村雨はアジトの廊下で行き倒れていた。
「…おかしい、頭がボーっとする」
何だか頭の回転が働かない気がする。確かに鍛冶場は全壊している為、刀造りは出来ないがつい先程念願の屍鬼封尽の情報を握ったばかりだというのに…木ノ葉の里への入り方やうずまき一族の協力者の確保、その他諸々…今後の計画を考えるべきことは多い、もっと気合を入れねば…
ひんやりとして少し気持ち良い環境で頭を冷やしながら回転させていると何だか全身の方も冷えてきた気がする…少し前に謎の紋様を浮かべた男性に殴られて頭から血を流している事と関係があるのかもしれない。
「あの…そんなところで何をしているんだい?」
「あ…カブトさん。ハレンチ博士は大丈夫なのですか?」
「あまり良くはないから新しく薬を取りに行くところだったんだけど…君の方が大丈夫なのかい?」
「頭が少しおかしい気がします」
「知ってる…じゃなかった、出血が酷いから早く処置しなければ本当に死んでしまうよ」
それほどとは…というか今カブトさん今何やらおかしな反応をしなかっただろうか?
…いや、医療に詳しいカブトさんだ。私自身でも気付けないことでも見ただけで分かっていた可能性もある、変に疑うのは良くない…それよりも──
「死ぬのは困る…助けて下さい」
折角、屍鬼封尽の情報を得たというのに死んでしまっては意味がないにもほどがある、ここは素直にカブトさんに救いを求めよう。
その後は忙しいからと医療忍術による応急手当と包帯を手早く巻いて頂いて自室に戻る。
医療忍術も包帯を巻くのも高度な技術が要求されるというのに一瞬で行って頂けるとは…カブトさんは本当に凄い、私など包帯を巻こうとしても大抵絡まって巻く事自体出来ないか辛うじてミイラが出来るかの二択だというのに…。
……そういえばカブトさんにアジトの一部を壊してしまったことを相談しておいた方が良かったかもしれない。あまり後にすると先にバレた時が怖い……そうだ! 水月や四人衆の方々が迎えに行っているというサスケ君が無事に到着したらその時にそれとなく話そう。怒られる話は相手が上機嫌の時に話すに限る。
思えば最近怒られる事とその弁明の事ばかり考えている気がする、屍鬼封尽の情報も手に入ったことだし暫くは大人しくしておいた方が良いのかもしれないが…多分無理だからやめておこう。中途半端な行動は逆に失敗に繋がるものだ、念願の情報を得られたからこそ冷静に動く必要がある…むしろ鍛冶場の修理が完了次第少し意識して派手な行動をとった方が良いのだろうか?
「…何にしても鍛冶場の修理待ち…とりあえず死神の刀を得た際にどの様な刀が理想か考えよう」
…あれ? そういえば実際に屍鬼封尽を見た後、ハレンチ博士達に連れられている時にそういった諸々をとにかく書き殴った設計図を造った様な…しまった、失くしてしまったか。あれはどこに置いてしまったのだろうか。
…というかあの時は紙も無かったから別のものに書いたような…アレは確か…
「………あ!」
▼▼▼
木ノ葉の里を抜けた森の中音の四人衆は足を止め、ここまで連れ出したサスケを囲み自分達の長である大蛇丸から命じられたもう一つの指令を遂行する。
呪印の覚醒を状態1から状態2へと促進させる特殊な丸薬…本来ならばその急激な覚醒の負担で使用者は死に至るがそれを四人衆の結界忍術で死から仮死へと段階を和らげた上でうちはサスケにその身に宿った呪印との適合率を上げさせる…それがもう一つの指令だった。
