霧隠れの狂人   作:殻栗イガ

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NARUTO TOP99という投票企画があることを最近出遅れながら知りました。
第1位のキャラにはショート漫画が描き下ろされるらしいので皆さんも是非好きなキャラに投票されてはいかがでしょうか?

それはそれとして今年最後の投稿です。
改めまして今年1年、本当にありがとうございました。


宿命対決 怪人VS鬼人の再来!ー暁就職決定戦?ー

 リーダーさんと分かれ、雨隠れの里を1人歩く。

 リーダーさんからは次の指示があるまで仕事場で待機と言われたが…時間は昼過ぎ、真っ直ぐ帰るよりも多少何かしら食べておきたい気はする。

 独特な建造物が並びどこが住居でどこがお店なのかも分からないがそれでも人が住まう里である以上飲食店ぐらいはあるだろう…出来ることならば雨隠れの里特有の料理を食べてみたい。

 …と、思っていたのだけど本当にどの建物がお店なのか分からないままに里の出口に向かいつつお店探しをしていたらいよいよ建物も人通りすらもなくなってしまう。

 

 どうしよう、早く帰るように仰っていたリーダーさんには少し申し訳ないが上層に戻って素直に人に尋ねるかここは諦めて途中の里に立ち寄るか…

 どちらにしたものか決めあぐね、足を止めていると向かいからやってきた二人組の男性の話声が聞こえてくる。

 

「雨がひどいな」

「一杯やるついでに雨宿りでもするか?」

 

 雨宿りのついでに一杯では? 

 目的とついでが入れ替わっている発想に疑問が湧くが酒飲みというのはそういう風に色んな目的を押しのけてお酒を楽しむものなのだろうか…褒められたものではないと思うが、そうやって好きなものをとにかく楽しむという姿勢はどこか気持ちの良ささえも感じる。

 

「この辺りは最下層で店なんかありゃしねーよ、上に行くしかねーな」

 

 あぁやはりこの辺りにはお店はないのか…

 

「じゃあ雨宿りしに上に行くしかねぇな、雨に濡れながらな…──お!」

 

 ふと男性達が看板の前で足を止め、何やら一頻り盛り上がってどこかへ向かっていく。

 何かあったのかと看板へ歩みよれば本日開店のクラブ"フロッグ"というお店の看板だった──バーカウンター有り、飲み放題500両か…。

 

 …残念ながら私は未成年、度々選栄蛇酒を口にしているとはいえど本来お酒を飲んで良い年齢ではないから駄目だ。

 

 

 

 と、言うのは浅い考えだ。

 霧の里を出て暫く各地で食事を繰り返した私は知っているんだ、お酒の店で出てくる一品料理は非常に美味しいものが多いのだと。

 たとえお酒が飲めなくても水と料理だけで十分楽しめる、それが酒場というものだ。

 

 そうと決まれば早速行動だ。

 以前とある場所で立ち寄った酒場が冷奴一つが200両、焼き鳥に至っては500両もしたトラウマが思い起こされるが幸いこの店は飲み放題だけで500両…価格は良心的なはず…というか、あの居酒屋さんの価格がどうかしているだけの気がする。

 

 いや、過去の事は忘れる…には手痛い出費だった為教訓にするとして、早くこのフロッグというお店に向かうとしよう。

 

 

 

 …あぁいやでも、折角の開店記念日のクラブにお酒も飲まず料理ばかり頼む人が来るというのは如何なものだろうか? 

 飲み放題ともなれば給仕も繰り返しの対応になるはず…開店記念となれば客足も多いはず…一品料理を楽しむのも酒場の楽しみ方だとは思うが、それでもやはり本来はお酒を楽しむ場所。

 料理を注文し過ぎてあの二人組の男性を始め、お酒を楽しむ本来のお客様にお酒の行き渡りが遅れれば盛り上がりを邪魔してしまうかも? …そうなれば折角の開店記念日であるお店のスタッフさん達にとっても大切な1日を台無しにしてしまうかもしれない。

 

 …仕方ない。提供するものは違えど同じお店を持つ者として今日ばかりは遠慮しておこう。

 どうか末永いご健勝と発展があります様に…看板に祈りを捧げてその場を後にするのだった。

 

 

 

 それから数時間後、雨隠れの里を立ち去り鍛冶場に向かい、時に山道のお店で軽食を挟みつつ移動を続けていていたのだがふと足を止める。

 

