正直途中でエタると自分でも思っていましたが皆さんの評価・お気に入り登録・感想・ここすきなど様々な反応を頂けてここまで続けることが出来ました、本当にありがとうございます。
我愛羅達が休息する位置から少しばかり離れた木の影に村雨と水月は身を隠していた。
爆発の直後、すぐさま口寄せした"小蜃"の作り出す幻術に紛れて辛うじて逃げる事に成功し、休息と降り出した大雨から逃れるのも兼ねて木陰に座り込んでいた。
「この幻術は我愛羅君の砂の物理感知と相性が悪いから…向こうもチャクラ切れ寸前で助かった」
「まったく…あの爆発に巻き込まれて助かった方がビックリだよ」
「我愛羅君の砂に捕まっていたから、アレが逆に盾になってくれた…そこは流石に計算に入れていた」
「そんな計算ができるならあんなバカデカい刀をボクが振るえる訳ないって分かってくんない!?」
「…耳が痛い…」
どうにも刀を造り出すと発想や性能ばかりが先行して根本的なところで見落としが起きてしまいがちだ、こればかりは悪い癖だ…今後はもう少し意識すべきなのかもしれない。
…しかし、今は君麻呂さんの受けた使命の代行中だ、こうして無事に生還できたのならばまずはその使命を再開しなければ。
「うちはサスケ君は…今頃どの辺りだろう…終末の谷は越えたかな」
「あぁいや…あのうずまきナルトの奴が追跡に行ってるから、今頃追いつかれてドンパチやってるかも?」
「うずまき…ナルト」
思わぬ名前に心が弾む。
そうか…彼が来ていたのか、だとするとこれは僥倖だ。
彼がうちはサスケ君を連れて行くのを邪魔するというのならばそれを阻止するのは君麻呂の使命に添った行動になる…そうしてそれと同時に"うずまき一族"の人間を確保できる…完璧だ。
「こうしてはいられない…早速彼らを追う」
「マジ? ──あぁいや、どっちにしろうちはサスケは連れ帰らないと大蛇丸の奴に…くそぅ」
渋々ながら立ち上がった水月と共に森の中を突き進み、うちはサスケ君…そしてうずまきナルト君の姿を探す。
あの我愛羅君から無事に切り抜けて、遂に手に入れた屍鬼封尽の情報を活かす"うずまき一族"の人間を得られるとは…今日は何て素晴らしい日なのだろうか? 気が付けば雨も止んで天気も私の気持ちも晴れやかだ。
さて、もうすぐ終末の谷なのだが──っ!?
「どうしたの村雨?」
「…この匂い…大刀・鰐喰い?」
「凄い思い出したくない名前だ…何だってそんな匂いが突然? …ていうかあの土砂降りのすぐ後でよく匂いとか分かるねホント…」
そんなことよりあの刀は確か木ノ葉のはたけカカシさんに売って…そのカカシさんは確かうちはサスケ君とうずまきナルト君の担当上忍だ…彼がここにいるということは──マズい!
念の為出しっぱなしにしておいた"小蜃"に幻術を出させて自身の姿を隠しつつすぐさま水月の手を引いて木の影に身を隠す。
こっそりと顔を出して窺えばうずまきナルト君を背負ったカカシさんが木々を飛び移り私達が来た道を逆走して行く…その傍らにうちはサスケ君の姿はなかった。
「…どうやら…うちはサスケはアイツに勝って無事に国境を超えた様だね」
「多分…しかし…はたけカカシさんがいるようでは手出しは難しいか…」
流石に我愛羅君との戦闘でチャクラを多く使ったし『火遁・蝦蟇油爆弾』による負傷も決して軽いものではない…何より水月の首斬り包丁も修復が必要だ。
しかもカカシさんといえばあの再不斬さんを倒した程の相手…勝機があるのならばリスクが高過ぎだろうと挑む覚悟はあるが勝機も無しに手を出すわけにもいくまい。
最高の気分から一転、欲しいモノがすぐそこにあるのに手が出せないという最悪の瞬間に気分が沈む。
…いや、むしろあのはたけカカシさんに気付かれなかっただけ良かったと思う他ない、何やら忍犬も連れているし先程の大雨がなければ、そして以前にお会いした時に大刀・鰐喰いを売っていなければどうなっていたことやら。
あぁ…でも…千載一遇のチャンスが去って行くのはやはり辛いなと流した涙は足元の水溜まりに混じる。