死のリスクに戸惑いながらもうちはイタチへの復讐という目的の為、サスケはその丸薬を口をするのを唯一指令に一切関わりのない水月は良くやるねーと半ば呆れつつ眺めていた。
「く!? …うぅ…」
「おいお前ら、チンタラしてるとサスケ様にコロっと逝かれ──何!?」
強力な丸薬に胸を抑えて苦しみ出したサスケに対し、左近が棺桶らしきものを口寄せするのもただただボーっと眺めていたが…突然左近が驚愕に目を見開いたのを見て流石に何かあったのかと思えば──
「オイこの棺桶に血で落書きしたの誰だ!?」
「は!? いやその棺桶はいつもお前の巻物に収納してるやつぜよ? 落書きなんざ誰も出来るわけが…あっ!?」
「そういえば…木ノ葉崩しの時にあの女を連れて帰る時に入れて…」
「このクソヤローが!? 何で事前にちゃんと確認してねェんだバカ!?」
「うるせぇ! あの女のせいでそれどころじゃなかったんだよ!!」
「おい、んなことよりサスケ様がヤバいぜよ! 顔色が青くなってきた…冗談じゃなく死ぬぜよ!!」
「えぇ…?」
君ら何してんの? と本気で戸惑うも地面に膝を着いて呻いているサスケを見てマジで死ぬやつだコレ…と察し、その元凶が不本意ながらも自分の関係者であるということに若干の罪悪感を覚えて四人衆の動向を見守る。
「どうするぜよ!? サスケ様もう薬飲んじまったぜよ! このままじゃ──」
「クソ! 所詮棺桶なんざただの入れ物だ、このまま続行するぞ!」
「正気か!? いや、確かにそうする以外ないが…だがこの落書き、明らかに何かの設計図の様な…」
「知るか! いいから位置に着いて始めろ!!」
半ばやけくそ気味に叫びながらサスケを棺桶に押し込んだ左近の勢いに圧され、他の四人衆のメンバーがそれぞれの配置に着いて印を結ぶ。
「「「「四黒霧陣」」」」
黒い霧が立ち込め、それが急激に棺桶の中へと吸い込まれ棺桶の中で眠るサスケを包み込んでいく。
やがて棺桶の中が黒い霧で満たされると左近が封印札に素早く血で術式を刻んで棺桶を蓋する。
「………あのさぁ…」
「…良し、一段落だぜ」
「いや何も一段落してないでしょ!?」
何で一仕事終えた感出してんだこいつは!?
明らかに投げやりでサスケを棺桶に突っ込んだが本当にこれは大丈夫なのか?
「うるせぇ! 薬を飲まれた後じゃどうしようもねぇんだよ! もう…もう賭けるしかねぇんだよ…」
「何で早くもそんなギャンブルに…」
「そうだ、落ち着くぜよ左近。今まで"天の呪印"を"状態2"まで覚醒させた奴はいねぇ、なら大蛇丸様だってサスケ様の"状態2"がどういう形態になるのかまでは知らねぇはずぜよ」
「つまり…サスケ様が生きてさえいてくれたら問題ねぇってことか」
「いや、それはちょっと違うんじゃないかな? 君らもしかしなくても村雨の奴に毒されたな!?」
どう考えてもこの状態は大問題だ…だというのに逆ギレしたり開き直ったり…酷い有様だ。
挙句の果てには元々は大蛇丸に絶対の忠誠を誓っていたこいつらが大蛇丸の認知外の事だからといって隠蔽を企む辺り本格的に歪んでしまっている…あのバカ一体この短い期間に何してくれたんだ…。
…まぁ、結界忍術だの呪印だのは専門外、あの棺桶もただの入れ物って話だし実際彼らの言う通り問題はないのかもしれない。…だが。
