霧隠れの狂人   作:殻栗イガ

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乱入者の影

 胴体を貫かれたマダラさんを自身の眼ではっきりと確認する。

 彼の身を覆っていた須佐能乎はリーダーさんによって吸い取られ消滅、そのままリーダーさんに右腕を掴まれ常にチャクラを奪われ続けている上に印も封じられたようなものだ。

 

 そして彼を刺し貫く刃もまた強力な封印術が施された霊剣"十拳剣"だ。

 ハレンチ博士が組んだ両腕を巨大な蛇の頭に変化させ、その口から伸びたその刀は貫いたマダラさんの胴体から徐々に刀身の中へと飲み込み始めていた。

 

「……村雨、この状況は喜ぶべき事なんだろうけど…一ついいかな?」

「何でしょうカブトさん」

「散々この石像の素晴らしさがどうとか言ってわざわざ下の川へ移動してもらった挙句にいざとなったらその石像で殴ると言うのは…どうかな?」

「それは…自分でも非道だとは思いますが…」

 

 たとえ数多の命を無情に命を奪う戦場でも守るべきルールや通すべき筋というものがあるはずで私がやった事はそれらに大きく反する事だ。

 何よりこんなに見事な石像を乱雑に扱うなんて以ての外だと言うのに…まぁでも──

 

「良かった、大丈夫そうだね水月?」

 

 カブトさん共々柱間様の像から下の川へ降り立てば水面が徐々に人の形へ変化して見慣れた顔が現れる。

 マダラさんの火遁に蒸発されかけていたがリーダーさんがマダラさんを捕らえた時点で何とか離脱出来たようだ。

 

「…無事なもんか、全身グッツグツの熱湯で身体の内側が沸騰してるよ」

「それはボクの医療忍術でも治せないな」

 

 冷たい水を混ぜるか氷を食べさせてあげれば何とかなるだろうか? 

 しかし申し訳ないがそれはもう少し後だ。

 今はまだ、マダラさんから目を放すわけにはいかない。

 

 既に胸辺りまで刀身に吸われたマダラさんは非常に不服そうにこちらを見ていた。

 

「…村雨と言ったな」

 

 不意に名を呼ばれてビクリと肩を跳ね上げる。

 マダラさんのチャクラを奪い続け行動を阻害しているリーダーさんでもなく、"十拳剣"でマダラさんの身体を封印しようとしているハレンチ博士でもなく私へ意識を傾ける理由が実に予想が出来るせいで次に続けられるであろう言葉が非常に恐ろしく思える。

 

「クク、我ながら無様なものだな」

 

 しかし、続けられたマダラさんの言葉は卑怯な手段を行った私を咎めるのでもなく自嘲の言葉だった。

 自らの力に自負、誇りがあるからこそ先程の不意打ちを受けた事を自身の失態だと受け入れ自責されているとは──思わぬ反応に大いに焦る。

 

「い、いえ…この結果は私が結んだ約束を断りもなしに翻したのが原因でマダラさんが恥じる事など何も…」

「…ガキがくだらん言葉を並べるな。それに──勘違いしているぞ?」

「え?」

「俺は以前お前に"忍でもない小娘を躍起になって殺しに掛かるのもみっともない"と言ったな。俺が無様だと言うのはな、こうも踊らされては無様だとしてもそうせずとはいられなくなったという事だ」

「え!?」

 

 待って、そうせずとはいられなくなったって…それはつまりなりふり構わず私を殺すという宣言か? 

