霧隠れの狂人   作:殻栗イガ

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消えるもの 残るもの

 サスケ君に閉じ込められてから暫くした後、突然地爆天星の内側の核部分が斬り裂かれ引力を失った外壁が崩壊した事で地上に帰還する。

 

 閉じ込められた時は朝日が昇り始めた頃だったはずだが気が付けば夕日へと変わっていた。

 それ程長く、今なお続く激闘が遠くで繰り広げられているのを忍の皆が感じ取り、戦争の疲弊さえも忘れて結果を待ち続けている様子だった。

 

 それはともかく、空間を超えて地爆天星の核部分を破壊した水月へと頭を下げる。

 

「ありがとう、助かった。けど、良いの? 水月は一応、サスケ君のターゲットではないみたいだけど?」

「別にサスケの事は嫌いじゃないけど革命なんて付き合う義理ないっての」

「ふぅん」

 

 実際、尾獣達をそのままにしている辺りサスケ君のやり方を邪魔するつもりはないのだろうが…それでも私を助けたらサスケ君から敵と見做される事に変わりはないと思うのだが…

 

「…それにしても、私が閉じ込められている間に皆さんこの場から離脱したと思っていましたが…」

 

 今サスケ君はハレンチ博士達を殺すか否かでナルト君と戦っているし、ナルト君が勝ってサスケ君が自分の意見を下げたとしてもナルト君がハレンチ博士達を許すかは別問題だ。

 

 どちらが勝ってもこの場は逃げた方が良いと判断すると思って内心焦っていたので全員がここに留まっているのは正直少し驚いた。

 

「それは水月次第ね」

「え? ボク?」

「その刀さえあれば逃げる事も、捕まえる事も容易い…そして貴方は私達と違ってまだ霧隠れの里へ戻る道もある…結局のところ、貴方が私達と忍連合…どちらに着くか次第なのよ」

 

 それは奇しくもメイ様に持ち掛けられた提案と同じ事だった。

 戦争が終わった時に私が忍連合に投降すれば刀造りの環境を提供し、水月を霧の忍へと復帰させる…つまりハレンチ博士達と手を切れという要求。

 だがそれは確かに私と水月にとっては温情だが、その為にはハレンチ博士達を裏切る事に…

 

「そりゃボクからすればアンタらみたいなヤバい連中と縁を切れて霧隠れに帰れるなら万々歳なんだけど」

「はっきり言いやがるな」

「とんだ隊長がいたものだな」

「絶対アンタらボクの事隊長と思ってないだろ!?」

 

 まさかの裏切る事を即断した水月とサソリさんと角都が言い争いを始めてしまった…しかし水月も実際には霧隠れの里に戻って適当な誰かと組むよりも皆と一緒に居る事を望んでいるのは彼の無限月読で知っている、そしてそれを叶える為の仕掛けはしてある…だから──

 

「皆さん…確実、とは言えませんが私達が無事で済む策を打ってあります…だから、私を信じて今はこの場に留まってもらえませんか?」

「なんだと!?」

「くそ、俺とした事が忍連合以外の脅威を見落としていたか…」

「大蛇丸様…いっそ忍連合への降伏も視野に入れた方がよろしいかと…」

「一考の余地はあるわね」

 

 どうして!? 全く関わりのない忍連合の皆さんは私を信じてカグヤさんに立ち向かってくれたのになんで肝心の皆さんがこうも拒否反応を示すんだ。

 あまりの信用の無さに絶句する。

 

「……流石に信用しなさ過ぎては?」

「君磨呂、念の為言っとくけど君はアイツの良い印象早い内に捨てといた方が良いよ?」

 

 水月も水月で唯一味方になってくれそうな君磨呂さんに良からぬ事を吹き込んでいる、確かに真っ当な手段とは口が裂けても言えないが決して可能性が低いわけではないのに…

 

「──まぁ、何をしたのかは知らないけれど…私としては"新生・忍刀七人衆"、出来る事なら続けたいとは思っているわ」

「え?」

 

 折れかけていた心がハレンチ博士の思わぬ言葉に蘇り勢い良く顔を上げる。

 

