかし早くも出し惜しみを許されない戦況にシカクは躊躇いなく頷いた。

 

 シカクの容認を見たオオノキが飛び去った直後、残された火影と雷影が一息を吐く間もなく伝令役から再び良くない知らせが彼らに届く。

 それは尾獣の一体、四尾の元へ向かっていた岩隠れの上忍、黄ツチの率いる部隊が地中から大軍の奇襲を受けたというものだった。

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

 

 村雨を除く全員が集まった事を確認し長門は口を開く。

 

「簡単に状況を説明する。マダラは各地に尾獣を口寄せし忍連合軍へ奇襲をかけた。これまで暁が封印してきた一尾から七尾の7体だ」

「自分で狩った化け物共を今度は連合の連中に代わって倒してやろうってのか…バカバカしい」

「月の眼計画とやらが成されれば世界全てが幻術に掛かる以上静観していても仕方がない、忍連合にも尾獣と渡り合える奴もいるだろうが、それはほんの一握りだ」

「それは自分だけは高みの見物をするつもりの奴が言うセリフではないな」

 

 かつての上司である長門に対するサソリと角都の反応は悪態そのものであるが、彼らからすれば今や目の前の男はマダラという真の黒幕に利用されていた男に過ぎず、更には村雨の穢土転生の術で蘇った存在として現世での争いに参加するつもりもないというのだから最早従う義理がないのも事実ではあった。

 

「ま、まあまあ…ほら、ここで忍連合に協力してやれば無罪放免にでもなるんじゃない?」

「俺達がマダラと戦ったところで暁内の内輪揉めでしかない…そもそも無罪放免なんぞ今更求めてもいない」

「心配するな…この戦争を終えてもお前達はこの雨隠れで匿う。それに月の眼計画に乗る気はないと、とっくに決めていたんだろう…今さらつまらない悪態はよせ」

 

 元暁のメンバーが一応の纏まりをしだしたのを見て今度は大蛇丸が傍らに立つサスケへ視線を向ける。

 

「サスケ君も…結果的に木ノ葉を守ることになるけど本当にそれで良いかしら?」

「イタチが守った里を無にはさせん…俺の革命はその先で行う」

 

 忍連合の一角、木ノ葉へ対して強い憎しみを抱いていたサスケもまた世界全てを夢の世界へと誘う無限月読を許容する事は出来ないと、戦争への参戦の意思を示す。

 そしてサスケがそう決めた以上、大蛇丸にカブト、重吾に香燐の4人がその意思に沿う事は分かり切っていた──それ故に水月は密かに顔を引き攣らせる。

 

(元暁4人に化け物4人にバカ1人…何でこんな連中と一緒に戦場出なくちゃならないんだ…)

 

 隙を見て逃げようとも一瞬思ったがこの連中に隙とかあるのかという疑問とそれ以前に普通に人数多過ぎて絶対見つかるという予想にその案を断念する。

 何より元暁の2人や大蛇丸、カブトは未だに信じ難い事だが立場上新生忍刀七人衆のメンバーで自分の部下…勿論彼らが自分の事を七人衆の筆頭だと思っているはずもないだろうが、だからこそ猶更、逃げる訳にはいかなかった。

 

 思い描いた面子などでは決してないし、居心地も最悪、けれどもここがかつて憧れた忍刀七人衆さえも大きく超える部隊である事は紛れもない、だから──

 

(この戦争が終わったらあの狂人マジで一発ぶん殴る!)

 

 人を進むも地獄退くは出来ない地獄に叩き込んだ挙句自分は部屋ですやすやと眠る全ての元凶へ人生何度目かの殺意を抱き、この戦争を必ず生き残る決意を宿す。

 

 そんな水月の悲しき内心を見透かして大蛇丸は憐憫の感情と共に鼻で笑うと改めて長門と向き直る。

 

「それで、どう動くつもり?」

「俺達の勝利条件…正確にはマダラの敗北条件は尾獣を失う事だ。各戦場の尾獣の一体でも殺されれば計画の延長をせざるを得なくなるからな…だがマダラは神出鬼没だ、仮に尾獣を追い詰めたとて奴に口寄せ解除をされては意味がない」

「じゃあどうするっての? マダラを叩こうにも居場所は分からないんでしょ?」

「そうだ、だから方法は一つ、7体同時に攻撃を仕掛ける」

 

 水月の疑問に対する長門の言葉は実にシンプルなものだった。

 

「離れた位置の尾獣を同時に口寄せする事はいくらマダラでも不可能だろう。…尾獣どもは一尾から七尾…数も小南とうちはサスケを穴埋めとすれば1人一匹のノルマで丁度だろう、新生忍刀七人衆?」

