霧隠れの狂人   作:殻栗イガ

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ZAやらエアライダーに心奪われながら何とか今月間に合った…
なおナイトレインやZAのDLCが直近に…何なんだこのゲームのラッシュは!?



騒ぐ鼓動

 ぬのぼこの剣…あれは間違いなく人の力が及ぶものではないのだろう、刀匠としてこれまで培った知識、勘、目利き全てがそう理解させる。

 私が持つ刀のどれもがあれには遠く及ばず、この先もあれに並ぶものはきっと造れないだろうと──どうしようもなく分かってしまうのだ。

 

 それに、剣の力だけではない持つ人間の強い想いが力となるという特性のお陰だろうか…あの刃を通してオビトさんの力もまた感じ取れた。

 あの剣の芯となっている強い想い…平和を切に願い、他者の幸せを尊び、そして夢に憧れる希望に満ちた感情がはっきりと見て取れる。

 

 六道仙人が持ったとされるあの剣がオビトさんの手に渡ったのはきっと彼が六道仙人と同じ十尾の人柱力となったからだけではなく、その強い想いがあったからこそ出現させるに至ったのだろう。

 

 ──だが、そんな強い想いを閉じ込める黒い感情が錆となってあの剣を蝕んでいる。

 

 悲しみと諦観、そして憎しみと絶望…ぬのぼこの剣を通してオビトさんの心の内が見えたからこそ分からなくなる。

 

 かつてのあの人はどれ程に真っ直ぐで優しい人だったのだろうか? 

 どれ程の悲しい出来事があの人を変えてしまったのだろうか? 

 "月の眼計画"の成就が本当にあの人の悲しみを癒し、彼の心を蝕むあの錆を取り除く事が出来るのだろうか? 

 

 心の内が見えたとて、私には何も分からない。

 ただ分かる事はあの刀に負けてはいけないという事、そしてもう一つ──

 

 オビトさんに向かって並び立つ2人の忍へ目を向ける。

 

「行くぜサスケ!」

「これは…」

「九喇嘛が…あぁ九尾のことな、あいつが教えてくれたんだってばよ、昔マダラがこうしてたってな」

「──なるほど。良いだろう、こいつで決着をつけるぞ、ナルト」

 

 サスケ君の須佐能乎に自身の九尾のチャクラを掛け合わせナルト君は自分達の姿を鎧を纏う巨大な妖狐へと変化させる。

 その右前脚には巨大な剣が携えられており彼らから感じていた力と自分のもう一つの認識が間違えていないのだと確信する。

 

「お願いしますナルト君、サスケ君…貴方達ならば…あの悲しい力にきっと勝てます」

 

 駆け出した2人の疾走を祈りと共に見届ける。

 いや、2人ではない…心のままに真っ直ぐに走る彼らの傍には彼らの仲間達も集まりオビトさんが構えた盾を破壊し、阻むものがなくなった刃はぬのぼこの剣とぶつかり合い──打ち破る。

 

 ぬのぼこの剣を折った尾獣須佐能乎の刃はそのままオビトさんの身体を切り裂き、彼の身体の内側から尾獣チャクラを溢れ出させる。

 オビトさんの身体から噴き出した尾獣チャクラはナルト君のチャクラと繋がり互いに引き合い出した。

 

 引き合う力はオビトさんの方が僅かに強く、徐々にだがナルト君側のチャクラの方がむしろ引き摺り込まれつつあった。

 決して軽くはない手傷を負った直後だというのに…その本質が深い絶望によるものであっても彼の確かな強さを物語る。

 

 けれど──やはりそれは悲しい、1人きりの力だ。

 気が付けばナルト君と共に戦っていた九人の忍達がナルト君のチャクラを掴み共にチャクラを引っ張り出して、その仲間の繋がりはやがて連合の忍達にも広まっていく。

 

「いくぞォ皆ァ! せーのォっで一気に引き抜くってばよ!」

 

 ナルト君の呼び掛けに皆が大きく息を吸う──それに合わせて私も彼らのすぐ傍へと駆け出す。

 

 心臓の鼓動が大きくなるのを感じる。

 その激しい鼓動がいきなり全力で走り出したことによるものではないのは明白で、ただただ早くあれに手を伸ばせと本能が掻き立ている。

 

 

 

「「せーーーーのォ!!!」」

 

 

 

 連合の忍が一丸となった掛け声と共に一斉にオビトさんのチャクラを引き抜く光景の傍らで、尾獣須佐能乎に斬られた際にオビトさんの手から毀れ落ちていた折れた"ぬのぼこの剣"にクナイで慎重に触れる。

