霧隠れの狂人   作:殻栗イガ

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渇望の果てにあるもの

 マズい…本当にマズい。

 あと数分もすれば仙人モードが解けてしまうと言うのに落とし穴に入れられ、地上にはナルト君にサクラさん、コテツさんの3人が…。

 

 何とか這い上がってもまた突き落とされるのがオチ、それでも一応仙術チャクラで地面を操れば脱出は可能だろうが…残り少ない仙人モードの終了を早めるばかりだ…。

 こんなところで解除されると色々とマズい、何とか仙術チャクラの消費を抑えつつ逃げる為にも彼らの意識を逸らす為交渉を仕掛けてみるか。

 

 彼らの目的はサスケ君…その為にもハレンチ博士の情報を集めようとしているはず。

 まずはその辺りから触れてみよう。

 

「…私は何も知りません!」

「まだ何も聞いてないわよ!」

「だいたいその大蛇丸そっくりな見た目でそんなウソ通用しねーってばよ!」

 

 おっしゃる通りだ。

 足が無くなって蛇の尾になった自らの下半身は正しくハレンチ博士の肉体変化とお揃いの装い…これはお揃いと言うのは果たして適切なのか? 何か違う気がする…

 まぁそれはともかく、傍から見て私の見た目がハレンチ博士と深い関係性を思わせるには十分なものであることは間違いない。…ならば──

 

「あのアジトを移動したサスケ君が今どちらにいるかはさっぱりで──」

「カカシ先生が言ってたけど、アンタ刀の匂いでかなり広範囲に探索できるそうね…で、サスケ君はアンタの造った刀を持っているって」

 

 おのれカカシさん…今度自宅の前に砥石を山の様に積んで休日をクナイなどの忍具の手入れに費やしたくなる様に仕向けてしまおう。

 しかし、これは困った…サスケ君の居場所が分からないと言う言い分を途中で切られた挙句にその探索に利用しようと言うのか…このままでは私自身の手でハレンチ博士達と木ノ葉を引き合わせることになるやもしれない…そうなってはハレンチ博士やカブトさんに謝罪のしようもない。

 

「大蛇丸に暁…そしてサスケ君、アンタには聞かなくちゃいけないことが多すぎる。手荒なことはしたくはないけどこれ以上逃げるつもりなら容赦しない」

 

 そういうサクラさんの拳にはかなりのチャクラを練られているのが分かる。

 綱手さんと同じ技法だ…警告も容赦もなしにすればそのチャクラの圧力で私の水の身体でも損傷は免れないだろう。…それでもそれをしない現状にサクラさんの優しさ…悪い言い方をすれば甘さを窺える。

 しかしその甘さの半面、その表情に躊躇いはなく本当にサスケ君の為にハレンチ博士も暁の方々も敵に回すことに恐れを感じない。

 

 …まっすぐな強い瞳だ。

 そしてそれは彼女の隣に立つナルト君も同じ、自らが愛する存在の為に躊躇わないその姿に強く惹かれ、思わず協力したいという衝動が湧いてくるのを必死に抑える。

 

 ダメだ…サスケ君はハレンチ博士が転生する器であり、サスケ君自身もまた自らの復讐の為にそれを良しとしている。サクラさん達には申し訳ないがそこに私達部外者が口出しすることではない。

 

 …あぁ、でも確か──

 

 ハレンチ博士が望んでいるのはうちは一族の器であり、サスケ君の目的は兄、うちはイタチさんの抹殺。

 ならばハレンチ博士がイタチの身体に転生することができればハレンチ博士の目的は達成できるしサスケ君も器にされることはなく、復讐も達成したと言って良いのではないか? 

 それならばサスケ君も気兼ねなく木ノ葉に戻れる…かはハレンチ博士次第ではあるが今よりは可能性は十分あるはずだ。

 

 勿論、そんな簡単にいくはずはないとは分かっている。

 写輪眼の相手は写輪眼でなければできない…以前、写輪眼がどれ程優れたものなのか調べた際にそんな言葉さえ見掛けたほどで、だからこそハレンチ博士がサスケ君を器として選んだのだから。

 しかし、今の私の手元にはその写輪眼が10個もある…これがあればハレンチ博士ならばサスケ君を器として使い潰すことなく別の手段を見出すことも出来るかもしれない。

 

 …うん、これなら皆納得できるのではないか? 