いや…落ち込んでばかりもいられない、とにかく今は先へと進んだうちはサスケ君を探すことが先決か。
近くにカカシさんがまだいることも考え、小蜃の幻術で身を隠したまま終末の谷を越え、その先の木々の影の中へと足を進ませるのだった。
…ちなみに慎重に進み過ぎた結果サスケ君に追いついたのはアジトのすぐ傍の場所だった。
アジト周辺で合流したサスケ君とは中忍試験前に会った時以来の再会だが、その時と比べて随分と雰囲気が変わっていた。
私や水月には一切興味を示さずさっさと大蛇丸の下へ連れていけと言ったっきり何も喋らず歩くだけ…これには水月も面白くなさそうな顔を浮かべるがお互い消耗も激しい状態だ。
特に事を荒げることもなくアジトへの帰還を果たすのだった。
アジトの門を潜れば包帯塗れご機嫌な様子の男性が出迎えてくれた。
「フフ、待っていたわよサスケ君。よく来てくれたわね」
この人は確か…以前"蛇刀・蝕"を造った時にお世話になった囚人の人…と思ったがまさにその"蛇刀・蝕"を脇に差し、おまけに話す為に開いた口から草薙の剣の匂いもした…ということは。
「あぁ! ハレンチ博士でしたか、そういえばもう器変えはされたのでしたね」
「そのふざけた名前は以前に禁止したはずなのだけどね…まぁ無事にサスケ君を連れて来てくれたのだから多少のことは許しましょう、ご苦労だったわね村雨、水月」
「四人衆の連中は追いついてこないし木ノ葉の奴らにやられたみたいっスよ」
「構わないわ。それより雨も激しかったしね、着替えを準備してあるから着替えてきなさい。サスケ君も、積もる話もあるでしょうけどまずは身体を労りなさい」
四人衆の方々が戦死されたというのに一切取り乱したりしない…冷酷にも感じるがこれが私達よりももっと過激な時代を戦い抜いてきた人の感覚なのだろう。
それが正しいか否かは私には分からない、ただ思うことは──
「身体を乗り換えたハレンチ博士が言うと説得力がある…」
「君はもう余計な事言わずさっさと行こうか!?」
水月に首根っこを掴まれて引き摺られる…何故だ。
まぁいい、実際雨に打たれてベタベタ…というか爆発に巻き込まれてあちこちボロボロだ、着替えを用意してくれているというのならご厚意に甘えよう。
大人しく水月に引き摺られているとふと見知った顔を目に入る。
「あ、カブトさん。ただいま戻りました」
「やあ村雨、水月も…任務ご苦労だったね。随分とボロボロだ、必要ならサスケ君の治療が終わった後に君達にも医療忍術を施すよ?」
「そりゃどうも。それにしても…早速うちはサスケは特別待遇ってわけ?」
うちはサスケの勧誘に行って負った傷の治療がそのサスケ君の治療の後回し…確かに先にいた水月からすれば気分の良いものではないのかもしれない。
そもそも水月の負傷の大半は私が原因だ…私としても早急に治してあげてほしいが…。
「フフ、そればかりは仕方ないさ。…それにそのサスケ君を連れてきてくれたんだ、君達の待遇もより良いモノになるはずさ…例えば村雨、2、3日もすれば君の鍛冶場も元通りになるよ
「それは助かります。頑張ったかいがあった」
「だったらボクの待遇の改善としてこいつの秘書係を別の誰かにしてほしんだけど」
「…ゆるしてくれ水月…また今度だ」
「絶対嘘だ!」
何やら水月とカブトさんの話が盛り上がりを見せているがそれよりも私の鍛冶場が近々直ると言うのなら早速そちらに合わせて事前準備をしておこう。
結局設計図を書いた棺桶はバラバラになってしまっていた上に最終的には我愛羅君の砂の波に飲まれてしまった…もう取り戻すことは出来ない以上改めて記憶を頼りに作り直すしかない。
そして今回即席で造った"蒸気荘怒"をちゃんと造り直す為にそちらの作業も必要だ。
あぁそれに君麻呂さんから要望の刀の件もあった…やることが一杯、幸せだ。
そうと決まれば早く着替えて一つ一つ着手していこう、とりあえず本命ではあるが何かと必要な準備が多すぎる屍鬼封尽の方は後回しだ、それよりも優先すべきは寿命というタイムリミットがある君麻呂さんの方だ、そちらを進めながら既に実用もできた"蒸気荘怒"の改善も並行して行う…ひとまずはそんな感じでいいだろう。