「…どういう風の吹き回しだよ」

「言葉通りの意味よ水月…これでも案外気に入っているのよ貴方達を…」

「ハレンチ博士!」

 

 散々迷惑を掛けたり、無限月読の中に入って三代目火影様に後継者、四代目火影に認められた上でその座を自来也さんに押し付けて火影直轄"忍術開発部隊"として同志達と交流しながら悠々自適に忍術開発して時折カブトさんやサスケ君といった優秀な子供を拾ったりしているところを見てしまったりしたのにそんな風に思ってくれていたなんて…。

 

拾った子供の中に私もいたから何だかんだで気に入って貰えているんだなぁって嬉しくなっていたけど実際に言葉にされると更に嬉しい!

 

「村雨…何か余計な事考えていないかしら?」

「いえ、何も!」

「………そう、なら良いけど」

 

 怖い…無限月読で見たものは早く忘れた方が良さそうだ。

 

「それで…忍刀七人衆について詳しく聞きたいのだけど」

「はい、何でもお答えします」

「確か七人衆のメンバーが死ぬか引退する時その刀は別の者に引き継ぐのよね?」

「その通りです、七人衆の刀は代々引き継がれるシステムとなっています」

「なら水月…貴方のその刀は強力過ぎて確実に後継者争いになると見て良いわ…その点私は不死、後継者としてこれ程安心できる人間はいないと思うのだけど…どうかしら?」

「それが目的だろアンタ! 前置きが長いし回りくどいよ!?」

 

 いや、確かにハレンチ博士にそういう目的があった上での発言だったのはちょっと残念だが実際後継者問題を今の内に払拭できるのは悪くない提案だ。

 

「待て、大蛇丸…そういう事なら俺も不死だ」

「奇遇だな、俺も不死だ…しかも他者の身体や心臓を必要とするお前らと違ってより完全な形でな」

「…ボクも穢土転生の身である以上不死と言えるのでしょうか?」

「何で7人中4人がまともな命じゃないんだよ!? 普通に死ぬ方が少数派ってどうなってんのこの部隊は!?」

 

 どうしよう、後継者問題が今起こってしまった。

 このままでは連合の行動を待たずして自分達で殺し合いに発展するのでは…

 

「てかアンタら仮にボクが後継者に指名したら刀手に入れる為にボクを殺す気じゃないだろうね!?」

「……」

「……」

「……」

「せめて嘘でも否定しろよ! 言っとくけど今ならこの刀でアンタら全員ぶっ殺す事も出来──え?」

 

 不穏な気配に"終刀・真月"を構えた水月が突然戸惑った声を出して何かあったのか視線を向けると彼が握る刀から光る粒子がちらちらと空へと舞い上がり──その代わりにその刀から感じる存在感を徐々に薄れさせていた。

 

「ッ!? これは──そう…無限月読が完全に解けた事で"終刀・真月"は…この世界で存在出来なくなったんだ」

 

 ナルト君とサスケ君との戦いが決着がついて、彼らが術を解いたのだろう。

 気が付けば遠くに見えていた人々を縛っていた神樹がゆっくりと倒れていく──きっとこれで皆解放されるのだろう、それ自体は良い事だ。

 

 しかし無限月読の中で生まれた刀はその根源を失った事で存在出来なくなる…考えてみれば当然の結果だったのかもしれない。

 

「…期間限定だった、という事かな…残念だったね村雨」

 

 カブトさんは精一杯気を使ってくれたのだろう、優しく肩を叩いてくれるが──

 

「…念の為聞くけど、無限月読…もう一回起こしてやろうとか考えてないよね?」

 

 別に優しくはなかった…ただ恐る恐る確認しているだけだった。

 

「うぅん…大丈夫。それにまた無限月読が起こっても多分私はもう"終刀・真月"を造る事は出来ないから」

 

 あの刀は私だけでなく偽雨の心を宿らせなくては造れない…しかし、私はもう私の複製体である彼女の存在を望む事が出来ない──だから、仮に無限月読がまた起きても二度と造る事は出来ないんだ。

