ナルト君とサスケ君が同時にカグヤさんに触れた時、彼らに引き寄せられるような感覚に咄嗟に両足にチャクラを集中させ地面に張り付く。
しかし次第に地面が皹割れ、岩石の塊となってカグヤさんを埋め尽くす球体へと変化していく──この術には見覚えがあった。
「これは"地爆天星"!」
規模はまるで違うが以前雨隠れの里でリーダーさんに使われた強力な引力とそれに引き寄せられた土塊の圧力で決して逃げ出せないあの術だ。
「離れろ! 巻き込まれるぞ!」
「六道の大じいちゃん周りの被害絶対ぇ考えてなかっただろ!」
封印術を仕掛けたナルト君達もこの状況は想定外だったのか慌てた様子で皆に退避を呼び掛けるが強力な引力は弱まる事なく周囲の地面を吸い寄せ続ける。
形成されつつある岩石の星の中心となっているカグヤさんはその姿を人の形を維持出来ず十尾の姿へと変え、更にその身体から一尾から九尾の九つの獣、そして彼女に取り込まれていたマダラさんを切り離していく。
「尾獣達が解放されたか!」
「九喇嘛ァ無事だった──うわぁ刀が飛んできたァ!?」
「わ、私の作品達がぁ!!」
喜んだのも束の間、陽動の為に忍連合の皆に託し投擲された刀達も纏めて引力に導かれて宙に浮く──その中心にいるナルト君とサスケ君は引き寄せられる刀を必死に避けているが、避けられた刀達は無情にも岩石の球体に巻き込まれてその姿を消していく。
カグヤさんを封印したのは良いがこのままでは私達も私の大切な作品達も全て巻き添えになってしまう──とにかく出来る限りの散らばった刀を可能な限り集めなくては。
──いや、違う…この混乱は好都合…大切な作品達が失われるのはあまりにも辛い…だが、まずはアレを。
誰もが術の範囲外へと逃げようと必死な今こそが最大のチャンス。
しかしそう思った直後、身体を上空へ吸い上げる引力が消滅し浮かび上がっていた岩や刀が地上の人達を巻き込まない様にゆっくりと落ちてくる。
突然術の効力が消えた事にカグヤさんの反撃を予感して慌てて頭上を確認するがカグヤさんの姿はどこにもなく、彼女を閉じ込めつつあった岩石の星も消滅していた。
その代わりに宙に浮かぶナルト君とサスケ君の丁度真ん中の辺りに炎の様に揺らぐ身体の白い老人が浮かんでいた。
その両目にはやはり輪廻眼が宿っており、そのただならぬ気配に彼の正体を何となくだが理解する。
「母カグヤは彼女の空間…始球空間へと移動させた──この地もお前達も巻き添えにするわけにはいかんのでな」
「カグヤが母って…貴方はまさか──」
「いかにも…ワシの名は大筒木ハゴロモ、お前達には六道仙人と名乗った方が通りが良いか?」
輪廻眼や明らかに霊体に近い身体からそうではないかとは思ったが…実際に名乗られるとそれでも驚くばかりだ。
この人が"ぬのぼこの剣"や"七星剣"の本来の持ち主なのかと失礼ながら興味深く観察しているとハゴロモ様は突然頭を下げた。
「我らが親子が発端となる長き争いに巻き込んでしまった事謝らせてほしい…そして母を止めてくれた事、礼を言う忍達よ」
カグヤさん同様に"神"ともいうべき格の御方の行動に皆が戸惑い、言葉を詰まらせるもすぐに雷影様が皆の前に出る。
「貴方がナルトとサスケ、2人に託した封印術があっての結果だ、それに先程の件にしても…忍連合軍のリーダーとしてこちらからも礼を言わせてもらう」
雷影様の礼に続き、他の五影の方々も頭を下げる。
その様子にハゴロモ様は少し躊躇った様子を見せて──口を開く。
「影達、いやこの場に集った忍達よ…正直に言うと、ワシは無限月読が発動した時ナルト、サスケ、サクラ、そしてカカシの4人に委ねるしかないと思った。だがお前達は無限月読を破り皆で母カグヤに立ち向かった…忍宗の開祖としてこの結果を嬉しく思う」
「…まぁ、破った手段についてはアレだけどね」
「そうだな。だが過程以上に皆が一丸となった事実、それが何よりも尊いものなのだ」
語り始めは躊躇いがちだったハゴロモ様はその一言を実に嬉しそうに告げた。──そして、少しの間をおいてその笑みを控え真剣な表情に戻る。
「後は…お前達以外の無限月読に掛けられたままの者達だが…」
「あ! 水月…」
「素振り全人類分なんて絶対嫌だけど!?」
取り残されたままの人達を思い出してちらりと水月に視線を向けるが即座に強い拒否の言葉が返ってくる…まぁ当然ではある。