諸々の作業が落ち着いたら是非とも"うちは一族"であるサスケ君の細胞も拝借したいところだが果たしてハレンチ博士から許可が出るだろうか…最悪こっそり手を出す手段を考えた方が良いかもしれない。
それにしても…渇望した死神の情報が手に入り、懐かしい人と再会し…大切な設計図を失い、必要な存在を取り逃してしまった…驚くほど激動の連続だった。
しかしハレンチ博士にしても焦がれる程に求めていたという"うちは一族"の少年を手に入れた…或いはこの激動の連続は後に世界を大きく変える切っ掛けになるかもしれない…そんな予感が不思議と湧いてくる。
…ならばこの予感を無為にせず、本当に世界を変えられる様に更なる刀造りに邁進するしかあるまい。
「…よし、頑張ろう」
「なに急に? …また何か良からぬこと考えてるわけ?」
「心外…ただ楽しいことを考えてただけ」
「何それ怖い…いっそ良からぬこと考えててくれた方がマシなんだけど」
「どうしろと…」
悪い事を考えているのかと疑われ、否定すれば悪いことを考えていて欲しかったなど水月の言うことは無茶苦茶だ。…いや、それも最近の私の行いの代償なのかもしれない…今回の"蒸気荘怒"の一件でも単純な見落としで致命的な設計ミスを犯したのだから水月からの印象が悪くなるのも当然だ──つまり失った信頼を取り戻す為にもやはり今まで以上に刀造りに精を出しかないということだ!
「水月…たっぷりと後悔させてみせる」
「ボク何か悪いこと言ったァ!?」
「…あれ?」
何やらニュアンスを間違えた気がする、水月が目を見開いて悲痛な叫びを上げてしまった。
信頼を取り戻す為にも見返してみせる的なことを言おうとしたのだが…まぁ言ってしまったものは仕方ないだろう。意味合いとしては大体近いだろうし、否定しても逆に取り繕った感が出てしまうかもしれない。
とりあえずフフンと得意げに笑っておいて着替えの為に水月と別れる。
…そう、別にこの場で訂正する必要などない。
まだまだこのハレンチ博士の下で造る物は多く、それがある限りここでの日常も続くのだ…その内ニュアンスの間違いだという事に気付くなりそもそもこのやりとりを忘れるやもしれない…だから、そう──
──今日もまた刀造りを始めよう。
ちなみにこの後重吾さんとの一件でアジトを壊したことについて呼び出され、今日の刀造りは断念することになった…何でこうなるんだろう?
▼▼▼
大蛇丸がサスケを招き入れ、アジトの案内をしている頃…どこかの鍾乳洞の中で九人の忍達が集まっていた。
彼らは皆、遠隔での交信の為のホログラム状の分身を用いて彼らの内の1人が確認した事実を共有する。
「大蛇丸が写輪眼を手に入れた…イタチ、お前の弟だ」
「あぁ、あの時の弟さんですか…よりにもよって大蛇丸の下とは、自らの意志か攫われたのか…どちらにしても憐れなものですね」
九人の中の一人、サスケの実兄であるイタチを除き唯一、サスケと面識のある鬼鮫は件の少年に憐みの言葉を口にする。
「あの大蛇丸が写輪眼を完全に自分の物にした時…我々の障害に成り得る可能性は高い、皆…念頭に置いておけ」
「心配いらねぇよ、大蛇丸はいずれオイラがぶっ殺してやるさ…うん」
「フン、それならそれで構わないが…お前とサソリはまずは使った分の資金調達を早く終わらせろ」
「まず旦那が浪費した分の資金調達をオイラもしなきゃならねぇことに納得いってねぇぞ、うん!」
先日岩隠れ近辺の廃村で開かれた闇市で大量の武器を購入し、しかしその分の対価を連帯責任で命じられたデイダラは怒りを露わに叫ぶ。
最近は賞金首狩りや裏の仕事などで資金調達というノルマと関係ない仕事に奔走させられストレスで堪忍袋が爆発寸前だったのだ…が、その文句を口にした瞬間金に煩い同僚の1人から鋭い視線を向けられ旗色悪しと話題を変える。
「そういや…その話で思い出したんだが鬼鮫の旦那、渦柘榴 村雨って女について何か知っているか?」
