何とか更新頻度を戻していきたい。
『新生・忍刀七人衆』…その明らかに誰が結成したのか容易に想像が付く部隊に我愛羅は戸惑いこそしないものの内心焦りを募らせていた。
思い起こすのは開戦を間近に"忍"の字を刻んだ額当てを共有した日に水影が持ち込んだある情報と、それに対する懇願だった。
五影とその護衛役が1人ずつ、そして鉄の国のミフネと同じくその護衛役の1人が居るだけの極少人数の場にて悲壮感に満ちた表情で水影メイは口を開いた。
「──先日の事です、我が霧の里で…村雨を見たという報告がありました」
そう、五影会談の場でマダラから処分したと告げられた渦柘榴 村雨、しかし彼女の生存の噂を五影である自分達は既に知っていた。
「例の女が生きていただと!? …真偽は確かか?」
「見つけたのは里に残った下忍の者でした。戦争の準備の為、村雨の実家に残された刀を回収をさせようと命令したのですが、その際に人知れず里内に潜入した彼女が大蛇丸を連れて帰宅したのを見掛けたと」
「大蛇丸だと!? ──里は無事なのか?」
「はい、確認した限りでは自宅の墓から何かを持ち出してすぐに立ち去ったそうです。…一応、里に残る忍達に里内を洗い出しさせましたが何かを仕掛けられた形跡はありません」
「霧の里に何かをするのではなくあくまで自分の持ち物を持ち出す事が目的か…下忍の監視に大蛇丸が気付かないはずがない。それを敢えて見逃したという事は大蛇丸の目的は村雨の潜入の護衛でしかないという事か…くそ、あの変態ヤロー何をやっているんだ」
生存が判明した途端、早速怪しい行動を始めた村雨にかつての同志が積極的に手を貸している事実に綱手は不満げに眉間に皺を寄せた。
「…だが戦争前にあいつの生存が確認出来たのは好都合だ。…戦場に唐突に出て来られると場が荒れる」
「風影の言う通りじゃぜ…大蛇丸だけでなくマダラと離反した元暁の連中も恐らく組んどるのじゃろうて…部隊の連中にその情報を共有を──」
「その事なのですが…少し懸念が」
「なんじゃぜ水影?」
「…非常に、言い難い事なのですが、その下忍の報告によって今霧の里で混乱が起きていて…」
「うん? さっき里は無事と言っておったろう、どういう事じゃぜ?」
直前の発言と矛盾するメイの言葉にオオノキも他の影達も訝しげにメイへと視線を送る。
「…村雨が墓から何かを持ち出す直前に大蛇丸との会話を下忍の者が聞いていたのですが…その内容のせいで今、彼女は味方なのではないか…と疑問視する者達が現れて──」
「何を…あの女はお前達の里の抜け忍なのだろう! どうしてそんな事になる!?」
「以前にも言ったがあの女の経歴には常に偶然が取り巻いてくる、それに突っ込んでいたらキリがないぞ雷影。水影、まずはその内容とやらを教えてくれ…」
「はい、彼女の発言を書き起こした一部が…こちらです」
困惑に声を荒げるエーを諫めつつ続きを促す我愛羅に従いメイは傍らに立つ青に視線を送ると、青もまた自身の隻眼を悲しみに曇らせながら影達に資料を差し出した。
『私は、この里が好きなんです。たとえ同胞の血にまみれようとも、たとえ裏切り者が生まれようとも、たとえ母の死の真相をひた隠しにしようとも…霧に飲まれ先が見えないまま彷徨い続けても、それでも歩くことを止めずに今日まで在り続けたこの里の強さが…やっぱり私は好きなんです。砂の里も、木ノ葉の里も、色んな世界を見てきたからこそ胸を張ってそう言えます。だから…守る為の刀は私が造るから、守る為の力を貸して下さいハレンチ博士』
「……これをあいつが?」
完全に自里への愛に満ちた内容だ、里長として、里の人間がこの様な思いを抱いているならばこれ程嬉しい事はないだろうと思う一方で、この発言をした者が里を抜けた立場で、更に他里の超危険人物を伴って自里に潜入している状況で口にした発言であるという事実が加わるとこうも台無しになるのかと我愛羅は呆れながらもメイへ念の為確認する。
「残念ながら、事実です。…そしてもっと残念な事なのですが、この報告を受けて里の一部の者達は彼女の事を誤解する者達まで現れて…」