「…結局また同じことか」

「ふん、ようやく稼ぎにならん仕事がなくなったと思っていたのだがな」

「まぁ、仕方ない…もう一度だけ協力するとしましょうか」

「──いや、言っておくがお前ら3人は誰もノルマ達成していないからな?」

 

 デイダラのノルマである一尾の確保に成功するも、それを追跡してきた木ノ葉と砂の連合小隊と交戦の後暁の正規メンバーとしての立場を村雨に譲ったサソリ。

 飛段のノルマである二尾を確保し、その後本人のノルマとして火の国へ侵入し木ノ葉の忍達と交戦し敗北した角都。

 本格的に人柱力狩りを始める前に組織を早々に抜けた大蛇丸。

 

 揃って尊大な態度を見せる3人だったが長門のその言葉に思わず目を見開いた。

 無論、角都は資金確保、サソリは各勢力へのスパイを送り込むなどの裏作業はしていたがその実、彼らは揃って暁のノルマそのものへの貢献はほぼゼロといっても過言ではなかった。

 

「…いや待て! 俺は三尾を狩ったはずだ!」

「あれはお前の後釜で入った村雨の補佐だろう」

「俺は七尾を狩ったぞ! 中忍試験から帰る七尾の人柱力を確かに狩ったはずだ!」

「…? それならお前と飛段のノルマは達成していただろう…逆に聞くがそれならなんで火の国に入り込んで木ノ葉の連中と戦う事になったんだ?」

「長門…角都はほら、村雨に…」

 

 サソリに続き発せられた角都の自らの貢献に対する主張に長門は呆れた様に追及しようとするが小南の静止にそういえば以前角都が木ノ葉の忍との戦いで負った重傷に村雨が人体改造染みた治療を施していた事を思い出し、恐らくアレが原因で記憶の混濁でもあったのだろうと察する。

 

「あぁ…そうだったな、すまない、そうだった」

「おい、その憐れむ視線をやめろ、今頃あのマダラに奪われているだろう本来の身体と同様に目玉を抉り取るぞ貴様」

「ねぇ、そんな事より…じゃあ何? マダラの月の眼計画に大蛇丸様含めたこっちの3人は直接の加担はしていないかもしれなくて…唯一尾獣ってのを狩ってあげてたのは…あのバカだけってこと?」

「「………」」

 

 事実を受け入れまいと声を震わせる水月にその場の全員が思わず頭を抱えてしまう。

 散々人を振り回し、更にはマダラの目論見さえも幾度も妨害してきた末にこの場のメンバーで新生忍刀七人衆を結成し月の眼計画を打破せんとした渦柘榴村雨…その本人こそが結果的に一番マダラの計画に加担していたという事実が発覚した挙句、当の本人は今無限月読とは一切関係なくごく普通の夢の中という現状にどうしようもなく頭が痛くなってくる。

 

「…やっぱあいつ叩き起こして責任とらせるべきだろ」

「あの刀狂いの事だ、枕元で刀をへし折る音でも聞かせたら跳ね起きるんじゃないか?」

「バッカ! そんな事したら確実に面倒な事になるよ! …というかそもそも責任をとらせると言うけど──正直寝ていてくれた方がよっぽど楽じゃない?」

 

 全ての元凶を無理やりにでも起こそうとする香燐と角都の提案は水月の静止に皆が同意し村雨はこの場で放置する事が決定された。

 

「…しかし、俺達は八尾と交戦したがかなりの強敵だった。あれと同等の怪物というのなら1人一体というのは危険じゃないのか? マダラが離れた位置から口寄せ出来ないというのなら無理に7体全てを相手にする必要はないんじゃないか?」

「それは尤もだ。…だがマダラの戦力は尾獣だけではない。むしろ戦争の序盤に尾獣というカードを使ったのは恐らく本命の作戦を行う為の前準備だ」

 

 村雨の事はさておき、マダラの尾獣戦力に対する長門の作戦に疑問を覚えた重吾が慎重な意見を口にすると長門もその意見には同意を示しつつも、マダラの次の策について説明を始める。

 

「お前達も一度は見ただろう、ゼツという白と黒の人造人間。戦争において最も恐ろしいのはあいつだ。各戦場に向かい、奴の能力を連合の連中に伝えなければ忍連合軍は内側から崩壊する」

「どんな能力なんだ?」

「他者からチャクラを吸収、それを利用してチャクラ反応さえ完璧に模倣した特殊な変化の術だ。感知タイプでさえも真偽の判別は不可能、そして奴は単体の存在ではなくチャクラを使って量産される。恐らく尾獣のチャクラを使って忍連合軍と同等かそれ以上の人数を作っているはずだ」

