霧隠れの狂人   作:殻栗イガ

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死神を追って

 中忍試験本戦会場、その物見やぐらの頂上で繰り広げられた最高峰の忍達の戦いを村雨はジッと見つめていた。

 背中から腹部まで草薙の剣に貫かれようと大蛇丸さんの肩から決してその手を放さない三代目火影様、その背後に揺らめく死神の持つ小刀に目を奪われていたのだ。

 

 今まで数百の刀、数千の忍具を見てきたがあれ程目を奪われたのはそれこそ大爺様が造った七つの忍刀を除いて他にない、それ程までに素晴らしい物だった。

 他にない、それ程までに素晴らしい物だった。

 何とかアレを手にすることは出来ないかと様々な想像を巡らせるも自身を囲む結界忍術に当事者たる火影様や大蛇丸さん、彼らの配下である忍達とあまりにも障害が多過ぎた。

 それ故に、ただただこの瞬間を自身の両目と記憶に焼き付け続けた。

 

 

 

 ──やがてその瞬間に終わりが訪れた。

 

 

 

「術に溺れ術に驕ったお前にはそれに相応しい処罰を下す! お前の術を全てもらっていくぞ!!」

「っ! 何だと!?」

「グオオオオオオオ!!」

 

 三代目火影様の言葉に大蛇丸さんは顔を顰めたが既に火影様は叫びと共に動き出した。

 そしてそれと同時に死神の持つ小刀がゆっくりと掲げられる。

 

「まさか……! ──っやめろォ!!」

「封印!!」

 

 怒りと恐れが混じった大蛇丸さんの叫びが響く。

 しかし死神は火影様の宣言と同時にその小刀を無情にも振り降ろす。

 

 大蛇丸さんの魂の一部、そして火影様の魂全てが死神の刀に切り裂かれた。

 あぁ……何て素晴らしい光景なのだろう……。

 

 死神に魂の一部を奪われた大蛇丸さんの両腕が血が滲んだように赤黒く染まりその顔に苦悶の様子を浮かべる。

 やがて両腕を力なくブランと垂らしながら大蛇丸さんが怒りを剥き出しに三代目火影様に怒声をぶつけるも火影様は既に息を引き取っていた……安らかな笑顔を浮かべ横たわるその姿はどこか幸せそうに眠る一人の老人の様だった。

 

「大蛇丸様!!」

「グウゥ……作戦はここまでよ……結界はもういい、帰るわ。左近、その娘も連れてきなさい」

「ハッ! おい、入ってろ!!」

 

 左近さんが背負っていた巻物から口寄せする。──棺桶を。

 ──え? ……ここに? 

 

 くそぅ……流石の私も色々文句を言いたいが仕方ない! 

 このまま立ち尽くしていては彼らに置いて行かれるかもしれない……そうなっては結界の外にいる暗部の人に捕まる。たとえ彼らとは無関係ですと主張しても絶賛戦争中の砂隠れから来たとか霧隠れの刀匠だとか私の経歴はどれでもアウトだ、このまま棺桶に入らなかったらなんやかんやで結局棺桶に入ってしまうことは間違いない、生きてるうちに棺桶に入ろう。

 

 ……あ、これけっこう深い……絶妙な狭さと暗さで案外落ち着く……。

 

 棺桶に入りそんな感想を抱いた直後激しい揺れと持ち上げられる浮遊感に襲われる。

 恐らく左近さん辺りに背負われたのだろう、せめて一声かけて欲しかったな……。

 というか凄い揺れるなぁ……外でどんな動きしているんだろうか。結界を解くと言っていたし暗部の人から追われている可能性は高い、……まぁそうでなくてもここから急いで撤収するというのだから動きが激しくなるのは仕方ないだろう。

 

 

 

 棺桶の中の為外の様子は伺えないが浮遊感が続いている以上一先ず逃走は上手く行っているようだ。

 ……まったく、成り行きとはいえとんでもないことになってしまったものだがあの場から生き延びたのだ、今はそれを喜ぼう。

 

 惜しむらくはあの『屍鬼封尽』なる封印術、その術者たる三代目火影様の死だ。

 出来ればあの場で三代目火影様のご遺体の一部を切り取って置きたかったが時間がなかった事や追手の重要度が跳ね上がってしまう事を考えればそれをする訳にはいかなかった。

 ……仮にそんなことをしてしまえば大蛇丸さん達から見捨てられる可能性もあったし木ノ葉の方々からは確実に指名手配されることだろうという予測から捨て置くしかなかったのだ。