 しかし問題はこの話を今、お二人信じてもらえるか否か…残念ながら難しいだろう。

 イタチさんを生け捕りにしてハレンチ博士の器にし、それで満足したハレンチ博士がサスケ君を解放し、サスケ君が木ノ葉に帰還する…不確定な要素が多すぎてこれを基に信用してほしい…なんて無茶苦茶だ、逆の立場ならば私でさえ助かる為に適当に言っただけと切り捨てることだろう。

 

 本心までは伝わらない、ならば仕方ない、──これまで通り行動で示し証明するしかない、ハレンチ博士もサスケ君も、そしてサクラさん、ナルト君…皆が幸せになる為だ。

 

 全身に力を巡らせ、蛇の尾を大きく持ち上げ勢い良く地面に叩き付ける。

 鈍い音が穴の中に反響する中、足元の地面に仙術チャクラを流し込む。

 

「──来るわよ! ナルト!!」

「分かってる──てばよォ!」

「ッ!?」

 

 穴を這い上る私を見て即座にナルト君の影分身…実に30体以上の数の分身が頭上から降ってくる。

 逃げ場の無い穴の中でこの数を逃れるのは至難だが──こちらの方が少し早い。

 仙術チャクラを流し込んだ地面が鳴動し、ナルト君の分身を跳ね飛ばしながら地上まで一気に隆起する。

 

 届かなかった陽の光が差し込んで一瞬目を閉じそうになるがそんな隙を作るわけにはいかない。

 何とか堪えて周囲を見渡しナルト君達と逆方向へと逃げ出すが…やはりそう簡単に逃げれる訳ではなく、後ろから100体近くの分身が追ってくる気配を感じる。

 以前に会った時もそうだったがナルト君のこのチャクラ量は規格外だ…暁の方々が狙っていることからして何かしらの要因があるのかもしれないが今は気にしている余裕はない。

 

「「逃がすかってばよ──っ!!」」

 

 物凄い気迫と共に駆けてくるナルト君からやはりサスケ君救出の為に並々ならぬ思いを感じるが…この状況は非常にマズい。

 何とか穴から脱出は出来たが仙術チャクラを大量に使ってしまった上に、この大所帯に追われる様子はあまりに目立ち過ぎる。

 今は人通りの少ない場所だから良いが目立つ道に出たらすぐさま他の忍達も駆け付けるだろう。

 

 残るチャクラ量からして上忍、暗部クラスの忍が3人以上いたらもう逃げることは不可能だろう…何とかこの場で完全にナルト君達を撒くしかないが…どうする? 

 手っ取り早いのは小蜃の口寄せだが、目の前で姿を消しても影分身の人海戦術に破られる可能性が高い…使うにしても一度は身を隠した上で使わないと効果は薄いだろう。

 

 先程同様に仙術チャクラで地面を動かして彼らと私の間に壁を造って…という手もなくはないがただの石壁程度

 チャクラの吸着を用いればすぐさま越えられる…それに大きく地形を動かせばそれこそ他の忍達の目に付く。

 ならばどうするか──蛇の胴体を這わせながらあれもダメ、これもダメと冷静さを保ちながらも焦る思考の中一つの策を思い至る。

 

 仙術チャクラは使い方によっては先程の地面を動かしたように生体機能を持たないものを操ることも出来る…ならばそれは地面の様に物体でなくとも出来るのではないか? 