 水月の手に重なる様にして"終刀・真月"を握り随分と軽くなってしまったその存在を手に感じる。

 

「あの子がいた証がこの世から無くなるのだけは…少し悲しいけれど、一緒に造った記憶も経験も私の中に刻まれている…だからこれで良いんです」

 

 心からの想いを言い終えた時、"終刀・真月"は完全にこの世から消滅した、その粒子さえも消えたのを見届けて水月の手から手を放す。

 

「ごめんね水月、折角の刀だったのに」

「まぁ、別にいいさ。これで後継者争いがなくなるし…それに、どうせ君ならその内もっとヤバいもん造るでしょ?」

「え?」

「あ…そういえば、アレはこの先君が造る作品含めても最強の刀なんだっけ? まぁ無限月読の中で造ったんてんだからそりゃそうか…」

 

 まぁ無限月読という特殊な環境もそうだが…アレが造れたのは偽雨の力もあったからで…だから水月に渡す時にはそう言ったのだが──

 

「うん…勿論」

 

 そんな事情など知らず、ただ私の技術の進化を信じて更に至高の刀を造ると信じてくれるのがただ嬉しくて恥ずかしい程に笑ってしまう。

 

 ──それに、実際"終刀・真月"を超える作品を造る…その案はもうあるのだから

 

「水月、あまり言いたくはないけど…そういう事を言うから村雨の作品がますます過激になるんじゃないかな」

「え!?」

「試作品はお前が責任もって検査しろよ」

「完成品が出来たら教えて頂戴」

 

 うん? 

 少し考え事をしている間に何か水月が責められている? 

 

 ほんの僅かな時間に何があったのかと疑問に思うが皆の意識が水月に向いているのなら丁度良い。

 忍連合軍の皆さんも無限月読が解除され、世界が救われた事で漸く緊張が解けたのだろう周りの人達と笑い合ったり抱き合ったり共に涙を流したり…やっと気が緩んでくれた様だ。

 

 "ぬのぼこの剣"の破片を回収をした時は皆がオビトさんとチャクラの綱引きをやっている…戦いの最中だから目立ってしまったがもうそんなミスはしない。

 地爆天星から逃れる瞬間が一番良かったが…戦争に勝利し平和を取り戻したのを実感したこの瞬間なら──アレを拾える。

 

 何故か責め立てられている水月を放置するのは申し訳ないが水化の術で液体化した身体を瓦礫で隠しながらこっそりと目的のモノへと忍び寄り…掴み取る。

 

 

 

 "終刀・真月"によって斬り落とされた大筒木カグヤさんの左腕

 

 

 

 チャクラの祖であり輪廻眼、写輪眼、白眼を持ち、六道の力を取り込んだ"終刀・真月"と同じ能力を使った彼女の細胞は一体どれ程の価値があり、この素材から得られる力を完全に引き出せたとしたら…一体どんな作品が造れるというのだろう? 

 

 "終刀・真月"を失ったのは悲しい…だが、今それを超える作品を生み出す可能性を手にしたのが嬉しくてまた恥ずかしい程に笑ってしまう。

 しかし喜んでばかりもいられない、忍連合の人に見つかったら面倒な事になるのは勿論ハレンチ博士やサソリさんもきっと欲しがる…気付かれる前に早く回収しておこう。

 

「──そうはさせん」

「ッ!?」

 

 暁の衣装の内側にカグヤさんの左腕を隠そうとした瞬間に地面から舞い上がった砂の塊に腕を掴まれる。

 砂を操る術…その使い手など1人しかおらず一体誰が邪魔をしたのかなど考えるまでもない事だった。

 

「…我愛羅君」

「今回は助けられたが…そんな素材をお前が使えばどんな結果を招くか分からない…その左腕はこの場で処理させてもらう」

「さっきカンクロウとテマリさんと一緒に砂の忍に囲まれていたのを確認したんだけど」

 

 念の為に私がこういう事をするのを気付きそうな人は注意したつもりだった。

 だが綱手様もメイ様も影という立場もあって色んな人に囲まれていた…我愛羅君もそれは同様で姉と兄と一緒に対応しているのはしっかりと確認したのにどうして…

 

「アレは偽者だ…世界中で無限月読が解けた報告が入った瞬間、カンクロウにカラスを俺に変化させる様に頼んだ。皆が気が緩んだこの瞬間にお前が何かする気がしてな」

 

 まさかカラスに変化の能力があったとは! 仕込みにしか興味が無くてまったく知らなかった! 

