マダラの分身が繰り出した須佐能乎により追い込んでいた五尾を取り逃した上に多くの犠牲者が出たものの、その強固なチャクラの鎧にカカシが神威によって裂け目を作り、そこにガイの昼虎を叩き込む事で辛うじて分身を退ける事に成功した忍連合軍のカカシ第三部隊は負傷者への手当と本部との連絡で他の戦場への増援の段取りを詰めるなど次の戦いに向けて準備を整えていた。
そしてその傍らでこの戦場に現れた乱入者、新生・忍刀七人衆のカブトは八門遁甲の内、最後の一つ手前である七門の解放で大きな反動に苛まれるガイの治療に当たっていた。
伝令役に本部とのやり取りを任せたカカシはその意外な行動に警戒の為監視をしていながらもカブトが治療の振りをして何らかの悪事を働くつもりはないのだと何となくだが察しはついていた。
…だからこそ、監視というスタンスは保ちながらも戦意のない穏やかな空気の中でカカシは声を掛ける。
「んー…なんだ、医療忍者も多少は部隊にいるが流石に七門の反動となるとシズネやサクラ並みの医療忍者じゃないとすぐに回復とはいかないから正直お前の申し出は有難かったわけだけど、一体どういう風の吹き回しなのか聞いていいか?」
「なに、五尾は勿論マダラの相手まで完全にお任せしましたが、少しは忍連合軍に手を貸しておかないと他の皆に申し訳が立たないと思っただけですよ」
「…他の戦場でも新生・忍刀七人衆と名乗る元暁のメンバーが現れて尾獣や分身のマダラと戦ってくれたそうだがお前達は忍連合軍に手を貸す…味方だと思って良いのか?」
「そう思って頂けたらこちらとしては大助かりですよ、2人のマダラを相手にしている傍らで忍連合軍も敵となっては流石に手に負えないですからね」
カブトのその答えはカカシとしては予想通り。
そもそも本来ならば正規の忍達からは追われる立場である彼らがこうして自ら姿を現した時点でそう答える以外ありえない事だ。
単純に考えると彼らにとっても月の眼計画が受け入れられない内容でトビ達と離反した、その上でトビ達と戦争を行う忍連合軍に擦り寄り協力する事で戦争後の自分達の立場を向上させるのが目的…と推測できるのだが彼らの罪状はそのような事で帳消しに出来るものではない、そして彼らがそんな事を分かっていないはずがない。
「お前達が参戦するなら忍連合軍がもっと壊滅的な状況に陥った時に参戦する方が効果的だろう、今敢えて参戦した目的は一体なんだ?」
「…ふ、勿体ぶったところでそれこそ今参戦した意味がなくなるだけですし正直に明かしますが…もうすぐにでも忍連合軍が壊滅的な状況に陥るからですよ」
「…どういう事だ?」
カカシも、それまで大人しく治療を受けていたガイも、あくまで冷静に、しかし先程までの穏やかな雰囲気から一転して鋭利な空気を身に纏う。
「既にどこかの部隊が遭遇しているんじゃないですか? 白い方のゼツの能力、恐らくマダラ、いやトビの本命は尾獣ではなくそちらですよ」
「地中を移動する白い奴の大軍と一部部隊が遭遇したという報告はあったがそいつの事か?」
「ええ、尤もボクが言っているのは地面を移動するという能力ではなくそいつの持つ特殊な変化の術について…です」
捕らえた相手からチャクラを奪い、そのチャクラを利用して相手の姿形をそっくりに真似する特殊な変化の術、その詳細を聞かされたカカシはすぐに伝令役に近くに来るように手でサインを送る。
感知不可能な変化の術。
それが戦争においてどれ程の脅威かなど考えるまでもない事だ。
既に黄ツチ第二部隊が白ゼツの奇襲を受けており、他の部隊からも遭遇、戦闘を行ったという戦況報告はカカシの下に届いており、すぐに対策を立てなければ隣にいる味方が本当に味方なのかという疑心が部隊の戦略を崩壊させ、負傷者の治療も出来ず、やがてこの戦争に敗北するであろうと予想させる。
「ッ! カカシ隊長、地面に大量のチャクラ反応!!