「絶対なんか碌な事にならない気がする…」
大体あのバカが関わった時点で平和に済んだ事の方が少ない…いやもう皆無と良い。
嫌な予感に気を重くしながら現実逃避とやけくそでおかしくなってしまった四人衆に続いて森の中を移動するのだった。
その後は任務からの帰還途中らしき木ノ葉の上忍と遭遇するというトラブルに見舞われたが何とか切り抜ける事が出来た。…大蛇丸から教えられた木ノ葉の忍のデータにもあった元4代目火影の護衛小隊の連中だけあって中々手を焼かされたが相手がチャクラ切れ寸前だったこともあり無事に勝利することが出来た。
…それにしても、まさかうちはサスケを連れ出して即木ノ葉の上忍と遭遇してしまうとは…村雨のバカの謎の引き寄せ癖がうつったのか? …いやアイツが居たらそれこそ上忍どころか火影と遭遇してもおかしくない、それに比べたら任務帰りの上忍と遭遇するなんて大したことではないだろう。
「それにしても…随分と酷くやられたね」
チャクラ切れ欠けとはいえ木ノ葉の上忍、それも元火影の護衛小隊のメンバーとなれば容易く勝てる相手ではないが四人衆のメンバーも全員少なくない負傷と呪印の反動で休養を取っていた。
「うるせぇ…"状態2"でやり合ったら消耗が激し過ぎるんだよ」
「つぅかテメーこそ呪印を使った訳でもねぇのに何タラタラ水分補給で休んでやがんだ!? 動けるならサスケ様背負って先行ってろよ」
「いや、木ノ葉からアジトまで結構距離あるし休憩は必要でしょ?」
「あの刀馬鹿は土の国の廃村まで余裕で歩いてたぞ!? 仮にも戦闘員なら根性見せろよゲスヤロー!」
「自分の欲望の為なら一人で砂漠に突っ込んでいく様な奴と一緒にするのはやめてくれない?」
刀が絡んだ時のあいつは何から何までおかしいんだ、そんなアレと一緒にされるのはとにかく心外だ。…まぁ刀が絡んでない時はただの頭のネジが外れた奴でしかないから結局おかしい奴なんだけど。
多由也からの悪態にげんなりしながら水分補給をしていると鬼童丸がピクリと肩を跳ね上げた。
休息の際に近くに幾つかの罠を仕掛けたがどうやらそれに触れた連中がいたらしい…まったく、ゆっくり休むこともできないなんて木ノ葉の連中もつくづく面倒だね。
…それにしても、今度はどんな奴が来たのやら──って
「また君かァ!? 何だって行く先々で出てくるわけぇ!?」
「そりゃこっちの台詞だってばよ!」
木ノ葉の忍小隊に混じっていた金髪のアホ面…うずまきナルトがそこにいた。
先日の伝説の三忍の集まりの時といい何だってこいつは毎回現れるんだ?
「知り合いか?」
「…村雨のバカのせいでちょっと付き合いあってね…」
ほんの少しだがこいつの修行に付き合っていた…なんて言ったらどうせ文句言われるからわざわざ言いはしないが、あれのせいで奇妙な縁というのが出来てしまったのかもしれない…いい迷惑だあの刀馬鹿め…帰ったら覚えてなよ。
「…やっぱりお前も村雨の姉ちゃんも大蛇丸の部下なんだな…」
「えっ!? シカマル、村雨って前に焼肉屋で会った刀売りの人なんじゃ?」
「いや顔広いんだねあいつ、どんだけ木ノ葉の連中と関係持ってんのさ…」
そもそもどうやったら木ノ葉の忍と焼肉屋で相席することになるんだ? あいつ元ではあるけど霧の里の人間なんだよ?
