霧隠れの狂人   作:殻栗イガ

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リーダー達の苦悩

 村雨と共に雨隠れの里に帰還して数分後、暁の元リーダーだったらしい長門という男に里の外まで連れ出されたと思ったら雨の降り頻る中、皮と骨だけの手に首を掴まれ瞬く間にチャクラを吸収されていく。

 

 急激な脱力感に意識まで薄れていくのがよく分かる──ちなみにこれは決して先のマダラの一件での罰などではない、仮にそんな理由でこんな目に遭うのならそれはボクじゃなくてあのバカが受けなければ理不尽だ。

 では何故こんな目に遭っているのかというとボクの身体と融合した"双魔刀・三巴"のせいである。

 

 左近と右近の2人の細胞をそれぞれ使った持ち主と融合する能力を宿したその二振りの刀の内一本には写輪眼が埋め込まれ、融合した人物に写輪眼を宿らせる。

 そしてそれとは別にもう一振りの刀には三尾の欠片を埋め込んでおり、その刀と融合すれば刀から三尾のチャクラを引き出すことが出来る。

 写輪眼と尾獣の力、どちらともを取り込むことを可能とするのがこの"双魔刀・三巴"という刀なのだが…当然そんな特異な力を簡単に扱えるはずがなかった。

 

 …薄れていく意識の中で否応なしに思いださせられるのは村雨が大蛇丸と一緒に霧隠れの里へ潜入すると決めた頃…戦争を目前に束の間の休息を得られるなと内心喜びつつ、それはそれとして既に渡されていた"双魔刀・三巴"を使いこなす為に修行をしていると──何か村雨によって蘇ったとかいう目の前のこの男に見つかった。

 

 何故かボクから三尾のチャクラを感じた事に不審がった彼に"双魔刀・三巴"について、そして当時はまだ三尾の欠片分しか得られていなかったとかで"双魔刀・三巴"は未完成だった為、その後の戦争でトビが呼び出すであろう三尾の身体をもう少し削り取るという村雨の計画を話したところ結構本気で同情と心配をされ短い間だが修行を付けてやろうという申し出があった。

 

 上からの物言いが少し気に入らなかったが暁のリーダーだった奴なのだからその実力は確か、それにボク自身村雨の無茶な計画に命の危機を感じていた事もあって有難く受ける事にした。

 その結果、まずは三尾のチャクラを意識的に引き出せるようになる為の修行として"餓鬼道"という能力によってボク本人のチャクラを限界まで吸われる事になった。

 

 なんでも一度ボクのチャクラを空にする事で三尾のチャクラという本来異物であり膨大なチャクラの器を確保するとか何だとか…そんな理屈らしいが…その理屈を聞いた時には以前とは別種の地獄の修行に絶望するというよりも呆れの方が勝った──なにせ長門の考えた修行の内容と村雨が考えていた計画がばっちり噛み合っていたのだから。

 

 この刀は"相手のチャクラを一瞬で空にする刀を持つ男"に対しての切り札として造ったものだ──チャクラを敢えて食わせてやってチャクラを空にしてもらうことで三尾のチャクラを引き出しやすくしようというバカの考えた恐ろしくハイリスクな作戦がずばり正解だったというのだからもう笑うしかない。

 

 

 死ぬ思いを繰り返す地獄の如き修行の"第一段階"を終えると今度は三尾の身体を直接抉り取るという方法でなく取り込んだ三尾のチャクラを利用し、三尾本体に繋げて綱引きの要領でチャクラのみを奪い取れば良いという方法を教えてもらえた──までは良かったが、彼がその方法を提案した元となった"人間道"の能力を使って練習をしておくという話となり魂を引き摺り出されては死ぬ寸前で戻されるという第一段階とは違う種類の地獄の時間を繰り返す事となった。

 

 一歩間違えれば死ぬであろうその修行の成果は悲しい事に上々…三尾と戦った時にはチャクラの綱引きによって大量のチャクラを奪う事に成功した──そう、成功した以上もうボクに次のステップを拒む理由はなくなってしまった。

 

