今年最後の投稿ですがお楽しみ頂けますと幸いです!
川辺の洞窟特有の肌寒い空気を感じながら改めて周囲を見渡してみる。
村雨が立ち去ったのを確認し、輪廻眼の方は「後は任せる」と言って姿を消したが、鬼鮫さんにサソリさん、デイダラさんにイタチさんの4人は未だにこのアジトに残っていた。
無事にサソリさんから協力を得られたのは良かった…同一体である私を造り彼らの下に置いてくれるのは予想外だったが間違いなく最高の形になったと言える。
問題はオリジナルの私が皆さんに誤解を振りまいた末に記憶が消されたことだ…このままだと3年後オリジナルの私が殺されてしまう。
オリジナルの私…村雨が自身で記憶を取り戻す可能性に賭ける、普通に考えてこれは無理だ。
つまりは私…偽雨の方から村雨へ、彼女が失った記憶を伝えなければならないという訳だ。
幸い同一体である私もある程度の術は使えるし、何よりあの"象転の術"という術…対象となった人が持っていた忍具の類いまで複製できるらしく村雨が持っていた作品全てが手元にある…何らかの手段を取る為の武器はあるという訳だ。
チャクラを多用し過ぎると同一体の私は消滅するらしいのだが、そういう意味でも武器の複製が出来たのは有難い。
当然これらの武器も性能が劣化している可能性はある為、行動を起こす前にその辺りは検証してみないといけないが何も無しよりはずっと良い…大切な作品達が劣化再現されているとしたら心苦しいがこればかりは我慢するしかない。
手持ちの刀と限られた術…これらを活かして村雨と接触すること…それが急務である。急務では…あるのだが──
「…それでは早速"クシナダ"設計の話をしたいのですがよろしいですか?」
やらなければならない急務よりもやりたくて仕方ない欲求の方が優先度が高くなるのは仕方のないことだ。
それに何とかするにしても思い付きの行動で彼らの目を盗んで村雨と接触するなんて土台無理な話だ、だったら今の間は取引内容に沿った行動をして信頼を得ていた方が良い。
うん、実に慎重かつ建設的な判断だ。
「まぁ待て、まずは今後のお前の仕事場まで連れていってやる」
「仕事場?」
「取引が成立した辺りで他のメンバーに鍛冶場を確保してもらっていたんですよ。人っ気のない林の中に鍛冶場を構えて抜け忍連中に武器を回していた職人がいたのでね…少々退いてもらっていたんですよ」
「今後はそこで俺達の忍具を造っていろ、要がある時はこちらから出向いてやる」
そうか…つまり思うようにこちらから彼らに接触を図るのは難しいのかもしれない。
とはいえ、もう用意してもらっているのだとしたら無下に扱うのは気が引ける…多分お金の取引か何かで譲ってくれた職人さんにも申し訳ない。
その辺りの事は後々…造る忍具の大きさを持ち主に合わせる…とか言って1人1人来てもらったり、なんて言い分などを使って解決できないか試してみよう。
「分かりました、それではお願いします…またデイダラさんの鳥で移動ですか? 実は空の旅というのは先程初めて経験したもので途中までは堪能していたんですが、粘土細工の方に目をやってからはそちらばかりに意識が傾いてしまって出来ればもう一度ぐらいは体験してみたいと思っていたのですが」
「あぁ、心配しなくても運んでやるさ…ま、お前が思っているのと違う移動になると思うがな…うん」
「へ?」
直後、粘土のペリカンに頭から食べられて口の中に収納される。
「では彼女の事はお任せしますよ、サソリ、デイダラ。一応古い付き合いのある相手なので丁重に扱ってくれると助かりますがね」
『そう思っているなら嘴から出すよう言って頂く事はできないでしょうか?』
