霧隠れの狂人   作:殻栗イガ

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共闘 忍連合軍と新生・忍刀七人衆

 雨隠れの里の宿の一室で小南、大蛇丸の2人は張り詰めた緊張から抜け出す様に大きく息を吐いて普段と比べて珍しい程に安堵の感情を浮かべていた。

 

 しかし、彼らがいた戦場のチャクラを感じ取っていた香燐、そして長門の2人はその様子に驚く事もなく2人の息が整うのを待った後に状況を整理する。

 

 里で待機していた重吾、香燐の2人が巻物に刻まれた蛇の紋様が消える口寄せの合図に従いそれぞれ小瓶に入れた大蛇丸の血を使った、緊急離脱用に打ち合わせしていた口寄せを行ったのはつい先ほど。

 尾獣との戦いを有利に進めていたはずが突如現れた尾獣以上に強大であり禍々しいチャクラの正体──それがうちはマダラであると報告を受けて長門は顔を顰める。

 

「…うちはマダラ、他の各戦場にも同様のチャクラを感じる事からして確実に分身だがそれでも即座に撤退したのは良い判断だ。1体1なら必ず逃げろ…写輪眼と戦う場合の基本だからな。──しかし、2人の報告からしてそのマダラは穢土転生された存在という事になるか」

「えぇ、彼の写輪眼…あれは穢土転生された者の特徴が混じっていた。今の貴方の様にね」

「──という事は、今まで俺にマダラの名を騙り接触していたあの仮面の男は偽者だったという事か」

 

 考えた事がない訳ではないが、かつては自らの悲願の為ならば彼の正体の真偽についてはどうでも良いと切り捨てた事柄が今になって返ってきた事に長門はかつての自分の判断を今になって悔やむ。

 

 しかし仮面の男とうちはマダラが別人だったとして、それならば当然ある疑問が生まれ重吾は大蛇丸へ声を掛ける。

 

「しかし何故うちはマダラが穢土転生されたんだ、あの術の巻物は確か大蛇丸、アンタが持ち出して今や木ノ葉の忍でも使える者はいなくて、アンタ以外だと精々がカブトぐらいであとは…」

「えぇ、恐らくその予想の通りでしょう…」

 

 疑問の言葉を続ける最中に重吾が長門に向けた視線に同意した様に大蛇丸も冷ややかな視線を長門へ向ける。

 

「元々私達がここにいる事は仮面の男…トビにはバレていた訳だからね。長門、貴方を復活させるところ、ゼツに見られていたようね」

「やっぱコイツのせいか!?」

「…まぁ、そうだろうな。──小南、村雨を止められなかったのか…とは流石に言わないが、少し迂闊だったな」

「ごめんなさい、一刻も早くやらないと大蛇丸と誰かを殺し合せる事になる…と妙に急かされてしまって。明らかに嘘だとは思っていたけれど嘘じゃない可能性も若干あったから、つい」

「"殺し合う事になる"じゃなくて"殺し合わせる事になる"か…大方サソリ辺りに代理を頼んだら殺し合いに発展しそうだなんて色々心配した結果飛躍したんでしょうけど、それでもさせる事は前提なのがこの娘らしい」

 

 心底呆れながらも、嘘を疑いながらもそれを見ない事にした事は長門も同様であり、大蛇丸もまた一応は村雨をけしかけたのは自分でもある為、それ以上小南に対しては今更言ったところでどうしようもないという理由も合わせ追及はせずに心底呆れた様に呑気に眠る村雨を一瞥した後に残りの口寄せの巻物に視線を向ける。

 

 サソリ、角都、カブト、そしてサスケに水月。

 自分達と違い忍連合軍と一緒にいる彼らは未だ撤退せずに戦場に留まっているが彼らは果たして無事なのか──もしもの場合に備えて彼らの判断を見守るのだった。

 

 

 ▼▼▼

 

 