「──確かにこれ以上貴方に苦行を強いるのは心苦しいわね。私に任せなさい水月、遠慮はいらないわ」
「待て大蛇丸、俺なら心臓を自律させれば4人分増える…奴らと交代しながらやれる俺の方が向いている」
「俺の傀儡の身体ならそもそも疲労なんてない、ここは俺が──」
「アンタらこの刀持ち逃げしたいだけだろ!?」
拒否されるのが当然と思っていた役目を急にハレンチ博士達が志願し出した…正直私からでも下心が見え見えだ…勿論それ程までに"終刀・真月"を求めてくれるのは本当に嬉しいのだが露骨過ぎて反応に困る。
「案ずるな、無限月読はナルトとサスケの2人のチャクラで解く事が出来る…だからまずは──」
しかしハゴロモ様は彼らを諫めて別の方向を向く。
その視線の先は瓦礫の僅かな隙間で地面に背を着き倒れ、命の灯を失いつつあるマダラさんがいた。
「マダラもまたワシらが巻き込んでしまった男だった──せめてもの償いだ」
ただ1人横たわるマダラさんの傍に不意に誰かが現れた。
人…ではあるがその身体は半透明な朧気──チャクラを基に造られた霊体だった。
「…千手…柱間か」
角都さんの言葉に霊体の男性の顔が木ノ葉の里の顔岩、終末の谷の石像と重なる。
宿敵とも言うべき関係の柱間さんとマダラさん──彼らが今何を語り合っているのか聞き取れず、きっと私達が聞き耳を立てるべきでもないのだろう。
やがてマダラさんは微かな呼吸の動作さえ止めて柱間さんの霊体も消滅する。
黒ゼツさんに欺かれた結果とはいえマダラさんの凶行はあまりに多い…この場の忍達の中にも彼を許せないと思う人はきっと何人もいるのだろう。
それでも自らが信じた平和の実現に全てを捧げたあの方がどうか安らかな心で己の最期を迎えられた事をただ願う。
「マダラは…死んだようだね。──なら、次は俺の番かな」
「父ちゃん?」
マダラさんの最期を見届けた四代目火影様…ミナトさんは自らは役目を終えたのだと切り出した──だがそれは息子であるナルト君には簡単に受け入れられる事ではないはずだ。
…だけど、彼は決して引き止めたりはしない。
むしろ、穢土転生で蘇った身であるが故に役目を果たした以上は去るべきだとしながらも自らの子を1人遺していく事に心を痛めるミナトさんを安心させようと涙を浮かべながらも必死に言葉を綴り続ける。
「──お前も、いつか父親に謝りに行ったらどうだ?」
「リーダーさん?」
気が付けば小南さんに支えられたリーダーさんに思わぬ提案をされて驚く…そういえばリーダーさんは以前私の記憶を見たのだったか…という事は私と父の喧嘩から家出までの発展も見られていたという事か。
「職人としての在り方ならばお前の主張も間違っていないのかもしれないが…その気になればいつでも親に会える…なんて思っていると後悔するぞ。…そんな事、分かっているだろうがな」
「ありがとうございます、リーダーさん」
母が殺された事を知っているからこそ遠慮がちの忠告。
リーダーさんも両親を戦争によって失ったからこそ私の現状を見かねてくれたのだろう…今すぐ従いますとはいえないが、それでも重く受け止めて礼をするとリーダーさんは満足した様に頷いた。
「…すまないが俺は小南と一足先に雨隠れの里に戻る──俺も死人だ、この世に留まるべきではないというのは同感だが…ナルトと四代目火影には悪いが、雨隠れの里が木ノ葉を受け入れる体制を整えるまで俺はまだ消える訳にはいかない。それにお前達が逃げ込める準備もしておくべきだろう」
「分かりました…もしもの時はお願いします」
「何だ、もうどこかに行っちまうのか? 命の恩人への礼も言わせてくれんとは色気のない奴だのぉ?」
皆がナルト君とミナトさんを見守る中こっそりと会話をしていたが不意に背後から声がして慌てて振り返ると綱手様に支えられた状態の自来也さんがそこにいた。
「──自来也…先生」
「あ! 自来也さん…さっきは自来也さんの持論を勝手にお借りしてすみませんでした」
「おぉ! アレは中々驚いたぞ!」
リーダーさんと自来也さんの関係的に般若面で隠しているとはいえ気付かれる可能性が高い…丁度後で謝罪しないとと考えていた話題で気を逸らしつつリーダーさんへこの場から離れる様にアイコンタクトをする。
…いや、というかさっきリーダーさん自来也先生って呼んでいたが最初から隠すつもりがなかったのか?
