霧隠れの狂人   作:殻栗イガ

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因果応報

 偽雨が遺した"茶屋・刀架"にて横並びになったお客様へ茶をお出しする。

 三尾捕獲が完了したと報告したのが数十分ほど前、リーダーさんが目の前に出現させた謎の石像の指先に暁に所属する全員の幻影が集まった。

 …ただ、それと同時にデイダラさんとトビさん、そしてイタチさんと鬼鮫さんの本体の方も茶屋の方に到着し、彼らは本体での集合という形をとったようだ。

 

 それというのも封印完了までのおよそ3日、ただ座り続けるだけならここにいた方が楽だし、何だかんだで安全性も間違いないのだから利用する…とのことだった。

 一方で角都さん、飛段さんはどうやら戦闘中だったらしく幾分遅れての集合で、本体の方もこちらに向かうことは出来なかったらしい。

 

 招集がかかるとここに来る鬼鮫さん達や、トラブルによって来れなかった飛段さんから不満の声が出たりと偽雨の貢献振りを改めて実感するばかりだ。

 

 やはり天才かと、今は亡き偽雨へ心の内で賛辞の言葉を送っているとリーダーさんの指示でデイダラさんから指輪が送られた。

 ハレンチ博士のアジトから回収したあの方が持っていたものだ。

 

 三尾を捕えたことで正式にメンバー加入をさせて頂けるとのことだが、正直実際に戦ったのがサソリさんであることを考えると少し気が引けた。

 しかしサソリさん本人が大蛇丸の後釜として再加入なんざ御免だと拒否されたこともあって、ならばあの方の部下として堂々とその席を授かることにした。

 

 

 

 …までは良かったのだが。

 

 封印が始まるやいなや、「何か、1人増えた割りにいまいち負担減らなくねぇか…うん?」とか「むしろチャクラの均衡が乱れて若干進み悪くなっているようだ」とか「これなら合間合間にお茶出して頂いた方がよっぽど楽ですねぇ」…などという評価が下され正式メンバーになったにも関わらずお茶係に落ち着いた。

 

 あんまりだ、むしろ私にとって封印術は刀造りの際に用いることも多くそれなりに自信はある方なのに…。

 そもそも封印術なんて高度かつ専門的な術をぶっつけ本番でやれというのが無理がある、組織である以上新人にはちゃんと教習期間を設けてほしい。

 あ、でもサソリさんの後釜として入ったトビさん何かはごく普通に封印術を行使されている…タイミング的にも私とほぼ同期といっても差し支えないはずなのに…

 

 途端に無力感に襲われながら偽雨のメモを頼りにお茶を鬼鮫さん達にお渡しする…がイタチさんが小声で「少し濃いな…」と呟いたのが聞こえる。

 ほぼ同期の新人が活躍しているにも関わらず本業には関われず、お茶係としても偽雨に劣る…今度こそ心が折れそうになる。

 

「この仕事向いてないのかも…」

「まぁ三尾を捕獲してきてくれた以上もうノルマもないんだ、確かに出来ればもう少しまともに封印術にも貢献して欲しくはあったがそれが出来ないならお前はもう本来の仕事に専念してくれたらそれで良い」

「リーダーさん…もっと美味しいお茶が出せるよう精進します」

「期待している」

 

 思わず前の職場が恋しくなってしまったがリーダーさんから思わぬお言葉を頂いて胸が熱くなる、なんとイタチさんからも温かい声援を貰えてしまった、やはり新しい環境に慣れないからといってクヨクヨしてはいられない、実力が及ばないならば少しでも出来る事を磨くべきだろう。

 

「…あの、イタチさん。リーダーが『いつからお前の本来の仕事がお茶係になったんだ』と言いたげなのにあなたが変に声援を送ったせいで言葉に詰まっていますよ」

「……すまない、前の味の方が好みだったもので、ついな」

 

 確かに良く見たらリーダーさんが幻影でも分かるぐらいに困ったような表情をしている…それにしても偽雨のメモにあったがイタチさんは本当にお茶とお茶菓子に拘りがあるらしい。