 

 恐らく三代目火影様のご遺体は遠くない内に完全に供養され肉片一部とも残らない事だろう。

 折角見つけた極上の素材が……あまりに口惜しいが仕方がない……本当に口惜しいが……。

 ……まぁ一度落ち着こう、そもそも性質変化などの術者の波長由来のものならとかく、封印術などの特殊な忍術は仮に術者の肉体の一部があったとしても術式として転用できるとは限らない。

 

 それにあの術については名前や"死神"に魂を切り取らせ喰わせることで封印する忍術としてしか分かっていない。

 リスクを冒して三代目火影様の細胞を奪うよりもまずはあの『屍鬼封尽』について情報を集めるのが先決だ、あれを術式とする法則の確立とそれに適合する刀を造り、その上で必要であるのならばあの術を使える、または使った人物の細胞を利用する方がリスクは低いというものだ。

 

 残念ながら術者たる三代目火影様は死んだ、ならばあの術についての情報を集めるのに一番適した人物はそれをうけた大蛇丸さん自身だ。

 どうやらあの人からは歓迎されているようなのも好都合だ……底の知れない人物だが利用できるところは利用させてもらおう。……恐らく危険はあるだろうが安全と危険の境界線は分かる方だ、きっと大丈夫だろう。

 

 ……というか"火影"という立場の方を殺したという印象が強いせいで危険人物と感じるがそもそもこれは砂と音が組んでの計画だったのだからこの人たちは砂隠れとは友好的な関係性なのだろう。

 ならば仮にも砂隠れに所属する私にとってはそこまで危ないということはないだろう。

 むしろ砂に帰っても今回の件でお仕置きを受ける事は間違いないし木ノ葉に残るなどもってのほかだ。行き当たりばったりな行動ではあったが我ながら最適解を選んだのではないだろうか? 

 

「……実は私は世渡り上手?」

 

 狙っての行動ではない為いまいち自信を持てないが長所といえるものがあるというのならば嬉しいものだ。

 さて、不安が無くなったのならばあとは気にすることは……。

 

「──テマリさんから預かったお金返せるかな……」

 

 砂の里に帰る事の交換条件に受け取ったお金。

 結局砂の里に帰らずにいた為使うのは申し訳ないので、とっておいたのだが大蛇丸さん達に着いていってしまえば今まで程簡単に会うことは出来ないかもしれない。

 

 ……そもそも彼女達姉弟は無事だろうか? 

 戦闘が激化する前に離脱もしていたからあの3人ならば余程のことさえなければ大丈夫だとは思うが……。

 少なからず付き合いのある身だ、彼らの生存を祈っておこう……棺桶の中からだけど……。

 

 ……よし、お祈りも済んだことだし後は好きにさせてもらおう。

 どこに行くのかは分からないが左近さんが運んでくれるんだからこの空き時間を活用しよう。

 巻物の中から一本の刀……霧隠れのアカデミーで旅行に行った際に買った模造雷遁刀を取り出す。

 

 刀身は造り物で何も切れず、超微弱な雷遁は戦闘性能は欠片もないが照明器具の代わりに使えるという一種の玩具だ。

 流石にこんな物を自分で造る気は起らないが見た目は好みだし思い出の品でもあるので他の刀と同じ様に収納していたのがこんなところで役に立とうとは……今度自分でも造ってみようかな? 

 

 まぁそれはそれとして明かりは確保出来たし刀の設計図でも造るとしよう! 

 ……あ、紙も筆もないんだった。

 仕方ない……あまり手を傷付けるのは仕事に支障をきたすのだがあの死神を見てからどうにも興奮が冷めずジッとしてられない、指先を小型ナイフで切って血を垂らすと目の前の棺桶へ書き殴っていく。

 

 

 とりあえず封印術を刀に組み込む為には今までの刀とは使う素材の段階から見直さなければならない事だろう。

 術の全容も分からないのだ、見た限りからの予測、推測を交えて思い付く素材や造り方を片っ端からメモしていこう。

 

 

 ……気がついたら棺桶の内側が血文字でびっしりと埋め尽くされていた……いくつか書き損じて血で塗りつぶしたところもあってパッと見たら酷い光景だ……とはいえよく見たら何十通りにも及ぶ刀の原案集なのだ、もしもこの棺桶に本来の用途で入る人はきっと夢見心地で天国へと旅立つ事だろう。

 

 しかし設計図の作成に没頭し過ぎたがあれからどれぐらいの時間が経ったのだろうか? 