 

 そんな後悔をしている間に腕に纏わり付く砂の圧力が僅かに強くなる──だがまだ相当手加減している方だ…我愛羅君が本気になれば確実に骨が砕け腕が潰れる。

 

 どうか抜け出そうにも水化の術を使ったところで砂に身体が吸われてしまうだけ…自力での脱出は不可能、ハレンチ博士達には頼れない…だったら──

 

「我愛羅君、この状況は良くない…事実はどうであれ風影の我愛羅君が率先して戦利品の確保に動いたと思われたら連合の今後の結束に大きく響く…砂隠れが途端に嫌われ者になってしまうと思う」

「そうだな──だから、その場合は俺を牢に入れる様にカンクロウとテマリに頼んでおた。生憎絶対防御は健在で処刑を受け入れる事は出来ないが…昔ある老僧が入れられていた丁度良い牢屋がある、自里の利益を求めて部下にも知らせずに勝手に動いた罰として一生をそこで過ごすとしよう」

「……凄い覚悟」

 

 まさかそこまでして止めにくるとは…カンクロウとテマリさんもとんでもない頼みをされていて良く表情を隠したものだ。

 

 さて…どうしたものか。

 確実に腕は潰される──だが、その悲鳴で多くの忍がこちらを向く。

 その瞬間に逃げられるかが問題だが…偶然にもカグヤさんとの戦いで多くの忍からの信頼が得られた今ならきっと何人かは我愛羅君を止めに動くはず。

 勿論メイ様や綱手様は私の捕縛、あるいはその場で処刑に踏み切るかもしれないが、それが攻撃をしている我愛羅君を一先ず止めようとする人達とどれ程の混乱になるかは未知…潰れる腕も治す手段はきっとあるはずだ。

 

 だったらやる価値は充分ある! 

 

「確かに、砂の忍が我愛羅君の始末を付けたと判断されたら許されるかもしれない…だけど、今この一瞬だけ混乱を起こす事を防ぐ事は出来ない。悪いとは思う…それでも私の腕を壊されようとも、我愛羅君が風影の地位を失って一生牢に入る事になろうとも…私はコレを譲る気はない!」

「だろうな。例え無限月読を解いた救世主になろうとも…皆を導いた英雄となろうとも…刀を造り続ける限り村雨がブレたりする事はない…それがお前の事を誰よりも知る者からの、最後の言伝だ」

 

 ……え? 

 

 私の事を誰よりも知る? 

 水月が我愛羅君にそんな事を話すだろうか? 戦争の最中に話をする時間は多少あったかもしれないがそんな内容の会話をするとは思えない…ハレンチ博士も同様だ。

 

 戦争の前に父にでも会いに行ったとか? 

 …いや、流石にそれはないだろう。

 確かに開戦前の段階では私達は忍連合からしたら敵として認識されていた…敵の情報を得ようと身内に調査する事はあるかもしれないがそれならメイ様がやれば良い。

 

 では一体誰の事を…そもそも最後の言伝という事はその人物は既に死んで──

 

「あ…」

 

 1人だけ…その可能性がある人物を思い出して思わず声を漏らす。

 私の事を誰よりも知る、もう1人の私の事を…

 

「──置き去りしたつもりだったのに…先回りされちゃってたんだ」

 

 利用して踏み躙ったと相手に最後の最後で刺されるなんて…悔しいし腹立たしいはずなのに、不思議とどこか嬉しかった。

 

「…良かったね、偽雨」

 

 あの子の言葉を覚えていてくれた人がいる。

 それは彼女が確かにいた証であり、私以外に彼女を彼女として認識してくれた人がいる事が嬉しくて思わずそう呟いて──カグヤさんの左腕を手放した。

 