 三尾、そしてマダラとの戦闘を終えて雨隠れに帰ったボクを待っていたのは三尾のチャクラを"完全に扱えるようになる為"の修行だった。

 帰還してすぐに軽傷である事を確認すると休む間もなく外に連れ出され首を掴まれてまた自分のチャクラを根こそぎ奪われ確実に死が近づいているのを感じる、本当に、これを修行というのはどうかしている──。

 

 

(──だけど、いいさ)

 

 今度こそ、あの怪人に勝てるのならばやってやろうじゃないか。

 自分のチャクラが一滴もなくなったのを感じた瞬間に腹の奥から自分の物ではない力を引き摺り出して──視界が赤いチャクラに包まれた。

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

 

「──うまくいった、流石水月」

 

 マダラさんと戦いの約束を結んだ後にハレンチ博士の蛇を利用しての逆口寄せによって雨隠れに帰還に成功したが、その戦いにハレンチ博士をどう誘うべきか特に考えていなかったのでひとまず三尾のチャクラを得るという最初の目的を果たした水月の準備を次の段階に進めることを優先した。

 

 問題を先送りにしているだけにも思えるが、水月の準備もこの段階に進んでしまえば私がしてあげられる事も特にない、それならばいつの間にかリーダーさんが積極的に協力してくれているのだから、その様子をリーダーさんの付き添いで同行している小南さんと一緒に見守る傍らで皆さんに今後の予定をどう説明するか考れば良いと思っていた…しかし想定以上の成果を見せる水月の様子にそんな思案が頭から抜け落ちてしまう。

 

 全身を包み込む特異な赤いチャクラ…両眼もまた紅き瞳、写輪眼へと変貌していた。

 忍世界のパワーバランスを担う尾獣の力、そして数多の忍の一族の中でも最高位とされるうちは一族の至宝たる写輪眼…その2つを同時に宿す究極の姿──だがまだだ、私の理想にはこれでもまだ足りない。

 

「……これが、尾獣のチャクラか…よし」

 

 水月もまた、今の姿が漸くのスタートラインである事は知っている。

 全身に纏うその"赤いチャクラ"で手の形を造り恐る恐る動かして近くの岩をそのチャクラの手で握り持ち上げ──ようとして瞬く間に握り潰し粉々にしてしまう。

 

「…尾獣チャクラのコントロール、思った以上に難しそうだな」

「いや、問題ないね」

 

 強がりではなくその返事通り水月はもう一度、さっきよりも一回り小さな岩をチャクラの手で掴むと今度は壊す事なく持ち上げてみせた…当然だ、今の水月の眼はチャクラの動き、力を見切ることに優れた写輪眼なのだから。

 とはいえここまで完璧なコントロールが出来るとは…これならば約束の時間までに構想通りチャクラの手で"柄を握る"事も出来そうだ。

 それが出来れば思い描いた通り"尾獣"、"写輪眼"、そして"刀"…3つの力が完璧に融合する──実に、実に楽しみだ。

 

「──悪くはないが、手加減に意識を割いているようでは実戦では使えん。その力の調整を無意識に出来るようにしておけ…それが出来れば相手をしてやろう」

「アンタがボクと戦うっての?」

「俺は穢土転生の身体だ、腕や足、首を飛ばされようと再生できる。修行の相手にこれ以上の相手はいないだろう? 尤もそれは俺よりもお前が強いのならの場合の話だがな…もしもの時は手加減はしてやる」

 

 焚き付ける様なセリフを言うとリーダーさんは水月から視線を放す、それを見て隣にいた小南さんがすぐにリーダーさんに駆け寄りその身体を支えながら戻ってくる。

 かつての戦いで足を負傷したという話だが穢土転生の身体であってもその後遺症は消える事はないらしく胸を痛めるが、瘦せ細っていた身体の方はほんの少しだが肉付きが良くなっている気がする…水月のチャクラを吸収して少し回復出来たのだろうか? 