「…そこから喋られるとペリカンが喋っているみたいで少し面白いのですが…まぁその運び方をするように進言していた身として謝罪はしておきましょうか」
『え? この運び方鬼鮫さんの案なのですか!? これでは空の旅を堪能できないどころか周囲の地形をまったく知らない状態で林の中の鍛冶場に到着してしまうのですが!?』
「だからですよ。貴女変に知識があると目を離したらフラフラとどこかへ行ったり、あれやこれやとやらかしたりしかねませんからね」
そんなことはない…と言いたかったが正直思い当たる節がないとも言い難く言葉が詰まる。
「まぁそういう訳です。なに、別段ボロ屋に監禁して働かせようなんてつもりはないのでねぇ、移動ぐらいは大目に見て下さい──ではお願いしますよ」
「あぁ、じゃあ行くか旦那」
「フン」
粘土の壁越しに聞こえる会話にこの扱いの改善は望めないと大きくため息を吐く。
大きな振動と浮遊感に移動が始まったのだと認識し、硬くなった粘土の感触と閉じ切った薄暗い視界のみの憂鬱な空の旅を堪能するのだった。
▼▼▼
「これはまた見事な──」
憂鬱な空の旅をすること2~3時間(参照腹時計、正確さはない)、竹林の中に切り拓かれた空間に建築された鍛冶場に目を奪われる。
人里離れた林の清廉な匂いと鉄と灰の独特な匂いが混じる歪な空間だがそれが実に居心地が良い…鍛冶場近くに生えた竹の幾つかは刀に依って斬り落とされており試し斬りに困らない様子も見て取れる。
おまけに庭部分には池まで造られ鯉や亀が泳いでおり、元々の持ち主が随分と遊びのある生活をしていたのが見て取れる。…時期によっては旬のタケノコが取り放題にできそうなのも実に良い。
こんな良い場所を頂いて良いのだかと少し心配になるが──まぁ譲って貰えたというのだから遠慮なくお邪魔させてもらうとしよう。
「食料は暫く分は用意してある、無くなりそうなら新しく手配もしてやる。とりあえずはここで忍具造りをしてな…うん」
「"クシナダ"設計を進める時は俺の方からこっちに来る…何にしてもお前はここで生活をしていろ」
「私の方から皆さんにお声掛けすることは出来ないでしょうか?」
「生憎、俺達も暇じゃないんでな──じゃあ、またな。その中にある物は好きに使え」
そう言ってサソリさん達は粘土細工の鳥に乗り飛び立って行った。
うん、やっぱりというか…思っていた通りの対応だ。
やはり彼ら個人個人に会う為に何らかの方法は考えなければならないようだ。
しかしこの状況もそう悪いものではないかもしれない…彼らに直接関われないのは残念だが監視の目がない以上、村雨と接触する方法の模索、実行ともにチャンスはあるというものだ。
「──まぁそれはそれとして…鍛冶場の確認をしよう。あと鯉や亀の餌あるかな?」
元の持ち主が譲ってくれたのは有難いがペットはちゃんと連れていってあげれば良いのに…とりあえず私がここで生活する間は面倒を見てあげないと…。
その後は鍛冶場の道具の一式を確認したり、居間の家具を確認したのだが…道具は私が使う物より少々劣るが特に問題なく扱えるだけの質はあるもので不満はない、家具に関しても中々良い物揃いでここでの生活は快適に過ごせそうだと感じた。
とりあえずは窮屈な移動の疲れを癒そうと茶を入れた急須と湯呑を持って居間に置かれた座布団に座る。
茶菓子があれば良かったのだが…いやあるのかもしれないが見つけられなかったから一度諦めて茶だけ頂くことにしたのだが──途中見掛けた廊下の床の一部だけ周辺の竹を縛っただけの物なのが少し気になったが、まるで派手に汚れて急遽張り替えたかのようだが…元の持ち主には退いてもらったという話だがこれはもしや…いや、流石に考え過ぎだろうか?