そんな疑問が頭を過った瞬間、こっそり小南さんが両足にチャクラを集中し立ち去ろうとしたのに気付いたのか自来也さんの視線が私からリーダーさん達へと戻る。
「待て待て! お前、ワシの作品のファンと言っていたの?」
「えぇ、楽しく読ませて頂きました」
あぁなるほど師弟としてではなく自来也さんの作家としての立場を利用した呼び方だったのか、流石はリーダーさん誤魔化し方が上手い。
「なら…折角だから命の恩人の感想を聞かせてくれ」
「感想?」
「ずばりワシの本…どれが一番好きだ!? やはり定番のイチャイチャパラダイスか!? それとも最新作のイチャイチャタクティクスか!? それとも──」
「……ド根性忍伝、貴方の…最初の作品だ」
自身のファンという相手に気を良くしたのか捲し立てる自来也さんだったがリーダーさんのその答えに「さっぱり売れんかったのに…物好きめ」と悪態をつき──優しい笑みを浮かべる。
「のう…あの本、後書きまで読んでくれたか?」
「…はい、色々あってそこだけ読むのが遅れてしまったけど、俺と同じ…その本のファンが教えてくれたお陰でちゃんと読めましたよ、自来也先生」
「そうか…そうか…」
声も身体も震わせて俯く自来也さんは隠しきれない涙、そして笑顔を浮かべていた──が、その様子に…それともリーダーさんの正体にとっくに気付いているのに敢えて気付かないフリをして、リーダーさんも気付かれていないフリをして語り合う2人の不器用なやり取り自体に呆れたのか隣で綱手様が面倒くさそうに鼻を鳴らした事ですぐに顔を顰めて睨みつけた。
「ありがとう村雨。彼と先生がこんな風に話せたのは貴女のお陰だ」
「偶然…ですけどね」
「フフ、確かに──それでも、私はその偶然に感謝する」
こんな結末になることを見越していたはずもなく、私がやりたい様にやった結果たまたまこうなっただけなのを良く理解している小南さんはそれでも初めて見る程に穏やかに笑った。
偶然ではあるが、この人をこんなに自然に笑わせてあげられたのなら少しだけ誇らしく思えた。
そうしてリーダーさんと小南さんは人知れず、ナルト君とミナトさん…忍世界を救った英雄の親子の悲しくも温かな別れの陰に隠れて静かにこの場から立ち去った。
「綱手」
「ああ」
リーダーさん達、そしてミナトさんが立ち去るのを見届けると自来也さんと綱手様はナルト君の下──正確にはナルト君の目の前の…ミナトさんがいた場所に積った塵芥の傍に降り立ちその内側にいる生贄となったのであろう人物に綱手様の羽織を被せていた。
ミナトさんをこの世に呼ぶ為に生贄となった人…それが誰なのかは分からないが、きっとその御方はいずれ世界を救う為に自らの命を懸けたもう一人の英雄として誰かの胸に刻まれるのだろう。
「あ! そうだオビトさんは!?」
色んな事があったが優先すべきは鬼鮫さんとオビトさんをちゃんと話合わせる事だ…無限月読はどうやるのかは分からないがナルト君とサスケ君が何とかしてくれるらしいのだから私は鬼鮫さんとの約束を果たすべきだ。
周囲を見渡すとカカシさんに肩を借りたオビトさんの姿が見えて駆け寄って──
「──無限月読は解く…だがその前に五影、尾獣共、元暁の連中、そして渦柘榴村雨…お前達は俺が処刑する」
うん?
なんだ今の発言は? サスケ君の声…だとは思うが何故そんな事に…聞き間違いだろうか?
