霧隠れの狂人   作:殻栗イガ

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2つの戦場

 遂に戦場へ向かう時間が訪れた。

 戦場へ持ち込む荷物を纏めて雨隠れの里に入る門の正面に立つと小南さん、そしてサスケ君と重吾さん、香燐さんの雨隠れに残る事が決まった人達と向かい合う。

 

 当初はこの場の全員でマダラさんに挑むものと思っていたのだが、万が一私達全員がマダラさんに敗れた場合にマダラさんの情報を忍連合軍に流し彼らを少しでも有利にさせる役が必要であり、その役をするにはたとえ実態が敗残兵であっても忍連合から"交渉相手"と思われる程度には戦力が残っている必要があるのだとリーダーさんが言っていた。

 

 そうとなればこの場に残るのは"新生・忍刀七人衆"に所属せず、私とマダラさんの約束には関係がない立場である小南さん達が適任だろうという事になった。

 この話が出た時には水月が自分も七人衆の長として後方でどっしりと構えておこうかと提案していたが『マダラに顔が知られている奴が同行しなくて良い訳がないだろ』と即座に却下されていた…まぁ私達側が約束に反したとあってはマダラさんもトビさんを呼び出すかもしれないから仕方のない事だろう。

 

 …それで言うとリーダーさんがこちら側に参加する事もある種約束に反していると言えるがリーダーさんは私が口寄せした穢土転生の身、私の術の一部と言い張れば良いだろう。

 

 色々とグレーなところはあるだろうがそれでもマダラさんと相対する準備と覚悟は整った、最悪の場合も想定しているが決してそんな状況になるだろうと思っている訳ではない。

 必ず戦いを無事に終え、小南さん達と合流するのだと真っ直ぐに向かい合うとそんな意図に同意するように小南さんは頷いた。

 

「私達は控えの戦力としてこの場に待機しているけれど、貴方達がマダラと接触した後トビやゼツの動きを感知出来たら足止めに向かう。貴方達の戦いに横やりは入れさせない…全力で戦って、無事に帰ってきてくれ」

「はい、ありがとうございます小南さん」

「さて、それじゃ…いきましょうか」

 

 ハレンチ博士の言葉に従い小南さん達に一度頭を下げるとその背中について雨隠れ里から外へ出る。

 

 

 

 マダラさんとの戦いに備えて約束の時間までの猶予を最大限に活用するべく、雨隠れの里から離れた場所へ位置する終末の谷への移動時間を短縮する為、まずは雨隠れの里近くのハレンチ博士のアジトへ移動しそこから時空間移動で現地へ向かう。

 予定通りに移動を開始したのだが雨隠れ里を出て数分無言で歩く途中カブトさんがふと口を開く。

 

「…ここまでトビの奇襲もなければゼツすら差し向けられてこないとは。本当に村雨の宣戦布告に真っ向から応じるつもりでしょうか?」

「トビ側からしても私達との戦いにメリットがない以上忍連合軍に割きたい戦力を更に使うのを避けたいはず、角都の言う様にマダラが相手を真っ向から捻じ伏せようとする気質とは別に、そもそも増援が出来ないのかもしれないわね」

 

 里を出てからというもの一度もトビさん側からの介入の無い順調過ぎる足取りは、慎重な気質なカブトさんからすれば返って警戒心を掻き立てるらしく疑心の言葉を口にする。

 しかしハレンチ博士の言う通り、トビさんからすれば本命の相手は忍連合軍である以上、私達は排除したくても優先出来ない存在ならば今の順調な状況も異常という事はなさそうだ。

 

「それなら現地に着くまでは大丈夫そうですね」

「…君がそういう事言うと途端に不安になるんだけど」

「いや別に油断して言っている訳では…でも警戒態勢を保ったまま移動するのも疲労が溜まってしまうから、これからマダラさんと戦うのなら少しぐらい心にゆとりがあった方が良いかな…と」

「前にも言った気がするけどボクから言わせれば周囲の警戒だとか関係なしにこいつらと一緒に歩いているだけで疲れるんだけど!?」

 

 確かにハレンチ博士達は皆揃って貫禄というか威圧感の強さを感じるが今では皆味方、その恐ろしさはそのまま頼もしさとなっていると思うのだが…。それに水月もサソリさんやリーダーさんからは何度か修行をしてもらってそれなりに交流もあったのに変なところで緊張するものだし、その割にはそんな不満をはっきりと口にする辺り不思議な感性だ。