 好き嫌いがあるわけではないが、それでも美味しい方が良い…というのは一般的には当たり前の感性ではあるが暗部などには栄養があってお腹が満たせればそれで良い、と食事を作業としてしまう人も多くいる。

 しかしやはり食文化というのも長い歴史の中で研鑽されてきたものだ、折角食べるのならばより良い物を望む姿勢がある方が個人的には好ましい。

 

 その為にもやはり偽雨の腕に追い付けるように精進せねば…と思ったのは確かだが、それはそれとしてリーダーさんの懸念も払拭しなくては――

 

「勿論、今回の三尾との戦闘データを基にクシナダの改良は並行して行います…それと、ハレンチ博士のアジトから回収した素材も沢山あるのでそれらを使って刀の作成にも着手します…馴染みの子からあと2万本ほど要望を受けていますが、必要でしたら皆さんの分のクナイから刀までお造りします」

「二万本?…まぁ良い。必要を感じたら追って連絡する」

 

 その後は何やら木ノ葉の忍との戦闘中に呼びつけられた件で飛段さんが呟いた不満から暁の目的へと話題が発展していった…私としても暁という組織の目的は知らぬままだったこともあって助かる…と思っていたのだが。

 

 簡単にまとめて3つの段階

 

 その一段階目が資金集め。

 目的の為には莫大な金が必要とのことだがこちらは既にある程度は済んでいるらしい。

 …正直もしかしなくとも私が一番貢献出来たのってこの第一段階だったのでは、と思わなくもない。

 

 そして第二段階。

 そのお金と尾獣の力を利用して忍界初の戦争請負い組織を造り、全ての戦争をコントロール、独占支配すること。

 正直現実味の無い話だと感じるがその一方でその計画には現代における大国さえも進めつつある軍縮傾向を思えば一概に否定仕切れない話だ。

 現にその軍縮傾向によって切迫したことで砂隠れの里は音隠れと組んで木ノ葉崩しを実行に移したほどだ…現代において国と里の関係性は崩れつつあるのもまた事実なんだ。

 

 だからこそ第三段階、暁という組織に最終到達点――"世界征服"さえも現実になり得るかもしれない。少なくとも私にとってはそう思えた。

 

 国に属することで安定はあれど制限の多い大国の忍とは違う、まったく新しい武力組織。

 当然表立てば五大国を始め多くの敵が現れるだろうが、今や彼らには莫大なお金と強大な尾獣の力が集まりつつある…仮に五大国との戦いを征したならば、世界征服とて実現するだろう。

 

 戦争…私にとっては木ノ葉崩しの時ぐらいしか馴染みもないし、あれ自体早期に終戦した為忍界大戦ほどの大規模なものは想像のものでしかない。

 ただ刀の需要が高まるであろうこと自体は喜ばしいことだが、あちこち渡り歩いた結果各忍里に知り合いが出来たこともあって彼らが危険になり、生き残れたとして忍里というシステムが崩壊してしまえば路頭に迷うことになるかと思うと少々申し訳ない。

 

 だがそれを差し引いても"世界征服"という大望を実現させようというリーダーさんに尊敬の念を抱く。

 それが善悪はともかく、その野望の大きさは好きだ。

 世界征服…もしもそれを成し得たならば、世界全てがそれを成した者の作品と言えるようになる。

 人々の暮らし、文化に芸術、それらの環境すべてが1人の人物によって造られる巨大な作品…果たしてそれはどれほど美しいものになるのか、それともただつまらない作品となるのか…予想が出来ないだけに興味が尽きない。

 

 その後は組織の目的の共有を済んだことで黙々と封印を進める皆さんに軽食を用意しつつ封印を見守る日々が続いたが3日目となり漸く終わりが見えてきたらしく、リーダーさんが今後の仕事を各々に割り当てていた。

 その内容によると鬼鮫さんとイタチさんは四尾の確保、飛段さん角都さんは木ノ葉へ向かい、残りの人達は六尾、八尾、そしてうちはサスケの情報集めと割り振られていた。

 

