霧隠れの狂人   作:殻栗イガ

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奇妙な奴らの狂った関係

 湯隠れの里と霜隠れの里の2つの小国に跨る"山岳の墓場"と呼ばれる位置に存在するアジトにてマダラとトビが向かい合っていた。

 威圧的な空気に満ちた中、不機嫌そうにため息を吐いてマダラはトビの傍の地面から這い出たゼツに視線を向けて口を開いた。

 

「白ゼツを使っての闇討ち…上手くいっていないようだな」

「ボクの能力、どっかから知らされたらしくて連合軍の対策が早かったんだよ」

「恐ラク小南カ大蛇丸辺リノ仕業ダロウナ」

「裏切り者共をいつまでも放っておくからだ、どうやら甘さは変わらなかったらしいな」

 

 計画の進行の悪さは容赦なく扱き下ろすマダラの物言いがこの空間の空気を更に重くするがトビは動じる事もなく受け答える。

 

「連合の対策も本人かゼツかの判別を出来る訳でもないその場凌ぎに過ぎん、そして奴らは結局、根本的な解決をするためにとうとう九尾を戦場に出した」

 

 トビのその言葉の通り、忍連合は今より数時間前に特殊な感知能力を持つ九尾の人柱力、ナルトを戦場に出したのを黒ゼツもまた感知していた。

 

「元より白ゼツによる闇討ちも九尾を出さざるを得ない状況にする為のものだ、奴らの方から出たのなら好都合だ、ゼツに人柱力共を連合の連中から離れた位置へ誘導させて俺が直接奴らを狩る」

「いいだろう、人柱力共は今まで通りお前に任せてやる。俺は俺で、少し予定が入ったのでな」

 

 一言多い男らしかぬ容認にトビは一瞬疑問を抱くが少し前にゼツからの報告を思い出した。

 

「…渦柘榴村雨か? あの女がアンタを呼びつけたって話だったが…俺はあまり本気にしない方が良いと思うが?」

「確かに呼び出すだけ呼び出して足止めするのが目的かもね」

「…そんなくだらん腹積もりをしているのならすぐに分かる。つまらん目論見もなしに本気で俺を相手取るつもりなのが分かったからこそ、この俺も相応に応えてやろうというだけの事だ」

 

 そういうとマダラは腰掛けていた岩の上から立ち上がる。

 渦柘榴村雨が指定したうちはマダラを倒すに相応しい場所…終末の谷へと向かうのだと察したトビは引き止めるつもりは毛頭なく、それでもマダラよりもあの女と関わりその支離滅裂さを知る身として一言だけその背中に声を掛ける。

 

「…俺にはあの女がアンタに喧嘩を売ったのが目論見どころか考えがないだけとしか思えないがな」

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

 リーダーさんの放った謎の術に捕らえられて数分、かなり手加減してもらえたからだろう、土塊に押し潰される圧迫感に何とか抗っていると外では小南さんが連れてきたらしいハレンチ博士達が集まっている声が聞こえだした。

 

「──急に全員の呼び出し、それに宙に浮かぶあの岩石の球体…そしてこの場に唯一姿の見えない村雨…さて、今度は一体何事かしら?」

 

 やはり外からはそれなりに目立つのだろう、早速この状況に対するハレンチ博士の質問が飛ぶ。

 どうやら既に私が良くない事をしたとお察しの様だ、その通りであるから仕方ないが私がどんなイメージを持たれているのか少し不安になる。

 

「話が早くて何よりだ大蛇丸、いや他の者達もどうせまた何かあったという事は察しているのだろうな…」

 

 他の者達もだったらしい。

 私のイメージは思っていた以上に酷い様だ、ここを抜け出したらもっと積極的に行動してイメージ向上に努めよう。

 

「簡潔に説明するぞ。先の各地での尾獣、分身マダラとの戦闘の際に分身のマダラに対して新生・忍刀七人衆が本体のマダラを倒すと宣戦布告をやってのけた狂人がいる…ご丁寧に終末の谷に出てくるように呼びつけてな」

