ヒーロー物の過剰摂取で暫く燃え尽きてましたw
ハレンチ博士とお会いしたのは3年前。
全ての始まりは刀匠である父と言い争いの末に里を出る事を決心し、自らの刀造りの技術を高める為に見識を広めようと傀儡という独自の技術を持つ砂の里へ加入したことからです。
当時の砂隠れの里は軍縮に迫られていたらしく、忍個々人の戦闘力を高める手段として優れた忍具、特に傀儡と相性の良い忍刀の有用性を買われ招き入れて頂きました。
勿論私は刀造りにおいて忍界一を誇っていますのでこの結果も当然…と言い切るには巡り合わせが良かったのだと今となっては思いますがそれはそれ!
かくして私は霧の里を抜け、五大里として対等な力を持つ砂の里へと身を置くことに成功としたという訳です。
「随分と運の良い…砂隠れが戦力に困窮していなければすぐに霧との交渉材料として利用されていたでしょうに…」
「というか途中の自慢は必要あったのか?」
自画自賛があったのは申し訳ありません。
とにかくそんなこんなで霧改め砂の刀匠として活動を始め当初は暗部衆に監視されながらの商売でしたが傀儡が発展した土地柄か、暫くもすれば周囲にすっかりと溶け込んで"忍具屋といえばここ"と好評を得ることに成功し潤沢な利益と信頼を得て、それと同時に時折風影様を始め優秀な忍の方々から時に商品と交換、時に許可を得ずに肉体の一部を素材として提供して頂き更なる刀造りに邁進する充実した日々を送っていました。
「さらっと風影にとんでもない事を…」
(旦那が風影を暗殺している手前何も言えねぇがな…うん)
そこまでは良かったのです。いえその後も結果的には良い日々を送れた個人的には思っておりますが、想定通りに過ごせたのはそれっきり。
中忍試験が近づいた頃、かつて忍刀七人衆の一人として名を馳せた鬼人・桃地再不斬さんを木ノ葉のカカシさん小隊が討ち果たしたと耳にして、彼が扱った首斬り包丁並びに木ノ葉の白い牙が使った白光のチャクラ刀を一目見たいと思い、それらを持つであろうカカシさんを訪ねて砂漠を越えて木ノ葉へ向かいました。
当時は戦争前、同盟国の者として砂隠れから木ノ葉へ正式な入国手続きを済ませて行った為無事に入ったものの、カカシさんは首斬り包丁を戦利品として持ち帰ったりせず、挙句に白光のチャクラ刀はずっと前に折ってしまったと言う草臥れ儲け。
疲労困憊になりながらも砂漠を越えたにも関わらず成果は皆無!
心折れかけたものの右往左往の果てに近々木ノ葉にて行われるという中忍試験の存在を知り、それを見学しようと暫く木ノ葉に留まることにしました。
そんな最中です──ハレンチ博士にお会いしたのは。
「大蛇丸が出てくる前から既にやらかしが多いのは気のせいでしょうか?」
「まぁ、同盟国の立場を上手く利用して木ノ葉に侵入した事は悪手ではないと思うが…」
「ソウハ言ウガ角都…コノ女、当初ノ目的ハ悉ク失敗シテイルゾ?」
「そうだな、さっきの言葉は取り消そう」
何も言わない内にフォローしておいて一方的に取り消すのはあんまりです。
とにかくそうして私はハレンチ博士とお会いしました…と言ってもその時は刀を口から吐き出すという実に煽情的…じゃない、衝撃的な事をするハレンチ博士に面食らい逃げ別れとなってしまったのですが…
「まさかハレンチ博士の由来はそれなのか?」
「大蛇丸の奴も…まぁ、なんだ…気の毒にな、うん」
あの方と再会したのはそれから一ヶ月以上後…語るも涙の中忍試験本戦での時でした。
同盟国各地から多くの人が集まるその観客席にて商売のチャンスとしてその場で刀を売っていたのですが警備をしていた木ノ葉の暗部の方々に連れ出され立ち入り禁止に!
「至極当然の処置だな」
今にして思えば全くもってその通りですが…当時の私はその対応に反抗、幻術を用いて会場に忍び込むことにしました。
当然、万が一また木ノ葉の忍に見つかっては今度こそ投獄も在り得るだろうと残念ながら刀売りは断念。
誰とも接触の余地もないであろう物見やぐらの屋根に登り、観客席とは一風変わった場所での観戦に集中しようとした矢先の事でした。
それまで風影様に扮していたハレンチ博士が当時の火影様…三代目火影様を強襲し特別観戦席から私が幻術で隠れる物見やぐらの屋根に誘導、配下の4名に結界を張らせ完全に隔離したのです! …結界内に私がいるのに。
結果木ノ葉崩しにおいて最も重要な場、火影様暗殺の場に何故か私も巻き込まれることに!