 突如現れたうちはマダラの姿に騒めく忍連合軍の傍らで角都は目の前の男の姿をどこか納得が行ったかの様に肩を震わせて笑う。

 

「フッ…あの仮面の男がアンタだとは思ってはいなかった。だからこそ、こうしてアンタとまた顔を合わせる事になるとは思わなかったぞ」

「お互い様だ、まさかお前がまだ生きていようとはな。てっきり柱間に殺されたと思っていたが…奴の甘さは筋金入りだな、自らを暗殺しようとした男を見逃してやるとは」

「里を襲った貴様はしっかりと殺されたようだがな、その姿、穢土転生だな? 術者は──お前の名を騙ったあの男か?」

「さて…戦場で出会った忍に聞きたい事があるのならば、どうやって情報を得るかは良く知っていると思うがな」

 

 言葉でのやり取りは終わり。

 それを告げるかの如く、うちはマダラはゆっくりと組んでいた両腕を解いていく──会話が終わったのならば次に何をするのか、それを理解し忍連合軍の者達は衝動的に印を結ぶ。

 

「『火遁・劫火滅却』」

「『水遁・水陣壁』」

 

 戦場全てを焼き払う程の広範囲に広がる火炎は連合軍の忍が何人もが繋げて作り上げた水の壁とぶつかり蒸気となって打ち消し合う。

 

 初撃は防いだ、しかしそれに安堵する暇などは無く火炎と水を衝突で生じた視界を覆いつくす蒸気の中から現れた一つの人影がその姿を捉える事さえ許さぬまま戦場を飛び回り、武器を奪い、あるいは体術だけで、時には幻術を交えながら最小限の攻撃で何人もの命を刈り取っていく。

 

 止まる事なく続く嵐の如き蹂躙。

 うちはの、忍の伝説たるうちはマダラの力に忍連合軍の皆が愕然とする最中、"本物"を知る角都のみはそれに疑問を抱く。

 

「──大人し過ぎる」

 

 最初の火遁一つしても彼が知るうちはマダラならばあんな程度で防ぎ切れるものではない。

 今まさに続く一方的な蹂躙さえも角都の記憶と比べれば生温い、五影どころか連合部隊長さえ欠いたこの戦場ならば本来のマダラの力ならばより凄惨な状況になるはずであり、今のマダラは手を抜いたものとしか思えなかった。

 

 久方振りの戦場で戯れているだけ。

 その可能性も考えられるがそれ以上の可能性に思い至り角都は一瞬躊躇うも少し離れた位置で焦燥するシカマルへと声を掛ける。

 

「猪鹿蝶の小僧共──少し協力しろ」

「何!?」

 

 うちはマダラの規格外の力に必死に対抗策を練るシカマルとその護衛に控えたいの、チョウジは師の仇敵からの申し出に衝撃を受ける。

 

「…アンタに協力だと?」

「信じられるとでも思ってんの!? アンタ達がトビだかマダラだかと仲間割れしようとこっちは今だってアンタを味方だと思った事はないっての!」

「師の仇を憎むのは結構だが、目の前の男が何者か…お前達はまだ分からんのか? かつて1人の忍を除き、全ての忍が恐怖した最強の男…奴と戦う為ならば同胞の仇である千手にさえ縋らせる、それがうちはマダラという男だ」

 

 その姿をよく見ろと、角都が視線を送ればほんの僅かな会話の間にさえ何人もの死体の山が築かれていく恐ろしい光景が3人の目に映る。

 

「…協力しろ、ってんなら何か策があるって事か?」

「シカマル!?」

「ああ、まず最初にアレは分身だ。恐らく穢土転生されたマダラ本体は別のどこかにいる」

「…何故そう思う」

「本当のマダラの実力はあの程度では済まんという事だ」

 

 目の前で行われるマダラの猛攻さえも本来のマダラの脅威に大きく劣る、その事実にシカマル達は息を飲む──しかし、それでも彼は自らの強みである頭脳をフル回転させる。

 