 クナイが消滅しない事からしてもやはり破損した事でその力を失ったのだろう、いや、それとも持つ者の心の強さを反映するが故に誰も触れていない時には何の効力も持たないのだろうか? ──推測さえも儘ならないが後者ならばそれで良い、そして仮に破損による影響ならば直せば良いだけだ。

 

 直し方なんて分からないが構わない、出来るかも分からない事に挑戦することなんてこれまでやってきた事と何も変わらない…巻物の中に壊れた"ぬのぼこの剣"を収納し、尾獣の救出とそれによるオビトさんの無力化に成功し喜びの声を上げる忍達に混じって思わず笑みを溢すのだった。

 

 

 

 その狂喜の渦から意識を取り戻すのはオビトさんが黒い人影に取り込まれかけながら上げた苦悶の叫びが耳に響いてからだった。

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

 連合の忍達から離れた位置でマダラと戦う水月と我愛羅は目の前の光景に戦慄する。

 見上げる程の巨躯を誇る完成体・須佐能乎を操るマダラの眼前には八つの頭を持つ蛇を身体に巻き付けた巨大な傀儡人形が立ちはだかり激しい立ち合いを繰り広げていた。

 

 山をも切り崩す須佐能乎の刃を巨大蛇の口から伸びる8本の刃で受け止め、傀儡人形自身が持つ爆発刀を何度も須佐能乎に叩き込んで反撃する──その応酬にマダラこそが最も楽し気に笑みを浮かべていた。

 

「この完成体・須佐能乎にここまで抗うとは…いいぞ貴様ら。やはり戦いとは己の全力を受けられる相手としなければ面白くない」

「チッ、好き勝手言いやがる、こっちは面白くねぇどころか心底不愉快な思いで付き合ってやってるってのにな」

『同感ね、まさかアンタとここまで協力しなくちゃならないなんてね』

 

 "八岐の術"によって変化した大蛇丸も、それをクシナダのボディに巻き付け防御力を補ったサソリも互いに好まない相手との直接的な連携に心の底から不満を口にしながらも迫るマダラの攻撃に対処する。

 

 須佐能乎の斬撃を大蛇丸が"十拳剣"とそれを反射して造り出した7本の複製体の刃からなる"十拳剣・水鏡"によって受け流し、その隙にサソリの操るクシナダが何度も攻撃を繰り出すが"須佐能乎"の強固な守りは破れず、激しい斬り合いが何度も繰り返されていた。

 

「何て光景だよまったく…村雨の奴がここにいたら今頃状況も弁えず騒いでそうだよ」

「想像が容易いな」

 

 オビト側へ口寄せされる少し前までこの場にいた人物を脳裏に過らせながら水月と我愛羅は辟易した様子でそう呟くと、気を取り直してチャクラを練って水遁と砂をそれぞれ繰り出して"須佐能乎"が振るう腕を狙撃する。

 

「マダラの須佐能乎を壊そうなどと思わなくて良い! マダラの攻撃をほんの僅かでも鈍らせろ!」

 

 援護の攻撃にチャクラを専念させるべく水月と我愛羅を抱えたエーは自身が誇る速度を活かして高速で動き回る須佐能乎を追い、ベストの位置に回り込みながら指示を出す。

 

 ひたすらに攻撃を繰り返すのではなく攻撃を避けられる範囲から須佐能乎の動きを少しでも阻害する──当然、そんな安全なラインを保った攻撃でマダラの須佐能乎を止められる訳ではないがほんの少しでも動きが遅くなれば大蛇丸が"十拳剣"で防ぎ易くはなるし、"クシナダ"にしがみつき"軽重岩の術"で回避と攻撃に転じる瞬間だけ臨機応変にクシナダの重さを変化させ続けるオオノキにもほんの僅かでも余裕が出来るはず、各々そう信じて自分に出来る事を全力で繋いでいた。

 

 それは水影、メイもまた同様で彼女もオオノキと共にクシナダにしがみつき常に"霧隠れの術"で地上から遥か高所にいるマダラの視界を遮り続けていた。

 

 正確な位置を狙えない須佐能乎は濃霧から抜け出そうと翼を生やし更に上空へと飛翔する──が、須佐能乎の形態が変化した事でその意図を見抜いたサソリは即座にクシナダを操る。

 "軽重岩の術"と"五源龍"の膨大なチャクラの放出による推進力で本来の質量では到底不可能な速度で急旋回し須佐能乎の直上へと回り込む。

 

「捉えた!」

「ッ!」

 