「お前マジで何がしたかったんだよ、うん?」
「なんかもう一周回って面白いね」
いやいや、笑い事ではなく。
幸い事前にハレンチ博士とお会いしていて多少の面識があって、あの方の情報網のお陰か私の刀匠としての技量を予め認識して頂いていたことで配下の方々が張る内側用の結界に入れて頂いて事なきを得ましたが正直生きた心地がしませんでした。
その後もハレンチ博士の使う穢土転生という術で蘇った初代、二代目火影様と三代目火影様の戦闘はみるみる内に激化…その後は皆さんも知っての通り三代目火影様は討たれるもハレンチ博士もまた封印術を身に受けての痛み分けとなり大きな被害はあれど木ノ葉崩しは失敗に終わりました。
しかし私はその際に見たのです、火影様達の魂を喰らい封印する死神と、その刃を。──刀匠として是非ともその存在を手にしたいという衝動に駆られるままに私は木ノ葉から撤退するハレンチ博士に同行し、あの方の配下となりました。
…全てはあの死神、屍鬼封尽の術の正体を掴む為、自らの両腕を取り戻さんとするハレンチ博士の下ならば確実にその情報が手に入ると思っての事です。
勿論、簡単な事ではありませんでした。
その死神に苦しめられているハレンチ博士にその真意を悟られては情報を秘匿されるやもと思い、あの方の目を盗んでの情報収集の日々…その傍らではハレンチ博士の集めた素材、人材を頂いての刀造り、実に充実した夢の様な日々でした。
…そんなハレンチ博士がお亡くなりになるなんて…あぁハレンチ博士。
「本人は深刻な気持ちなのは分かるがハレンチ博士という名称で進められると内容が頭に入ってこないな」
すみません、少々脱線しました。
そんなハレンチ博士の下で充実した生活を送る中、ある日高度な作業を行ってアジトを爆破してしまって…あっ! 決して私の刀造りの技術が低い訳ではなく、過去に例のない領域へ挑んだ結果の事故であることはご理解下さい。
「大蛇丸のアジトを爆破して生きていることがまず理解できねぇよ…うん」
一応その爆破事故の責任として弁償代を稼ぐということになり、私の作品集を闇市で売り捌くということになり…そこでお会いしたのがデイダラさんとサソリさんでした。
「あそこにいたのそんな理由だったのか!?」
そこからは皆さんの知る通りです。
巨大な刀を造るにあたってその実戦運用を可能にする巨大傀儡を兼ねてより開発を検討していたので、サソリさんからお誘いも頂いた事もあってその闇市の一件から3ヶ月後、ハレンチ博士に内緒にしたまま川の国にてリーダーさんや鬼鮫さん達ともお会いしました。
ただ…サソリさんとデイダラさんに"ハレンチ博士の弟子"と名乗ったことで皆さんが何故か私を自来也さんの弟子と勘違いしていて傀儡開発に協力する代償に交換条件として自来也さんの情報を…と仰ってきたのでどうしたものか悩んだ結果──ハレンチ博士には何も迷惑掛からないし、傀儡開発も進む! 私にとって百利あって一害なしだ! と思い至り乗っかることにしました。
「お前…お前…」
当初は自来也さんの情報をどうやって集めるかはノープランでしたが交換条件が魅力的だったのでつい…
「しかもノープランだったのか!?」
「モウ殺シタ方ガ早クナイカ? ハッキリ言ッテ、コイツハ異常ダ」
私の処遇を決める為のものなので、出来れば最後まで聞いて下さい。
そうして皆さんの手によって造られた同一体"偽雨"を残し、私はハレンチ博士の下へと帰還しようとして、それより早くハレンチ博士の手で回収されました。
ハレンチ博士には私が皆さんと接触していたのがバレていたらしく、皆さんが仕込んだ白ゼツ? さん達をすぐさま対処して、厳しく追及されましたが、皆さんがハレンチ博士の事を自来也さんと誤解していたと伝えたことでむしろ良い状況を造ったということで処刑を免除されました。
「…そんなことあります?」
「もう状況が意味不明なんだけど…結局君どっちの味方なの?」
「ここまでの話を統括すると…大蛇丸に隠れて我々と取引を結ぶも、我々の誤解に気付くや否や自らの有利な立場を得て、更にその状況を大蛇丸に説明した…つまりは一応大蛇丸側の人間だな」
「何で一発でそんな理解できるのイタチ?」
私としても話が早いのは助かりますが…イタチさんってひょっとして凄腕のスパイだったりしますか?