 

 思わず観察する様にジッと見つめていたがリーダーさんが近くにきた事で思考を切り替えて頭を下げる。

 

「…ありがとうございます、リーダーさん」

「相変わらず無茶をする、いや無茶をさせると言うべきだな…尾獣のチャクラはかなりの負担が掛かる、写輪眼にしても術者への反動はかなり大きい…ましてやアイツは人柱力でもうちは一族でもない、多用すれば身体が壊れる程度ではすまないぞ?」

「承知の上ですよ、水月自身も」

「……そうか、なら良い」

 

 負担の大きさは分かっていた…それを完全に補う事は出来ないだろうけれどその対策も不十分だが考えてはいる、だから後は水月自身があの状態をどこまでコントロール出来るかだ。

 そしてそんな危ういものである事は水月にもちゃんと教えた上で選ばせて──彼は勝利の為にそれを使う事を選んだ。

 

「…まぁ、どうやら奴もだいぶ感覚が狂ってしまっている様だからあまり気にする事はないかもしれないがな。かなり過酷な鍛え方をしたが泣き言ばかりでもやり切ってみせた…何故か、とは敢えて口にしないが負担や疲労に慣れているんだろうな」

 

 …そうか。

 幼い頃から忍刀七人衆に憧れて厳しい修行を続けてきた事、ハレンチ博士に実験体として見込まれ軟禁とはいえ拘束されていた事、再会してからも色々な事があったがそれらの経験全てが水月の心身を"双魔刀・三巴"の負荷に耐え得る程に鍛えていたというのなら、これまでの彼の努力が認められたかの様でそれを傍で見てきた私としても嬉しい限りだ。

 

「…何か都合の良いように解釈していそうだが本当にあの状態で無理はさせるなよ。強力な術の反動ほど術者の身体を蝕み続けるものはないぞ?」

「……あ! はい、肝に銘じておきます」

「何だ今の間は?」

「村雨、貴女まさか…」

「いえ、別に水月を使い潰すつもりはまったく無いのでそんな目で見ないで下さい。ただ、リーダーさんがこんなに水月の修行に協力してくれた上に気に掛けてもくれるとは思っていなかったもので…」

 

 味方してもらう為に穢土転生で呼び出したのは私だがリーダーさんの行動を縛ってはいないのに…。それにリーダーさんの協力は私が頼んだ訳ではなく、ここを離れている時から始まっていたのだから正直に言って意外だった。

 

「…自分でも違和感を覚えるばかりだ、師の真似事など…今更俺にする資格もない、だが…なんだ、あまりに苦労してそうだったのでな」

 

 苦労? 

 何だか妙な表現だが水月が修行に行き詰っていたところを見て気に掛けてくれるようになったとかだろうか? …そういえばマダラさんも水月の苦労を認めると言っていたな。

 

 やはり部隊を率いる立ち場になると身が引き締まるのだろうか? 

 それにしても暁を率いたリーダーさんやうちは一族の長であったマダラさんに認められるとは水月の人徳というかカリスマ性というか…そういう素養が開花したのだろうか? 人を率いる立場同士の通じ合いを私は理解出来ないのが口惜しいが良い傾向だろう。

 

「それに奴がこの戦争で命を落としたらサソリや角都も困るだろう。仮にも俺の部下として、暁のメンバーとして動いてくれていた奴らだ、それぐらいの事はしてやらないとな」

 

 まさかサソリさんと角都さんからもそこまで慕われていたとは…確かにサソリさんから傀儡糸の指導を受けていたり交流がなかったわけではないが水月の人望はいつの間にここまで高まっていたのだろう? 

 何だか水月が遠い存在になったと錯覚するどころかリーダーさんと私で別の人物の話をしているのではないだろうかと思ってしまう。

 

 …いや、それは水月に失礼だ。

 彼が自分の夢に本気なのはよく知っている、きっと私の知らないところでも自分1人の腕を磨くだけでなく部隊としての纏まりの為にメンバーの皆と交流をしてくれていたのだろう。

 

「また何か妙な解釈をしてそうだが…とにかく、奴については俺が少しだけだが面倒を見てやる。お前は大蛇丸達と今後の動きを話しておけ」

「はい、ありがとうございますリーダーさん」

「…気にするな…お前には返さなくてはならない恩があったからな」

 

 恩? 