 

 体内の仙術チャクラを口内で練り上げ一つの球体状に留める──そのまま胴体を捻り背後を振り返るとそれを一気に吐き出す。

 空中に浮遊したチャクラの塊は僅かに静止した後、その内側に溜められたエネルギーにより破裂する。

 

「うわぁぁッ!? 何だってばこの音!?」

「耳…それに骨が…」

「ちくしょう!」

 

 キィイイイイインッ!! と鼓膜を襲う甲高い音と骨を軋ませる激しい振動が周囲一帯に響き渡る。

 仙術チャクラに練り込まれた自然エネルギーが周囲の空気に影響を与え激しい空気振動を引き起こした…この振動下の中生身で動き回ることは困難だ。

 もっとも水化の術によって液体化した私の身体はその振動に柔軟に耐えられ、動ける。

 

 ナルト君達が耳を抑え動きを止めている内にすぐさま建物の影に逃げ込むと背後に憑依させておいた"霊剣・飛過刀"を実体化させすぐに親指を軽く切って血を滴らす。

 

「口寄せの術」

 

 小蜃を呼び出すと即座に蜃気楼によって姿を消してもらうと同時に大きめの座布団ぐらいのその二枚貝を持ち上げる。

 数年前までは掌の上にちょこんと乗るぐらいの大きさだったというのに…いよいよ仙人モードが解けた身体にはそれなりの重量だが普段も鍛冶作業で重い物持つのも慣れたものだ…然程問題はない。

 

 …まぁ、今の私の姿は大問題だが…蜃気楼がある内は辛うじて大丈夫だ。

 しかし大技の連続で仙術チャクラだけでなく通常のチャクラの消費だって少なくない…口寄せの際に練り込めたチャクラは普段に比べたら僅かなもの、そう長くない内に小蜃の口寄せが切れることは間違いない。

 

「…早く、あそこに逃げ込もう」

 

 目的地であるうずまき一族の能面堂…里の外れであるその社の位置もそこに人がいる様子がないのも木ノ葉の里に入った際に高所から見渡したあの時既に確認済みだ。

 

 そこに行けば目的の物を回収しつつおまけに少しだが休息をとれるはず。

 息を飲み、覚悟を決めて建物の陰から抜け出すとナルト君達が私を探しているのを横目にその場を後にする。

 周囲に散開した大量のナルト君分身の間をすり抜けて、その先の通りで行き交う人、目を引く露店の品々から目を逸らしたまま里の外側へと急ぎ足で足を進める。

 

 …止む得なかったとは言え、この一日だけで木ノ葉の里への反抗に飲酒に…今の私の状況と、あまりに多くの事をしでかしてしまった気がする。

 

「ちょっと無茶をし過ぎたかな、小蜃?」

『……』

 

 両手に抱える相棒に何気なく聞いてみるが、当然鳴き声すらない貝である小蜃が言葉を発する事はない。

 まぁかりにこの子が言葉は発することが出来るならば流石に今の私の状況からして気恥ずかしくて声を掛けるなど到底出来なかっただろうしこの沈黙が有難い。

 

 さて、そうこうしている内に木造の大きな社に見えてきた。

 その門には木ノ葉の忍の装束に描かれたものと同じ、うずまき一族の家紋が印されており、そこがずっと焦がれていた物のある場所なのだと実感し心臓の鼓動が早まる。

 

 …まぁ通りを歩いていた時からとっくに心臓がバクバクと跳ねていたのだがそれはそれ、蜃気楼で身を隠している以上物理的な感知をされない限りバレることはないのだが念には念。

 そろそろと階段を上り、社の中に足を踏み入れると正面の壁に飾られている27個の般若のお面の中の1つがすぐさま目に入った。

 

 

 

「──やっと…見つけた」

 

 

 

 周りのお面も"それ"によく似ているが、記憶に焼き付けたあの顔と一致するのはたった一つ。

 かつて三代目火影様が木ノ葉崩しの際に穢土転生の術とやらによって呼び出された初代、二代目火影様の魂とハレンチ博士の両腕を封じる為に呼び寄せた死神の…そのお面。

 

 小蜃の口寄せを解いて、空いた両手でそれを掴み取ると今度こそ今までとは比べ物にならないほどに心臓が跳ねるのを感じる。

 長かった…魂を刈り取るあの光景に目を奪われたあの日から、これを手にする為にハレンチ博士の下について3年間…とても良い時間を過ごさせてもらっていたし最高の素材と最高の環境で作品造りに傾倒出来たがそんな中でもこの死神のお面を一刻も早く手にしたいという思いが薄まることはなかった。