「愛する里を守る味方だと?」
「それどころか、既に忍を引退した老齢の者達、或いは新人の…彼女と直接の接点が薄かった世代の忍達からは戦争を予期して単身音隠れや暁に潜入し敵の主力メンバーの多くを引き抜いたと思われた様で…」
「何でそうなるんだ!?」
「人は特別な存在という者に惹かれるものらしい…里の名誉ある一族の人間が里を抜け、その後危機的な状況で救いに現れる…そんな作り話みたいなものも実際に起きると心奪われるんだよ」
ため息混じりにそう語る綱手は自身の里で最近出回る噂を思い出してため息を吐く。
大蛇丸の勧誘に乗って里を抜けたうちはサスケ…しかし実際には自らの意思で里を抜けたという事はある程度伏せてあるとは言え忍の多くはその事を知っている。
それでもなお、一度は大蛇丸を返り討ちにして彼に囚われていた人間を解放した事、デイダラやイタチといった暁の手練れ達を打ち倒した事、そして遂にはペインの里襲撃に駆け付けてナルトに協力しペイン討伐に貢献…次々に挙がる功績にうちは一族という名誉ある一族の名も加わって今やナルト程でなくとも英雄、奇跡の少年なんて呼ぶ声が聞こえ出している。
…一時期はこちらが何とか穏便に済ませようと抜け忍処理を先送りにしていたというのに今ではそんな有り様の木ノ葉の事情が今の霧隠れの様子と重なり、どの里も変わらないのだと呆れるばかりだった。
「つまり、村雨の事情を部隊に周知させると奴を味方と誤解する者達が増えるやも…ということか?」
「それどころか、本当に彼女達がマダラを倒す為に参戦したとしたら…最悪の場合、誤解されたまま英雄として祀り上げられてしまうかも…」
「恐れ過ぎだ、この女が抹殺許可を下された抜け忍である事は我らの里でも周知の事実だ、そんな奴を英雄視するなど──」
「無いと言い切れるか? これから死と隣り合わせに戦場に飛びこんでいく者達が、たった1人で敵組織の手練れを何人も離反させた存在を…」
「もっと言えばあの女は厳密には忍ですらない。下手に広まれば忍でもないのに抹殺指示はどうか…という声さえ上がる可能性もあるな」
「「………」」
あまりに恐ろしい懸念に影達は頭上を仰いだり頭を抱えたり、それぞれの方法で不条理への怒りを何とか飲み込むのだった。
無論、村雨の詳細を説明すれば彼女がそんな高潔な人物であるなどという誤解は解けるだろう。
しかしその前提である"村雨の詳細"とは?
戦争目前の忍達に理解不能な情報の数々を説明するなど絶対に避けたいが、かといって簡略化して説明するにもまず自分達すら把握していない事が多過ぎてどうにもならない。
そんな八方塞がりな状況に結局既に末端の忍達に周知させた暁内でもマダラ側と離反した側の二つの勢力がある程度の認識のまま留め、村雨の生死も不明のままにしておく事で万が一村雨と彼女の協力者達が戦争に介入してきた場合にも敵の可能性があるという認識を保っておかせる事で決定した。
ただし、それでは村雨達に対して何も手を講じていない事と同然と言える為、五影と護衛役そして部隊長達のみある決まり事を定めておいた。
もしも仮に村雨、そして彼女の協力者である大蛇丸や元暁のメンバーが"マダラ打倒"の為だけに戦争に介入してきた場合、その強力な戦力を可能な限り利用を試みる事。
利用、と言っても狡猾な大蛇丸や予測不能な村雨と駆け引きをするのは危険であるという見立てから彼らの介入があったらその場から撤退を図り、マダラ側の戦力と潰し合わせるのみで共闘する事は可能な限り避けるべきとして、上手くいけばマダラ側の戦力を大きく削ぐ事が望め、そうでなくとも動きの読めない第三勢力がいなくなってくれれば好都合。
──ここまでが村雨達が"マダラを倒す"という目的でごく普通に参戦してきてくれた場合の話である。
そしてもう一つ、村雨達が"まるで英雄、救世主の如く参戦してきた場合"つまり彼女達の事情を詳しく知らない者達が妙な誤解をしてしまいそうな場合、その時はその場にいる影、もしくは部隊長の者達が正面に立ちマダラ側の戦力に相対する事。