 

「正直そう思うのも当然だとは言いたいが、完全に封印されるまでアンタを自由に動かせるつもりはない」

 

 いや確かに私もマダラさんが私を殺したく思うのは当然だとは思うがそんなはっきり肯定しなくても…しかしリーダーさんはそれでもマダラさんのチャクラ吸収を緩めはしない。

 マダラさんの意思はどうであれチャクラを奪われ続ける中強力な瞳術は使用は出来ない、更にその両腕ももう完全に"十拳剣"に吸い込まれた…これではどうしようも──

 

 

 

「俺を自由にさせるつもりはない、か…借り物の力で驕り過ぎだな長門よ」

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

 

 忍連合軍本部、各地のチャクラを感じ取り戦況を見渡す"感知水球"は現在2つの地点で発生した大きなチャクラに反応を示していた。

 1つはナルト達とトビ、そして尾獣達が激闘を繰り広げる戦場。

 7体の尾獣をナルトとビー、カカシ、ガイのたった四人で相手取るのは厳しいと見立てもあったが尾獣達の多くが手負いであった事、何よりもナルトの持つ九尾のチャクラがここに来て爆発的に増幅した事が決め手となり優勢となっていた。

 

 更にはシカクの指示を受けたいのいちによってその戦況を伝達された連合の多くの忍達が増援へ向かっており、きっと彼ら全員がこの戦争を勝利へと導くのだと信じるのだった。

 そして最も重要な戦場へ現時点で成すべき手配を終えた時、本部の人間達はもう一つの苛烈な戦場へと意識を向ける。

 

 それは穢土転生によって現れた真のマダラとそれに相対する新生・忍刀七人衆の戦場だった。

 伝説の忍と構成メンバーの多くが五影に匹敵する者達で結成された部隊の激突は尾獣の集う戦場にも劣らない程のチャクラ反応を示し続けていた。

 

 その激しいチャクラの反応は決して誤魔化しの類の領域を逸脱しており彼らが全力でマダラと戦いを繰り広げているのだという何よりの証拠であり…それは綱手とエーにとってある意味では返って頭を悩ませる事実であった。

 これで彼らは完全に忍連合軍にとって利のある存在になってしまった。

 

 ──と言っても彼らも皆、正直言って分かっていた。

 霜隠れ周辺の海岸に現れた分身マダラと村雨、水月の会話を盗み聞いたダルイとヒアシの報告によって村雨がマダラを終末の谷に呼びつけ、"新生・忍刀七人衆"全員で相手をすると約束を取り付けた事を聞いた時からこうなるのでは…という予感があったから。

 

 別段村雨を筆頭に元暁のメンバーの多い"新生・忍刀七人衆"の事を協力者として信用したつもりはない、仮に偽マダラとの対立があったとしても彼らは皆何らかの思惑を抱えた重犯罪者達だ。

 きっと彼らがマダラと戦う事を選んだのも何かしらの思惑があっての事なのだろう──そして厄介なのがダルイ達の報告からしてそれがほぼ確実に村雨個人の思惑なのであろう事だ。

 

 伝令役を通して戦場を移動している我愛羅や本部内で感知役をしている青の見解を求めても返ってきたのは、恐らく村雨はマダラとの戦いの先にある誰も予想出来ない程大きな結果を求め、誰もが分かるはずの目先のマダラの脅威を深く考えないまま戦いを挑んだのだろうというものだった。

 

 色んな意味で信用が出来なさ過ぎる…。

 マダラと戦う事で予想出来ない何かを目論んでいる事は勿論として、そんな欲望任せで考えなしに最強の忍相手へ挑み掛かる奴に協力してこちらの忍を対マダラの救援に行かせるのは里長として論外だと綱手もエーも即座に結論付けた。

 

 ただ…だからといって放置も出来ないのもまた事実。

 出来る事ならば彼らが何を目論んでいるのか、そしてマダラを相手に勝算はあるのか偵察部隊を結成させる案もあったが、今なお戦場を漂う白ゼツの軍団、白眼ほどではないがチャクラの視認が可能なマダラ、香燐という感知能力を持った女、刃物の類の忍具を嗅ぎ付ける村雨…様々な存在が偵察行為が不可能であると予測させた。

 

 無駄な犠牲が出るどころか最悪の場合はまた偽者を作られるだけ…ならばせめてこの本部で感知水球越しに"新生・忍刀七人衆"が本当にマダラと戦うのか、そしてその結果はどうなるのか、それだけは見届けるのだと決定し──今、それが大きく動いていた。

 

「マダラのチャクラが…急速に減少!」

 