「村雨、貴女の考え無しの行動には慣れてきたつもりだけどいつからそんなに人を挑発するのが上手くなったのかしら?」

「その…少し好戦的な姿勢を見せないと私如き、マダラさんから相手にしてもらえないと思って…」

「その結果がかつて千手柱間に殺された場所への呼び出しか…お前の少しは随分と過剰だな」

「しかも勝手に俺達を巻き込みやがって…マダラより先に俺に殺される可能性は考えなかったのか?」

 

 ハレンチ博士に角都さん、サソリさん、呆れや怒りの度合いはそれぞれだが間違いなく全員が快くは思っていない反応を見せる。

 それも当然だ、角都さんやサソリさんの言うようにマダラさんにとんでもない挑発をした上で彼との戦いを押し付けようというのだから怒らない方が異常と言えるだろう。

 

 …だからこそ何とか皆さんが納得できる説得の内容を考えていたのだがまだ何も思い付いていないのにこんな状況になってしまうとは…。

 

「そーら見た事か! ほらほら皆、あの岩の中にいるバカにもっとガツンと言ってやって!」

「ああ、言われなくても本来ならそうするが…不本意だが好都合ではあるな」

「認めたくはないがそうだな」

「………え?」

 

 ──ん? 

 

 聞こえてきたサソリさんと角都さんの言葉に耳を疑う。

 好都合? マダラさんと戦う事が? 

 

「マダラを呼び付けたと言っていたが、時間は?」

「俺が聞いた時は後11時間後と言っていたが、終末の谷は音隠れの近くだ、時空間忍術のマーキングはしてあるだろう大蛇丸?」

「当然よ、移動時間は1時間も掛からないわ」

「ちょ、待って大蛇丸様、アンタらも何で皆戦うつもりになってんスか?」

「よし、それなら先の戦いで消耗した体力の回復に努めろ。相手がうちはマダラだ、可能な限り万全にしておけ、必要なら兵糧丸も用立ててやる」

 

 おかしい、勝手にマダラさんと話を進めていたはずの私と現場にいた水月だけが会話に置いていかれている、どういう事? 

 閉じ込められているせいで実際にハレンチ博士達がどういう表情で話しているのか窺い知れないが、実は会話だけで私を安心させておいてここから出た時は修羅の如き表情で待ち構えていたりとか…は、流石にハレンチ博士達がそんないたずらみたいな事をするとは思えないが会話の内容も信じらないのも事実。

 

 …というか私はここから出られるのか? 

 とんとん拍子で会話が進んでいるが私もう忘れられているのではないだろうか? 

 色んな不安が湧き上がってくるが外で繰り広げられる真剣な会話に割って入る事は出来ず、かといって自力で脱出しようにも強力な引力と土塊の圧力で指1つ動かせない。

 

 せめて密閉された空間の酸素を少しでも長く残そうと呼吸を最低限にして、はっきりとは聞き取れないが今も続いている外のリーダーさんを中心とした話し合いが終わるのを静かに待とう。

 諦めにも似たそんな判断をしてから幾らか時間が経った後、突如身体が引き寄せられる力が弱まった事で圧迫感も同様に緩まり浮遊感に変化したかと思うと目の前の土塊の壁が崩れ出す。

 

 浮遊感は更に落下へと代わり受け身も取れないまま地面へと激突する、その寸前に水へ変化させた身体を再構築して暫くぶりの地面へと立つと残っていたのはリーダーさんに小南さん、そして水月の3人だけだった。

 

「その…会話の内容が予想していたものとはとても違っていて理解が追い付いていなくて…」

「それはボクが言いたいよ! 絶対全員からこいつ怒ってもらえると思ってたのに何でどいつもこいつもマダラと戦うのに乗り気な訳!?」

「別に連中も乗り気だった訳ではない…が、結果的に一番良い形で戦えることになったというだけの事だ」

 