「まさか…ここにももう来たか!」
しかし伝令を送るよりも早く戦況は瞬く間に変化する。
感知タイプである山中一族の男性、山中サンタの悲鳴に近い警告が響き渡った直後地面が捲れ上がり千を超えるであろう大量の白ゼツが次々に飛び出した。
「チャクラを吸われると厄介だ、遠距離攻撃をしつつ距離をとれ!」
「それは良い。巻き込まれないでくれると助かりますよ」
それまでガイに施していた医療忍術を止めてカブトは脇に挿していた刀──"蛇刀・蝕"を手に取り一気に振り抜いた。
数珠つなぎに区画分けされた刀身は空中で分裂し一本の鞭へと変化しカブトの腕の動きに合わせて何度も風切り音を響かせながら地中から飛び出したゼツの身体を次々に切り裂いていく。
胴体を斬られて絶命した者もいれば、僅かな外傷で済んだ者もいる──しかし手傷を負った者は全てその傷口から徐々に全身に呪印が広がり動きを縛られ、呪印の進行を追うように身体が紫色に変色し呻き声を上げながら蹲る。
「…毒か」
圧倒的な物量で奇襲を仕掛けたゼツ達だったがたったの一太刀掠るだけで絶命させるカブトの持つ刀にカカシはその有効性を認識すると同時に万が一にもゼツから離れる連合の忍達に刃が当たらないか、いざという時に弾く為のクナイを構えながら様子を見守る。
「心配しなくても、ちゃんと余計なものに当てないように練習はしていますよ…しかし、流石に多過ぎるな、腕が疲れる。──こっちを試してみますか」
何度も腕を振り回していたカブトだが、その言葉と共に"蛇刀・蝕"の先端をゼツの大軍の中心の地面へ突き立てると左手の親指の肉を噛んで出た血を柄へ押し当て刀身に刻んだ口寄せ術式を起動させる。
刀身で傷を付けた相手へ流し込む蟲の毒とは違う、もう一つの猛毒──かつて忍世界でその名を知らぬ者はいないとまで謳われた雨隠れの半蔵が用いた山椒魚の毒をベースにサソリの指導の下で村雨が調合した毒を混ぜ合わせた毒霧が数珠繋ぎの刀身の一部から噴き出してゼツ達を飲み込んでいく。
「これでよし…と」
直前に聞かされた情報のおかげで連合軍の忍達にゼツから離れる様に指示出来ていた事で広範囲に広がる毒霧での制圧が上手くいった事にカカシは一仕事終えたとばかりに振り回していた右腕を肩から回すカブトの姿を複雑に思いながらも一先ずこの部隊での偽者が溢れかえる事態を避けられた事に安堵する。
「一先ず礼を言っておくよ。お前のお陰で助かった」
「いえいえ、この改良した"蛇刀・蝕"は彼女の作品の中でも殺傷能力に関しては随一なもので生き物相手に試した事はなかったので丁度使ってみたかったところなので気にしなくて良いですよ──尤も、ゼツの能力についての情報に関しては、それなりに評価してほしいですがね」
「やれやれ…謙虚さと恩を同時にアピールするとは、相変わらず食えない奴だなお前は…」
謙虚さが裏返って慇懃無礼にさえ感じながらも事実としてカブトの明かした情報の有益性はそれを受け入れて余りあると判断したカカシは呆れながらもそれ以上は何も言わず、今度こそ本部へとその情報を伝達し対策を至急練るように要請するのだった。
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忍連合軍の生命線そのものである医療部隊の拠点を襲う二尾。
強大なチャクラの化身である尾獣の一体だが、大量の白ゼツを生成する為にそのチャクラの多くを消費した事で弱体化した結果、永遠の万華鏡写輪眼を得たサスケにとってはその力を試す為の獲物に過ぎなかった。
須佐能乎の放つ矢で二尾の蒼い炎の如き身体を縫い留め動きを止めると天照の黒炎で焼き尽くしていく。
対象が燃え尽きるまで消える事のない黒炎、それに囚われ絶叫を上げる二尾の死は確実なものであった──本来ならば。
突如黒炎は二尾の身体から離れ、吸い込まれる様に地面に描かれた術式の中に吸い込まれていく。
本来ならば巻物を用いる"封火法印"の術式を地面に刻み黒炎を吸い込ませた人物、うちはマダラは天照の黒炎を完全に封印したのを確認すると他の戦場で現れた時とは違う、彼にしては上機嫌な様子で自身と同じ血族の少年に視線を向けた。
「基本巴ではない写輪眼、万華鏡写輪眼か…それもかつての俺と同じ直巴とはな…惜しいな、お前なら或いは奴以上に俺の役に立てる器になれたかもしれん」
「…誰だ?」
「サスケ君! 本部から連絡があった、そいつはうちはマダラ! お面の奴とは違う、本物のマダラが穢土転生って術で復活したそうなの!」
「マダラ!? …そうか、貴様が…」
突如現れた写輪眼を持つ人物の出現に戸惑うサスケだがサクラの情報に確かめるかの様にマダラの様子を窺い始める。