 正直私がリーダーさんに何か貢献出来たとは思えず返事に困っているとそれに気付いたのだろう、リーダーさんが微かに笑みを浮かべた。

 

「小南の言葉を信じてこの里に着いてきてくれた事だ。お前達ならトビの計画が明かされれば結局奴と対立していたかもしれないが、サソリと角都にとっては俺と小南もまた裏切り者だ。敵対する可能性も充分にあっただろう。奴らに声を掛けた時お前が2人を説得してくれていなければ、輪廻眼を狙ったトビに小南1人では殺されていたかもしれない」

「あ、いえ…あの時はサソリさんも角都さんもトビさんの事はあまり信用していない様子だったので私が説得したという程では…それにトビさんが来た時も私は一緒にいなかったのであまり役に立てては…」

「……俺に黙って三尾の欠片を隠し持っていたり、穢土転生して大蛇丸と戦わせようとしたりする癖に妙なところでだけ謙遜するんだなお前」

 

 そうは言われても…そもそも小南さんが私達に声を掛けてくれなければ、それこそトビさんにとって最高のタイミングで私達を勧誘か処理を出来たという事なのだから、むしろ感謝するべきなのは私達の方とさえ思っているぐらいだ。

 

「小南が殺されていればこの里は指導者を完全に失ってしまうところだった。そうなってしまえばあいつが火影になりこの世界に平和を齎したとしても、木ノ葉への遺恨が残る雨隠れの人間の多くはそれを拒むだろう。それを避けられたのはサソリや角都が独自で行動せずに協力することを選ぶ切っ掛けになったお前の存在があったからだ。たとえその関係が成り行きや打算によるものだとしてもな」

「この戦争を生き抜いて雨隠れの里を守る為、そして恩人である貴女達の為なら私も長門も協力を惜しむ理由はない」

「リーダーさん…小南さん…」

 

 こちらの都合で迷惑を掛けてばかりだと思っていたのにそんな風に思ってもらえていたとは…本人達から私の方が感謝される側だと言われてもやはり感謝の念が溢れてしまう。

 

 ──だが、そうだ、この心の温もりをただ感じているだけの時間はない。

 

 ふと、約束の時間が少しずつでも確かに迫っているという事を思い出す、だから──

 

「…では、すみません。既にご協力して頂いているのに申し訳ないのですが、少し頼みたい事が…」

「気のせいか? さっきまでの言葉を撤回したくなる予感がしてきたのだが………聞くだけ聞こう」

「今からだと…11時間ぐらい後に終末の谷で"新生・忍刀七人衆"全員でマダラさんと戦う約束をしたのですが皆さんの説得にご協力をお願いできませんか?」

「──"地爆天星"」

 

 直後、引き寄せられる様に身体が宙に浮かび上がり抵抗も出来ないまま私と同じく浮かび上がった土塊に押しつぶされて視界が真っ暗になる。

 

「…そこまでしなくても」

「加減はした、里を巻き込みたくはないからな…六道仙人が作った月と比べるどころか人1人分程度まで小さいのを作ったのは初めてだ」

 

 微かに声が聞こえるが本来は里を巻き込む程の術なのか、リーダーさんならもっと簡単に済ます事も出来るだろうに過剰も良いところだろう。

 

「それに俺は穢土転生だ、チャクラの心配もいらん」

 

 そうだ、過剰もなにも今のリーダーさんはスタミナ問題もない状態なんだった。

 穢土転生で蘇らせる相手は本来ならば必ずコントロール下に置かなければならないはずだと今更ながらにこの術の仕組みを理解するのだった。

 

「…ハァ…小南、すまないが大蛇丸達を呼んできてくれ、全員だ」

「分かった」

 

 …どうやら皆さんを集めてくれるらしいが、出来ればなんと説明するか纏まるまでは待ってほしかった。

 別に逃げるつもりは毛頭ないがそれはそれとして絶対に怒られるだろうという確信、もしかしたら殺されるのでは? という不安で焦る気持ちが募るのだった。

 

 ▼▼▼

 

 

 雨隠れの里の外で小さな月になった村雨がお星様にされるかもと不安になっている頃、忍連合軍本部ではシカクが確かな決心と共に綱手、エーの2人に進言する。

 