要するに奴らのインパクトに負けず自分達こそが英雄として数多の忍達の手本たれと、戦争らしさは何処へやら、ここにきて五影、あるいは上忍らしさを示さなければならないという結論に至るのだった。
何だかおかしな方向に纏まった結論に皆内心で本当にこれで良かったのかと疑問を抱きながらもこれ以上戦争以外の要件に時間を割くわけにはいかないと妥協する。
…それでも我愛羅は今回の村雨の発言の中の一部分に触れる。
「…ところで水影、母の死の真相をひた隠しに…とはどういう事だ?」
「血霧の里の…名残です」
「…そうか」
忍の里ならば何かしら後ろ暗い何かがある…里長としても実体験としてもその事を良く理解している我愛羅はそれ以上の追及はせずに話を終える。
「──ワシからも一つ良いか?」
しかし今度はエーが妙に張り詰めた表情で切り出した。
血の気の多い雷影だけにまた水影に突っかかるのでは…と綱手は嫌な予感に密かに顔を顰めたが──
「この…ハレンチ博士とは何者だ? 渦柘榴村雨が大蛇丸と一緒にいるところを発見したと言っていたが、大蛇丸の他にそんなふざけた名で呼ばれている何者かがいるのか?」
「ワシも気になっておったんじゃぜ。目撃したというのなら外見程度は確認出来たんじゃろ、この面妖な奴は一体どんな奴じゃぜ、特徴とか何か情報はないのか?」
「「あ…」」
…
……
………
そんな最終的にはまたグダグダになった数日前の会議を思い出して急激に襲ってくる脱力感を何とか振り切って我愛羅は目の前の光景を冷静に見つめる。
かつて自分の中に宿っていた巨大なチャクラの怪物、一尾・守鶴──を、見下ろす程の巨大な傀儡人形がチャクラの噴出を利用して空中を高速で飛び回りながら爆発物を射出したり、急降下して手に持った大型の刀で斬りかかったりと戦争らしさ以前に忍らしさとは何かと根底から覆すかの様な光景が繰り広げられていた。
「……あれにインパクトで勝てと?」
いつの間にか巨大傀儡が1アクションを起こす度に背後の忍達から野太い声援が挙がる様になりつつある状況に正直こうなる様な気がしていた。
(しかし"七人衆"の名までここで名乗り挙げるとはな…それもまさか、本人ではなく元暁のメンバーに言わせるとは…)
それが村雨本人の指示だったのかどうかは分からないが、結果的に良くも悪くもこの場にいる者達に強い印象を与えたのは間違い。
そして恐らくそれはここだけではないのだろうと我愛羅は確信する。
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その予想は正しく同時刻、忍連合軍本部には各戦場の伝令役から怒涛の勢いで情報が駆け巡っていた。
「我愛羅第四部隊から報告、一尾との交戦中にサソリが搭乗する巨大傀儡が乱入! 自身を"新生・忍刀七人衆"と名乗り、マダラとの敵対意思を語り一尾との戦闘を開始した模様」
「──来たか…それにしても"新生・忍刀七人衆"とはな」
「えぇい、なぜ元暁のメンバーがあの狂人にそこまで協力するんだ」
本部配属の感知部隊であるが故に報告が聞こえて青はその内容に嘆きの声を上げる。
「二尾の襲撃を受けた医療部隊から報告! うちはサスケが乱入し謎の人型の化け物を出現させ二尾を圧倒しているとの事!」
「サスケもか…医療部隊が助けられるのは有難いが──また奴の功績が増えるな」
医療部隊の危機という緊急の事態に先程まで雲隠れのマブイの『天送の術』で総大将である雷影を早くも戦場に出陣させる案を実行させる寸前であり、戦況が不利である事を分かりやすく示す策が不要になった事に綱手は一先ず安堵するが、それはそれとしてまたサスケの功績が増える事に頭を悩ませる。
無論、ナルトや愛弟子であるサクラの事を思えばサスケの功績が増えれば彼の里への帰還に対する反対の意見が減る事は喜ばしい事ではあるが…今のサスケの行動意図が分からない状況で彼の影響力が強まる事は何か嫌な予感もしてならない。