「うちはマダラの名を騙った奴にとって復活した本当のマダラは最高の隠し玉だ…それをわざわざ戦場の一ヶ所に分身で投入させるなんてのは普通しねぇ。仮にそんな事をするなら目的のはずの尾獣を戦力として使うなんてリスクは犯さずいっそ分身マダラを直接差し向ければ良かったんだ」

「そうだ、つまりトビにとってこのマダラ復活は急遽行った対抗策、その目的は──」

「──アンタ達の参戦で危険になった尾獣の回収、その時間稼ぎ」

「今、七尾は俺のこの刀で魂を掴み動きを封じている。…だが魂を引き抜いて封印するには尾獣は少々デカすぎる。足止めに優れる猪鹿蝶の連携で七尾を一瞬でも止めろ、そうすれば動きを封じる分の力を魂の引き抜きに全て回し七尾を葬る」

「そうすりゃ、奴らの計画は頓挫…って訳か」

 

 僅かの間の後、シカマルが意を決した事を長年の付き合い故に感じ取った2人は驚愕する。

 

「シカマル、本気なの!?」

「こいつは…アスマ先生を…」

「チョウジ、いの! 目の前で戦っている奴らを見ろ! 俺達は今木ノ葉の忍じゃねぇ、忍連合軍の忍としてここにいる! この戦争が始まった時砂と岩の忍が言い争っていたのをお前達だって見ていただろ!」

 

 かつては争い合った里同士で結成された忍連合軍、その中には当然親族や友人を殺された者と共に戦う事を受け入れらない者もいた。

 しかしそれでも連隊長の我愛羅の必死の呼び掛けに応え本当の意味で連合として結成した──それがどれ程大きな事なのか、分からない程彼らはもう子供ではなかった。

 

「戦う為じゃねぇ、守らなきゃならねぇもんを守る為なら同胞の仇とだって組む…ここで戦う奴の多くがそれをやってんだ。俺達が今やるべき事はアスマの仇を討つことじゃねぇ、アスマが遺したものを守る事だろうが!」

「…そうだね、やろうシカマル!」

「気に入らないけど、今はそうするしかなさそうね」

 

 シカマルの決意に呼応するように迷いを振り払った姿を見た角都は待たされた事に若干不機嫌そうに声を掛ける。

 

「…やっと腹を括れたようだな」

「勘違いすんなよ、アンタがやった事は繁栄の為の里同士の戦争とは違う、アンタ個人の勝手な欲望で人を殺したんだ…その罪はこの戦争の後できっちり償ってもらうぜ」

「ならば今は目の前の戦争に集中し、気を抜くな。でなければ死ぬぞ──お前達は不死ではないのだからな」

 

 本来の相棒へのお決まりだった角都の忠告を聞きながらシカマルは光玉を空中に投げ、炸裂させる。

 一瞬の激しい光にマダラの象徴たる写輪眼が一瞬だけ塞がる、その瞬間にシカマル、そして部隊に所属する奈良一族の者達が一斉にマダラへ影を伸ばす。

 

「…これは、奈良一族の影縛りの術か…喰らうのは久方振りだな」

「生憎、今は"影真似の術"って名前に変わってんだ──だが、この術の次の連携は変わってねぇぜ…いの!」

「オッケー、シカマル! "心転身の術"!」

 

 影真似で行動を縛るも尋常じゃない力に振り解こうとするマダラの肉体にいのの精神が侵入しその意思をも乗っ取って更に動きを封じる。

 

「これでマダラの動きは封じた、チョウジ…落とせ!!」

「うおおおおおおおおおお!!」

 

 マダラが動けない一瞬の時間、決して逃してはならないチャンスという重圧と責任こそが怯えがちなチョウジが抱いた守る為に戦う覚悟を揺るぎないものにする。

 雄叫びと共に巨大化したチョウジの膨大なチャクラを纏った拳が七尾を捉え地面に叩き落とす。

 