「──"地爆天星"」
聞き間違いを疑っている内にまたしても発動された地爆天星に今度こそ囚われてしまうのだった──私この術嫌いだ。
▼▼▼
村雨と尾獣達が無数の岩石に囚われながら宙に浮かび、球体の中に完全に閉じ込められたのを見て、水月はそれを行った人物に目を向ける。
「一応聞くけどさぁ…何の冗談だい?」
「俺が冗談でこんな事をするとでも思うか?」
「だよねぇ」
一応、水月なりにそれは助け船のつもりだった。
サスケなりに考え抜いた結論からの行動なのは理解していた…しかし、今や世界を救った立役者となり英雄として木ノ葉の里へ帰り好きに生きる道があったはずなのに、それを全て捨てる行為をまだ冗談で済ませる為の──。
しかし、そんなものは不要だと迷いなく言い切るサスケの返答に水月はそう答える事が分かり切っていたからこそため息を吐く。
「──でもさぁ、だったら何で五影や元暁のメンバーにも一緒にあの術使わなかったわけ?」
処刑するという宣言に対してサスケが実際に捕らえたのは村雨と尾獣のみ…五影や元暁のメンバーはオビトすらも含めて"地爆天星"を受けず、地上でサスケの動向を警戒していた。
それだけにうちはサスケを詳しく知らず英雄と信じていた忍達はただ戸惑う。
「サ、サスケ殿…一体何故五影の方々を処刑なんて!?」
「それに、暁の連中もサスケさんと水月さんが従えたはずでは? 確かに彼らは重犯罪者だが、共闘が終わってすぐに騙し討ちでの処刑というのは…」
自分達の長は勿論、戦争の最中に助けられ極限状態を共に生き抜いたが故に本来ならば処刑そのものは受け入れるであろう元暁のメンバーを気遣う声も各地から上がる。
「そ、それに村雨さんも…彼女はそこの水月さんと一緒にマダラやカグヤに果敢に挑み我らを鼓舞した英雄…処刑される理由など──」
「……そいつは最優先の抹殺対象だ」
「だよねー」
サスケについては勿論、村雨についても詳しく知らない者達の中は彼女の助命を懇願する者も次々に現れるがサスケと水月はその現状に頭を痛める。
「サスケ、お前が本気だってのは分かってるてばよ…けど何でこんな事をしようって思ったんだ?」
「全ては…イタチの生き様から悟った答えだ」
全ての忍の視線を背負いうちはサスケは語る。
里を守る為たった1人で全てを背負い憎しみを自分1人に一身に受けようとした忍と、彼が犯した弟を殺せず憎しみを分散させてしまった失敗を。
そして彼に生かされ、彼の生き様を学び、彼と違いたった一族の繋がりを失いたった1人となった自分だからこそ全ての憎しみを己だけで背負う事が出来る。
──真の意味で彼が歩もうとした道を歩めるのだと。
「共闘した事で元暁のメンバーへの恨みが薄い者の中にはを処刑する事に躊躇う者がいる。だがそいつらから直接被害を受けた者達は今でも処刑を望むだろう…どの様な理由があろうとも誰かを殺せば誰かから憎しみを向けられる──ならば俺が忍の世界全ての問題に対処する。刑罰も処罰も俺が手を下し、それによって生じる憎しみも全て引き受ける」
「…村雨以上に狂ってるよ、今の君さ」
「どう思われようが構わん…これより俺は過去を断ち切る。そして俺は…五里全ての闇を己の炎で焼き尽くし、その灰を食らって生きる…真の意味での火影となる」
支配、管理、征服…うちはサスケの主張はそれらの言葉相応しいがそれと同時にその根本には忍の世界とそこに生きる者達の為に己の全てを捧げる献身…深すぎる愛情があるのだと感じ取り水月は精一杯に皮肉った感想を述べる。
「…お前は分かってねぇよサスケ。今の話を聞いて皆がお前を憎むとでも思ってんのか! 悔しいけど…戦争中皆、お前の事凄ぇ奴だって認めてて…今だって皆の為に1人で全部背負おうとしているお前の事を正しいのかもって思っているかもしれねぇ! 今のお前が皆が付いていく英雄なんだぞ!?」
「……そうだ、どこかの誰かが妙な嘘を吹き込んだせいで俺の革命は完全な形で行えなくなった」
"新生・忍刀七人衆"と忍連合軍…その二つの協力関係を築く為にサスケの功績をでっち上げた犯人、水月はその言葉にさりげなく視線を村雨が閉じ込められた岩石の球体へと向けて罪をなすりつけようと試みる。──しかし、サスケはそれ自体には興味も示さずに続ける。