「──だが、今からでも遅くはあるまい。うちはの同胞よ…俺と組む気はないか?」
「お前と組むだと? …トビとかいう奴が計画の為にお前を利用しているんじゃないのか?」
「確かにこうして俺が復活したのは奴の判断だが俺にも色々と考えがあってな…アレにただ利用されているつもりはない」
「どうであれ興味はない、俺には俺の計画がある──旧世代の遺物がしゃしゃり出るな!」
その言葉と共にサスケは須佐能乎を再び纏いチャクラの刃による鋭い突きを放つ──しかし言葉とは裏腹にその狙いはマダラの傍らで蹲る二尾へのトドメの一撃であった。
「!? これは!?」
目にも止まらない速度で繰り出された必殺の一撃。
だがそれはあくまで普通の眼ならばという話であり、サスケと同様万華鏡写輪眼を持つマダラにとっては見切れないものではなかった。
二尾に迫ったサスケの刃はその標的に触れる直前に差し込まれたチャクラの刃に阻まれる。
サスケと同様にマダラが出現させた須佐能乎の刃がサスケの須佐能乎の刃とぶつかり合い甲高い音が周囲に響き渡る。
耳に響くその音が消えると同時に二尾もまた姿を現せない術者に口寄せされたのかその場に煙だけを残して消えていった。
「くそ…」
「…須佐能乎の力はまだ完全に引き出せていないようだな。完成体には程遠い」
「完成体?」
「…と言っても、それは分身であるこの俺も替わりはないがな」
珍しく自嘲気味に笑うマダラは暫し考える素振りを見せると突如組んだ腕を下ろし写輪眼さえも解いた。
「何のつもりだ?」
「その眼ならば"奴の次の手"でも死ぬ事はなかろう、答えを焦る必要はない…いずれ戦場で俺のオリジナルと相見える事もお前ならば出来るだろう、答えはその時に改めて聞かせてもらうさ」
「俺の答えは変わらない、お前などと組む気はない」
「焦るなと言ったはずだ、時間は充分くれてやる──それにお前を招くにしろ殺すにしろ分身では興が乗らん」
それは果たして彼なりの同胞への情なのか、それともただの気紛れなのか…常人には理解がし難いマダラの言葉に閉口するサスケ達は消滅したマダラの分身が残した煙をただ見つめるのだった。
▼▼▼
仕事を終えた後の睡眠ほど心地良いものはない。
思い描いた刀が完成した達成感や満足感は勿論、刀を造っている最中、常に想像する目の前の刀が戦場で振るわれる姿──そんな想像で昂ったままの期待感と高揚感が疲労感に混じり合って気持ち良く沈んでいく感覚。
普通に就寝するのとは違う、そもそも徹夜して作業し続けていた反動でもあるのだろうが、とにかくこうなると中々起きられず気が付いたら2~3日経過している事もあるのだが──耳に響く音色に急激に意識を引き戻された。
「…"刀の音"がする」
無意識にそう呟きながら寝ていた身体を起こすと数人不在ではあるが周囲に人が集まっている事に気付く。
おまけに香燐さんや重吾さんの手元には口寄せ用の巻物まで置かれて何だか物々しい雰囲気だ。
「起きたと思ったらいきなり何言ってんだ…夢の中でも刀振り回してんのか?」
「いえ、今回は夢ではなく実際に刀がぶつかり合う音が聞こえたもので…少し遠いですが、ここから東北東の方角でしょうか?」
「……うちはサスケとマダラが戦っていた方角だ」
「何なんだお前マジで…」
香燐さんから呆れた…というよりもちょっと引いている様な視線を向けられているが、そんな事よりも聞き捨てならない事が聞こえリーダーさんに詰め寄る。
「あの…サスケ君とマダラさんが戦っているって一体どういう?」
「単刀直入に言うと戦争が始まった。俺達は今のところは忍連合軍側に協力する形で参戦した」
「ええ!? で、では水月やサソリさん、角都さん、カブトさんが不在なのは──」
「戦場だ…大蛇丸と小南も旗色が悪かったので撤退したが一度は出撃した」
「新生・忍刀七人衆の初陣という待望の夢が実現する瞬間に寝ていたんですか私!?」
「…良い夢見れたか?」
「夢を見逃したんです!」
「……月の眼計画が実現したら今度こそ見られるかもしれないぞ? …夢の中で」
「夢の中に入るのはもうこりごりなんです!」
「落ち着きなさい村雨。長門、貴方も無駄に揶揄うのはやめなさい、そんなキャラでもないでしょう」
必死に噛み付く姿を見かねられたのだろうハレンチ博士の静止が入り未だに穏やかではない胸中であるが何とか堪えるとリーダーさんも戯れるのをやめたのか小さく息を吐いて口を開く。
「こいつには散々調子を狂わされたからな、たまには良いだろう」
「それに関しては同感だけど、この娘にはまず伝えないといけない事があるでしょう?」
「そうだな…村雨、話を戻すがさっきのサスケとマダラの戦いだが、そのマダラはお前がこれまで遭遇していた面の男ではない」
「…え?」
どういう事だ?