 これまでの足止めの術と違い、自身と同等の質量の一撃を受けた七尾はその重いダメージに魂を掴む腕への抵抗を失ってしまう。

 

「ッ! 来た…今だ」

 

 抗う力が緩んだことを感じ取った角都は自身の左腕に憑依する死神の腕にチャクラを流し七尾の魂を一気に引き抜きに掛かる──その瞬間、"心転身の術"でマダラに憑依したいのの精神、更にマダラの動きを縛る奈良一族の忍達が一斉に弾き飛ばされる。

 

「──"木遁・樹海降誕"」

 

 瞬間、うちはマダラが使えるはずがない初代火影、千手柱間の秘術、木遁忍術が戦場を飲み込んだ。

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

 同時刻、我愛羅第四部隊、そしてサソリとうちはマダラとの戦闘もまた既に苛烈を極めていた。

 

 数多の屍が横たわる戦場の中心で揺らめく上半身のみの巨人、須佐能乎の中でマダラは腕を組んで見定める様に頭上で滞空する巨大傀儡を眺めていた。

 連合軍の忍が何十人と一斉に攻撃しても破れない鎧の如き須佐能乎に唯一、自らの特異な術による突破口を見出いた我愛羅の合図を待つ彼らにとって、元暁の乱入者に意識が向いている状況は皮肉にも救いになっていた。

 

 尤も、当のマダラもそのマダラから一身にプレッシャーを掛けられるサソリにとってもそんな事情は全くの認識の外の事であった。

 

「まさか砂隠れの玩具がここまで大掛かりな出し物になっていようとはな」

「出し物?」

 

 自らの作品に対するマダラの表現にサソリは僅かに目を吊り上げ、時代遅れの過去の遺物らしい価値観に肩を震わせる。

 

「良いだろう。だったらこの"巨大傀儡人刀・櫛儺娜"による『赤秘儀・一機無双の狂演』…とくと見せてやる」

「ほう…ならば楽しませてもらうとしよう…簡単に壊れてくれるなよ」

 

 須佐能乎の四本の腕が動きその軌跡上にチャクラで形成された無数の勾玉が出現する。

 その一つ一つが並の術とは比べ物にならない程の破壊力を秘めていると感知タイプでなくとも理解させる威圧感にサソリも即座に"巨大傀儡人刀・櫛儺娜"の四本の腕の内の上側の両腕のハッチを開き、その内側に搭載した弾道弾を一斉に射出する。

 

 チャクラの勾玉と弾道弾は両者の間の空中で激突し合い周囲を爆炎と衝撃に巻き上げられた砂煙で埋め尽くす。

 

「──全腕"響鳴スピーカー"起動、『響鳴穿・咆哮』…最高出力だ」

「む…」

 

 視界が塞がった瞬間に両耳を襲う巨龍の咆哮の如き轟音にマダラは微かに顔を顰める。

 あらゆる攻撃を受け付けない頑強な須佐能乎の数少ない弱点である"音"を使う事、更には先の打ち合いによる砂煙と合わせて視覚と聴覚を妨げる手順にマダラは内心でそれなりの評価をしつつそれはそれとして耳障りで不愉快な攻め口に不機嫌そうに鼻を鳴らすと須佐能乎の全ての手に剣を形成し不快な音の出所へと突き上げる。

 

「──ッ! 今だ!」

 

 マダラの興味が一点に向いていること、そして視覚と聴覚が奪われたこと、それらが重なって漸く訪れた明確な隙に我愛羅は自身の部下へ素早く合図を出すと同時にマダラの足元の砂を操りマダラに纏わり着かせ、須佐能乎の外へと引きずり出す。

 

 そしてその瞬間を待っていた連合軍の忍達は空中へ躍り出されたマダラへ一斉に攻撃を仕掛ける。

 火遁に水遁、風遁、土遁に雷遁、果てには風魔手裏剣や起爆札付きのクナイなど二度目はないであろうチャンスを逃すまいと全員が自らに出来る攻撃を放つ。

 