「──まぁあの刀馬鹿のことはどうでも良いとして…ボクらが大蛇丸の部下だってのは前に会った時から分かってたことだろ…期待したって無駄だよ」
「……だったら、サスケを今すぐ返しやがれ!」
「返してほしければかかってきなよ、村雨のバカと違って真っ二つにして──っ何だ!?」
背負った断刀・首斬り包丁へと手を掛けようとして違和感に気付く──身体が動かない。
「時間稼ぎナイスだナルト! "影真似の術"成功だ!」
シカマル…と呼ばれた男の影が自分と四人衆の連中と繋がっていることに気付く…影を繋げた相手の動きを縛る術か? …まんまと引っ掛かってしまったな、…でも。
密かに左近と分離した右近が草木に姿を隠した上で手裏剣を放つことでその影の術を容易に解除する。
更に次郎坊の土遁結界術が小隊全員を閉じ込める。
「こいつらは俺が貰うぞ、少しでもチャクラを回復したいんでな」
「食い終わったら追いつけよ、俺達は先に行くぜよ」
「んー、個人的にはボクの手で叩き斬ってやりたかったけど…まぁいいや」
ストレス発散も兼ねて相手してやりたいとも思うがこうして結界に閉じ込めたというのにわざわざ出してやって相手してやるのも馬鹿馬鹿しいし、そんな事で足並みを悪くする必要もないだろう。
頑丈な土の壁の結界…うずまきナルトのあの螺旋丸という術ならばあの程度を壊す程度、わけないだろうが…普通にやる分にもあれ程苦戦しているんだ、チャクラを吸われる結界術の中で使えるはずもない、自力での脱出は困難なはず…そういうわけで次郎坊を残し他の四人衆の連中と共にアジトへ向かって移動を再開する。
しかしその後、何故か木ノ葉の小隊に追いつかれたので今度は鬼童丸に任せて先を急ぐ…こっちはこれで残り三人…向こうは次郎坊の相手に1人残してきたのか残り四人…もしもこのまま1人1殺のペースで来られると追いつかれるかもしれないが…こちらとしても大蛇丸の容態を思えば一々相手をしていてはタイムリミットに間に合わなくなる。
そういう意味でも本人もやる気がある上に複数人を一度に捕らえられる鬼童丸にこの場は任せるのが最適解だ。
正直大蛇丸がどうなろうとボクにとっては関係ないが…棺桶のサスケがどうなるか分からない以上、これ以上怒りを買うような事は可能な限り避けたい、その為にはせめてサスケを連れてくるという任務だけは達成しなくては…その為には、できればもう一戦力加わって人数の優位が欲しいところなんだけどね。
▼▼▼
扉をノックする音に肩を跳ね上げる。
屍鬼封尽を利用した刀の設計図を左近さんの棺桶に書き殴ったことを思い出して四人衆の方々が帰還するのを待つことにして代わりに別の刀造りに利用できそうな物はないだろうかと幾つかお借りしていた資料を読み耽っていたのだが…誰だろうか?
扉を開けば意外な人物の姿に少し驚いた。
「君麻呂さん…身体は大丈夫?」
「あぁ、心配は要らない。…任務の前に君と話しておきたくてね」
「…任務?」
──おかしい。
君麻呂さんは重度の病を患い、ずっと安静にしておくことがハレンチ博士の方針だったはず…刀造りに協力して頂くのもそれが理由で取り止めにされたはずなのに…何故今になって?
理由を聞けばハレンチ博士の器の乗り換えがいよいよタイムリミットとなりその儀式が行われたのだという…つまりは水月達は間に合わなかったということだが…問題は間に合わなかった理由の方だ。
確かに直前に私の闇市への遠征に四人衆の方々を付き合わせたりしていたがそれでもしっかりと器の乗り換えには間に合う日程を組んでいた。しかし三代目火影に掛けられた封印の負荷がその予定を狂わせるほど大きい物ものだったという点、そしてサスケ君の勧誘に向かった四人衆と水月の帰還が大きく遅れている点が本命でない器への乗り換えを止む無くさせた。
紛いなりにも器の乗り換えを果たした今、封印の負荷は問題ない。
ならば残るもう一つの問題、四人衆と水月の帰還を遅らせている原因の解消…すなわち木ノ葉の追跡部隊を排除し、次なる器となるうちはサスケをここに連れてくる事こそが自らの使命なのだと君麻呂さんは語る。
──それが例え、自らの命を使い切ってしまう事であったとしても…
「──それで、以前に話していたボクの細胞を利用した刀についてなんですが…ボクの細胞は大蛇丸様達が幾らか保管しているのでそれを使える様にカブト先生にお願いしておきました。約束の刀はそれでどうか造って下さい」