「尾獣との激闘の裏で判別不可能の偽物が大量に内側に紛れ込むという事か。複雑な戦略が行えなくなるのは勿論、疑心暗鬼で休まる暇さえ失うという事か」

 

 強力な尾獣と戦い疲弊した後、隣にいる味方が敵かもしれないという状況に陥れば忍達は肉体よりも精神の方が先にやられてしまう、そしてやがては集団での行動も出来ず尾獣による蹂躙が始まる…マダラの描く二段作戦に重吾は顔を顰める。

 

「やれやれ…こんな事なら君達暁の情報を纏めたファイルをどこかのタイミングで忍連合軍に渡しておくべきだったかな」

「過ぎた事だ、そもそも俺達がこんな状況になるなど想像出来るはずもないだろう」

「それはそうだ…ゼツの識別は重吾の呪印仙力を使えば炙り出せますが数が増えれば流石に無理だ…急いだ方が良さそうですね」

「そうね、では我々新生・忍刀七人衆とやらと小南、そしてサスケ君は各尾獣の下へ散会…戦場に着き次第尾獣の抹殺、そしてその戦場にゼツの出現があったか確認。もしもゼツの襲撃を受けていたのならその場の全員を一時待機を呼びかける…という方針で良いかしら?」

「俺はここで戦場全体を感知し続ける。マダラの出現があればお前達に連絡する…それと重吾、お前もここで待機だ…ゼツの出現した戦場が確認できれば俺の口寄せ動物でお前を送り届ける」

 

 頭が痛くなる村雨についてのあれこれを考えない様にした結果なのか、いよいよ本格的に戦争に意識が傾いたのか、これまで悪態をついていたサソリも角都も、名指しされた重吾も一切の迷いなく大蛇丸、長門の指示に頷いた。

 

「ウチは勿論サスケと──」

「香燐、貴女もここで待機よ、この巻物の蛇の模様が消えたら私達の誰かが尾獣かマダラの攻撃で重傷を負った時と判断して、すぐに口寄せして頂戴」

「…はい」

「──貴方達にも離脱用の口寄せ蛇を渡しておくわ…死にたくなければ受け取って──」

「黙って寄越せ」

 

 戦争、そして死を幾度と目の当たりにした、或いは他者に与え続けてきた者達だからこそサソリも角都もかつての裏切り者である大蛇丸からの施しにも私情を持ち込まずに、快くとは言えないがしっかりと受け取った。

 唯一私情が溢れていた香燐も大蛇丸の淡々とした指示に逆らう気はないのか渋々ながらも巻物を受け取ると待機命令に従って近くの椅子に腰かけた。

 

「…最後に、忍連合軍は決して俺達の味方ではない。敵の敵は味方…などと受け入れられる事に期待はするな。尾獣との戦いに参戦しても彼らからの攻撃を受ける可能性には警戒しておけ」

「一応聞いておこう。奴らからの攻撃があったら──相応の対応は構わないよな?」

「わざわざ明確な敵を増やす必要はない、こちらから仕掛けるのはやめておけ。…その上で忍連合軍の攻撃があったなら…それはお前達の判断に任せる。…その結果がどうであれ雨隠れの里はお前達を受け入れる」

「──了解」

 

 たとえマダラと対立する道を選んだとしても、暁として他里の人間を何人も殺してきた者、自里を裏切り里長を殺した者とそれに賛同した者達…それらは決して忍連合軍の者達と道を同じくする事は出来ない。

 

 そもそもこの場にいる者達は皆、善意からマダラと戦うと決めた訳ではないのだから。

 月の眼計画の先に自らの望むものはない、だからそれを阻む。

 この戦いは新生・忍刀七人衆──未だに人が揃った訳ではないが、それを結成させた刀匠と同じようにただ自分の理想に熱狂する為に、その障害を打ち倒す為のものだった。

 

「ところで水月、七人衆の長はお前のはずだが大蛇丸と暁の元リーダーが指示役をしているのだがそれでいいのか?」

「だからボクがこんな連中に指示なんて出来るはずないだろ!?」

 

 ──出撃前に率直な疑問を口にした重吾に対して水月が悲しい叫びを発した数時間後、彼らはそれぞれの戦場へと降り立った。

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

 

 霜隠れの里という小さな里近辺に出現した昆虫の様な外骨格を持つ一本の巨大な尾と六本の尾にも見える六枚羽の巨大な怪物七尾とそれに相対する忍達の間に割り込み、頭上に羽ばたく七尾を確認するかの如くただ見つめた。