 真上という視界に映らない領域からの強襲にマダラも一瞬反応が遅れ、その僅かな隙に大蛇丸はオリジナルの"十拳剣"を須佐能乎の頭部へと突き立てる。

 実体を持たない霊剣は本来ならば大抵の物理的な攻撃は容易に弾く須佐能乎と同化するかの様に混じり合い、突き刺さった部分から徐々に須佐能乎の顔を刀身へと吸い込んでいく。

 

 "十拳剣"に取り込まれ始めた須佐能乎はその形を歪め僅かな隙間を生み、その内側に守られていたマダラを晒す。

 

「今よサソリ!」

「風影、封印術の用意をしろ!」

 

 漸く見えた勝機に大蛇丸とオオノキがそれぞれ指示を飛ばす。

 即座に我愛羅は自身の操る砂を集約し、今から叩き落されるマダラが地面に触れて態勢を立て直すよりも早く砂の中に閉じ込め封印するべくチャクラを練り上げる。

 

 そしてそれと同時にサソリは須佐能乎の裂け目を見据えて"無限爆刀・蒸気壮怒"を握るクシナダの右腕を一度引き、一気に突き出す。

 

「墜ちろマダラ!」

「甘いぞ、"火遁・劫火滅却"」

 

 だが刃を突き出したその瞬間、マダラが放った火炎がその刀身を炙り急激に赤熱化させる。

 

「しまッ!?」

 

 勢いを付けていた刺突を止める事が出来ずサソリが反射的にクシナダが握る右手を緩めさせるよりも早く"蒸気壮怒"は起爆し、耳を劈く爆発音と肉が焼け焦げる不快な臭いを周囲に響かせた。

 

「動作毎に刀身に熱を持たせ、油に閉じ込めた水遁チャクラを起爆させる──面白い出し物だが、その手の武器はそう何度も見せるものではなかったな」

 

 マダラ、そして須佐能乎への接触前に熱せられた事で"蒸気壮怒"はその爆発をクシナダ自身へと浴びせ、"蒸気壮怒"そのものも、クシナダに巻き付いた八岐大蛇の頭部も3つ吹き飛ばした挙句軽量化していた機体は制御を失い空中で大きく弾き飛ばされてしまう。

 

「くそ、ダメか…」

「何で相手の攻撃でも起爆するんだ!? お前の顔が打ち上がる事と良いどうなっているんだあの刀は!?」

「ボクに聞かないでよ! あのバカの発想なんて知らないよ!」

 

 好機から一転して逆転された事、自爆でも相変わらず打ち上がるナイスガイポーズの水月の顔にその本人へと怒声を向けるエーに水月は怒りの声で叫び返すがそんな彼らに更に追い打ちを掛けるようにバキリッと鈍い音が響く。

 八岐大蛇の肉片を撒き散らしながら空中で大きく回転するその機体の動きを止めたのはサソリの操作でもオオノキによる重さの調整でもなくその機体の胴体を貫き破壊する須佐能乎の拳だった。

 

「爆風で霧も晴れたからな、俺の眼にはその人形のチャクラの巡りもよく見えているぞ…全身に張り巡らされた傀儡糸の集中する位置、人形を操る本体の居場所はそこだ」

「──ああ、その通りだ!!」

「何!?」

 

 クシナダのチャクラの動きを的確に見抜いたマダラの攻撃、それは確かにサソリの居場所を捉えていた──だが須佐能乎の拳はサソリの身体を破壊する直前にチャクラの壁に──正確には彼を守る様に囲う2体の傀儡の腕に仕込まれたチャクラの盾によって阻まれていた。

 

 赤い髪の男性の人形"父"

 茶色の髪の女性の人形"母"

 それは我愛羅奪還を目的とした木ノ葉、砂の合同小隊とサソリが戦った際に彼の祖母チヨが持ち出し、激闘の末に偽雨の行動によって"白秘技・十機近松の集"と共に戦場に取り残されていたサソリにとって最初の作品だった。

 

 傀儡の術の始祖、モンザエモンの十傑作と謳われる作品達に比べればチヨバアによって多少の改造はされていても大元は子供の頃に自分が造った見所のない作品に過ぎないその2体の傀儡、しかしサソリはサクラ達が時空間移動し偽雨も消滅し1人残されたその戦場にその2体を捨て置く事が出来ずにいた。

 

 それから取り出す事さえなく巻物の中に眠っていたその2体の傀儡は終末の谷でのマダラとの戦いの折に、元々の中継器役の傀儡が破壊された事でその穴埋めとして仕込みを無数の武器から傀儡糸の増幅役として改造され、サソリの10の指から直接繋ぎ20の指としてサソリにとっても不思議な程にスムーズに他の中継器役の傀儡を動かしていた。