 遠く離れた場所で微かに二つの気配がした。

 一つは重い鉄の気配…血を吸収する能力故に血の臭いがしない刃"断刀・首切り包丁"

 もう一つはまるで生物の様な…刀が本来持ちえない異質な気配…"大刀・鮫肌"

 

 二つの刀が徐々に徐々に近づき合っている。

 それはつまり、その持ち主達が今まさに相対しようとしている証拠だった。

 

 集中して気配を追えば"雷刀・鳴神"…サスケ君に渡した刀の気配まで感じられる。

 …ということはデイダラさんの自爆とやらを何かしらの手段で生き延びたのか? …だとするとサスケ君もまた自身の目的であるイタチさんの下へ向かっているのか? 

 

 いよいよ決戦の時ということか…ならば私も行かなければ。

 それぞれの戦いを、見届けに。

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

 

 うちはイタチが弟、うちはサスケへ告げた「うちはのアジトで決着をつけさせてやる」という宣言。

 それを臨まんとするサスケに従い、共に"蛇"という小隊を務める香燐、重吾と共に移動を続けていた水月は目の前に現れた相手を見て口角を吊り上げた。

 

 

 

「ここからはサスケ君1人で行って下さい。──そういうイタチさんの命令でしてね」

 

 門番の如く立ちふさがる男の言葉に従いサスケは静止を掛ける香燐に待機命令を出して1人先へと進んで行った。

 …が、それも自分からすれば好都合だった

 

「干柿鬼鮫…そして"大刀・鮫肌"」

「うん?」

「忘れたか? 鬼灯満月の弟、鬼灯水月だよ」

「おお! 見違えましたよ! 大きくなりましたね水月」

 

 こちらが名乗れば驚き半分に笑うその顔はさながら祭事で会う親戚の様だった。

 

「大蛇丸の下にいたと聞きましたが…あの娘も一緒だったのでしょう、随分と苦労したことでしょう」

「そりゃもう散々だよ。ま、そっちも大概だったと思うけどね。あのバカ増やしたり雇ったりで大変だったらしいね?」

「ククッ、アナタがきっちりとお目付け役をしてくれていれば我々が被害を被ることもなかったんですが…まぁそれを求めるのは酷というものですね…あぁ、引き取りに来られるならリーダーに話を通しますよ」

「冗談! ──って、え? アイツ今アンタらのとこいるの?」

「おや、知らなかったのですか? …あぁ、そういえば木ノ葉に殴り込みを仕掛けて逃げ出した後に成り行きで角都達に会ったとか言ってはいましたね」

「何してんのさあのバカは…」

 

 この場にいない刀バカの話が出て互いに辟易とした表情を浮かべる…まるで本当に祭事での近況報告だ。

 このままこちらが思い出話を続ければ恐らくこの男はそれはそれで気前よく付き合いそうだとまで思わせるが──それじゃつまらない。

 

「──まぁ色々とツッコミたいとこではあるけどさ、折角こうして会ったのに世間話なんてのも間抜けだからさ…サスケを待つ間楽しく遊んでもらえないかな、鬼鮫先輩?」

「お兄さんと違ってやんちゃですね…少し削ってあげましょう」

 

 そう言って鬼鮫先輩はゆっくりと背負っていた鮫肌を構えた──そうこなっくちゃ。

 

「水月、サスケの待機命令を守らなくていいのか?」

「別にいいでしょ、ボクとサスケはあくまで協力関係…従う必要はないしね。そんなことより重吾、これ預かっててくんない?」

「うん? 首斬り包丁を使わないのですか?」

 

 後ろに控えている重吾に首斬り包丁を投げ渡せば重吾以上に鬼鮫先輩の方が驚いて目を見開いていた。

 

「…もしや、私を相手に素手で? 舐められたものですね」

「早とちりだよ鬼鮫先輩。大振りな首斬り包丁じゃ鮫肌の相手は不利だから別の物を使うだけさ…最強の刀が最適な訳じゃない。その辺り最適な物を用意できるのが苦労した分の恩恵さ」

 

 ローブの中に隠した巻物を開き二対の刃を口寄せする。

 2本の金色の小太刀、首斬り包丁と比べたら非力に映るが…この刀こそがアイツがこの戦いに備えて準備し、4万本注文した中で唯一事前に受け取っていた刀だ。

 

「…村雨の作品ですか、一体その小さな刃にどんな仕掛けをしてあるのやら──楽しみですねぇ!」

 