「ガアアアアーーー!!」

「ッ! 何!?」

 

 しかしその攻撃はマダラの後方から飛び跳ね、割って入った一尾の全身に阻まれる。

 何百もの攻撃を身に受け苦悶の叫びを上げる一尾はやがて煙に包まれてその姿を忽然と消滅させる。

 

「一尾…死んだのか?」

「いや、あれは恐らく術者に口寄せされた…尾獣を撤退させるならついでに盾にしたのか」

 

 かつては自身に封印され精神を蝕んだ怪物、決してそれに良い印象を持っていた訳ではない。

 しかしあらゆる要因の末に分かたれ、自らの目で直接その姿を見た今…一尾、守鶴が盾として扱われる光景をただの戦術行為と見做す事は出来ず、我愛羅は攻撃が迫る瞬間、守鶴の方へ写輪眼を向けその行動をとる様に命じたマダラへ追撃を仕掛ける。

 

 連合軍の一斉攻撃は阻まれようと唯一マダラに届いた自身の砂は今もまだマダラの身体を捕え続けている。

 更に周囲の砂を集めると共にチャクラも全力で流し続け"砂縛柩"の圧力を増していく。

 …勿論、その程度ではマダラの腕や足の骨を砕くことは出来ないとは承知の上、故に我愛羅はマダラの頭上で滞空する巨大傀儡へ視線を送る。

 

 その意思を汲み取ったのか、ただ今の状況が好機と踏んだのか、サソリは櫛儺娜の手に刀を握らせて急降下させる。

 

「少し遅いな」

 

 振りかぶった刀がマダラに迫った瞬間、再び出現した須佐能乎が四本の腕の刀全てを構えて櫛儺娜の持つ刀を受け止める。

 更に新たに出現した須佐能乎は先程までの上半身だけのものとは違い足まで含めて全身がはっきりと造られておりマダラがその内側のどこにいるのかも我愛羅達からは窺い知れなかった。

 

「クソ…あれじゃ足元の砂で引き摺り出す事も出来ねぇじゃん…あのチャクラの鎧を真正面からぶち抜くなんてどうすれば…」

「いや、あの刀ならば…火遁を使えるものは全員であの刀に火を当てろ!」

「火遁? しかしマダラのあの術には上半身だけの時でも通用せずに──」

「違う、マダラの術の刀ではない──アレだ!」

 

 我愛羅が指差すのはその言葉通り須佐能乎の刀ではなく、櫛儺娜が持つ刀──かつてうちはサスケ奪還任務の際に我愛羅自らが対峙した刀匠、村雨が急増で造り上げた爆発する刀──その改良版"無限爆刀・蒸気壮怒"。

 

「よく分らんが…」

「風影様が言うならば…信じるのみだ! 猿飛一族の皆、いくぞ"火遁・炎弾の術"!!」

「俺達も続けぇ! "雲流・火炎斬り"」

 

 半信半疑のまま連合軍の忍達が次々に火を放ち、"無限爆刀・蒸気壮怒"を熱していく。

 それはマダラの須佐能乎との鍔迫り合いに集中するサソリにとって想定外の助力であり、しかし決して喜ばしいものではなかった。

 

「や、やめ──」

 

 サソリの静止が届くよりも早く"無限爆刀・蒸気壮怒"は炎に炙られ赤熱し、遂に臨界点を超える。

 直後砂漠の戦場に須佐能乎ごとうちはマダラを飲み込む大爆発が放たれ──ナイスガイポーズでサムズアップする水月の顔が打ち上がるのだった。

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

「…これで一尾と七尾も回収できた。後は五尾と三尾か」

 

 マダラの分身で連合軍の忍達と裏切り者達を相手している内に何とか回収に成功した尾獣達を外道魔像に入れ直しながらトビは背後で適当な岩に腰かけて分身の操作に集中するマダラへ視線を送る。