…まぁ良い、元々抜け忍の人達を相手にしていたというのなら殺される危険性は着いて回るものだ…彼彼女も、その可能性は覚悟で取引していたことだろうし、それで殺されたというのならそれはその人の腕が惜しまれるものではなかったということだ。
気の毒ではあるが仕方のないこと…とはいえ明日は我が身やもしれない何某さんへ同情混じりの祈りを済ませて、茶を一杯──
「──いや、もしも殺されていたのだとするとこの家は所謂事故物件というやつでは?」
途端に居心地が悪くなるのを感じ…村雨が今まで住んでたハレンチ博士のアジトの方がよっぽど事故物件…というより事故現場で寝泊まりしている様なものだと思い至り割と気が楽になった。
気分もゆったり落ち着いてお茶も堪能できるというもの──
「──っ! 閃いた!」
サソリさん達と簡単に接触できるようにする為の秘策…それが天啓に打たれたかの如く脳に浮かび上がった。
そう! 私にとって必要なのは彼らとの接触…それは別に私から彼らに会いに行く必要はどこにもない、彼らの方からここへ足を運んでくれるようになればそれで良い。
問題はその方法だが──鬼鮫さん達は皆抜け忍の集まりだという…つまりは人目の付くところには長居出来ないということ…先程のアジトの様な場所はあるようだが、見たところハレンチ博士のアジトと違いおよそ生活出来るようなものではなかった。
一方でこの鍛冶場…元々抜け忍達を相手に商売をしていたというだけあって人目に付かず…そして景観も良い。
ならばこの居間の部分を改装し、彼らが落ち着いて休息出来る場所へ昇華すれば自然とここに集まる様になるはず。そう、つまり私が成すべきことは──
「茶屋の設立だ!」
改装の為の資材として竹は沢山あるし、なにより偽雨である私は元々刀造りは自粛するつもりだったのだ…つまり資源も時間も十分ある。
我ながら実に良い案だ、やはり茶には脳を活性化させる作用があるのだろうか?
この革命的なアイデアに自分でも震えあがるが悠長にはしてられない、そうと決まれば早速行動だ! 大がかりな制作になることは間違いないが、なればこそ着手は早い方が良い!
──頑張ろう!
▼▼▼
偽雨が人知れず行動を起こした頃、事故現場から別の事故現場へ引っ越しを終えた村雨は新たに宛がわれた自室にて水月、重吾と集まっていた。
「えっと…つまり鬼鮫さん達が所属している"暁"という組織は各国に指名手配されている人の集まりで、ハレンチ博士も元々はそのメンバーだったと…」
「そう、連中はまだ表立って動いてないから組織自体は知られてないけど、大蛇丸からすれば厄介な敵ってこと」
大名暗殺、一族皆殺し、連続爆破事件その他諸々…S級抜け忍の集まったテロリスト集団"暁"…それが彼らの正体なのだと水月から教わり、自分が中々に危ない事をしていたのだと今更ながらに思い知らされる。
果たして偽雨はこの事を知っているのだろうか?