 外の喧騒などは聞こえず、ただただ浮遊感が続いているだけの様子からして逃げ切れた様に思えるが一向に棺桶は開かない。

 

 想像以上に移動が長い。

 これではいざという時に土地勘の無い場で逃げ回る事になるやも知れない。となると水化の術と子蜃の幻術の併用だけでは離脱は難しいかもしれない。

 ……考えたところで今更どうにもならないか、とにかくこの棺桶が開いた時、大蛇丸さんとその部下の方々に不信感を与えない様に振る舞わねば……。

 

 

 

 先行きの見えない今後への警戒を強め佇まいを整えた直後、眩しい光が射し込んだ。

 長く続いた暗闇に突然舞い込んだ日の光に思わず目を閉じるが、棺桶が開いたのだと理解し、ゆっくりと瞼を開ける。

 

 先程自身が思っていたことだ。

 とにかく、まずは大蛇丸さんとその部下の方々に悪印象を抱かせる訳にはいかない。

 未だに光に眩んだ視界で何とか棺桶の中に座り込んだ自身を見下ろす人を捉える。

 

 ──青紫の髪、左近さんだ。

 

「ここまで運んで頂きありがとうございます。もう外に出てよろしいでしょうか?」

「あぁ? 妙にへりくだりやがって、どういう心境の変化──んだぁっ!?」

 

 ……? 無意識の内に営業の言葉遣いになっていたがそれにしては左近さんが異常なまでに驚いている。

 一体何だというのか? 私の態度に何か変なところでも? 

 

「おいどうした左近? 例のアマが何か──って何だその血は!?」

 

 左近さんの驚愕の声に近くにいた桃色の髪の女性がこちらに視線を向け──目を見開いて大声を上げたのを見て漸く合点がいった。

 

 そういえば設計図やメモ書きの為に血を使う為に身体のあちこちを切り付けたのだった。

 最初は人差し指を軽く切っただけだったが続ける内に血が足りず、かといってあまり手や腕に傷を作りたくなくて途中から頬や足、お腹辺りに何度か刃を入れたのだった。

 

 暗闇で良く分からなかったが改めて見てみれば全身血だらけだ、これでは驚くのも仕方ない。

 ……あと気が付いたら流石に身体のあちこちが痛みだしてきた。……というか血を流しすぎて貧血だ、これはまずいかもしれない。

 

「……すみません、レバーを食べさせて頂くことは?」

「「出来るかっ!!」」

 

 酷く激怒された。

 その後彼らが持っていた"増血丸"なる"兵糧丸"の一種を受け取り何とか回復できた。

 生憎と包帯が無かったので傷口は服のあちこちを千切って抑えておこうと思ったのだが、次郎坊さんが「女が人前でそういう事をするな」と包帯を分けてくれた、優しい人だ。

 

「あぁくそっ! テメーなんぞを相手してる暇はねぇんだよ! 鬼童丸、大蛇丸様は!?」

「駄目だ、激痛が無くならねぇみたいぜよ! とっととカブトの奴に鎮痛剤を用意させねぇと!」

「チッ! あの野郎は何をタラタラしてやがる」

 

 ……場所は何処かの澄んだ川の近く。

 流れが早く水の音で声を隠せて、更に喉を潤せるこの川は理想的な休憩の場なのだろう。

 少し離れたところで大蛇丸さんは苦悶の表情で変色した腕を水に着けている様だが周りの言葉からそれがさして意味の無いものなのだと理解する。

 

 やはりあの死神の力は素晴らしい、伝説の三忍と謳われた人をここまで苦しめるとは……。

 何としても情報を得たい、その為には大蛇丸さんに死なれては困るのだが……

 

 そう思った直後、近くの木から1つの影が目の前に降りてくる。

 追っ手かとも思ったがむしろその逆、知っている人で彼らの仲間の人物──薬師 カブトさんだ。

 