しかしそんな懸念に思考を埋没させる間もなく次々に報告が届き出す。
「ダルイ第一部隊から報告! 交戦中の三尾に大蛇丸配下だった鬼灯水月が接触し三尾のチャクラを奪い取っている模様」
「三尾のチャクラを…どういう事だ!? 水月という男の情報は然程情報があったわけではないが、そんな能力についての記載はなかったぞ!?」
「いや、これこそ間違いなく村雨の悪巧みだ! …水月め、遂に人体改造までされてしまったか…」
「土影様及び黄ツチ第二部隊より報告! 地中から出現した白い兵隊は一体一体がやたらしぶとい上にチャクラを吸収する能力を確認! 土影や上忍クラスの忍なら問題ないようですがとにかく数も多く消耗戦になっている様です!」
「クソ、発見が早ければ土影のジジイの塵遁で纏めて消し去る事も出来たが混戦となった後では…いや、今更嘆いて仕方ない…シカク、各戦場の状況から増援可能な部隊に一部指示を出せ!」
「了解! ──ミフネ第五部隊に指示を出します」
「続報! 黄ツチ第二部隊が目指していた四尾出現地点で何者かが四尾と交戦中のチャクラを確認したそうです…チャクラからして大蛇丸の可能性が高いとの事!」
「あのハレ…蛇ヤローも参戦か! ──ちなみに、先日あいつが渦柘榴村雨と一緒にいるのが確認されたらしいが今奴の傍に他のチャクラを感知した報告はあったか?」
「いえ…四尾出現地点には大蛇丸らしきチャクラのみだそうです」
「ッ! 待って下さい! 五尾と交戦中、薬師カブトと遭遇したカカシ第三部隊から報告! ──サソリ同様"新生・忍刀七人衆"と名乗ったカブトにカカシ隊長が渦柘榴村雨の情報を問い質した結果『彼女は眠っているよ…安らかに』と答えたそうです! …これは、まさか…」
「どういう事だ、渦柘榴村雨は先日大蛇丸と一緒に霧の里にいたのだろう? いや、やはり大蛇丸があの様な名で呼ばれるとは思えん…もしや先日の目撃情報は別人で、本人はマダラに殺されて──」
「騙されてはいけません雷影殿! 恐らく本当に眠っているだけです!!」
「えぇい! 例の娘の報告は毎度毎度訳が分からなさ過ぎる、今まで訳分からんと思っていたビーのラップが恋しくなるわ!」
「六尾、七尾の出現地点でも元暁のメンバーの参戦を確認! いずれも忍連合軍への攻撃はなく尾獣鎮圧が進んでいる模様…その…戦況は、こちらが優勢になりつつあります」
最早報告する側がどこか申し訳なさそうに話すようになっている事にすら気付けない程に綱手もエーも頭を悩ませていた…報告の内容を受け入れたくないという本音を飲み込んでその濃い内容の情報を頭の中で何度も繰り返して漸く理解したのは結局村雨の関係者、いや"新生・忍刀七人衆"とやら出現した戦場は好転し、唯一彼らが何の干渉もしていない土影と黄ツチ第二部隊のみが消耗戦を強いられているという事実のみだった。
…しかし、それもミフネ第五部隊、更には"新生・忍刀七人衆"が介入し余裕が出来た部隊から援軍を出せば覆せる。──こうなると"新生・忍刀七人衆"の参戦で自分達は一気に有利になったと無理やりにも理解させられてしまう。
「…してやられたな」
「こんなものただのマッチポンプだ! これで奴らが英雄になどなろうものか!」
「だと思いたいがな…とにかく、奴らがこのまま味方であり続ける保証はない。敵対した場合の策も考えたいところだが…まずは──」
「はい、まずはこのまま尾獣を徹底的に追い込むべきです。どれか一体でも倒せれば少なくともマダラの計画は尾獣復活まで先送りに出来る。戦況が有利に傾いている今攻め込むべきです」
不本意ながも好機を逃す訳にはいかない。
"新生・忍刀七人衆"の目的が単純にマダラの"月の眼計画"を否定したいだけなのか、忍連合軍に協力する事で何らかの交渉を狙っているのか、それとも尾獣が狙いか…その意図は分からないがそれでも優先すべきはマダラだと判断する。
当初の予定では村雨達が戦争に介入したならばその場は撤退させる段取りだったが、その内容はよりにもよって恐れていた"救世主染みた参戦"だ、ここで彼らに尾獣討伐を任せてしまってはいよいよ末端の忍達の誤解は取り返しがつかなくなる。