面の男、トビさんは自らをうちはマダラだと私達の前で明かしてうちは一族の族長としての証も…いや、でも確かにハレンチ博士や角都さんなどはトビさんの正体がうちはマダラであるという事に対して疑っている様子だったしそういう可能性も考慮していなかった訳ではない。
「大して驚いてはいないようだな。話が早くて助かる」
「まぁ…これでも色々な可能性を考えて生きていますので」
「それは頼もしいな…なら俺を穢土転生する際にゼツに見られている可能性は考えた上でやったと認識して良いんだな?」
瞬間、周囲から厳しい視線が全身に突き刺さり呼吸さえも忘れてしまう。
落ち着け、リーダーさんの発言の意図を良く考えて答えなければいけない、万が一にも不適切な回答をすれば命はないと、そんな直観的な警告が脳を駆け巡る。
私が穢土転生を使うところをゼツさんに見られていた可能性。
サスケ君とマダラさんが戦っている。
そしてトビさんとうちはマダラは別人であるという結論、これらの意味するところはつまり──なるほど、そういう事か。
つまりは私が穢土転生を使うのを見てゼツさんが、もしくはゼツさんからその情報を得たトビさんが本物のマダラさんを復活させてしまった…と。
何て事だ…そうなったら大変だなーと考えながらも捨て置いた可能性の中で一番最悪なパターンが現実になろうとは、これは…なんと弁明するべきだろうか。
「ったく、どうせお前の事だから碌に危険な可能性なんて考えずやったんだろうけどな! お前の軽はずみな行動のせいでサスケが…達が危険な状況になってんだぞ。忍連合軍の連中なんて何人も死んでいるだろうしな!」
「…そう、ですね」
香燐さんの言葉に心がズキリと痛む。
その言葉のお陰で私の行動が"危険性を考慮しなかったもの"と周囲に認識されたであろう事を即座に把握する自分の思考に──まさか多くの犠牲者を出す事となった行動を咎める言葉を助け船と思うとは…流石に自己嫌悪の感情を抱かずにはいられない。
…しかし、やってしまった事を悔やむ気持ちはあるがそれを差し置いても気になってしまう事がある。
「──ところで、ゼツさん、もしくはマダラさんが穢土転生の術を使ったとして…本当に私がやったものを参考にして行ったのでしょうか?」
「何だ? この期に及んで自分は無実だとでも?」
身下げ果てたと言わんばりの香燐さんの言葉に確かにこの聞き方だと今回の原因の責任を見苦しくも逃れようとしている様に聞き取れると気付いて首を振る。
「いえ、勝手な言い方でありますが恐らく皆さんが思っている以上に罪の深さは認識しているつもりです…でもそれ以上に少し気になる事があるもので…」
「? …良く分からんがトビは穢土転生の術の使い方を元々は知らなかった。…だからこそ以前に奴は俺にお前から穢土転生の情報を引き出すように命令してきたのだしな」
「え? …まさか雨隠れの里に初めて招いて頂いたのってそういう事だったんですか!?」
「お前…今更だが良くここまで生きてこられたな…」
まったくもってその通りだがリーダーさんが実際にトビさんから指示を受けている以上、それ以降でトビさんが穢土転生の情報を入手したと考えるしかない。
そしてリーダーさんが指示を受けて私が雨隠れの里を最初に訪れたタイミングからして、その間ハレンチ博士はサスケ君に倒されていたり、復活後はそのサスケ君と共に身を潜めて行動していた事からして別口から情報を得たとは考えにくい。
…という事はやはり私がリーダーさんを復活させた際に情報を得たとみて間違いない…という事はだ──
「…トビさん、マダラさんをちゃんとコントロール下に置けているのでしょうか?」
「「……あ」」
ハレンチ博士とリーダーさんが揃ってその意味を理解して声を上げた。
私が行った穢土転生は最初に地面に術式を刻む際に口寄せする死者を術者のコントロール下に置く為の部分を敢えて描かずにその分のチャクラで生前の力の再現に回した…といってもそれすらもハレンチ博士が使った場合と比べて大幅な劣化するであろうものを補う為のものでしかない、そんな付け焼刃の出来なのが実態だ。
私の場合はリーダーさんが信頼できるので問題はないのだが…トビさんはマダラさんを復活させて本当に大丈夫なのだろうか?