 警戒と期待…相反する二つの感情を込めた殺気を纏い鬼鮫先輩が電柱からこちらの屋根の上へと飛び移って猛進してくる。

 正面からの大振り、油断している──訳がない。

 

 この刀を造った奴にそんなことをしていると碌なことにならないのは互いに知るところだ。

 鮫肌の刀身が脳天に届く直前に一瞬にして鬼鮫先輩は太刀筋を止めて背後に回り込んでくる──正面からの振り降ろしではなく背後から横薙ぎ。

 

 すぐさま背後へ振り返り二本の刃で受け止めると耳に響く金属音と両腕を襲う痺れに思わず顔を顰める。

 

「ほぅ…受け止めますか。首斬り包丁を使っているだけあって筋力は鍛えられているようですね」

「へ、こんな程度で感心してたらキリないっての!」

 

 刃を滑らせて鬼鮫先輩の首目掛けて振り抜くが刀身の短さもあって僅かな動作で避けられる。

 

「…チャクラを使い刀身の長さを補う…かと思いましたがそうでもない。一体どんな刀なんです、それは?」

「教えてあげない…自分で推理してみなよ! 斬り合いながらね!」

 

 大刀と二本の小太刀がぶつかり合う。

 長い斬り合いの中で少しずつ戦いの癖が見えてきた…こちらが小型の刀故の連続攻撃と回避の繰り返しに対して鬼鮫先輩は回避を殆どしない…攻撃と…こちらの攻撃に対する防御。

 

 そりゃそうだ、大刀・鮫肌はチャクラを喰らう。

 こうして刃を交えるだけでこちらのチャクラはガンガン減っていく…攻撃と回避、そして攻撃を受け止められる度にチャクラを削られてやがてこちらが先にスタミナ切れで潰れる。

 

 …腹立つことに村雨の思った通りだ。まぁ、だからこそ…勝ち目が見えてきた。

 

「そろそろ疲れてきたでしょう──鬼鮫先輩?」

「っ! …どういう事です、これは?」

 

 斬り合いを止めて鬼鮫先輩が後ろに飛び退いて鮫肌を一瞥する。

 戦闘が長引けば長引く程チャクラを喰らいボルテージが上がっていく鮫肌が戦闘を始めたばかりとまるで変わらず静かなまま、その異変に気付いた様だ。

 

「…チャクラを吸えていない? それがその刀の能力ですか?」

「そうさ、この刀"叢蜘蛛の剣・金雲"は特殊な金属で造られていてね。チャクラを通さない性質を持っている」

「チャクラを通さない…なるほど」

「鮫肌にこの刀を通してボクのチャクラを喰わそうにもこの刀自身がボクのチャクラに栓をしているのさ…直接当てればともかく、斬り合いではボクのチャクラは奪えないよ。そして、もう分かってるでしょ? 小太刀二本で立ち回るボクに対して鬼鮫先輩はそのデカい鮫肌を振り回さなくちゃいけない…お得意の持久戦は出来ないね」

 

 現に今、先に呼吸が乱れ出したのは鬼鮫先輩の方だ。

 鮫肌による持久戦は潰した、残る手段としては斬り合いではなく直接のヒットを狙ってくる可能性だが…今のところ接近戦では互角、斬り合いが不利と分かればその選択肢はとらないはず。

 ──となると次は忍術がくるはずだ…だが、それはさせない。

 

 鬼鮫先輩が背後に下がった分の距離を一気に詰めて両手に握る刃を振るう。

 

「チィ…」

 

 鮫肌によってこちらの刃は受け止められるがそれでいい、接近戦で印を結ぶ隙は与えない。このまま一気に攻め立てて片腕だけでも負傷させる。

 そうすれば鮫肌による回復も出来ない今、術も刀もどちらとも潰せる! 