…すみません、また話が逸れてしまいましたね。
そうして全てをお話した結果ハレンチ博士としても自来也さんの情報を渡すことに何もリスクはないと、自来也さんの情報は自分が集めたものを渡すからスパイ役として今の立場を維持するように指示されました。
という訳で晴れて私が自来也さんの情報を3年以内に集める必要もなくなったのでこの3年間はずっと刀を造り続けてました。途中、仙術なるものに興味を持ちその為に龍を素材にと降龍山という場所へ行ったのですが全くの見当違いだった上に偶然出会ったデイダラさんとサソリさんに全てバレてしまって…。
何とか一緒にいた水月という子が上手くその場を収めてくれたのですが、帰った後ハレンチ博士に怒られてしまって…それからはアジトの鍛冶場で軟禁生活を送っていました。
と言ってもハレンチ博士の配下の人達の細胞や危険生物、かつお節などを素材に刀を造っていたので楽しい日々でしたが。
「…かつお節? いや理解出来ないのは今に始まった事じゃないか…そんな事よりデイダラ?」
「せめて責任はサソリの旦那とオイラで6対4の比重で…」
「よし分かったサソリは六尾、お前は四尾を狩ってこい」
「責任が重いなァうん!」
デイダラさんは私が巻き込んでしまった形なのであまり怒らないで頂ければ…。
ともかく続きですが、そうして3年間刀造りを続けていましたが先日ハレンチ博士のアジトに木ノ葉の方々がやってきまして…例の屍鬼封尽の死神を呼び出す面が木ノ葉の里にあるという情報を掴んだこともあって彼らにわざと捕まることで木ノ葉への侵入を果たしました。
ヤマトさん、綱手様…ダンゾウさん、ナルト君…色んな人達の追撃を躱しつつ何とか里外に逃げ果せました。
…その、ちょっと酔っていたのでどうやって逃げたのかは自分でもあまり良く覚えていないので詳しくは話せませんが、その際に衣服がダメになってしまって…何とか近くにあった布を巻いて誤魔化していたのですがやはり心許なくて、…逃げる過程で火ノ寺で物乞いをしようと思っていたところ角都さん、飛段さんに拾って頂いて…こうして皆さんとお会いした…という訳です。
…以上、私の事情を全て話せという要望にお応えしました。
▼▼▼
「…ご苦労イタチ…いや、ゼツ」
村雨の話が終わると角都は自身の隣に立つ写輪眼を宿した男、イタチへとそう声を掛ける。
当然、人柱力狩りの為世界各地へと散らばっている暁のメンバーであるイタチが村雨という突然訪れた存在の為にすぐさま駆け付けることなど本来出来るはずがない。
この場にいるのは地中移動によりあらゆる障害を通り抜け、広範囲の移動が可能であるゼツの片割れ、白ゼツが寄生分身と成り代わりの術という独自の忍術によりイタチのチャクラ性質と術をコピーした分身であり、本物のイタチはこの遠距離集会が始まった時から一歩として動いていなかった。
「成り代わりの術じゃ本人よりは術の精度も質も大きく劣るからどうかと思ったけど、驚くぐらい簡単に口を割ったね」
大蛇丸をうちはサスケが殺したと話した途端に「ならば暁の皆さんに協力することを惜しむ理由はありません」と秒で寝返った村雨だったが、これまで自分達を欺いていた事は事実であり、上司が死んだ途端すぐさま所属を乗り換えようとする者を当然この場の誰もが信用できず、ひとまずこれまでの経歴全てを吐かせようとした結果がイタチをコピー可能にした白ゼツを送り込み、その幻術で口を割らすという手段を取った。
…取ったのだが…想像を絶するレベルに意味不明な経歴に皆辟易してしまった。
何なんだこいつは?
なんで五大里間を考えなしに移動し続けて、木ノ葉崩しでの火影暗殺の場に紛れ込んでいたんだ?
おまけに大蛇丸を恩人と語り義理を通すと言っていたがさっき語った内容に大蛇丸に義理を通していた内容が皆無だった、むしろ裏で色々やり過ぎだろう何で死んでないんだ?