 

 激しい渇望が漸く満たされていくのを感じて──その反動か急激に冷静になっていく。

 死神のお面を小脇に抱え、急ぎ足で他のお面達が飾れている壁に手を伸ばすと壁に掛けられた神前幕を引きちぎって腰に巻く。

 

 罰当たりだろうが知ったことではない、こっちも余裕がないんだ。

 

「…これで少しはマシになった?」

 

 正直これでもまだまだ心許ない…というか上半身のつなぎ服に対して布を巻いただけではどうしても違和感が強すぎる、これではこの後外に出ても変な恰好だと目を引くことは確定だろう…隠密行動は到底望めない。

 

 …それでもここにある物を活かして何とか自然な装いに出来ないものか? 

 物造りなどにはそれなりに関心があると自覚しているがどうしてもファッションに関しては実用性のあるつなぎ服ばかり着ていた弊害がこんなことになろうとは…服装にももう少し気を配った方がいいのかもしれない。

 

 小蜃を戻した以上その内感知で見つかるかもしれないし、何とか手早く済まして木ノ葉を後にしなければ。

 …周りを見渡しても神前幕以外に布系の物は見つからない…となると別の方向性でこのちぐはぐな服装の印象を変えるには…

 

「っ! よし、これだ」

 

 神前幕を吊り上げていたロープを切り取って解くと残った般若面にその糸を通して、改めて腰に巻いた神前幕の上からそれを巻き付ける。

 服装の印象を変えるにはやはりアクセサリーなどの装飾品の主張を強めるに限る…その辺り、この般若面達は中々良い物だろう。

 

 これなら身体に巻いた般若面の方が目立つから服装の違和感もなくなって──いや待て般若面がちぐはぐな服装よりも目立つのならそれは完全に本末転倒なのでは? 

 

「…まともな服が欲しいな」

 

 ため息混じりにそう口にするがそれで服が降ってくるわけでもない、諦めつつ外に出ると里の中心と逆側へと向かって歩く。

 傷は浅くはないがそれでも目的の死神のお面は手に入れたし、副産物に写輪眼も大量に獲得した…無茶をした価値は十分にあったはずだ。

 

 あとは…何とかハレンチ博士の下に帰還するだけ。

 鍛冶場以外で自力で仙人モードになるのは苦手だがチャクラが回復次第何度か挑戦して感知範囲を広げれば大まかな位置は掴めるはずだ。

 そして大まかの方角さえ掴めればあとは"首切り包丁"なり"壊刃・遺骨"なり"雷刀・鳴神"なり…彼らが持つ刀の匂いを頼りに向かえば良い。

 

 感知されない様にチャクラを可能な限り抑えて…と言っても既に殆ど使い果たして抑えるまでもないかもしれないがそれでも細心の注意をしつつ、木ノ葉の里から離れるとしよう。

 差し当たりまずはある程度離れたらどこか手頃なところで宿をとるってついでに適当に服を見繕って休むとしよう。

 

 …それにしても──

 

「…早くハレンチ博士に会いたいな」

 

 死神のお面に写輪眼…今後これらをどう活かしていくべきか、幾度に交わすことになるであろう打ち合わせが今から楽しみだ。

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

 湯隠れの里の近く…深い森の中に造られたアジトにて大蛇丸は傍らに立つカブトが顔を顰めたのを見逃さず口を開く。

 

 

 

「落ち着かないようね…どうしたの?」

「彼女がいなくなってからもう暫く経ちます…そろそろ」

「そうね…」

 

 前のアジトに木ノ葉の連中が侵入して来た際、村雨は何を思ったのか奴らについて行った。

 暁にこちらの情報を渡していた事も合わせて更に別の組織に取り入ろうとする…なんてことを思っているとは思わなかったがその真意が分からずどうしたものかと思っていたが、水月が言うには「死神を捕まえに行く」とのことだ。

 

 

 その言葉を聞いた時全てを理解した。

 