 そうだ、サソリさんも言っていたがマダラさんとの戦いが好都合というのは一体どういう事だろう。

 ハレンチ博士達にしてもそうだが彼らは別段戦う相手に物怖じするような方達ではないが、リスクのある相手に好んで戦いにいく程好戦的でもないはずだ。

 

「先の戦いでは忍連合軍と共闘出来た様だがそれでも向こうが俺達を完全に信用する事はない…暁に入る以前から自里の人間を殺してきた奴らだ、暁に所属してから俺の指示で人柱力を擁する里の人間も何人も殺したのだろうから当然だ。…だが自分達の行いの結果とはいえこちらとしても疑心を持った者達と共闘するのはリスクが高いのは事実だ」

「だからこそ村雨…貴女がやったマダラを呼び出して自分達だけで戦おうという考えは丁度良かった。マダラの存在は忍連合軍の人達も把握はしているだろうけれど私達だけが戦えば彼らは余計な介入はしない。悪く言いたくはないけれど、彼らにとって私達とマダラ、トビが共倒れするのは最良の結果なのだから」

 

 そうか、ハレンチ博士達にとって忍連合軍の介入がないというのは私が思う以上に重要な事なのか。

 

「勿論、マダラ側が約束通り1人で来るかは分からない以上リスクもあるがな。最悪の場合俺達だけでマダラとトビを相手にすることになるかもしれない」

「それは多分ないと思います。あくまで私の主観ですがマダラさんはそういう事をする印象はありませんでした」

「だろうな…生前のマダラを知る角都がその懸念を口にしなかった辺り、マダラという男はそういう人間なのだろう」

 

 一度会っただけだがマダラさんの印象は気怠げ、退屈そうというのが第一だが私の挑発に対して私ではなく敢えて力のある新生・忍刀七人衆を倒そうとする事からしても戦いという行為に堂々とした在り方をしている印象を強く受けた。

 印象だけで信じるわけにはいかないがそれでもマダラさんはきっと1人で戦いに応じるだろうという確信があった。

 

「マダラがお前の呼び掛けに応えるというのならこちら側の利点は限りない。特にトビとマダラの分断しつつ俺達は集団で戦える…うちは一族、ましてやマダラ程の忍の相手をするのならこの状況に持ち込むのは絶対条件だったがトビの能力がその為にはあまりに厄介だった。…それを可能にしたのならお前の貢献は計り知れん、それが過剰な挑発や勝手に戦わされる事になったとしてもな」

「長門さん…」

「…まぁ、マダラの復活自体がお前のせいだから貢献というのも変な話だがな、今更言ってもどうにもならないから今は見逃しているだけで戦争を生き延びた後どうなるかは知らんぞ」

 

 まぁ…やっぱりそうですよね。

 

「…だが、忍連合軍も俺達に加勢はしないにしてもうちはマダラという脅威の監視はやめないだろう。そこで新生・忍刀七人衆が自主的にマダラを葬ったとなれば…あいつらの立場もほんの少しはマシになるかもしれない。そうなったらあいつらもお前を責める事はないだろう。…言っておいてなんだが酷い自作自演だな」

「本当にだよ! 世界の破壊者兼、救世主にでもなる気なの君さぁ!?」

「誤解!」

 

 あらぬ誤解に必死に首を振る。

 私の造る刀が世界の救世主の武器になるのならそれはこの上なく嬉しい、世界の破壊者が私の刀を使うというのならそれもまた良い、だが私自身がそのどちらかになるなんてあるはずもない。

 

「心配するな、お前がそこまで考えていない事はもう分かっている」

「それはそれで私の印象が心配なのですが…一応私もマダラさん個人を呼び出す事でトビさんとの分断や時間を指定して水月の修行時間の確保については考えていたつもりです」

「よく言うよね、大蛇丸達をどう説得するかは考えてなかった癖に…」

「上手く纏めてくれたリーダーさんには感謝しています」

 

 あの時はそこまで考える猶予がなかったのは事実だが水月の言う通り、考えが足りてないのものまた事実。

 後から色々考えたものの、やはりリーダーさんが中心となって話してくれなければハレンチ博士達の協力を得られた今回の結果には至らなかった事だろう。

 