「すみません。そのサスケ君のことなのですが少し様子を見て頂くことはできませんか?」

「どういうことだ?」

「サスケ君の目的はイタチさんですが、実は先日ハレンチ博士のアジトでカブトさんとお会いして…彼がサスケ君を木ノ葉へ連れて帰るつもりなのだと仰っていましたので」

「オイオイ、カブトっつったらサソリの旦那の元部下なんだろ?裏切って大蛇丸側についたって話だったが今度はどういう風の吹き回しだ?うん」

 

 うぅむ、思わず口を挟んでしまったが説明が少し難しい。

 そもそもカブトさんは元々ハレンチ博士側の人間だったし、もっと言えば木ノ葉の根に無理やりながら所属していた人だが、どこから、そしてどこまで話せばいいのか。

 

「うちはサスケが無害になるならそれでも構わんが、暁としても裏切り者の薬師カブトの言葉を鵜呑みにする理由もない。情報収集をしてうちはサスケを含めて木ノ葉に帰ったという情報が掴めればそれで良し。もしもそれより先に連中を見つけた場合は拘束、もしくは抹殺しろ」

 

 …まぁ、流石にそうなるのは仕方ないか。

 むしろ無害と分かれば狙う必要もないと言ってもらえただけ落としどころとしては上々か…。

 

「オイラがぶっ殺すはずだった大蛇丸を殺しやがったんだ、うちはサスケこそはきっちりオイラが殺してやるつもりだったんだがな、うん」

「まぁボクのノルマもまだなんですしそっちの方に付き合って下さいよデイダラ先輩」

「あぁ、そういえばトビさんのノルマはまだなんでしたね…クシナダの改良の件で出来ればデイダラさんに協力してほしい事があったんですが」

「うん?傀儡は旦那の専売特許だろ、オイラに何の用だってんだ?」

「少し爆発…というより花火?でしょうか…とにかく爆発の演出に少し拘りたくって、今の状態だとサソリさんに納得して頂けなくて」

「そりゃ確かにオイラの専門だな。丁度ここにいるんだし見てやるぜ、うん」

「デイダラ先輩!?ボクのノルマ終わってないんですってだから!!」

 

 うん、クシナダの時も思ったが専門的な部分はその道の達人に協力を仰ぐのが一番だ。

 出来る事ならば自分1人で造り上げてみたくもあるが、それで完成度の劣る物となっては何より作品が可哀想だ。

 

「…そろそろ五大国も暁に注目し出す頃だ。あまり寄り道をし過ぎるなよ」

「ったりめーだ。爆発に関して多少教えてやるぐらいでそんな時間は掛けねぇよ」

「けっ、俺達ぁこの後真面目に木ノ葉に向かうってのによォ」

「そう言うな飛段。村雨、後でサソリに実用可能になったのなら近いうちに俺も乗せろと言っておけ」

「角都!?お前もそっち側なのかよ!?」

 

 そうだ、角都さんは大事なスポンサーだ、今も裏で整備しているサソリさんにちゃんと伝えておかなくては。

 何やら気が付けばデイダラさんとトビさん、飛段さんと角都さんがそれぞれ言い合いを繰り広げているのが気になるが、まぁそのうち収まることだろう。

 

 それよりも、三尾の封印がどうやら完了したらしいが――こっそりと回収しておいた(サソリさんにはバレているが)三尾の甲殻の破片について彼らから特に言及されることもなかったし、封印についても異常はないようだ。

 

 もっとも今まで尾獣の捕獲の方法が今回の様な戦闘での拘束なのだとしたら捕らえた尾獣達の全てが無傷での捕獲に成功したとは考えにくい…それでもここに至るまで彼らの計画が進んでいるのだからこの結果も当然といえば当然だろう。

 

 ともあれ三尾の持つ源龍にも匹敵するチャクラ量と何より頑丈な身体…どちらもクシナダの強化に向いた素材が手に入ったのは僥倖だ。

 …いや、待て。そういえばダンゾウさんの腕から斬り落としたあの写輪眼付き巨木も巻物に回収したままだった。明らかに普通の木材とは掛け離れた力を感じたが、それでも木という素材で考えればクシナダの強化としてはあちらの方が適している可能性もある。