…いや、鬼鮫さん達と会っていた際の私の記憶を写した同一体である以上偽雨は彼らの事を「何か凄そうな抜け忍の人達の集まり」としか思ってない…なんならクシナダ開発を協力してくれる有難い存在と思っている気がする。
幸い、わざわざ同一体の偽雨を造り、手元に置いておいて頂けたことからして"暁"の方々から然程悪印象を抱かれている訳でもなさそうだが、問題は偽雨に対してイタチさんや上司さんの能力に探りを入れようと依頼を出したことだ。
もしも偽雨が不用意な行動をして彼らの怒らせるとその影響がオリジナルである私まで波及する可能性は十分にある。
相手がこれ程の人物となると可能な限り慎重に動いてほしいところだが偽雨は彼らの正体を知らない…つまりは私…村雨の方から偽雨へ、彼女が得ていない記憶を伝えなければならないという訳だ。
…いや、偽雨自身が彼らの危険性に気付き慎重に動く可能性に賭けるというのも案外悪くないのではないだろうか? 相手がそれ程の大物なら関わっている内にある程度察することも出来るだろう。
何と言っても各国に指名手配されるほどのS級のお尋ね者…私の同一体である偽雨がそれにいつまでも気付かない程迂闊ではないはずだ。それに何よりも──。
「彼らは私を自来也さんの関係者と誤解している…もしも何かあってもその場合は自来也さんと"暁"の対立になるから少なくともハレンチ博士にマイナスはない」
「んー…まぁそれはそうだけど…ってか、"もしも何かしても"そうなるからまだ許されただけだからね。普通ならもうとっくに殺されて当然レベルなんだから…」
何故"何かあっても"の話が"何かしても"に変わったのかは少しに気になるがそれはともかく──
「確かに運が良かったとは思う…でも折角幸運を得たのだからそれは存分に活かすべきだと思う」
「そのふざけた前向きさはホントなんなの?」
「前向きついでに聞きたい…重吾さん、あの時私に流してくれた力は何ですか? チャクラとは少し違う感じがした」
あの時…ハレンチ博士の前へと連れ込まれた際に重吾さんから何か変わった力を与えられたのだ。
普通のチャクラとは違う異質なそれに全身が痛み悲鳴を上げたが、それと同時に普段以上に全身に力が漲るような感覚もあったのだ。
そしてそれに合わせて私の身体から真っ白な人が何人も生えてきたのだから何かしら特別な力なのは間違いないはずだ。
「あれは呪印仙力という俺の能力の大元だ…自然の力を身体に取り込んで得る特殊な力…自然エネルギーとも言われているな」
「自然エネルギー?」
「大気や大地…自然に存在するエネルギーだ。俺の一族はそれを身体に取り込める特別な身体を持っていてそれが時折起こす暴走の原因だ」
「へぇ、君のそれってそういうものだったんだね。普通じゃないとは思っていたけど僕達とは根本的に力の種類が違うんだ」
確かに自分自身のチャクラを基に術を使う私達と異なり、その自然エネルギーという別の力を取り込んでいる重吾さんの在り方は全く違うものと言えるかもしれない。
しかし…本来扱うものと異なる、全く別のエネルギーか。
「あれ? そういえば君って呪印のオリジナルなんでしょ、じゃあアレってさ」
「そうだ、呪印化は大蛇丸が俺の体質を応用して生まれた技術だ…本来は仙人化と言われる技術だがな」
「仙人化?」
「体内の"精神エネルギー"と"身体エネルギー"を練り込みチャクラを造る過程で外からの"自然エネルギー"を更に加え、練り込むことで生まれる"仙術チャクラ"…それを扱う事で常人離れした忍術、幻術、体術、更には感知能力をも使いこなす仙人という者が極僅かに存在するらしい…仙人化というのはそれから派生した呼び名だろう」
「っ! つまり自然エネルギーは重吾さんの一族以外でも扱える…と」
あくまで自然エネルギーを容易に体内に取り込める体質が特別というだけで重吾さん以外にも仙人という存在もいて、呪印化という応用もある…ならば決して、自然エネルギーを扱える事が特別というわけではないという事だ。
…良い、とても良い。
今まで刀を造るには素材を変えたり、チャクラの性質変化や形態変化などを応用したりとしてきたが…そこにまったく新しい力を加えられるかもしれないという事だ!
加えて仙術チャクラなる物を修めると常人離れした感知能力さえも得られるとなれば感知能力者に頼らざるを得なかった工程を自力で行えるかもしれない。
今までにないエネルギーに依る更なる発展と開拓! 素晴らしい、これぞ正しく!
「…ねぇ、何か凄く嫌な予感がするんだけど…何企んでるの?」
「
水月が物凄い勢いで部屋から出て行ってしまった。
…
……
………どうして?
年越しREVOLUTION
こんなのが年明けにならなくてまだ良かったw
改めて、今年一年ありがとうございました!
来年も何卒よろしくお願いします、良いお年を!