「……俺が五影や元暁のメンバーを術に掛けなかったのも、それが理由だ…本来ならば今、1人きりになっているはずの俺を信じる者達が出来てしまった」
五影達を殺すなど本来ならば決して許されるはずがない、賛同する者などいない。
だが、戦争を負った心の傷は時として人を正常でいられなくする──この戦争で大切な人を失った者の中にはぶつけるべき敵が無く、やり場のない喪失感を指導者たる五影達への怒りへと変貌させる者もきっと出てくるだろう。
大切な人を失う辛さを深く知るサスケだからこそそれがどうしようもない事だと理解している。
そして理解しているからこそそれがいずれ闇となる事も理解している。
憎しみに囚われた思考は五影を処刑しようとするという行為を正しい事だと勘違いさせる。
…本来ならば根拠のない懸念だが水月と村雨によって塗り固められた嘘と戦争での主戦力となったサスケ自身の実績で集めてしまった忍達からの信頼はそれを現実のものにし兼ねない。
そうなれば皆の共通の敵となる事で今の五里の協力関係を維持させる革命は失敗する。
「…俺の計画は始める前から不安定なものにされてしまった」
「な、何かごめんね」
サスケが火影になろうとしているという話だけ聞いて暁のメンバーの味方にしたという嘘の経歴を吹聴した水月は明かされた革命の計画、そしてサスケの定義する火影に対する妨害を全力で行っていたという事実に思わず顔を覆う。
「でも、それならそんなやり方はもう」
「いいや…確かに俺の計画に懸念が出来た──だが、それでも今の五里の関係を維持する方法がないのなら俺は革命を実行する」
それ故に無慈悲であろうと処刑すべき対象を増やすしかなく…それを防ぐ為にサスケは宣言する。
「この先俺のやり方を良しとする者…俺を善などと呼ぶ者も俺は全て葬る──そうすれば俺の計画に懸念はなくなる」
「そんなやり方──」
「お前は本当に…そうやってまた孤独の世界に行っちまおうってんだな、サスケ」
1人となる為に、自分が全ての者にとって悪である為に…その為に己を慕う者達を殺す事を決めたサスケにサクラは悲痛な声を出すが最早は言葉通じないと悟りナルトの目からも迷いが消える。
「そうだナルト…俺のやり方を認められないのなら──お前が俺に勝って証明してみろ!」
「ッ!? そうか…サスケ、だからお前は…」
「言っておくが手加減はしない、俺は俺の計画の為にお前を殺す」
革命計画は本来の想定以上に犠牲が伴うものになった…だからこそサスケは全員の前で全てを語ったのだとナルトは察する。
革命を成し遂げる以外に自分ならば五里の結束をこれからも続ける事が出来るとサスケに、そして全ての忍に今一度証明する正々堂々の戦いをする為に──
ナルトの目にかつて中忍試験で互いにライバルとして戦いたいと誓い合った光景が蘇る。
だがあの時と違い今は互いに多くのものを背負っている、そして自分の力が及ばなかったらサスケは間違いなく本人の言葉通り自分を殺し、革命を実行する事が分かっているから。
だから湧き上がった昂揚感を抑え、真剣な眼差しでナルトは頷いた。
「──場所を変えるぞ」
「ああ、あそこだな」
「待ってナルト!」
互いに強さを極め全力で戦えば多くの者を巻き込むと理解し合っている2人は誰も巻き込まない、そして自分達の決着に相応しい戦場へと向かう。──そのナルトの背中をサクラが呼び止める
「──信じてる!」
彼女もまた、サスケの真意を理解したからこそ…愛する者に闇を背負わせない為にそれを止める事が出来る者に思いを託す。
かつてサスケが里を抜ける時にただ縋った時とは違う、ナルトならばそれが出来ると心から信頼と共に親指を立てて応えたナルトを見送った。
森を山を駆け抜けてやがてナルトとサスケはかつて全力をぶつけ合った戦場…終末の谷へと辿り着く。
今からまたあの時と同じ様に、そしてあの時以上に激しい戦いをするのだと改めて覚悟し──
「……何かすっげー戦闘の跡がある上に初代のおっちゃんの石像がパンチしてんだけど」
「どこのどいつだ石像を壊した上に改造したのは…」
周囲の川や森は巨大な瓦礫に荒れ果てた事、何より対立の印を結んでいた方の腕が折れボロボロになった挙句に残った腕が拳を突き出すポーズに変わった柱間像に2人は懐かしさも消し飛び曖昧な表情を浮かべるのだった。