「意外だな…お前が誰かに道を譲るとは。案外…お前も変わっていたのか?」

「譲ってなんかない。──負けただけ」

「フ…そうか」

 

 こんな素材を前にして私が妥協や譲歩なんてするはずがない。

 だからこれはそんな理由じゃない、ただ私より上手の人物に先を越されて手に入らなかっただけなんだ…そんな風に強がってみるが我愛羅君には見透かされた様に笑われる。

 

 それが何となく不満で彼から視線を外して──多くの人が目に映る。

 笑い合って…泣き合って…支え合う忍達だ。

 そんなもの、カグヤさんの左腕を手に入れる為に全部ちゃんと見ていたはずなのに…

 

「でも…この光景を台無しにせずに済んだのは…良かったかも」

「ああ…そうだな」

 

 忍連合軍約8万人で造り上げた勝利の光景…もしも私が我愛羅君を悪者にしていたらこの光景はその瞬間に崩れ去っていただろう。

 そう思うとこの結果も…まぁ、悪くないと思えた。

 

 

 問題は結局この先どうするかだが…

 "終刀・真月"が失われて一番良い逃走手段が無い事に変わりはない…おまけに目的は別だがすぐ隣に我愛羅君が来てしまったせいで逃げる事も極めて困難になってしまった。

 

 自力で逃げる事は不可能…しかし以前持ち掛けられたメイ様の交渉に応じる訳にもいかない…

 絶望的な状況である…だが無限月読が解けたという事はまったく期待されていない私の策が上手くいっていればそろそろ連絡がある頃だろうか? 

 

 

 

 …だんだん不安になってきた、大丈夫かな? 

 

 個人的には上手くいくと思っているが、いざそれに縋るとなると急に不安になってきた。

 果たしてどうなるか…固唾を呑んで祈っていると各地から無限月読が解放された報告が集まり喜んでいた五影の皆さんが急に困惑の表情を浮かべ出した。

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

 

 水影メイはカグヤとの激闘を終えうずまきナルトとうちはサスケの決闘の結果を待ち続ける間、自分の下へ集まりサスケが勝利した時に備えて避難すべきと言う自里の忍達を宥めながらもずっと村雨と水月の動向を見守っていた。

 

 その途中、水月の手に握られていた戦争の勝利に大きく貢献した刀"終刀・真月"が消滅しているのが見えて彼女がまた何かするのではないかと警戒するが意外な事に村雨はその刀の散っていく姿を少しだけ寂しそうにしながらも笑って見守った。

 

 自分の作品が消えていくのを受け入れる彼女らしかぬ様子に目を疑うがその直後、この場にいない長十郎から無限月読から解放されたという報告が入り、霧の里に残してきた僅かな忍達からも同様の報告が届く。

 

 木ノ葉、砂、雲、岩…他の影達も同様の知らせがあったらしくナルトとサスケが戦いの果てに無限月読を解除したのだと理解する。

 村雨達の件はまだ残るがこれで第四次忍界大戦そのものは終結した。

 

 後はナルトとサスケ…果たしてどちらが勝ったのか。

 その結果次第では更なる戦いを覚悟するが、青、そして日向一族達からナルトの勝利が告げられ皆が歓声を上げる。

 

 これで本当の意味で戦いは終わった、そして2人の救世主の内の1人と望まぬ戦いをしなくて済んだ…それらに安堵し周囲の忍達へ労いの言葉を掛けていく。

 

 歓喜し、涙する部下達全員、1人1人の顔を確認し…この戦場にいたはずなのにこの場にいない──戦死者達を1人1人思い出す。

 生き残った者と死した者、どちらとも決して忘れない様に己の記憶に刻み込む様に皆を見渡したメイの視界に元暁のメンバーに囲まれ責め立てられる水月の姿が目に入る。

 

 一体何があったのか気にはなるが、それ以上に彼らの傍からいつの間にか村雨がいなくなった事に気が付いて嫌な予感に周囲を見渡す。──そしてカグヤに封印術を施した位置の近く、瓦礫の山が最も多いその場所に風影様の砂に右腕を捕らえれた村雨を見つけ、その砂に覆われた彼女の右手に斬り落とされた大筒木カグヤの左腕が握られている事に気付く。

 

(しまった!)