それにマダラ側が尾獣を投入し、その内の1体でも倒せればマダラの計画を潰せるのならばここは攻め時だとシカクは進言し、綱手もエーもそれに同意する。
「いのいち、医療部隊のみは居場所がバレた場合の別拠点への移動を指示、残る部隊は"新生・忍刀七人衆"と共闘し、尾獣への攻撃を指示しろ!」
「了解!」
「ッ! 待って下さい、各戦場に新たなチャクラ反応…しかし、何だ、このチャクラは!?」
伝令役のいのいちへのシカクの指示を遮って感知部隊の警告が走る。
それは緊迫というより恐怖に満ちた声色であり綱手達は戦場の更なる変化に息を飲むのだった。
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七尾との戦闘中、突如乱入してきた怨敵の姿に警戒を強めたままシカマルはその男に冷静さを保ったまま問いかける。
「角都といったか、暁のメンバーとして行動していたアンタが何故マダラと対立する」
「猪鹿蝶の小僧共…まさか俺の参戦場所にいるのが貴様らとはな──皮肉なものだな、お前達の師を殺した俺が今度はお前達を助ける形になろうとはな」
分かっていて自分達の神経を逆撫でする角都の言葉にいのは肩を震わせる。
「アンタ…」
「おっと、妙な気は起こすなよ。今七尾を止めているのは俺という事を忘れるな」
角都のその言葉通り、各地で出現した尾獣達に対し急遽我愛羅第四部隊から切り離されて七尾側に向かったこの部隊は秋道一族のチョウザ、チョウジの倍化の術による質量や奈良一族の影縛りの術での足止めを中心に他の主力部隊の尾獣討伐までの足止めを中心とした戦闘を行っていたが、圧倒的な尾獣の力にそれも困難を極め次の策として結界術である四紫炎陣の準備を迫られていた。
角都の参戦と同時に七尾が突如見えない何かに掴まれた様に動きを止めた事は彼らにとっては大きな救いである事は事実であった。
「やはり七尾の異変はアンタの仕業か……前に見たアンタの能力にそんなのはなかった。…その手に持つ刀の力か?」
「あぁ、そういえば"死神"の姿は術者と掴まれた対象にしか見えないのだったな…だが理解は出来ているようで何よりだ、ならば今はそうやって大人しくしていろ」
「……」
直接の仇は彼の相方とはいえ、それでも師、アスマの死に関わる男の態度に怒りがないわけではないがそれでも戦況、周りの連合軍の仲間達の安全の為にもシカマル達はその感情を抑え角都と七尾の動向を見張る。
一方、角都もシカマル達が手出ししない事を確認すると"魂刀・屍鬼切"により憑依させた死神の腕に更にチャクラを込めて七尾の魂を抜き出そうとし──しかし、その瞬間、七尾の後ろに降り立った人影に動きを止める。
「──ま、まさか…」
「…ん? 昔見た顔だな…お前は、確か──滝隠れの角都…だったか?」
「うちは…マダラ」
角都のその言葉に部隊の伝令役が本部にうちはマダラと遭遇の知らせを送った同時期、本部には尾獣と戦闘中の部隊全てからうちはマダラと遭遇の伝令が届くのだった。
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山岳の墓場と呼ばれる洞窟の中でこの戦争を起こしたうちはマダラはゼツと共にある人物と向かい合う。
その人物とは黒い長髪と紅く輝く両眼、うちは一族固有の写輪眼が特徴の鎧を纏った男、伝説に刻まれし"うちはマダラ"だった。
「各戦場に俺の分身を送った──それにしても、俺をこんな形で復活させる上に暁のメンバーの多くに離反されるとはな…随分と予定と違うな」
「八尾と九尾の欠片は既に得ている。その気になればいつでも計画を始められた…アンタを"穢土転生"で復活させるのはゼツがしつこく言ってくるからしたまでの事だ」
「当然だ。欠片などで中途半端な状態で計画を始めるなど失敗のリスクが高まるばかりだ、止めてやったゼツに感謝しておけ」