 強大なマダラのチャクラに呼応するかの様に幾度も波紋を広げる"新生・忍刀七人衆"のチャクラ達…激しい攻防が続いているのを訴えるその反応の中で観測していた忍の1人が遂に起きたそのチャクラの動きに大きな声を上げた。

 

「あいつら…やったのか、うちはマダラを!?」

 

 手放しで喜べる訳ではないが突如として現れた最大の脅威が去ったかもしれない報告に綱手とエーは揃って感知部隊へと視線を向け、周囲の本部所属の忍達も次々に小さく歓声を上げる。

 

「……待って下さい、これは…」

 

 徐々に大きくなる騒めきの中、青の緊迫した声が響く。

 彼の右眼に埋め込まれた白眼がこの場にいる誰よりも先に彼らの戦場で起きた変化を察知していた。

 うちはマダラ…彼が持つ万華鏡写輪眼に宿るドス黒いチャクラが今、更に冷たく恐ろしいチャクラへ豹変していた。

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

 

 目の前で起こったマダラさんの変化に言葉を失った。

 うちは一族の象徴たる万華鏡写輪眼はその色も紋様も変化させ、血の様な赤色は薄い紫色へ…紋様は長門さんのそれと全く同じ波紋模様へ、それは正しく"輪廻眼"だった。

 

 幻術の類を疑う事すら許さないとでも言うのか、マダラさんはリーダーさんとまったく同じ能力を用いてそれまでチャクラを奪い取っていたリーダーさんからチャクラを奪い返していた。

 

「バカな! 何故アンタがその眼を!?」

「…それを知る時間はもうお前達に残されていないな」

 

 リーダーさんから奪い取ったチャクラを使いマダラさんの周囲を須佐能乎が覆う…再び現れた巨人はそれまでチャクラで形成された刀を持っていたが今は武器を持たず、その代わりにその巨大な手で忍の様に印を結んでいた。

 

 急に視界が薄暗くなり、僅かに遅れてそれが空を覆う何かで作られた巨大な影だと気付く。

 頭上を見上げれば終末の谷全てを圧し潰してなお有り余る程に巨大な隕石が空から落下し始めていた。

 

「…嘘…でしょ?」

「これは…逃げきれないな」

 

 唖然とする水月の隣でカブトさんは冷静に隕石の大きさと落下速度を分析し絶望的な観測結果を口にする。

 しかしそんな冷静さがなくともこの状況、逃げ道がない事は明白だ、私と水月の特殊な体質であってもあれ程の隕石と地上の激突の衝撃を受ければそれこそマダラさんの火遁を受けた場合と同様に蒸発し消え去る事だろう。

 

「…小娘相手にムキになるのも、封印術から逃れる為に一度粉々にならねばならん事もいっそ派手にやれば多少は体裁を保てるやも…と思ったが、"石一つ"しか造れんとは…やはり無様なものだな」

 

 石一つ? …まさかマダラさんは本来ならばこれを幾つも造れるとでも…いや、どちらにしてもこの一つの隕石の衝突だけで私達は死に、一方でマダラさんは封印が完了する前に肉体が一度崩壊し、"十拳剣"から逃れた上で復活するという事か。

 

「…破壊するしかない」

「いや、そりゃそうだけど…あんなのどうやって?」

「……サソリさん」

「…チッ、分かってる」

 

 クシナダの拡声器からサソリさんの声がするとそれと同時にクシナダの右側の二本の腕の内部から採掘機が展開され、回転を始めたドリルに土遁の性質チャクラを纏う。

 かつて偽雨がクシナダの機能案を暁の方々に募った際にゼツさんから寄せられた"土中潜航"する為に造った機能だ…今は亡き彼女が、そして今は敵となったゼツさんの発案がこの様な局面に繋がるとは…因果というのは思いも寄らないものだ。

 

 隕石へと向かって飛び出したクシナダの右腕が隕石の表面へ衝突するとガリガリと鼓膜を破るような激しい音が響き出した──それはドリルの先端が岩の表面の硬さに折られる事はなく、内側へと穿孔を始めたという事だ。

 