 あの娘の目的は自身の両腕を奪ったあの死神を自ら作品に利用すること…その為に、あれの情報がもっとも入ってくるであろう私の下についたのだ。

 以前に屍鬼封尽・解について記した巻物を置いた隠し部屋の壁が壊されていた事からして考えなかった訳ではなかったが…あの死神は術を掛ける者と掛けられる者にしか見えないものであることは身を以て知っていた為、彼女がはっきりとその存在を認識しているとは思えなかった…が、今にして思えばあの意味不明な感知能力を以てすればあり得ないことではない。

 

 しかし疑問なのはここまでずっと隠し続けていたその真の目的を何故今になって簡単に明かしたのか…それだけが中々理解出来なかったが…その答えはおそらく物凄く単純なものだと思い至った。

 天地橋に赴くにあたって村雨に初代火影の細胞を与えたが…要はそれが全てだ。

 

 初代火影の細胞に君麻呂といった最高峰の素材を始め、四人衆や他の部下…その諸々の忍や動植物、あらゆる素材を与えたことで一方的に私を信用できる相手だと認めたのだろう。

 …餌を与えられ慣れた犬か猫の様なもの…と言えば聞こえはマシだが、文字通り山の様に素材を与え続けて、初代火影の細胞を上げたことが漸く決め手になったのだから高く付いたものだ。

 

 仮に初代の細胞を上げなければ或いは死神の面を独占するつもりだったのか…間違いなくそうだろう。

 両腕の封印を解くのを目的としている私だ…目の前に死神の面があったなら封印を解いた上で、二度と掛けられぬ様に自分用に解術の方法は確実に造り出す、そうなれば屍鬼封尽を利用した刀の価値が著しく下がるのは確実…それは村雨としては望まない展開だ。

 

 考えナシに欲望のままに行動しているかと思えば…随分とまぁ面白いことを考える…。

 いや、私を出し抜いてそんなものを狙っていること自体が考えナシと言えるか? まったくいい性格している──しかし、そんな狂人が漸くなついたと思えば…不思議と気分は悪くない。

 

「──そろそろ、良い知らせを持ってくる頃かしら?」

「…随分と期待していますね、木ノ葉の連中に捕まってそろそろ情報が抜き取られきる頃の可能性だってありますのに…」

「クク、単身木ノ葉に潜入なんてバカすればそうなるでしょうね」

 

 村雨がやったことはほぼ確実に霧隠れに暁、私達音隠れ…彼女と関わった全ての組織が彼女の抹消に乗り出してもおかしくない程の愚行だ、それこそ一族で里に戦争を仕掛けるかぐや一族が遥かにマシに思える程のバカだ。

 

「でもカブト…アナタは木ノ葉の連中が彼女を思う通りに扱えると思うかしら?」

「残念ながら、気が付けばひょっこりと帰ってくる気がしてならないですね」

「本当に…どうしてかしらね」

 

 大方木ノ葉の連中は貴重な情報源として連れ帰ったのだろうが…そういうまともな使い方をしようとすると気が付けばおかしくなっているのは経験済みだ。

 はてさて…一体今頃どうなっている事やら、対岸の火事を眺めたい気持ちもあるがいよいよ大詰めになりつつあるサスケ君の育成もある。

 何を仕出かしているのかは彼女自身の報告を待つ事にしようとカブトと話し合い、就寝が早い彼に合わせてその日は下がらせた。

 

 静かになった部屋の中、思わず笑みが零れる。

 うちはサスケは器として十分に育った…あと少しで遂に写輪眼が手に入る、それだけでも感無量だというのに思わぬ形でこの両腕が治る予感に身震いする。

 

 まったくサスケ君が育つまでの暇つぶしに好きに泳がせていたのが始まりだったというのに──本当に退屈しない娘だ。

 

 失ったものを取り戻せる喜びと新たに手に入れる喜び…2つの喜びが沸々と湧き上がり興奮が収まらない、言葉に出来ない程にいい気分なのに、それだけにあと数日があまりに待ち遠してくてもどかしい…そんな複雑な感情に満たされて、満たされて、満たされて──―

 

 

 突如、扉の奥から伸びて来た雷の刃にその身体を貫かれた。

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