 

「不満を言うのは自由だが仮にも部隊の隊長なら些細なことで部下への文句は慎め。別にこいつらも自分よりもお前の方が強いとは思っていないがそれでもお前が隊長だという事は受け入れているのだから猶更だ」

「そう言うアンタが今一番怖いんだけど! 何なのその般若のお面は!?」

 

 水月に諫める言葉を向けたリーダーさんだがその素顔は般若面に覆われ確かに独特の怖さを感じる。

 だがそれは決して恐怖心を煽る目的などではなく、忍連合軍の方と遭遇した際に穢土転生で蘇った者であるという事を万が一にも悟られない様に気遣ってもらった結果なので私にとっては感謝すべき事だ。

 もしもリーダーさんの穢土転生の事実からマダラさんの復活を関連付けられてしまうと忍連合軍から何らかの処罰を受けるだろう、これはそれを防ぐもらう為のものだと水月に言い聞かせる。

 

「理由は分かったけど何でよりにもよってそんな気味悪いお面なのさ!?」

「私が持っていたのがそれしかなくて…いや厳密には般若面は沢山持っているからその内の一つを使ってもらった」

「それ君が木ノ葉からパクってきた死神のお面だろ!?」

「あれは香燐さんに没収された、リーダーさんにはそれと一緒に飾ってあった内の一つを…」

「どっちにしろなんてもん被らせてんの!?」

 

 なんてものと言われても死神のお面は確かに装着した人に死神を憑依させるが、他のお面はそういった忍具の類でもない。…少なくともリーダーさんが着けても特に何も異変はない様子だからきっと本物の死神のお面を隠す為の贋作だったのだろう。

 

「…まぁ、身体の中に何か異物感の様なものを感じるが特に問題はない、そもそもが死んだ身だしな」

 

 ──あ、何か異変はあったのか、しかし軽度の違和感程度か…良かった。

 

「…君さぁ、絶対深く考えず渡──」

「見つけた! スッゲー悪意の量だってばよ!」

「な! …ナルト…か?」

 

 水月の疑いの眼差しから視線を逸らした先にオレンジの光が地面に落ちてきたかと思いその発光体をよくよく観察すると人であり、リーダーさんが驚きを必死に抑えた小さな声で呟いた通り木ノ葉の忍、うずまきナルト君だった。

 

 以前に見た姿とは違う、炎の様に揺らめく特殊なチャクラを纏ったその姿は一体何なのか非常に興味を惹かれるが肝心のナルト君の方がこちらを一瞥するなり臨戦態勢を取ってしまう。

 

「大蛇丸に暁に…それに村雨!?」

「九尾のガキ、こんな時に…」

 

 かつて重傷を負わされた事もあってか角都さんも即座に戦う意思を見せるが攻撃に移るよりも早くハレンチ博士が一歩前に出た。

 

「待ちなさい角都。ナルト君…ペインの木ノ葉襲撃の際に一度会った時に話した通り私達はトビとは対立している…今は貴方の敵ではないわ」

「…サスケは? お前と一緒に行動してたはずだってばよ?」

「生憎こちらにも事情があってね。私達はこれから少々厄介な相手と戦うのだけどサスケ君はトビが動いた時に対応してもらう為に別働隊として待機してもらっているわ」

 

 こちらの事情を一切隠さず語りあかすハレンチ博士だが、ナルト君の疑いの視線は変わらずはっきりと警戒されている様子が見て取れる。

 

「信用出来ないのは無理もないわ…私やカブト、こっちの元暁の連中は勿論、極め付けはこの娘だものね」

 

 …うん? 

 今の言い方だと信用出来ない人物の格付けで私が一番信用できないと言っているような…。

 いや確かに木ノ葉で盗賊行為を働いたりしているのは事実、信用出来ない側であることは当然認める。

 だが直接戦闘した皆さんや全身をフードと般若面で隠してナルト君視点では何者かも分からないリーダーさんの方が怪しさとしては上のはずなのに。

 

「オレってば九尾の力をコントロールして人の悪意ってのを感じ取れる様になってんだ、お前らからは今だってそれを感じてる」

「…すまない村雨、君がちゃんと悪意を持ち合わせていた事に驚いてしまった」

「善悪の区別はしっかりとしているつもりですが?」

 

 普段の生き方は勿論、今まさに皆さんを巻き込んでマダラさんの下へ向かっているのも隠蔽工作を企んでいる部分も大きいのだから悪意がないはずがない。

 …というかカブトさんは私を自らの悪事を認識すらしていない人物と思っていたのだろうか? 