 

「一尾がかなり負傷していたが…敵を抑えきれないとは分身とはいえアンタらしくないな」

「二代目火影、扉間の使っていた頃に比べると戦闘能力の再現に重きを置いているようだがそれでも生前の俺より遥かに劣る…"完成体"ではないにしても須佐能乎すら正面から破られる程度まで劣化するとはな」

「それでも若い頃で復活出来る様に盗み見た巻物を頼りに必死に調整したんだからあんまり悪く言わないで欲しいけどね」

「それで戦場はどうなった?」

 

 不完全な出来につまらなさそうに愚痴を溢すマダラに対し、トビを庇う様に介入する白ゼツをトビ本人の方から押し除けてマダラに報告を急がせる。

 

「一尾の方はさっき言った通りだ、巨大な傀儡の持つ妙な刀に須佐能乎を破られ分身も消えた。…見せ掛けだけの出し物かと思ったがあれならもう少し踊れそうだな」

「…七尾の方は?」

「…やはり柱間細胞が足りんな、捕らえた相手のチャクラを抑制する木遁忍術で奴らの小細工を潰してやるつもりだったが、範囲が狭く大半の者に逃げられた…だが、柱間の力の試運転には役立った、十尾の制御においてはこれだけでも特に問題はあるまい」

 

 忍連合軍や裏切り者の相手も所詮自分達にとっては本命の目的ではない。

 敵の排除には別に木遁でなくともいくらでもやり様はある…マダラはそう語ると残る分身の操作に集中する、そしてそれは先程の戦場で得た情報を他の分身体へ伝達する結果にも繋がるのだった。

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

 

 三尾を放った戦場で分身のマダラは先程消滅した別の戦場の分身が得た情報を共有し目の前に立つ男の顔に思わず一瞬動きを止める。

 白い髪に鋭く尖った歯のガキ…巨大傀儡を操る男が爆発する武器で打ち上げた顔と一致する。

 

 消滅する直前に分身が見せられたあの訳の分からない演出…その昔、二代目水影幻月が似た様な現象が起きる術を使っていたのは知っているがあれは特殊な分身へ派生するが故のものだった。

 一方であの刀は忍具のくせに顔という大きな情報を無駄に明かす奇行に一体何の意味のがあるのかと理解が出来なかったが、思い当たるものが他に一つだけあった。

 

 木ノ葉の顔岩。

 里造りを成した柱間が提案した"里を見守る長の象徴"だ。

 トビの報告では暁のメンバーの多くがある人物の影響を受けて離反したという話もあり、更にはその裏切り者達が"新生・忍刀七人衆"を名乗って今回の大立ち回りをしたというのならば…その"新生・忍刀七人衆"を率いる人物に心酔し象徴を担ぎ上げようとするのも納得がいく。

 

 …というよりも、そうでもなければわざわざ顔を打ち上げる意味が分からない。

 

 …しかし、その割にはマダラにとって目の前に立つ水月は角都や傀儡使いの元暁のメンバーと比べてチャクラも強者としての雰囲気も随分と劣って見えた。──故にマダラは眼前の小僧へ疑問を口にする。

 

「お前が、"新生・忍刀七人衆"とやらの長か?」

「……そ、そうとも言えるしそうでもないとも言える…かな?」

「どういう事だ? …いや、まぁ良い」

 

 妙に引き攣った表情で曖昧に答える水月にマダラは思わず聞き返すが即座にそれを取り下げる。

 目の前の小僧と裏切り者達の関係がどうであれ、敵として目の前に立っているのならば葬るのみ──仮に見掛け以上に強く実力で連中を従えたというのならばそれはそれで悪くない。

 

 計画を成すまでの余興として楽しむに値するか否か、…目の前の小僧を"どう見るか"それは戦いの中で判断すれば良いとマダラは結論付けるのだった。

 

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