 

「お前は…角都!」

「久しいな、猪鹿蝶のガキ共。…それに七尾、…やはり、一度狩ったはずなんだがな」

 

 

 

 滝隠れ周辺の森林に出現以降周囲を腐食させながら木ノ葉の方向へ南下している全身が白く滑り気を帯びた蛭の様な姿の尾獣、六尾と向かい合う。

 周囲が森であるが故に集団での行動に多少の遅れが出ているのか忍連合軍の勢力がまだいない事に安堵しつつ小南は六尾の周囲に無数の紙を舞い上げる。

 

「六尾…ペインが狩った尾獣か。お前にとっては理不尽だろうが、彼がマダラに利用されたままで終わらない為にもお前をもう一度狩らせてもらう。──好きに恨みなさい」

 

 

 

 便宜上音隠れの里として記された場所に口寄せされた五尾。

 里長である大蛇丸が様々な国にアジトを造る以上過剰な警戒は不要としつつも、それでも大蛇丸の勢力との遭遇の可能性も他よりは高いとして特に強い戦力が投入されたそこに向かったカブトは、数人の犠牲を出しながらも五尾と対等以上に渡り合っている忍達の姿に肩を竦めた。

 

「おや、案外平気そうですね。流石カカシさんにガイさんだ…ここにボクの参戦は必要なかったのかもしれないな」

「お前…カブトか? 暫く見ない間に随分様変わりしたようだな」

 

 

 

 温泉による観光資源に恵まれた湯隠れの里。

 ゼツの大軍の襲撃を受けた部隊の救援に回った土影の到着まで必死に時間を稼ぐ忍達の奮闘も虚しく、その溢れる湯を溶岩へと変貌させ雄叫びを上げ続ける深紅の巨大猿を見上げ大蛇丸はどこか懐かしむかの様に静かに口角を上げた。

 

「これが四尾の化け猿…クク、どこぞの老猿閻魔といい猿と縁があるのかしらね、私は」

 

 

 

 海岸から大きく離れた海の中から莫大なチャクラの塊、尾獣玉を放ち続ける三尾に雲隠れの上忍、ダルイが率いる部隊は辛うじてその狙いを海に留めるべく何度もチャクラによる水上歩行で誘導を続けては接近を試みるが次第に追い詰められ始めていた。

 尾獣玉の誘導にはその度に甚大な被害が伴い、水場の移動に優れた水遁系の忍達だけが三尾に辿り着くもその頑強な甲殻に殆どの攻撃が阻まれていた。

 

 水遁と雷遁の両属性を扱えるダルイの攻撃も有効ではあるが決め手に欠け攻めあぐねた最中、海の波が大きくうねりを上げた。

 三尾さえも見下ろす程に高まった波の中で水月は漸く1人になれた解放感故なのか清々しい程に獰猛な笑みを浮かべた。

 

「三尾…本命と戦う前に君の力、もう少し貰っておくよ」

 

 

 

 戦闘部隊の分散を目当てに忍連合軍の部隊の待機位置から幾らか離れた位置に口寄せされた他の尾獣達と違い唯一、忍連合軍の部隊の近辺で出現した炎の様に揺らめく身体の化け猫、二尾は眼前の忍達──林の中に身を隠していた医療部隊に迫っていた。

 

 当然、医療忍者の護衛役である戦闘員も多数配置されていたが二尾はそれらを瞬く間に薙ぎ払い、その凶爪を掲げ上げた。

 

「皆、下がって!」

「ダメ、サクラ!!」

 

 戦闘能力で劣る医療忍者達の中でも数少ない戦闘の心得を師である綱手に叩き込まれていたサクラは覚悟と共に拳にチャクラを集め他の医療忍者を守るべくシズネの静止を振り切って前に出る。

 無慈悲に振り下ろされた二尾の揺らめく前脚が黒炎に包まれたのはその直後の事だった。

 

「これが尾獣…ナルトの中の…九尾と同じチャクラの怪物か」

「……サスケ、君?」

 

 

 

 砂隠れの里周辺の砂漠に出現した巨大な狸、一尾とそれに立ち向かう連隊長である我愛羅と彼の補佐役であるカンクロウを中心とした戦闘部隊は頭上で滞空する異様の存在に絶句していた。

 一尾さえ超える巨大な人形は背中の排出口から放出されたチャクラで空中に留まりながら、4つの腕で一振りの大型の刀を構える。

 

「…何だあれは? 傀儡人形…なのか?」

「す…砂隠れはあんなものを造っていたのか?」

「んな訳ねぇじゃん!? 何なんだありゃあ!?」

 