 

 流石に不服な認識に物申したくなる、しかし今は私達の悪意の感知という独自の感知によって警戒心を露わにするナルト君の説得が最優先、とにかく弁明の言葉を口にしようとするがそれよりも早くハレンチ博士が割って入った。

 

「カブト、心底同意だけど話を脱線させるのはよしなさい」

「申し訳ありません」

「ちょっと待って下さい、心底同意という事はハレンチ博士まで私をそんな風に?」

「さてナルト君、私達が信用出来ないのは仕方ないけれど私達はこの後忍連合軍にとっても大事な戦いが控えていてね…余計な消耗は避ける為にも話だけは聞きなさい…私達と今ここで争うかはその話の後で判断すると良いわ」

 

 その制止の言葉にナルト君も信用はしなくとも一応の合意をしたのか攻撃に移ることはなくハレンチ博士の説明に耳を傾けた。

 何とか話を聞いてもらえる様になったことは良かったが、それでも各々との因縁によって果たして疑いが晴れるのは難しいだろう、そう思っていたが私達とトビさんの対立の切っ掛けに小南さんが関わっているという言葉を聞いてからナルト君は少しだが変化を見せた。

 

 そして復活したマダラさんを連合軍が陣取る戦場から引き離した位置で今から戦うという話を最後に会話を終えるとナルト君は静かに警戒を解いた。

 どうやらこの場で戦いは避けられた…そう思いたかったがナルト君の表情はそれでも険しいものだった。

 

「お前らが忍連合の皆の敵じゃねぇのは分かった…だけどこの戦争に手ぇ出すな」

「何?」

「本物のマダラも偽者のマダラも俺が倒す、この戦争は全部オレ1人で引き受けなきゃなんねぇんだ!」

 

 たった1人で戦争に立ち向かう意思を語るナルト君だが、その鬼気迫る表情からは危機を背負おうとする善性などではなく過剰な使命感に迫られた危うさを感じ取ってしまう。

 私達の協力を拒むというのならばそれも理解は出来る、しかし今のナルト君の言葉は彼の仲間達さえも遠ざけるものだった。

 

 一体ナルト君に何があったのか、それは計り知る事も出来ないがどうもこのままでは彼が取り返しのつかない事になりそうな予感がした。

 

「バカじゃないの君?」

「な!?」

 

 そんな予感を感じ取ったのは私だけではなく水月も同様だった。

 しかし言葉を選ぶのでもなく反射的に言い捨てた言葉にナルト君も顔を顰めた。

 再び一触即発な空気になるも水月はお構いなしに言葉を続ける。

 

「ボクも尾獣チャクラっての? ちょっと詳しくなったから君が相当強くなったのは分かるけどさァ、相手は五里全部纏めて戦争吹っ掛ける奴なんだ、君1人で掛かって行ってどうなるってのさ」

「オレを狙っての戦争だ、他の皆が巻き込まれるのなんて我慢出来ねぇ! それに…信じて託されたんだ、この戦争はオレが戦わないといけねぇんだ!」

「いや…だからさ、それでなんで自分1人で戦おうってなるわけ?」

 

 やはりどこか追い詰められている様に感じるナルト君の主張に再び水月が異を唱える。

 しかし今度は先程の衝動的に口にした呆れの言葉と違う、彼なりに危うい行動を諫める為のものだとこれまでの経験から良く分かった。

 

「君がトビにやられたら世界が終わりなんだ、君が1人で突っ走られてもリスク高いでしょ」

「雷影のおっちゃんにも同じ事を言われた。けど皆が死んで俺1人生き残ったって意味がねぇんだよ…憎しみも痛みも全部オレが引き受ける、それが俺の戦争への立ち向かい方だ!」

 

 ピクリとリーダーさんが肩を動かした。

 …痛み、リーダーさんが時折口にする言葉だ、小南さんからリーダーさんは平和への思いをナルト君へ託したという話を聞いたが今のナルト君の主張にはリーダーさんの影響も大きく関わっているのだろうか? 