 

 だとするならば三尾の素材は別の刀造りの素材とするのもアリだ。

 しかしだとすると三尾の一部に加えて写輪眼に屍鬼封尽、そして穢土転生…まったく、次はどれから手を付けたものか実に悩ましく楽しい限りだ。

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

 

 三尾の封印が終わるや否や途端に騒々しくなった周囲の状況に鬼鮫は思わず笑ってしまう。

 何をどう間違えたのか、巡り巡った結果暁の正式メンバーとして衣装どころか指輪さえも与えられた村雨もそうだが、早くもメンバーの一部が彼女の影響を受け始めている。

 

 いや、この茶屋や例の巨大傀儡も含めて三年前の偽雨が造られた時から徐々に徐々に入り込んできていたのか、本人にその気はないのだろうが、回りくどいを通り越して意味不明な混じり方だ。

 

 …村雨自身はこうして自分の要求にデイダラ達が協力的なのもリーダーが承認するのもただ彼らが意外と親切な人達なのだろう、なんて危機感のない認識をしているのだろうがそうではない。

 

 そもそも自来也の弟子などと欺いていた彼女を迎え入れたのも当時霧隠れが保有するものと思われていた六尾を確保する際に霧隠れへのパイプを造る交渉カードとして使えるかも…という思惑があったからであり、そうでなければ情報を抜き取るだけ抜き取って終わりだったはずだ。

 

 生憎自分は里抜けして暫く経っており、おまけに認めたくもないがかつての直属の上司を殺したこともあって他里との交流をしない霧隠れの情報を掴むのには難儀していたこともあり都合が良かった…が、暫く前にその六尾の人柱力も数年以上前に里を抜けたという情報を掴むに至り、今や彼女を抱えておく理由もなくなった。

 

(――はずだったんですがねぇ)

 

 用済みになったかと思えば先日彼女が大蛇丸のアジトに戻った際に穢土転生の術を記した巻物を入手したのをトビが確認した…という情報がリーダーから全員に伝達され、貴重な穢土転生の術の書を確実に奪取する為にも引き続き飼うことが決定した。

 

 中には幻術をかけて奪えば早いのでは…という声もあったが、その頃にはクシナダ実用化の為にサソリ共々引き籠った挙句に今回三尾を狩ってきたこともあって組織として結果を残してしまった。

 仮にも組織に貢献した者に幻術を掛けて操るとなると、他のメンバーとて暁という組織に懐疑心を抱くようになってしまう…と、内心思ったのか。それとも他に理由があるのか…とにかくリーダーは現状保留という結論を下したのだった。

 

 

 まったく、運が良いというべきか末恐ろしいというべきか…感心するばかりだ。

 

 

 

 だが、その危機感のなさで果たしてどこまで生きていられるのか。

 望むままに生きること…それを悪いとは言わない、むしろそうやって自ら道を選べる彼女の愚直さにほんの少し羨望する時もある。

 

 …だが、その先に待つ破滅は一体どのようなものなのか。出来る事ならばどうか自分が幕を引くことにならなければ良いのだが――

 

 

 六尾の人柱力の情報を探る際に入ってきた別の情報。

 

 先日五代目火影は木ノ葉での彼女の行動を霧隠れの里に報告した。

 あくまで保護し霧隠れに引き渡すべきか、霧隠れが処断するのを待つべきか…それとも他里含めての指名手配とするのか…それを木ノ葉としては霧隠れの決定に委ねるとした。

 

 どういう訳なのか、状況に対して木ノ葉は異常なまでに甘い処置を取ったものだが、それに対して霧隠れはすぐさま以下の結論を他里に流した。

 

 

 

 

 

 渦柘榴村雨を全国に指名手配し、無事に引き渡した者には特別報酬を譲渡する。

 …なお、抵抗する場合は抹殺を許可するものとする。

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