 

 そして2体の傀儡は殆どが取り除かれた仕込みの中で唯一残されていたチャクラの盾で須佐能乎の拳を受け止めたことでその両腕は折れ曲がり、波及した衝撃で胴体にも損傷が出たらしくゆっくりと崩れ落ちる。

 

 ──ガシャリと乾いた音が操縦室の床から鳴ったのと同時にクシナダの真下の空中から大きな音が鳴り響き、爆発の衝撃でその右手から離れ落下していた"蒸気壮怒"がクシナダの頭上に跳ね飛ばされた。

 

「しゃーんなろーーーッ!!」

 

 崩れ落ちた2体の傀儡を見届けていたサソリの視界に、オビト側とマダラ側の戦場のちょうど中心で綱手と共にカツユの口寄せを行っていたはずの少女、かつてチヨバアと共に自分と戦った春野サクラの姿が映る。

 

「決めなさい!」

「言われるまでもねぇ…が、上出来だ小娘」

 

 自身とその傍らの2体の傀儡を見て、そして亡きチヨバアを思い涙を、そして微かに笑みを浮かべながら落下していた"蒸気壮怒"をクシナダの右手の位置まで殴り飛ばしたサクラにサソリも僅かに笑い、"父"と"母"の身体に繋いでいた2体の手のみに集中し折れた両腕のその指先のみを動かすと、2体から無数に伸びる傀儡糸を中継器の傀儡ではなくクシナダの右腕へ繋ぐ。

 

「…む」

 

 そのチャクラの動きを見てマダラは即座に須佐能乎の拳を引こうとするが、それよりも早くオリジナル"十拳剣"を持つ首を除いた残りの八岐大蛇の首が腕に巻き付き、更にはオオノキの"加重岩の術"が合わさりその動きを阻止される。

 

「逃がさんぜ、マダラ!」

「小僧!」

「──ソォラァ!」

 

 跳ね飛ばされた"蒸気壮怒"を掴み取り、再び振り下ろされた切っ先は今度こそマダラの胴体を捉え、爆ぜる。

 内側で発生した爆発は須佐能乎の強固な守りによって荒れ狂い、反響し続け増幅した衝撃が須佐能乎を内側から崩壊させ頭部から胴体へと落下していたマダラの身体を空中へと投げ出す。

 

「風影!」

「"砂漠層大葬"!」

 

 大量の砂が落下していたマダラの身体を包み込み、砂のピラミッドの内側に閉じ込めるとすぐさま水月とエーは事前に持たされていた封印術式を刻んだ札付きクナイを投げつける。

 

 クナイが刺さった位置からピラミッド全体に術式が広がり、

 確実にマダラを閉じ込めた封印術に我愛羅は小さく息を吐くがすぐに角都が警告を発する。

 

「油断するな! 奴は写輪眼の失明を代償に復活する、恐らくどこかに出現するはずだ!」

 

 自らの不都合な出来事を幻へと書き換えるうちは一族の究極幻術"イザナギ"。

 既に一度使われたあの術ならば片目を失う事と引き換えに今回の封印術から確実に逃れるだろう。だがこれでマダラは両眼を失う事になる…もうその手は使えなくなる上に視覚を完全に失えば先程より遥かに戦い易くなるはず──そんな見立ては砂の封印を強引に吹き飛ばし内側から這い出てくるマダラによってあっさりと破られた。

 

「バカな! あの封印術を力尽くで抜け出すなど…」

 

 マダラといえども到底信じ難い光景に戸惑う我愛羅達を意に介さずマダラは楽しそうに、今まで以上に上機嫌そうに歓喜の声を上げる。

 

「クク…やはりこの身体でなくてはな! 血湧き肉躍ってこその戦いだ!」

 

 穢土転生による死人の身体からは得られない心臓の鼓動を手で確認しながら、本当の復活を果たしたマダラは歓喜の叫びを上げた。





※原作との違い補足
我愛羅がオビトとの尾獣チャクラの綱引きに参加せずにマダラ側の戦場にいますが「乱入者の影」の回で少し触れた通りナルトはオビト戦序盤でカカシ達と共に一尾を含む尾獣7体と交戦しておりそこで尾獣チャクラの一部を原作同様に受け取っているため、今回の綱引きのシーンで一尾も救出出来ています(八尾は原作通りビーさんが担当)

村雨視点での進行の為、本文内での説明が困難で後書きでの補足となり申し訳ありません。
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