 

「まるで救世主のような言い分だけど…それで世界を救った英雄、火影になろうっての? 確か、君の夢だったかな?」

 

 もう3年前か、短冊街で修行するナルト君と偶然会ったあの時に里の皆から認められる火影になるという輝かしい夢を語ったかつての彼を思い出す。

 あの時と比べてナルト君はきっと多くのものを背負ったのだろう…そうして強くなり、確かに火影へと近づいた…しかしそれ故にこそ今の彼の歩みはただ純粋に夢へ邁進した頃よりも苦しい程に重たいものへとなってしまったのだと伝わってくる。

 

「確かにオレは火影になりてぇ、でも今はそれよりもオレの為に傷付いている仲間を守りてぇだけだ」

「君は本当にそんな単純な考えなんだろうね。だったら忠告してあげるよ、もしも君が本当に1人で戦争を終結させたなら確実に火影になるだろうね。どんな相手だろうがたった1人で打ち倒す、その"力"を皆から認められてね」

「…力を?」

「人ってのは勝手なもんさ、自分にとって都合が良い能力を持っている奴がいたらそこばっかりに目を向ける…こっちからしたら認められたって全然嬉しくもないのにね」

 

 な、なんだろう、普段の水月からはとても出てくるとは思えない言葉だ。だが妙にその言葉から重みを感じてしまう…見ればナルト君も呆気に取られた様だし、ハレンチ博士達に至ってはどこか視線が水月から逃れる様に宙を向いている気がする。

 

「君の夢は皆から認められる火影だろ? だったらどんな風に認められたいのか良く考えることだね…今のやり方で本当に君のなりたい火影になれるのか、ね」

 

 す、水月の背中がいつもより大きく見える。

 …やはり新生・忍刀七人衆の長になるという夢を叶え、実際にその立場を得たからだろうか? 

 いつの間にやらこれ程の貫禄を魅せるまでに至り、更には同じく人を率いる立場を夢見る同類を導くようになるとは…彼の夢に協力した身として思わず目頭が熱くなってしまう。

 

「君は仲間が自分を守る為に戦っているのが我慢出来ないって言ったけどさ、君の仲間だって人柱力だとか関係なしに君を守りたいから戦ってんじゃないの? 仲間がどういう考えで動いているのか理解出来ない奴は失敗する、いや…成功しても気が付いた時には自分が最初に思っていたのとは別物になって取り返しがつかなくなる…分かる? 下手すればボクみたいになるよ」

 

 ん? いや…水月みたいになるのなら良いことなのでは? 

 どうしてそこで急に自分を卑下したのかは分からないがナルト君も暫く目を伏せて考え込む素振りを見せた後に顔を上げた。

 

「確かに…イルカ先生もオレを弟の様に思ってて守りたいと言ってくれてた。オレの事を一番人柱力としか見てなかったのはオレ自身だったのかもしれねぇ。1人で何とかしなきゃって思い込んじまった」

「冷静になったなら1人で突っ走るようなバカな真似しないで連合の連中とトビの奴をちゃんと倒してよ、こっちがマダラの相手をしてやってる間に君がやられたらボクらが危険を背負ってマダラなんかと戦う意味がなくなるんだからさ」

「…へッ、心配すんな。すぐにぶっ倒してそっち行ってやるってばよ」

 

 今までの険しい顔とは違う、快活な笑みを浮かべてナルト君の姿が煙へと消える。

 

「…影分身だったんだ」

「気付いてなかったのね…影分身は消滅する時に分身が得た情報を本体と他の分身体に還元させる、これでこの戦争中に限ってはナルト君から狙われることはなくなったと見て良いでしょう」

 

 それは良かった。

 ナルト君と余計な戦いを避けられることは勿論、彼が必要以上に背負ってしまったものを軽く出来たのならばこの場で彼と遭遇出来たのは僥倖だったと言える。

 それもこれも水月の説得があってこそだ。最後の方の内容は少し不思議だったがあんなに立派に諭す事が出来る様になったとは…一言労おうと水月に視線を向けると般若面を少しずらして半分だけ素顔を出したリーダーさんが水月と向かい合っていた。

 