 

「…水月の奴、押してるな。これならサスケの援護にも…」

「いや、ここまでは彼女も水月も確実にいけると踏んでいた。問題はここからだ」

 

「──っ!」

 

 後ろの重吾が懸念を口にした直後──それが現実のものになった。

 攻め立てていた双刀の連続攻撃、その最中に鮫肌が大きく振るわれて諸共背後まで吹き飛ばされ電柱に背を打ち付ける。

 鈍い背中の痛みに歯噛みしながら前を睨めば鬼鮫先輩はむしろここまでの戦いに落胆したかの様にため息を吐いた。

 

「…鮫肌を封じる策を練ってきたことは一応褒めておきましょう。ただ奇策を狙うあまり肝心なことを見落としている…チャクラを通さない刃ということは裏を返せば他の刀の様にチャクラを通して強化をすることが出来ない。即ち武器そのものの純粋な性能の差が勝負を分ける…如何にあの娘の作品とはいえ、その彼女自身が未だ至らぬこの大刀・鮫肌と打ち合い続け、私のスタミナ切れまでその刀が折れずに無事で残っていますか?」

「く…」

「そしてもう一つ!」

「ッ! ──がはッ!?」

 

 再び振るわれた鮫肌の斬り上げを受け止めようとした瞬間、強すぎる衝撃に身体が浮きあがる。

 地面から足が離れ全ての抵抗が失った一瞬に、刀を振るった勢いを乗せた鋭い蹴りが腹に放たれて血と胃液を吐きながら背後に飛ばされる。

 

「武器の勝負と同じく勝負を分ける要因の一つ…即ち持ち主同士の力量の差。剣術も膂力もアナタは私に大きく劣る。チャクラを通さないその刃で鮫肌を封じたつもりが最も勝ち目のない戦いになっているじゃありませんか。いっそ彼女の造る特殊な刀による不意打ちの一撃に縋った方が遥かに望みがあった程にねぇ…あまりに考えが浅い」

「…くそ」

「次は、無駄に吹き飛ばしたりもしませんよ。その刀をへし折って、アナタの身体を削る…腹を空かせた鮫肌の餌になってもらいましょうか」

 

 鮫肌を肩まで振り上げて獰猛な眼を光らせた鬼鮫先輩が放つ本気の殺気に息を飲む。

 恐らく先程までの斬り合いで"叢蜘蛛の剣・金雲"の強度もボク自身の腕力も測られたのだろう、先程の宣言通り、次の一撃は受け止められない。

 

 …これで──

 

 

「これで──最期です」

 

 

 

 音もなく目前に迫った鬼鮫先輩が鮫肌を振り下ろした瞬間、村雨の言葉が蘇る。

 村雨に刀を大量発注して数ヶ月程経った頃…彼女の鍛冶場に溢れかえった素材の山を見て鬼鮫先輩に対抗できる刀を造れるかと聞いた時の事だ…

 

「…多分出来る。鮫肌を越える刀はまだ造れないけれど、鮫肌に勝てる刀なら…これがある」

 

 鬼童丸という名が記された肉片が入った保存キット…生前の頃に残しておいた四人衆の細胞だった。

 村雨はその肉片を躊躇いなく素手で掴むとギュッと握りしめる…金色の液体が絞り出され、滴り落ちた受け皿の中で一気に凝固していく。

 

「蜘蛛粘菌…という特殊な体液で、チャクラを通さない特殊な金属になるらしい」

「チャクラを通さない…てことは」

「鮫肌のチャクラ吸収を封じられる。鬼鮫さんの戦術の肝をこれで潰すことが出来る…ただし、これは素材として大きな欠点がある」

「…どういうこと?」

「チャクラを通さない性質のせいで他の素材を使っても特殊な能力を付与出来ない…性質変化は勿論、術式も刻めない…つまりこの素材で造った刀の性能は、刀そのものの出来とそれを持つ持ち主の純粋な力量に委ねられるということ」

 

 …あまりに致命的な欠点だ。

 干柿鬼鮫は歴代七人衆の中でも桁外れのチャクラを持ち、高い戦闘力も分析能力も持ち合わせる正しく怪人だ。

 正攻法で勝つ事が難しいからこそ、首斬り包丁を手にした今でも村雨の造る刀に期待して先程彼に対抗できる武器を造れるかと尋ねたというのにそれでは何の意味もない。

 

 …そう思った瞬間に彼女は更に言葉を続けた。

 

「刀の出来については心配いらない。鮫肌を越える刀には出来ずとも…その全力を受け止められる強度にはしてみせる。水月がこれで挑むというのなら──私は私に出来る準備はしてあげる…どうする?」

「…! 当然、やってやるさ」

 

 誰よりも大刀・鮫肌に憧れ、それを越える事を目標の一つに定めた奴が、それを実現してみせると言った。

 それを前に自分は逃げるなんて──言えるはずがない。

 

 

 