「まぁまぁ…ボクの能力を使ったトビの作戦もこれからが本番だし、何よりこうして"本当のマダラ"も復活出来たんだ。連合も裏切り者も蹴散らして八尾と九尾の確保もすぐ出来るでしょ」
仮面を付けたマダラ、トビに厳しく当たるもう1人のマダラを宥めるようにゼツが割って入りその場を落ち着かせようとすると"本当のマダラ"はふん、と鼻を鳴らし口寄せの印と共に地面に手を付ける、しかしそこに呼ばれるはずの存在は影も形も現れない。
「…どうやら本当に九尾はまだ捕まえてないようだな。単純に仕事が遅れているだけで俺の計画に反旗を翻しているわけではないらしいな」
「俺を疑っているのか?」
「…期待外れの進捗に不安になっただけだ。悪く思うな」
皮肉をたっぷりに含んだマダラの言葉に今度はトビが忌々し気に鼻を鳴らすとアジトの外に出て印を結び、次の作戦の準備に取り掛かり、その様子を見てマダラもそれ以上は何も言わずただ各戦場に散らせた分身達の動向に集中する。
しかしどちらもそんな様子とは裏腹に内心ではお互いに対する警戒を募らせていた。
(クソ、サソリや角都相手ではゼツに尾獣共を回収する時間稼ぎをさせる事も出来ない以上やむを得ないとはいえマダラを穢土転生してやる事になろうとはな…渦柘榴村雨め、生きていた挙句黒ゼツの監視にも気付かずにこんなタイミングで穢土転生を見せるとは…これでは"十尾の力"を得るにはマダラを直接出し抜かなければならない…穢土転生の縛りをいつでも強められる様にチャクラを取っておかなくてはな)
(黒ゼツが監視していた小娘が穢土転生を使うところを開戦直前に見れていた事で戦況の悪さから印を教えて俺を穢土転生させたと言っていたが…これは一体どういう事だ? 術者からの縛りをまるで感じん。まさか俺を完全に信用して一切縛らずに復活させた、なんて仮にも禁術を扱う以上そんな不用意どころかバカな事はするまい…何らかの別の仕掛けでも施したと見た方がよかろう。さっさと縛りを解いて好きに動いてやるつもりだったが暫くは様子見で此奴の策に従っておいてやるか──それにしても、此奴の計画を何度も邪魔をする上に長門のガキまで蘇らせるとは妙な奴がうろついている様だな…)
協力関係ではあるが相手に対する信用は皆無な両者は互いに自らこそが月の眼計画を成し遂げこの世界を救済する為に無駄な警戒を巡らせるのだった。
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一方、人柱力を巡る戦争に備え雲隠れの島亀の甲羅の中に秘匿され、人知れず修行を続けていたナルトは突如自身の腹部に焼き付けるような痛みに異変を感じ取る、そしてそれは彼の中に封印された九尾にも伝わるのだった。
『──ワシを呼ぶこのチャクラ…マダラか!?』
「マダラ…って、まさか、戦争がもう始まったってのか!?」
九尾の言葉にナルトは愕然とし──即座に決意を固める。
自身を狙うこの戦争は自らの手で終わらせる──その覚悟と共に修行の間を飛び出して、その先で彼の監視役として命を受けた木ノ葉の忍、ナルトにとって特別な存在、うみのイルカと向かい合うのだった。
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一方、雨隠れの里で待機を命じられていた香燐は各メンバーの戦闘地点にて強大な尾獣チャクラ以上に禍々しいチャクラ、うちはマダラの出現を感じ取り飛び上がる。
「おい、とんでもないチャクラが現れたぞ!」
「…落ち着け、計画の要である尾獣を戦場に出す以上マダラ側が何らかの保険を掛けている可能性は考慮していたはずだ。大蛇丸が用意した口寄せの巻物で奴らがいつでも離脱出来る様に準備をしておけ」
慌てる香燐を落ち着ける長門のやり取りを横目に重吾は緊迫の場に不釣り合いに設けられた布団の中ですやすやと眠る村雨を驚いた様子で眺める。
「…こんな状況でよくここまで安眠出来るものだな」
「叩き起こせぇ!!」
世界を揺るがす戦争の最中平和を謳歌する狂人に対する香燐の怒りが爆発した。