「あいつを抑えてくれた事、礼を言うぞ」

「別に、まともな仲間がいる癖にそれを無駄にしているあいつに文句言いたくなっただけだよ」

 

 そうか…他人にも助言するほどまでに仲間との関係性を意識する様になったのか…。

 昔は"忍刀七人衆"の復活を謳いながらもメンバー集めには力を注がず自分1人の修行に没頭していたというのに変わったものだ。

 何故か水月自身は自己評価が低い様だが私は彼のそんな変化を実に誇らしく思うばかりだ。

 

「…さて、思わぬアクシデントだったけれど約束の時間には問題ない、そろそろ行くとしましょうか」

 

 ナルト君との戦闘を避けられて安堵したものの今回のはあくまで思わぬ遭遇、本当の相手はこれから会う人物だ。

 今一度気を引き締めてハレンチ博士の声に深く頷き皆と共に再び森の中を歩き出す。

 

 森を抜けハレンチ博士のアジトに辿り着くとすぐに時空間忍術の術式が刻まれた部屋へと案内される。

 ハレンチ博士のチャクラによって術式が起動すると一瞬にして雨隠れの里周辺の森から移動を果たし、辿り着いたのは数年前、サスケ君を木ノ葉から迎え入れた時に使っていたアジトだ。

 

 懐かしい…しかしそんな感傷に浸ることは出来なかった。

 約束の場所に一歩近づく度に心臓が締め付けられるような重圧が掛かり出す。

 本能が迫る死を感じ取って足を止めようとするのを振り払いやがて聞こえだした水の音に目的の場所へ到着した事を理解する。

 

 目の前に聳える岩の壁と思える程に巨大な石像、千手柱間様の石像に恐れ多くも飛び移りその造形に一切の傷を付けない様に気を付けながら頭の部分に駆け上げる。

 高所特有の強い風を受けながら正面を見つめると柱間様の石像と対に造られたもう一つの石像とその頭部分に腰かける石像と瓜二つの人物の姿がそこに待っていた。

 

「──来たか」

「お待たせいたしました、マダラさん」

 

 数時間振りに向かい合うマダラの姿をしっかりと目に焼き付けて彼の足元のマダラさんの石像と見比べる…素晴らしい出来栄えだ、一体誰が造ったのか、その技術には恐れ入るばかりだ。

 …あぁダメだ、今回ばかりは割り切ろうと思ったがやはり――私には無理だ。

 

「"新生・忍刀七人衆"…人数がどうも違うようだが…まぁ良い。始めるとしようか、戦――」

「戦いは後!」

 

 石像の上で立ち上がりすぐにでも戦闘を開始しようとするマダラさんに衝動的に声を張り上げる。

 

「戦闘を始める前に下の川へ降りましょう。マダラさんの石像を傷付けたくないので」

「………一つ聞くが俺を倒しに来た奴が何故俺の石像を傷付ける事を躊躇う?」

 

 

 ▼▼▼

 

 

 

 時を同じく、深い森の中でもう一つの戦況が大きく動いた。

 

「鬼鮫からの情報にあった九尾の力をコントロールして身に着けた感知能力…それでこの俺の居場所を見つけたか。しかしお前の方から俺の下へ来たのなら手間が省けただけだ。──八尾、そして九尾…すぐに狩ってやるぞ、お前達の仲間でな」

 

 居場所を突き止められた事でトビはそれまでの隠密行動から一変、出し惜しみも無く7体の尾獣を口寄せし周囲の森を更地へと変貌させた。

 たとえ影の名を冠する忍であったとしても恐れを抱くであろう7体の尾獣が向かい合ったナルトはそれでも一切怯む事なく島亀からずっと同行していたキラー・ビー、そしてその場に到着する前に合流した部隊に白ゼツ対策に増援させた影分身のナルトと入れ替わりで加わったカカシ、ガイへ振り返らないまま声を掛ける。

 

「いくってばよ!」

「奴を倒せば戦争も終わりだ、全力でいくぞ!」

「"新生・忍刀七人衆"とやらとの戦いで尾獣達も弱ってる、チャンス! ここで決めるぜ、ちゃんと!」

「とはいえ真正面からぶつかって勝てる相手じゃない、油断禁物だよ皆!」

 

 

 

 遠く離れた2つの戦場で第四次忍界大戦の行方を決める激闘が同時に始まるのだった。

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