「…本来の能力者である君麻呂さんが協力してくれた方がより良い形で造れるから、できれば無理はしないでほしい」
「それは出来ない、ボクはボクの代わりと成り得るうちはサスケを必ず迎えなければならないから…」
「…そう」
初めて会った時から変わらない…強い意志を宿した君麻呂さんの瞳に言葉が詰まる。
死なせたくはない、人としても刀の素材としてもこの人に並ぶ人など滅多にいないというのに…
「それと…前に貴方が考案した刀は完成するまでかなりの時間を要するはず…あれほど強力な物でなくても構わないのでもう一本、別の物を大蛇丸様とは別にもう一人、残して欲しい相手がいるんです」
「…一応、聞いておく」
「重吾という男だ。呪印のオリジナルとして今はこのアジトに厳重に収容されている…ボクのたった1人の友人だ」
呪印…厳重に収容? …それはもしや──
「オレンジの髪の…大柄の男性の事ですか?」
「知っているんですか? 意外だ…」
「少し前にお会いしました…困っていたところを助けて頂いて、私にとっては恩人です」
「重吾が? 衝動が落ち着いていたのか…しかし何故外に? 挨拶に行く時に一緒に確認しておくか…いや、ともあれ重吾の事を良く思ってくれている人がいてくれるのは嬉しい事だ、彼を残していってしまうのはやはり少し心残りだったからね」
君麻呂さんは満足気に微かに笑ってそう言う。
それはやはり、自らの死を受け入れた者の…物寂しい静けさだった。
「それじゃあ、もう行くよ。重吾にも挨拶をしておきたいからね──っ!?」
ガキィンっと甲高い音が部屋に響く。
君麻呂さんの足を狙った刀が硬質化した骨によって受け止められた音だ。
「…どういうつもりですか?」
「やっぱり、この骨は素晴らしい。たかだか1人連れて帰る任務で死なせるなんて勿体ない」
「大蛇丸様の器を迎える…それがどれ程崇高な使命なのか分からないということか…」
「それはこちらの台詞、貴方を除いて完全に失われた血継限界…それを刀として残すということがどれほど崇高なことか。それを貴方自身という存在を差し置いてその残り物でさせようなんて…挙句には私に対して"強力な物でなくて良い"とは…随分と安く扱ってくれる」
私の刀造りを買うのならば…そんな軽い扱いをされてたまるものか。
それに血継限界という忍術の最高峰…その最後の存在であるにも関わらず簡単に捨て去ろうなどと冗談ではない。
霧の里で行われたかつての悪習、血継限界を宿した者の迫害…あれでどれほど希少な存在が消えたというのか…そんな愚かしい行いと等しい事を為そうとする者をどうして送り出せるというのか…
「うちはサスケ君…彼を迎えるという使命は私が請け負う。貴方は私の刀が完成するまで死ぬことは許さない…貴方が望んだ刀だと認めてくれなければ私の使命は完遂できないのだから」
「……まったく、なんて人だ…」
「カブトさんに事情説明をお願いします。それと…どうか安静にしていて下さい」
刀の設計図や鍛冶道具などを格納した巻物など、関係のない荷物は置いていく。
一方で刀やオリジナルのクナイなどの戦闘用の道具を格納した巻物を傍らに置いていたポーチに纏めて手早く準備を済ませる。
「四人衆がこれほど遅れるということは木ノ葉はかなりの腕利きに追跡をさせているはず…大丈夫なのですか?」
「忍術、幻術、体術…忍のスキルで私が勝てるものはないかもしれない──けれど"忍具"において私が持つ物より優れた物なんてあり得ない。…ただそれだけ」
実際のところ忍具といってもその幅は広い。
クナイ、手裏剣、刀…それらならば確かに私の言葉に嘘はないが"傀儡"や"丸薬"、"呪符"などなど…私とは別の技術を含めれば私が持つ物が最も優れているという保証はない──だとしても譲る気もない。
君麻呂さんの隣を通り抜けて廊下へ…そしてアジトの外へと足を踏み出すと薄暗いアジトにはない陽の光にほんの少し目が眩む。
うちはサスケ君をただここに連れてくるだけで済めばそれで良いが…これから木ノ葉の忍と戦いになるかもしれない、不安もあるが…さっき君麻呂さんに言った通り忍具という一点に限っては負けることはない。
「…それに水月もいるし何とかなる。…多分」
共に伝説の三忍の集う戦場から生き延びた、その経験のおかげでほんの少し自信が湧く。
最悪でも相手は木ノ葉の上忍…脅威ではあるが伝説の三忍と比べれば格落ちするのも事実…ならばきっと何とかなる…うん、頑張ろう。