「黄ツチ第二部隊の報告とカブトから渡されたゼツという者の能力、そしてダルイ第一部隊がマダラと村雨の会話から聞き取った夜に行われるというトビの何らかの策…恐らくだが日中の戦闘でゼツと戦闘しチャクラを吸われた者達に変化した闇討ちが始まると予想されます」

「分かっておる、それでその対策はどうするのかが問題だ…大蛇丸の部下の男を妄信はしないが奴の情報ではゼツとやらの変化はチャクラ感知ですら判別出来んのだろう」

「はい、ですが…チャクラ感知以外の手段が一つだけ──九尾の力をコントロールしたうずまきナルトの感知ならば人をチャクラではなく悪意で判別できる」

 

 シカクのその進言の意図を理解してエーは椅子を弾き飛ばす勢いで立ち上がり大声で怒鳴る。

 

「何をバカな事を言っておる! うずまきナルトとビー、2人の人柱力を守るのがこの戦争だ! その内の1人をみすみす戦場に出してどうする!」

「しかし、ナルトの感知能力以外にゼツの変化を見破る手段はありません。闇討ちが始まれば戦場の忍達はまともな休息も得られないまま翌日の戦闘に赴く事になる。医療忍者の安全の為負傷者の治療も出来なくなる…疑心暗鬼と疲労によって確実に敗北を迎えるでしょう」

「しかしこれは明らかにナルトを前線に出す事を目的としたものだ、ゼツの変化にしても実際にまだ確認はしていない…カブトとかいう奴がトビと組んで偽の情報を渡していたという線もある」

「──確かにな、だが情報が確かならば今夜だけでもかなりの犠牲が出る。どっちに転ぶか分からないのならば出し惜しみせずに全ての力を出し切るべきだ」

 

 最悪のケースを次々に予測するエーにそう進言したのはそれまで互いの論争を聞いていた綱手だった。

 

「火影! 貴様自分が何を言っているのか分かっているのか!? お前の決断で世界全てが奴らの手に落ちるのやもしれんのだぞ!?」

「分かっている! だがこのまま奴らの策略が動き出すのを待っていたら戦況は不利になるばかりだ…この戦争に負ければ結局世界は奴らのものになる」

 

 エーと綱手、影の名を背負いし者達は互いに退かず睨み合い…少しの間の後に先に座り直した綱手が小さく息を吐いてもう一度エーへ視線を向ける。

 

「…と、ここまでは私とシカクの意見だが、この忍連合軍の総大将はお前だ…最終決定権はお前にある」

「ふん、流石にそれぐらいは弁えているようだな」

「──だがナルトを戦場に出すか出さないか、その決断をする前にお前自身で試してみろ…ナルトがこの戦争で守られるだけの男かどうかをな」

「…本気で言っているのか火影?」

 

 驚きとほんの少し戸惑いを見せながら聞き返すエーに綱手は躊躇う事なく頷く。

 

「私の考えが危険な事である事は分かっている。だがそれ以上に私はナルトという木ノ葉の忍が持つ力を分かっている…あいつが誰にも負けない強い忍であるという事をな」

「……良いだろう、奴の力が救世主となれるものなのかどうかワシ自身で確かめてやるわ。お前も着いて来い火影」

「ああ、この場は任せるぞシカク…すぐに戻る」

 

 綱手の指示にシカクは力強く頷いて2人を見送るとその結果が報告されるまでこの均衡状態を保つ為の方法と万が一ナルトが戦場に出ない場合の対策を練るのだった。

 

 

 

 しかし、その策が使われる事はなかった。

 島亀の甲羅の中で修行をしていたうずまきナルトは戦争が始まった事を知らされると、すぐさまに参戦する意思を示し雷影との問答の末に全力の一撃を自らの力のみで切り抜けて救世主の息子としての力、そして新しい救世主としての力を証明してみせた。

 

 そして綱手とエー、彼を認めた2人の影達とナルトの監視役として密かに島亀に派遣されていたうみのイルカに見送られながらビーと共に戦場へと向かうのだった。

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