 振り降ろされた鮫肌の一撃を右手の刀で受け止め──刃を滑らせて受け流す。

 刃がぶつかりあった瞬間にビキビキと刀身と右腕がそれぞれ罅割れる音が聞こえるが関係ない、上段からの振り降ろしを逸らされて僅かに鬼鮫先輩の動きが崩れた。

 

 ──その一瞬を逃さず、左の刃を突き出して鬼鮫先輩の右の手首を捕らえた。

 

「ッ!? なにぃ!?」

 

 自身の右手首に刀が突き刺さり鮮血が飛び散る光景に瞠目した鬼鮫先輩は僅かに戸惑い動きが止まる──その隙を逃さずに心臓の一突きを狙うが寸前のところで再び後ろに退かれる。

 それが必要だったとはいえ、随所でチャンスを逃すリーチの短さにそれはそれで歯痒い気持ちを誤魔化せず思わず舌打ちする…だけど、きっちり狙いは果たせた。

 

「悪いけど鬼鮫先輩…別にボク剣術で劣ってるつもりは毛頭ないんだよね」

「これは…流石に驚きました。本当に見違えましたよ」

 

 自慢の鮫肌を左手だけで力なく握りながら、突き刺さっていた刃から強引に抜け出したことで自身の右手首からドクドクと溢れる血を驚き混じりに見つめる鬼鮫先輩を見て確信する。…鮫肌がまだ一滴もチャクラを喰えてない以上治癒も出来ず──これで今度こそ術も刀も封じることが出来たのだと。

 

 …実はこっちもさっきの一撃で右腕は半ばダメそうだけど、こっちはまだ左の刀がある。

 これで決めてやる! 

 

 足にチャクラを溜め、全力で地面を蹴る。

 打ち付けられた背中や明らかに骨にダメージが入っている右腕がそのスピードに耐え切れず痛みが走るがこの程度なら問題ない。

 

 ガードの出来ない右側から一気に攻め立てる。

 鬼鮫先輩の右側に飛び移り左手に持つ刀を振り抜いて──突き出された右の掌にその刃を掴まれた。

 

「なっ!?」

 

 手首を貫かれた事で刀にも印にも使えないと判断したのか、どうせ使えない以上躊躇いなく自らの腕を使い潰す行動に意表を突かれる。

 刃を掴む右手からは更に血が溢れるが、それと同時に左手に持つ鮫肌がもう目前まで迫っていた。

 

「く…そぉぉおお」

 

 既にぶっ壊れたはずの右手なのに引き抜くことが出来ない程の握力で握られた刃を咄嗟に手放し鮫肌の太刀筋から辛うじて逃れるが状況は一気にマズくなった。

 

「…これで、対等ですね」

 

『叢蜘蛛の剣・金雲』の片割れを遠くに放り投げながら鬼鮫先輩はそう笑うが、何も対等ではない。

 鮫肌の一刀は二本揃って漸く受け止められる破壊力だ。

 片方だけになったことで両手持ちにはなるが右腕は故障しているんだ、たとえ向こうも片腕だとしても恐らく耐え切れない。

 

「…代わるか水月? 俺が時間を稼ぐ隙に香燐の能力で──」

「冗談じゃない…勝負はこっからさ」

「そうこなくては!」

 

 こちらよりも負傷が重いにも関わらず鬼鮫先輩は嬉々として全力で向かってくる。

 ──いや違う、全力で向かってくるしかないんだ…大量の出血と普段と違うチャクラを奪えない戦い、勝負を急ぎ出した証拠だ! だったら──

 

 左上段から斜めに振り下ろされる一閃が届くよりも先により左奥へ転がり回り込む。

 右腕が潰された以上、身体を捻ったその攻撃を避けてしまえば次のこっちの攻撃に反撃は出来ない。

 

 そしてこちらが勝負を焦る必要はない、隙が出来た足を斬って機動力も奪えば今度こそ確実に追い詰められる。

 前転での回避の勢いのまま左足を切り付ければ呻き声と共に赤い血が飛び散る。

 

「へへ、右手に続いて片足ももらったよ」

「ッ!? ヤバい水月、避けろ!!」

「は? ──ガッ!?」

 

 足を切り付け一度距離を取ろうとした瞬間、右の頬に拳がめり込んだ。

 口の中に血の味が溢れ、視界がぼやける中何とか目を凝らすと右腕の傷もさっきの足の傷も完全に回復している鬼鮫先輩がさっきのパンチで落としてしまったもう一本の『叢蜘蛛の剣・金雲』を屋根の上から蹴り落としていた。