「…あの岩が地上に激突するまでにアレに風穴を造らせる気か? 間に合うとは思えんがな」

「マダラの言う通りだ、あの速度では隕石の中心ぐらいにはもう地上にぶつかる…間に合わない」

「はい、だから中心でクシナダを起爆し内側から隕石を破壊します。頭を守って伏せて下さい」

「クシナダを!? あの刀の方でなく!?」

 

 ゼツさんの"土中潜航"と同様に彼らから集めた案はまだある。

 …サソリさんはボツにしたかったらしいが、折角集まったアイディアだからと無理を言って改良してもらった仕込みだ。

 クシナダの内部で五源龍のチャクラをフルチャージし限界寸前でクシナダの身体を分離させ、一気に大量のチャクラを放出させる、疑似的な…いや、現時点では放たれる大量のチャクラでクシナダのパーツはかなりの破損が予測されているのだから正真正銘、"自爆"だ…けれど──

 

「…俺がこんな手段に頼るしかねぇとは…気に入らねぇ」

「芸術は…爆発!」

 

 瞬間、上空の巨大な岩石が破裂し激しい閃光が周囲に迸る。

 私が"水遁・水陣壁"を使った様に各々、防御用の術で身を守りはしたが隕石を破壊して溢れ出た膨大なチャクラはそれらを飲み込んで身体を焼く、更に飛び散った岩の破片も次々に身体に当たり激しい痛みに顔を歪める。

 だがその程度だ…チャクラの拡散が収まった時周囲の様子を確認すると皆全身を負傷しながらも何とか立ち上がっていた。

 

 岩の破片と混じって落下していたクシナダのパーツもどの部位も装甲は壊れ、酷いものは内側の管や仕込みが剥き出しになっているが分離した胴体部分のパーツの中からサソリさんも出てきて無事に離脱出来ていたのを確認出来て安堵する…しかし、問題は──

 

「ハレンチ博士、マダラさんは…」

「どうやら──」

 

 ハレンチ博士の目線の先を追うと"十拳剣"の切っ先にマダラさんの姿はなく、僅かに外れた位置の岩の塊に留まる。

 周囲の隕石とは質が異なる…嫌な予感がしてすぐ傍の柱間様の像を見れば隕石の瓦礫をあちこちに受けて痛ましい姿になっていて辛うじて立ってはいるが印をしている方の腕がチャクラの放出に晒された事で折れていた。

 ゴトリと落下した柱間様の岩の腕が動き、払い除けられるとリーダーさんとマダラさんが共に再生を果たしていた。

 

「…失敗したようね」

「これで元の木阿弥…いや、元通りどころか、マダラが輪廻眼を…」

 

 カブトさんの言う通り、漸く追い詰めたかと思ったがマダラさんはまだ全力を出していなかった…今度は輪廻眼となったマダラさんと戦わなければならない。

 決定的なチャンスを逃した事に改めて歯噛みし…マダラさんの表情もまたどこか浮かない事に気付く。

 

 隕石によって私達を倒せなかった事とは違う、悲しいのとも怒りとも違う複雑な表情で足元の瓦礫を眺め…頭上、折れた柱間様の石像を眺めていた。

 

「………柱間の石像に潰された事で難を逃れた事が不満か、マダラ?」

 

 唯一、その心境を汲み取ったのは角都さんだった。

 だがそれが気に入らなかったのかマダラさんは鋭利な視線を角都さんへと向ける。

 

 今までの静かな戦いぶりとは違う、本気の殺意を放つマダラさんに息を飲む──その瞬間だった、マダラさんの足元から何かが生えてきた。

 

「ゼツ!」

 

 それは全身が真っ白な人…ゼツさんだった。

 彼はこちらを一瞥するとすぐに傍で重苦しい空気を放ったままのマダラさんへと視線を向ける。

 視線に気づいたマダラさんは不機嫌な態度を隠さずに口を開く。

 

「何の用だゼツ?」

「それが、トビが九尾と八尾を欠片だけ使って十尾を復活させちゃったみたいで」

「なに?」

「今はまだ何とかなってるけどその内1人分の柱間細胞じゃあコントロール出来なくなっちゃうし、何より例の計画の為にもマダラ様も至急十尾の下へ。黒ゼツも大名護衛の水影達に捕まっているのであの術の為にはマダラ様がトビの近くにいた方がよろしいかと」

 

 例の計画? 