「礼を言うのも良いがあいつらの協力を得る事はマダラを相手にするのならそれが最低条件だ。それでも勝てる保証はどこにもないという事を忘れるな」

 

 ハレンチ博士達は1人1人が最高峰の実力を持った忍だがそれでも勝ち目があるか分からない、という長門さんの見立てに改めてこれから戦う事になる相手の格に畏れを抱く。だがそれと同時に激しい昂揚感も湧いてきて止まらない。

 

 私の造った刀で、そして私と水月で必死に集めた新生・忍刀七人衆でかつて忍世界でその名を轟かせた人物に挑む事が出来る。

 

 勝手にハレンチ博士達を巻き込んだ挙句、私自身はマダラさんにとって戦う相手と見做されていない。そんな立場にいながらそれを楽しみだと感じる己の身勝手さを実感せずにはいられない。けれど、だからこそこの昂揚感を冷まさないように最後まで出来る事をしておこう

 

「安心してくださいリーダーさん。戦場で勝利を得ることが忍の役目ならば、戦場に勝機を造るのは武器を準備する刀匠の役目なのですから。勝てる保証が無ければ造る、それが私の仕事です」

「……分かった、お前にとって刀匠としての誇りを懸けるのが如何に重いものかは知っているつもりだ…お前のその言葉を信じよう。水月、修行を再開するぞ、残る時間で尾獣の力をコントロールしてみせろ」

「やっぱこんな感じになるんだよねェ! あーー、もう! やればいいんだろやれば!!」

 

 リーダーさんと水月の心強い返事を得て鍛冶場に戻る。

 今からマダラさんに通用する刀を造るには時間も素材も足りないが今ある武器の調整は可能だ。

 皆さんに渡したそれぞれの刀は勿論、昔造った物も時間が許す限り調整する──それが私に出来る戦いだ。

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

「…大したものね、つくづく」

「まったくだ」

 

 村雨が立ち去った後、中断していた水月の修行を再開していると隣に控えた小南がどこか疲れた様子で呟いた言葉に心の底から同意する。

 

 勝手にマダラと戦う約束を結ぶ無謀さには言葉も失うばかりだが、その一方で彼女に語った通りそのメリットはあまりにも大きい。

 それに本人は大蛇丸達があっさりとマダラと戦う事を受け入れた事に対して困惑していた辺り気付いていないだろうが、我の強いあいつらが協力ではなく共闘することを容認した事実こそが本来ならば驚くべきことだ。

 

 利害の一致によって同じ陣営に所属するのならばともかく、1つの戦場で共に戦うなど目的が白ゼツの掃討、尾獣の討伐でさえ拒否するだろう。

 そんな連中をマダラの標的にさせることで私情を優先出来る状況ではないと判断し、即座に共闘を受け入れる状況に追い込んだ…当然、あの村雨がそんな算段をきっちりと立てた上で行動したとは思えないが、むしろ考えなしにそんな結果に至ったのだから呆れるばかりだ。

 

 

 本当に奇妙な奴…いや、奇妙な奴らと言うべきか? 

 

 

 村雨が立ち去る時にはやけになった様に叫んでいたというのに、その後は集中して修行に取り組む水月の姿を見てふとそう思う。

 

 再び餓鬼道の能力で水月自身のチャクラを吸いきった事で融合した刀から尾獣チャクラを引き出し、更には少し前まで岩を掴むのも苦戦していた"チャクラの手"の操作までコントロールし始め、練習用の刀剣をチャクラの手を用いて素振りし始めたのを見て思った以上の上達速度に歓心する。

 

「…あいつもあいつで大したものだが…不憫だな」

「そうね。ああやって最終的には要望に応えてしまうから村雨の無茶振りが繰り返しているのね」

 

 小南の言う通り、村雨の容赦のない無茶振りだが皮肉な事に本人は水月を使い潰そうとしていたり軽んじている様子は無く、ただ水月に任せれば応えてくれるという信頼によるものであり、その原因が今目の前で見せている成長著しい姿なのだから労いの思いを通り越して同情の念を抱いてしまう。