 

「…私の"大刀・鮫肌"は奪ったチャクラで持ち主の傷を治す…本来ならば相手から奪ったチャクラで行うものですが──別にそうである必要はないんですよ」

「…自分のチャクラを鮫肌に…」

「そもそも鮫肌は常に私のチャクラをエネルギーにしているんですよ。その餌の量を多少多くしてあげればこの程度、医療忍術の真似事ぐらいは容易い」

「強がりやがって…さっきアンタのチャクラは急激に減った。医療忍術は膨大なチャクラを使うからな…その刀に相当吸われたんじゃねぇのか?」

「確かに、傷の治療に使うチャクラの消費は多い…ですが──私に限れば雀の涙ですがね」

 

 香燐の問いに穏やかに答えながらも鬼鮫先輩は獰猛な笑みと共に自身が醸し出す気配を変えた…ピリピリと、感知タイプでないボクでさえ肌で感じる程の重苦しい程のチャクラの量を全身に練り上げていた。

 

「尾のない…尾獣」

 

 さっきまでとまるで違う、本気のチャクラに"霧隠れの怪人"と共にこの人を称する異名が無意識に口に出ていた。

 

「さて…あの刀がなくなった以上ここからは鮫肌の餌食になるだけですよ。それとも同じ刀を量産していたりしましたか?」

「く…」

 

 痛む身体に鞭打ってふらつきながらも立ち上がると左の掌を背後の重吾へ向け、こちらの意図を察して投げ渡された首斬り包丁の柄を握る。

 

「うおおおおおおっ!!」

「…どうやらあの娘のビックリ作品はもうないようですね。同じ七人衆の刀といえど片手でしか振るえないなら勝負になりませんよ!」

 

 水化の術で左腕の筋力を増加させて勢い任せに振り抜くが両腕で握り直された鮫肌の振り上げに敢え無く弾かれ首斬り包丁が宙を舞って地面に落ちる。──同時に斬り合いの接触で左腕に込めたチャクラが鮫肌にごっそり持っていかれたのが脱力感としてはっきりと伝わる。

 

 だが──今だ。

 

 密かに動かした右腕がポーチから取り出した起爆札付きクナイを顔に向かって即座に投げつける。

 結果は──僅かに首を動かしただけで避けられ、背後の林の中で爆ぜ、木々や石塊…と、鬼鮫先輩と同じ格好の誰かが爆発で飛び散った。

 …暁はツーマンセルとサスケは言っていたが伏兵でもいたのか?

 なんにしても流れ弾で吹き飛ぶとは間抜けな奴もいたものだ。

 

 しかしその代償というべきか…腹のど真ん中に鮫肌の切っ先が鋭く飛び込んできた。

 

「がっ!」

「首斬り包丁を囮にして本命は起爆札とは…折れた右腕で戦う以上仕方ないとはいえ次世代の七人衆を目指す者としはあまりに相応しくない。再不斬の小僧も浮かばれないですよ」

「ぐぅぅ」

 

 鮫肌の無数の棘が腹に突き刺さる痛みと、それ以上にチャクラを根こそぎ奪われていく感覚に気が遠くなっていく、左腕に掛けていた水化の術による肉体強化は完全に消え、辛うじて指先だけが液体化出来ている状態だ。

 

 

 ──それで良い、この瞬間を待っていたのさ。

 

 

 首斬り包丁を囮に起爆札? 

 誰がそんなことをするものか、あの起爆札付きクナイこそが囮だ。次世代の忍刀七人衆の頭目となるボクの本命は当然…首斬り包丁に決まってるだろ! 

 クナイを投げた動作に見せかけそのまま左腕に巻いた口寄せ札からその刃の破片の口寄せは既に完了してある。

 

 液体化した左手の親指と人差し指を伸ばすと右手に密かに握っていたその破片をコイントスの如く弾き、左の人差し指の先端に装填する。

 

 鬼灯一族固有の術と断刀・首斬り包丁の合わせ技。

 あの鬼人と謳われた桃地再不斬先輩ですら実現出来ない、このボクだけのオリジナルである必殺の弾丸。

 

 

 

「『斬烈水鉄砲の術』」

 

 

 

 血を喰らいて再生し、肉を引き裂き命を断つ。

 鬼人の弾丸が放たれた。

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