「…どう思う、大蛇丸?」
「死者を縛りも無しに口寄せするバカがいるとは思わないでしょう…とんだ大外れを掴まされたものね、同情するわ…と言いたいところだけど、その割にしてはマダラが尾獣の守りに各戦場に現れたことが気になるわね」
「コントロール下に置かれていないがマダラはトビに協力していると判断するのが妥当だが…術者を裏切るタイミングを狙っているのか、それとも意思疎通をするタイミングがあって目的を同じくしているのか…」
「マダラが月の眼計画に乗っているのか、トビに協力する何らかの取引があったのか…結局、可能性を考え出すとキリがないわね…それこそトビが術式に欠けている部分がある事に気付いて調整した可能性だって考えられるのだからね」
そう、可能性なんて幾らでも想定出来る、そして可能性にすぎないのならば実際にどうなるか分からないのは私が実証済みだ、何も決まっていない内から何かを断定するなんて不可能だという事は身に染みた。
「結局のところマダラさん本人に直接確認してみるしかないという事ですか?」
「そうね、ただバカ正直に本人に聞いたところで返ってきた答えが本当かどうか分からなければ結局は無意味…マダラの動きを封じて何らかの術で情報を引き出すかでもしない限りはね。──尤も、術自体は長門の能力が使えるけれど肝心のマダラの動きを封じるという前提をどう満たすのかが問題なのだけど」
そう語るハレンチ博士も名指しされたリーダーさんも表情は真剣そのもので、指折りの実力者であるお二人がここまで警戒するとはマダラさんという1人の人間としての格の高さを改めて実感する。
「…会ってみたいな」
うちはマダラ。
初代火影、千手柱間様と共に木ノ葉の里を興し、今なお続く忍の里の基盤を造り上げた正に時代の、いや世界を築いた人物と言っても良いだろう。
だがそれと同時にもしもマダラさんが本当にトビさんに、世界を夢の中へと閉ざす月の眼計画に加担しているというのならばあの方は自らの築き上げた物を無かった事にしようとしている。
トビさんをうちはマダラだと思い、彼が月の眼計画を明かした時からずっと気になっていた事だが、一体どうして、何故自らが造った愛すべき存在を消そうと出来るのだろう。
柱間様と共に里を造った一方で火影となれなかったから?
当時の里と今の里がマダラさんからは違うものに見えたのか?
月の眼計画には忍の里以上に価値のあるものなのか?
尊敬すべき先人が今何を思っているのか、それが気になって仕方がなくて思わず呟いた言葉にリーダーさんがため息を吐く。
「敵として現れたうちはマダラに会ってみたいとは…どこまでも命知らずだな」
「でも…面白いじゃない、水月は貴女に寝ていて欲しかったみたいだけど、私としては貴女がこの戦争でどう動くのか見てみたいと思っていたところよ」
「……それは自分が同じ戦場にいないことが前提の話だろ」
「当たり前じゃない」
なんだかそれだと私の事を面白い出し物か何かだと思っている印象を受けるのだが…いや、というか本人がさっき面白いって言ってたし完全に出し物扱いだ。
「さて…どうする村雨、皆に持たせておいた離脱の為の口寄せ蛇だけど…時空間忍術のマーキングも施してあってね…流石に飛雷神の術程速くはないけれどマダラのいる戦場に送る事も出来るけれど?」
「ぜひお願いします」
たとえそれがハレンチ博士の遊び心だとしても私の望みが果たせるのならばそれに乗らない手はないだろう。
マダラさんの真意を聞く事が出来るのかは分からないが、そうでなくとも私の行動が原因で激化した戦争、その光景を見る責任だって私にはあるはずだ。
迷いなくハレンチ博士の誘いに答えるとリーダーさんは僅かな沈黙の後に香燐に声を掛ける。
「…念の為に確認してほしいんだが、あいつらが向かった各戦場でマダラのチャクラを感じる場所について、霜隠れ周辺の海岸の戦場以外に感じる場所はあるか?」
「…ないな。全員マダラの分身を倒したって事か?」
「私と小南は撤退しただけだけれどね。…忍連合軍と上手く連携出来たのかしら? 案外やるじゃない、あの連中も…それで、残っている一ヶ所に向かわせたのは──海岸って事は…」
「……新生・忍刀七人衆の…隊長がいる場所だな」
あ! 水月のところか、それは丁度良かった。
……何故か皆が揃って神妙な面持ちになったがどうかしたのだろうか?