「──すまない遅くなった、状況は?」

「水で冷やす程度じゃどうにもならねぇ! このままじゃ……」

「……一番近くのアジトへ急ぎましょう大蛇丸様。すぐに薬を用意します」

「……えぇ、急ぐわよ」

 

 応急処置ではどうにもならないと判断したのだろう。

 依然として苦しみ続ける自身の上司の身を案じない様にも聞こえる言葉だがそれが最適な処置なのだとその場の皆が理解しているようだ。

 大蛇丸さんからも反論はなく、皆すぐに移動の準備を整える。

 

 準備の一環で今度は鬼童丸さんが作った蜘蛛の糸に縛られた状態で棺桶に叩き込まれた。──あんまりではないだろうか? 

 懐に隠した刀で切って作業に戻ろうかとも考えたが先程造血丸やら包帯やら色々お世話になった手前また流血沙汰を起こすのは忍びない……残念だが大人しくしているしかないだろう。

 

 

 ……

 

 ……

 

 …………

 

 

 

「起きろクソ女ァ!!」

「っ!! …何事?」

「テメェ俺に運ばせといて居眠りとはいい身分だな、えぇ!?」

「実は暫く刀造りで寝てなかったもので…おかげ様でスッキリしました。ありがとうございます…ところでここはどこですか?」

「放せ次郎坊! 一発ぶん殴ってやらねぇと俺の気が済まねぇ!!」

「気持ちは分かるが大蛇丸様が招いた奴だ、下手な事は出来ねぇから落ち着け」

 

 見慣れない木造の室内、恐らくここが彼らの言っていたアジトなのだろう。

 蝋燭の僅かな灯りに照らされた薄暗い部屋はどうにも薄気味悪い印象を受けるが、それより問題はここがどの辺りに存在するのかだ。そう思って尋ねてみれば左近さんは青筋を浮かべ、次郎坊さんに羽交い絞めされてしまった。

 

「……なんで大蛇丸様はあんな奴を…」

「というか縛られて棺桶に突っ込まれんのに爆睡するとかどんな心臓ぜよ…」

「慣れると揺り籠みたいなものでしたよ?」

「「うおっ!?」」

 

 離れたところにいた残りの二人組に声をかければ未確認生物に遭遇した様な反応をされた…何故? 

 まぁいい、とにかく今はこの場の情報を…。

 

「──おや、随分と盛り上がっているようだね」

「あ、カブトさん」

「おい! 大蛇丸様は!?」

 

 背後の扉が開き入ってきたカブトさんに四人が詰め寄る。本当に大蛇丸さんは慕われているらしいとその必死な様子から伺い知れる。

 

 カブトさんは冷静に一度眼鏡の位置を指で整えると率直に告げる。

 

「今のところは鎮痛剤で落ち着いた。とは言えこれ以上酷くなると薬のレベルを相当上げないとダメだ。…正直言って油断は出来ない。──君達には改めて指示を出すことになると思うがひとまず今日は解散だ。休んでくれ」

「くそ…あのジジイめ、よくも…」

「とにかく封印術である以上それを解く方法を調べねぇと…」

 

 口々に言い合いを繰り広げながら四人は部屋から出て行った。その為、部屋には私とカブトさんだけが残った。

 

「……お久しぶり…です」

「あぁ久しぶりだね、大体1ヶ月振りか。まったく、あの場に君が紛れ込んでいるのを見た時は驚いたよ」

「……別に好きで紛れ込んだ訳じゃない」

 

 誰が好き好んであんな場所に居合わせるというのか、勿論結果として大きな収穫もあって大満足しているのだが、それはそれとして私が自分の意思であんな危険地帯にいたと思われるのは些か納得いかない。

 

「それはすまない。…さて、これからの話だが、君は大蛇丸様の下で働く…いや、君の感覚で言えば音隠れ所属の刀匠になるという認識で正しいかな?」

「はい…砂隠れでの当初の目的も果たしたので扱いはともかく刀の知識があるハレ…大蛇丸さんの下で働きたいと思います」

 

『屍鬼封尽』について知りたいと言うのは避けた。

 勿論、協力して頂けるのであれば心強いが、何せ彼らにとってもあれは未知の術であり、更には今まさにそれに苦しめられているのだ。

 それを手に入れようとしている意思を見せれば場合によっては本当に殺される可能性だってある、ならば黙っておくのが得策だろう。

 