 十尾を復活させ、トビさんが十尾の人柱力となる事で"無限月読"を使用する事が月の眼計画だったはずだがマダラさん、それにゼツさんにはまだ何か計画があるというのか? 

 

「…あのガキめ」

 

 それを推測する事は出来ないがマダラさんはため息を吐き不満げな声を出した…その声にも、マダラさん自身の雰囲気にも先程までの殺意は失われておりゼツさんの乱入、あるいは十尾の復活という事態に毒気が抜かれたのだろうと察する。

 

「…どうやら余興を続けるわけにはいかないようだ。……まさか1人も消せない内に退かねばならないとはな」

「ッ! ナルトの下へはいかせん」

 

 立ち去る意思を見せたマダラさんにリーダーさんが即座に動き腕を伸ばすがマダラさんの手刀がその腕を切断し、その勢いで繰り出された鋭い蹴りがリーダーさんの腹部にめり込み大きく飛ばされた。

 

「リーダーさん!」

 

 穢土転生である身体はいくら傷付いても再生する事は分かっている、それでも反射的に駆け寄ろうとした際に横目で印を結ぶマダラさんの姿が映る。

 

「──"火遁・劫火滅却"」

 

 炎の波が目前に迫る。

 マダラさんにとってこの場から立ち去る為の牽制の攻撃なのだろうが、規模がデカすぎるその術は今の私達に防ぎ切れるものではない。

 それでも出来る限りの負傷を抑えるべく印を結ぶ私達の前に落雷が落ちる。

 

 激しい雷光の中には血塗れになった女性、その衣服の背に大きく刻まれた"賭"の字が見えた。

 

「…綱手」

「頼むぞ」

 

 僅かに驚いた様に名を呼んだハレンチ博士に応える事なく綱手様は術式が刻まれた左腕を横に伸ばす。

 時空間忍術のマーキングだったのだろう、その術式を座標として再び激しい光が目を眩ませる。

 

「──"水遁・水陣壁"」

 

 私や水月が使うのと全く同じ、しかし勢いも範囲も更に優れた激流の壁が目前に迫った炎を鎮火させた。

 水蒸気が立ち込める中、マダラさんが立ち去ったのを最初に確認すると、次に綱手様の隣に現れた方々へと視線を移す。

 そこにいたのは時空間忍術を務めていたのだろう三人の男性に囲まれた長い茶髪の女性、脇に差した刀はかつて私が造ったもので昔一度会った女性の面影と重なった。

 

「……あ、いつかのお姉さん」

「水影…様じゃん」

「え?」

 

 水月の言葉に思わず視線を水月と女性を行き来させる。

 …五代目水影様ってこの方だったんだ。

 

 四代目水影様から代替わりした頃にはすっかり刀造りに没頭して里内の政にはとんと興味を失っていた事もあって名前しか知らなかった事を今更ながら思い至る。

 

 しかし…どうしたものか、マダラさんが立ち去った事自体は危機が去ったと言えるのかもしれないがマダラさんを忍連合軍と接触させないという目的は失敗に終わってしまった。

 …恐らく、今まで以上の犠牲者が増える事になる。

 トビさんに穢土転生の術が渡った原因として重い処罰を覚悟し、それを水月達にまで及ばない様に何らかの策を考えなければならなくなった。

 

 何より、それ以上に今は問題なのは目の前の相手だ。

 片やこれまで何度か敵対してきた綱手様、そしてもう片方は私の出身地である霧の里の長の水影、メイ様…どちらとも私に対して良い印象はないだろう。

 

 

 一体何故このタイミングでこの方々が現れ、助けてくれたのか…その真意は未だ分からない。

 マダラさんと戦っている時からあった命を懸けた緊張感は晴れないまま、しかし突如として現れた影の名を背負った2人の忍によって私達の戦争は新たな戦況へと様変わりするのだった。

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