「おや、貴方からその名前を聞くとは思いませんでしたね」
「さっき言ってたサソリの旦那がした浪費の原因だよ、うん」
「それはそれは。浪費はともかく良い買い物だったのではないですか?」
何と言っても霧隠れの有数の刀匠の血族の…その血筋を色濃く引いた少女だ、そこらの忍具屋の物と比べ物にならない品々だったことだろうと鬼鮫は笑いかける。
「フン、そんなことより知っているなら話は早い。その渦柘榴 村雨という女は誰と繋がっている? あの女の周りにいた連中は──俺達の事を知っているようだったぞ?」
「…何ですって?」
鬼鮫にとってもその言葉は予想外だった。
確かにあの娘ならばいつかは里を出てあちこちで刀を造っては売ってをするかと思っていたしそれが闇市に行き着くこともあるだろうと思っていたがまさか自分達"暁"に迫るなど…流石に在り得るのかと。
「じゃあ一応聞いておくがハレンチ博士ってのにも心当たりねぇかい…うん? その女が自分の師だと言っていたが」
「誰ですかその珍妙な名前の人は……いや、まさか…」
あまりに酷い名前だ、いよいよ話が嘘臭くなってきたと思いかけて──それまで然して興味なさ気だった相方のうちはイタチと同時に1つの可能性に思い至る。
数日前に出会った例のうちはサスケという少年が持っていたあの異形の雷遁刀…血継限界である磁遁を利用したという村雨にしか造れない刀だった…うちはサスケがそれを持っているという事は村雨は木ノ葉と何らかの接点がある。
そして木ノ葉といえば…まだ本格的に活動をしていないにも関わらず一早く"暁"についての情報を得ていた伝説の三忍にして"無類の女好き"である自来也がいる。…思い返してみれば九尾のガキからエロ仙人などと呼ばれていた。
うちはサスケと例の刀…"暁"について知っている可能性と"暁"についての情報を得ていた自来也…そしてエロ仙人とハレンチ博士…点と点が繋がり出すその感覚を信じて良いものか、正直疑惑が晴れないが一応聞かれているのは自分ということもあって口を開く。
「そのハレンチ博士という人物が、あの伝説の三忍である自来也を指しているのなら可能性はあるかもしれません…恐らく彼女が造ったであろう刀を木ノ葉の忍が持っていたことからしても、彼女と木ノ葉には繋がりはあるようですから」
「…しかし、あの自来也さんが師だというのなら、果たしてその弟子たる者が闇市などで武器を捌くかどうか」
抜け忍といえども木ノ葉出身、伝説の三忍と名高い自来也の軽薄さの裏にある様々な武勇伝を知るイタチとしてはその疑問が大きく否定寄りの意見を口にした。
「──そうとも言えまい…例え師がどの様な人物でどの様な教えを受けたとしても、人である以上悲劇や陰謀或いは命令…様々な要因で思想も変わる…お前達の中にも覚えがある者もいるだろう」
家族の喪失、周囲からの不理解、上司の裏切り、里の命令…ここに集まる者の中にも様々な要因で思想や立場が大きく歪んだ、歪みざるを得なかった者もいる…ならば師がどの様な人物であったとしてもその弟子が闇市という後ろ暗い世界にいたとしても何ら不思議ではない。
そう彼らを束ねる男は語る。
「しかし、確定かは分からないがあの自来也の弟子であり歪んだ者か…サソリ、確かその女には誘いをかけたのだったな」
「あぁ、奴の後ろにいる奴を炙り出す目的も兼ねていたが…随分と大物が掛かるかもしれねぇな」
「日時について後で教えろ、俺も少しだが興味が湧いた。…それから鬼鮫、その時はお前も同行しろ、顔の知るお前がいた方が何かと都合が良いだろう」
「おやおや、小娘相手に随分な歓迎になりそうですねぇ…まぁ私もあの狂人がどれ程化けたのか…久方振りに会ってみたいと思っていたところでしたが。ククッ」
小さい笑いに合わせてホログラム状の身体がジジッと揺れる。
S級ランクの抜け忍達が1人の少女へ興味を示し…その少女とその後ろにいるやもしれない存在に対する計画を詰めていく。
渦柘榴 村雨は闇の中に混沌と混乱を広め続ける…何も知らぬまま、ただその狂気に赴くままに…
第一部──完!!