 とにかくこの音隠れの里に入れて頂き『屍鬼封尽』の情報を集める、そしてこっそりと砂の里へ戻るのが一番だ。

 見知らぬ環境だが砂の里とは同盟を結んでいる里だ、深く考える事もないだろう。

 タイミングとしては砂の里からの言いつけを破った事のほとぼりが冷めた頃が望ましい、とはいえ情報集めも長期戦覚悟なんだ、音隠れの里を抜ける頃には自然と風化している可能性も十分ある。

 

 

 ――あぁなんだ!今の状況は何もかも私の理想通りではないか!

 

 

 そんな脳内の完璧な計画に従いカブトさんの言葉に同意を示すと彼は一度頷くと口を開く。

 

「そうか、なら早速君の仕事場を用意するよ。その間にこのアジトを案内しよう」

「ありがとうございます…でも仕事場の用意の方を手伝わせて頂くことはできませんか? 可能であれば自分好みの配置にしたいです」

「なるほど。確かにそれはそうだろうね、分かった、着いてきてくれ」

 

 そうして部屋を出るカブトさんの後をついて行く。

 薄暗い廊下を歩くと途中いくつもの鉄格子とそこに入れらた多くの人間の姿が目に入る。

 …これ程の人数、警務の方々がどれ程有能なのかが伺い知れるというものだ、音隠れの里というのはあまり聞いたことのない里だったが随分と治安が良いのかも知れない…いや待て、これ程捕まえる必要がある人物が多いのはむしろ治安が悪いのでは…。

 

「……カブトさん、あの人達は?」

「ん? …あぁ、そうだね。…もしも君の刀造りで彼らを好きに使って良いと言ったら君はどうする?」

「…………。歓喜のあまりカブトさんに抱き着くかもしれません」

「やめてね…ほんとに」

 

 若干カブトさんから距離をとられた。あまりに理不尽だ……言い出したのはそっちだろう。

 

 そういえばずっと昔に霧の里にいた頃に甘い言葉で誘われたけどいざという時突き放されそうで怖いと男性の写真を眺めながら呟いていた綺麗なお姉さんがいたがカブトさんもそういうタイプの男性なのだろうか? 

 …そういえばあのお姉さんは結局その男性とはどうなったのだろうか? …そもそもあのお姉さんは誰だったのだろうか、あれから会っていないのだが、何だろう…何か引っ掛かる感覚がある。

 それに不安ならばと口ではなく刀身で語る方は如何ですか? と紹介した刀とは上手く付き合えているのだろうか? 幼いながらに造った自信作だった事もあって円満な関係を築いていてくれると私も嬉しいのだが…。

 

「……あの、難しい顔をしてどうかしたかい?」

「男性と女性の関係性について少し考えていた」

「変な事を言ってすまない、早く忘れてくれ!」

「……はい?」

 

 カブトさんの顔が青ざめた。

 急にどうしたのだろうか? …変わった人だ。

 

 早歩きになったカブトさんの後を追い少し小走りに廊下を歩く。

 ハレンチ博士やカブトさんなど変わった人の多い環境の様だがここが新しい私の仕事場になるのだろう。

 砂の里で漸く築けた環境からまた見知らぬ場所にリセットするというのは煩わしさも感じるがやはりそれ以上に胸が高鳴るのを実感する。

 

 あぁ、ここは一体どれ程私の創作意欲を搔き立ててくれるのだろう。

 霧の里を抜けた時と同じ、いやそれ以上の高揚感だ。

 何せ今まで望み続けた新しい忍刀に相応しい存在にここならきっと手が届くのだ……楽しくて楽しくて楽しくて仕方がない。

 

 早く大蛇丸さんには動き出して多くの情報を集めて頂かなければ……どうか早く良くなって欲しいものだ、そう思いながらカブトさんに案内された場で後に私の鍛冶場となる空間の整備に勤しむのだった。




という訳でだいぶ予想通りと思いますが無事ハレンチ博士の下へ転属を果たしました。
材料、実験体共に充実している技術者にとっては最高の契約先であることは間違いなし。

順風満帆そうですがかなり綱渡りの道のりでした。
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