 自里に妙な印象が持たれている事に危機感を覚えたカンクロウが困惑を露わにする傍ら我愛羅は開戦前に各里から持ち寄られた暁に関する情報を思い出す。

 

 木ノ葉のカカシやナルトの小隊が遭遇したという空飛ぶ巨大傀儡人形…傀儡の術自体が自里の文化という事もあって何の冗談だこれは? と思った情報だがそれに村雨が関わっているという補足も付け加えられていた事もあって確かな情報だと確信を持っていた。そのつもりだったが…いざ実物を目の当たりにすると目の前の光景を何かの間違いだと思いたくなる。

 ──しかし背中の排出口から噴き出すチャクラで飛行する異様の姿も、4つの腕に装着されたいつかの音忍が使っていた物に良く似たスピーカーも木ノ葉の情報と一致する。…なんならあの傀儡が持つ巨大な刀は3年前のサスケ奪還の任務で自分と相対した際に村雨が自爆に用いた刀だ。

 

 渡された情報と自分が一度見た物が目の前の光景と一致したのであれば最早疑う余地はなく、意を決して頭上で滞空する巨大傀儡へと呼びかける。

 

「赤砂のサソリ、その傀儡の中にいるのだろう」

「な!? サソリだと!?」

 

 実際、これ程の傀儡を扱えるとしたらサソリぐらいのもの、それは分かるがそれでもその男がこんな常識外れな傀儡を扱う姿が想像出来ないカンクロウは困惑と共に巨大傀儡の動向に警戒する。

 

「渦柘榴 村雨がマダラと決裂した事は知っている…暁の中で何らかの対立があったのか、単純にあの女が余計な事をしただけなのかは知らないが…それで、お前はどちら側であり、ここに来た目的は何だ?」

 

 我愛羅の問いかけにサソリは一瞬、それを無視して目的を遂行する事を考えた…本来の自分ならばどうでも良い相手の言葉など無視するのが常だった、しかし──

 

 ──わざわざ明確な敵を増やす必要はない、こちらから仕掛けるのはやめておけ。

 

 出撃前に念押しされた長門のその言葉に仕方がないとため息を吐いて拡声器を手に取る。

 

「俺はそこの尾獣を葬りに来ただけだ…うちはマダラの月の眼計画を潰す、新生・忍刀七人衆とやらとしてな」

「新生・忍刀七人衆…だって?」

 

 明らかに霧隠れの忍刀七人衆を意識したその部隊名を暁のメンバーが口にした事に戸惑いの声があちこちで上がる中、当の霧隠れ出身の一部の忍達とカンクロウはその名から感じる嫌な予感に息を飲む。

 

 我愛羅もまたその部隊を結成した元凶であろう人物に思い至り戦争で感じるのとは全く別の気怠さと、先の五影会談に乗り込んだマダラの語った村雨を始末したという彼の言葉が覆った事に僅かに安堵してしまう事に対する複雑に駆られる。

 

(あいつは…やはり生きているという事か…)

 

 村雨の生存、そしてこの戦争へ介入してくる腹積もりであるという事。

 それは劣勢から始まったこの戦争に今から更なる混乱が起きると見て間違いない、その予感を抱きながらも我愛羅は自らの部隊に所属する伝令役に素早く、本部への情報を送る様に指示をするのだった

 

 

 ──『元、暁のメンバーと大蛇丸達…そして村雨からなる部隊"新生・忍刀七人衆"、戦争参入』

 

 

 その情報は瞬く間に戦場を駆ける忍達に広がっていくのだった。





補足
第四次忍界大戦、原作との相違点まとめ
カブトがマダラと接触していないので、カブト追跡のアンコ小隊がマダラのアジトまで誘導されていません。
その為アジトの場所もトビの居場所も分からないので奇襲部隊は結成されずカンクロウが我愛羅と同じ部隊がいたり、その他にも一部キャラの配置が変わってます。

またアジト未発見の為白ゼツの大軍を確認出来ておらず、地中移動にも気付けず一部の部隊は奇襲を受けました。おまけにカブトがナルトに渡した暁の資料も、サスケの五影会談襲撃もなかったので白ゼツの能力はまったく把握出来ていないです。

一方マダラ側もカブトと組めていない為穢土転生の戦力がなく、五影会談で影達に言った様に尾獣を戦力として使っています。


改めて考えると忍連合軍からすればエドテン軍団を向けてくるわ、マダラ側からすればアジトの場所やゼツの能力と数を若干バラすわ、戦争序盤のカブトさんが両陣営に厄介過ぎる。
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