経歴は分かったが理解が出来ない。
一癖も二癖もある者達が集まった組織だがこんな奴は初めてだ…元々従えていた偽雨も唐突に茶屋を開いたりと意味不明な行動をする奴だったがそのオリジナルがまさかここまでとは…と皆揃ってため息を吐く。
唯一昔に付き合いがあった鬼鮫ですら大蛇丸との関係性については面喰ってしまったが他と比べてそれなりに慣れていた為一早く立ち直るとゆっくりと口を開く。
「…で、どうしますこの奔放娘?」
「──正直に言って信用に値しないな。このままゼツに情報を抜き取らせて殺すのが妥当だとは思うが…」
彼らを束ねるペインは何とか冷静にそう判断を下す。
暁、大蛇丸を欺く胆力はある意味では類稀なる才能と評価出来なくもないがそのリスクを考慮しない様な者は組織で飼うには不和を生む存在でしかない、処分を躊躇う理由はない。
…が、そう言った無慈悲な決定をするには一つ問題がある。
そう、自分達が欺かれた原因は他でもない自分がこの娘の言うハレンチ博士という大蛇丸の愛称を自来也のものだと勘違いしたことだ。
全てを語らせた今、この娘を殺せばさながら自身の失態をもみ消す為に殺した情けない図式にしか見えない…。
考え過ぎ、とも思うが自らを"神"と定義する以上相応の威厳は必要…正直ハレンチ博士なんてバカみたいな名前に騙された時点でもう神として威厳も何もない気がして顔がグニャグニャに歪みそうになるが必死に堪える。
「まずは大蛇丸を見限ろうと思った理由からだな、それがまた欲望任せな理由ならば信用に値せずと決めるには十分だ」
「…なるほど確かに。──村雨、もう気が付いているでしょう?」
▼▼▼
鬼鮫さんの呼びかけにぼんやりとしていた意識がハッキリする。
どうやら幻術の影響下にあったらしい…対人スキルの大部分を水化の術に頼っている弊害か、幻術が相手だと本当に打つ手がない。
状況からして恐らくこれまでの私の動向を喋らされたと見るが…まぁ今となっては大したことではない。
それよりも…次の問いに応えるのが優先だ。
「ハレンチ博士はサスケ君の身体を乗っ取ろうとしていました…そのサスケ君が拒み、反旗を翻したのならば…それは仕方のないことですから」
例えば香燐さんや重吾さんといったハレンチ博士の庇護下にいた人物が自分勝手な理由でハレンチ博士を裏切ったのならば…好き勝手やっていた私がどの口で、と思われようとも彼らを咎めたやもしれないがサスケ君の場合はある種の正当防衛…いや、正確には利用し利用されの関係がどちらか一方に傾いてしまった結果だ。
お世話になったハレンチ博士に対して不義理であるかもしれないが彼らが生きる忍の世界ならば…それも仕方のないことなんだ…。
ハレンチ博士の事は大好きだったし、漸く死神の面や写輪眼を手に入れた喜びを分かち合いたかった…叶うことならば水月の起ち上げる新生七人衆に加わって…ずっと同じ道を歩きたかった。
それでもハレンチ博士の道が途切れてしまったのならば…私は新たな道を歩かなければならないんだ。
「ハレンチ博士の下で学んだことは何一つ無駄にはしない、あの方が積み上げてきたこれまでの全ては私が引き継いでみせる…だから私はハレンチ博士の死さえ乗り越えて新たな道を征く。…それに、あのハレンチ博士ですから、もしかしたらひょっこり蘇ったりしそうですから」
胴体が千切れてもすぐにくっついたり、綱手様の怪力を受けても生きていたり…あの人が死ぬというのはやはり想像が出来ない…それが都合の良い望みであったとしてもだ。
だから、彼らが口にした事だけは否定しなくては。
「見限ったのではありません、忠義があり、尊敬があり…信じているから私はあの方と別の道を進める…私の目的は至高の刀を造るという一点のみ。ハレンチ博士の死を知ったからとそれを揺らがしてはハレンチ博士が認めてくれた私ではなくなってしまう…ですからどうか、これからよろしくお願いします!」
ハレンチ博士亡き今、音隠れという組織は統率は不可能、事実上の解体だ。
ならば私は霧、砂、木ノ葉の里から身を隠す為の新たな組織の力が必要…ならばクシナダの件もあるし岩、雲隠れの里以上にこの暁という組織は都合が良い、いやむしろ、これ以上の組織など存在しない。
だから、これまでの行いが彼らにとって信用するに値しないものであり疑われているとしても退く訳にはいかない。目の前に広がる新たな道…その道を歩む方々へ深く深く頭を下げて懇願する。
(ハレンチ博士…貴方の下で目指した領域に私は必ず辿り着く、例えそれがどれ程険しい道であろうと──だから、さようなら)
一抹の寂しさを覚えながらもそれを振り切って前を見据える。
果たしてさっきの主張で信じて貰えたのか…虚ろなホログラム状の姿からはその内心は欠片も窺えないが──角都さん、飛段さんに指示が出ていないということは許されたのか?
…
……
………
「………いいだろう」
やったあああああああああっ!!