 

 自らの油断、欲望に忠実過ぎる彼女らしかぬ皆の気が緩んだ瞬間を正確に見極めた行動…そしてそれの対処を風影様にさせてしまっていること、それら全てに歯噛みする。

 

 "終刀・真月"が消えるのを受け入れたのを見て、出来る事ならばこのまま正しい道に引き返す事を選んで欲しいと願った。

 以前に彼女に持ち掛けた取引に応じるのならそれでも良かった、もしも仲間である元暁のメンバーを裏切れないと言うのなら…今回の戦争での貢献を踏まえて他の影達との交渉の場を用意しようとも考えた。

 

 だがあの様子からして恐らく村雨は他の仲間にも黙って大筒木カグヤの力を得ようとしている。

 

 残念だけど、やはり彼女は変わらない。

 ならば里長として混乱を振りまく者を冷徹に処断する覚悟を決める。

 

 彼女を処刑しようとしたうちはサスケは勿論、うずまきナルトにも任せない。

 そして当然、他里の長である我愛羅に謂れの無い悪名など与える訳にはいかない、それは彼女を"狂人"へと導いた霧隠れの里の、その長である自分の役目だと周囲の忍を飛び越えようと両足にチャクラを巡らせる。

 

 しかし、その瞬間…村雨の手からカグヤの腕が滑り落ちた。

 

「嘘…」

 

 彼女が命を惜しみ、臆するような人間でないことはよく知っている。

 だからこそ諦めた様に笑って、それもどこか嬉しそうに周囲の忍を見渡す姿が信じられなかった。

 

 我愛羅が説得に成功したのか、それともカグヤの腕を捨てる代わりに余程無茶な条件の取引をしたのか…様々な可能性を考えるも今の村雨の表情とは結びつかず、とにかく村雨と我愛羅の下に合流しようと目の前の忍達に道を開けさせる。

 

 

 ──不意に長十郎から五影と五影会談に参加していた一部上忍に対して更なる報告が入る。

 

 彼が護衛を務めていた大名達から一体何をされていたのか説明を求められ、簡潔に説明をしたという内容だ。

 

 それ自体は問題なかった。

 元々大名達には"月の眼計画"についての情報は伏せ、暁という組織が尾獣の力を利用し戦争を行うという名目で匿わせてもらっていた。

 

 だが実際に無限月読が起こり、大名含め世界中の人間が当事者となった以上説明責任は果たさなくてはならない。

 その場合には長十郎達大名護衛の部隊が説明できる状況だったならば隠さず伝えることは連合軍で事前に決めていた。

 

 問題はそこからだ。

 術に掛けられた者が望む理想の世界に全ての人間が永遠に閉じ込められるという"無限月読の詳細を知った水大名が突然鬼灯水月について詳しい情報を周囲の忍から聞いた後に耳を疑う決断を下した。

 

 

 鬼灯水月の仲間として忍連合軍に協力した者達の罪を許し水の国へと迎え入れる。

 そして、もしも彼らが再び罪を犯す事があれば責任として自身の大名の地位を捨てるという決断を。

 

 

 それは自里の忍に対して不信感を抱いている節がある水大名からは到底考えられない発言であり、その事を常日頃から憂いていたメイと青は勿論、報告を受け取った他の影達も大名が突然罪人達を庇う意思を示したことにただただ困惑した。

 

 しかし、『国と忍が強固な信頼を築くことが私の理想だと今になって分かった、その為にまずは私が彼らの善性を信じよう』という"自らの理想"を語る水大名の主張に五影の全員が嫌な予感がして導かれる様に自分達の様子をハラハラと観察している犯人と思わしき人物へと振り向き──自分達の真っ青になった顔をジッと見つめて企みが上手くいったのを確信し小さく拳を握る村雨の姿が見えた。

 

 

 

((こいつやりやがったな!?))

 

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