 

 …尤も小南は、いや小南だけでなく恐らく大蛇丸達も知らない事だろうが以前に村雨の記憶を読み取った際に自分だけは知ってしまったことが1つある。

 かつて母親を失った事を切っ掛けに抱いた目標を瞬く間に駆け抜けてしまった事で空虚感に苛まれていた村雨に次なる目標を与えてしまったのが他でもない水月である事を…。

 

 多くの前任者その刀を里外に持ち出してしまった結果、彼の代には最早叶うことが難しくなった忍刀七人衆の夢、それをどうにかして叶えようと優れた刀を造れる協力者を求めた。

 そんな何気ない思い付きがあの狂人との地獄の日々に繋がるとは…あまりに予測不能の災難に遭った事には同情するが、その地獄を自分達をも巻き込むまでにしてくれた事を思うと他の奴らには黙っておいてやる程度には抑えてやるがそれでも憐れむ気持ちも少し薄れてしまう。

 

「…それにしても──」

 

 少し前の村雨と水月の言い合いがどうも脳裏に焼き付いて消えずにいる。

 

『何なの君、世界の破壊者兼世界の救世主にでもなる気なの!?』

『誤解!』

 

 それだけだとただの騒々しい言い合いだが思い出させられるのはかつてこの里で師、自来也先生に聞かされたある予言の話。そして自分があの狂人と繋がりを持つ事になった切っ掛け…サソリとデイダラの手引きの下、村雨と幻影越しに初めて遭遇した時の事だった。

 

『ワシはある仙人から御告げを受けとる。ワシの弟子が忍世界に平和か破壊を齎す変革者となり、ワシはその変革者を導く者だとな』

 

『刀匠の小娘。お前の言うハレンチ博士とは何者だ?』

『"伝説の三忍"のお一人と言えば分かって頂けるかと』

 

(──まさかな…)

 

 師が受けたという御告げに恐ろしい可能性を垣間見た気がして眉間に手を添える。

 

「長門、どうかした?」

「…いや、何でもない」

 

 我ながらいくら何でも危惧し過ぎだ。

 何より、その"予言の子"が誰かなど既に分かっている。

 

 うずまきナルト。

 あいつこそがこの忍世界に平和を齎す変革者となる男だ。

 

 自分の様な出来の悪い弟子とは違う、師の教えを正しく引き継いだ絶対に諦めない強さを持った弟弟子。

 人柱力としてどこかに隠されていた様だが彼が動き出したのを少し前から感知出来た…それで良い、あいつならばきっとトビを打ち倒し戦争を終結へと導くだろう。

 

 …だが、この戦争に割り込んだマダラはナルトの戦いには必要ない。

 

 

『──ワシはその変革者とは"お前だと"信じとる。そして"お前を"信じとる』

 

 

 先程思い出した師が受けた御告げの話のその続きの言葉とそれを語った時の自来也先生の顔が記憶の中で蘇る。

 世界を変える存在が俺だと、そして齎すものは平和であると俺を信じると言ったその言葉…あの時の俺はそれが弟子として心から嬉しかった、だが友を失った消えぬ痛みに気が付けばその信頼に応えるには程遠い存在に成り果てた。

 

 今更自分が平和を齎す変革者になどなれるはずもない。

 そんな事は自分が一番分かっている、だが──俺ももう諦めない、師匠の忍道は弟子が受け継ぐものだと相場は決まっているのだからな。

 

 マダラが本当に村雨との約束通りにトビから離れるというのなら…この状況が一番都合が良いのは他でもないこの俺だ。

 駄作の物語の様な生き様の末に死んだはずが思わぬ番外編を得られた…だったら今度こそ、前作と次回作に恥じない物語になってみせる、そのための相手には十分だ。

 

 刀の柄を握り潰す事もなく完璧に振るう様になった水月に今度は適当な練習相手の獣達を口寄せしながらこの先に待つ戦いへの覚悟を決めるのだった。

 

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