霧隠れの狂人   作:殻栗イガ

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囮役

 雨隠れの里に聳える最も高い塔。

 その一室で二人の男が向かい合う…暁の表向きのリーダーであるペインと裏で彼に指示を出す真のリーダーうちはマダラ…互いに協力関係である彼らだがその間にピリピリとした緊張感が張り詰めていた。

 

「――準備に手間取っているようだな…流石は伝説の三忍自来也といったところか」

「もう済んだことだ。これで九尾を狩りに行ける」

「…自来也をやったことで木ノ葉の連中もお前に目を付けるはずだ、やるなら急げ」

 

 突然時空間忍術で飛んでくるなり 責を口にするマダラにペインは眉一つ動かさず、そんなことよりも確認すべきことを問う。

 

「分かっている――ところであの連中に八尾を狩りに行かせるようだな」

 

 伝えることを伝え立ち去ろうとしていたマダラはその言葉に足を止める。

 

「八尾は完璧な人柱力だ…村雨と奴の仲間達だけで狩れるとは思えんが」

「奴の仲間を勧誘する様に決めたのはお前だろう?暁に加わるのならそれなりの働きはしてもらわねば」

「…暁が八尾に手を出せば過激な雷影は黙っていないだろう。大方暁のメンバーを排出した他里にも圧を掛け出すはずだ…アンタは八尾を確実に狩る為に五大里間の不和を生む布石としてアイツらを差し向けたんじゃないか?」

 

 ペインの鋭い視線と共に向けられた追及を真っ向から受け止めたマダラは小さく肩を揺らした。

 

「――随分とあの小娘が気に入ったようだな"長門"。まさか、奴の記憶を読んで昔の事でも思い出したか?」

「そうかもな」

「…忘れるなよ。あの娘の様に自己満足の作品造りに固執するだけならともかく平和を齎すには信念や理想だけではない、確かな手段が必要なのだ。お前とあの女では目指すもののレベルが違う、綺麗事だけではお前の望むものは手に入らない」

「言われるまでもない。――極力武力に頼らず対話によって和平の実現…そんな理想だけの脆弱さを俺が忘れることはない」

 

 怨嗟の宿ったその声に、しかしマダラは未だ納得しない。

 それの理由は一つ、ゼツからの報告で看過できない報告があったからだ――

 

「どうかな?ならば何故お前は自来也を"生かしておいた"?」

 

 単身雨隠れに乗り込んでペイン六道と戦闘を繰り広げた伝説の三忍の1人、自来也。

 その勇名に違いなく一時は最初に向かわせたペイン三体を倒し、その後も不意打ちで片腕を失う致命的な一撃を喰らってなお、地獄道によって復活した最初の三体を含めたペイン六道全員を同時に相手取りペインの一体、畜生道を打ち破るという戦果を上げた。

 

 しかし最後には残るペイン五体から串刺しにされ心臓を止めた――はずだったが、それでもあの男は気力で息を吹き返した。

 ゼツの報告ではペインはそれを確認した上であの男を見逃した。傍らにいた蝦蟇が消えた直後に重体の自来也もその場から消えた…恐らく自来也の前に消えた蝦蟇が別の蝦蟇に逆口寄せするように指示したのだろうが――

 

「心配するなマダラ、俺は今更答えを変える気はない。自来也も気力で息を吹き返したといってもそんなものは長くは持たん。綱手姫ならば一命を取り留める程度なら出来るかもしれないが忍としては再起不能だ。それに五代目火影であるあの女が長期の治療に専念するなら他の指示が滞る。自来也は最後2体の口寄せ蝦蟇の内1体を事前に逃がしていた、つまり奴を殺したところで多少の情報は与えてしまっていたからな、いっそ奴を重体で届けてやった方が俺が木ノ葉に行くまでに連中が余計な手立てを練る時間を削れる」

「木ノ葉の連中の層は厚い。五代目火影が動けなくなろうがお前の言うようになるとは限らん…今更言ったところでどうにもならんがな、さっさと準備を済まして木ノ葉へ急げ」

 

 あくまで今回の一件は失態だという意見を変えないままマダラはその場から立ち去った、その姿が完全に消えるのを見届けてペインは小さくため息を吐く。

 自分と自来也の戦いをゼツが見ていたのを気付いた時から確実にこうなるとは分かっていた――それでもあの時自来也を見逃した理由は先程述べた通りだがもう一つ"ある理由"があったからだ。

 

 

 

 それを確かめる為にも――やはり急いで木ノ葉と、ついでにもう一ヶ所急いで向かうとしよう。

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

 

「はぁ…どうすりゃいいのさこの状況」

 

 とある林の中霧隠れの特殊部隊に襲われ、咄嗟に茂みに身を隠した私こと村雨は極めて劣勢なこの状況に辟易とした様子の水月の呟きに内心同意する。

 香燐さんの感知能力によると相手の人数はこっちの倍の8人、おまけに霧隠れの術に遭遇直後に受けた不意打ちの負傷と状況があまりに不利だ…

 

 だが嘆いていても仕方ない。

 一先ず、どんな行動を起こすにしても確認すべきことを確認しておかなければ…

 

「――久しぶり長十郎。ヒラメカレイはちゃんと使いこなせるようになったんだね、見違えた。」

『お久しぶりです。村雨さん――そちらはお変わりないようで』

 

 確実にいるであろう旧知の友人に声を投げかけると返ってきた声は林の中にも拘わらず反響しどこからしているのかも分からない。

 姿を隠す霧隠れの術の中で相手の呼び掛けに答えて居場所を割らせる単純なミスはしてくれないらしい…もっとも、彼の居場所はヒラメカレイの気配ですぐ分かる。

 

 だからさっきの質問はブラフ…本命は次だ。

 

「青さんも、いらっしゃるんでしょう?お久しぶりです」

 

 返事はない…白眼を持つ青さんの存在はなんとしてでも確認しておきたいのだが、その思惑を見抜かれているのかそれとも本当にいないだけなのか…

 でもさっき明らかにいるのを見抜いた風に呼びかけてしまったが本当にいなかったら結構恥ずかしいのだが…青さんにいてほしいのかいてほしくないのか分からなくなってきたがめげずにいこう。

 

「あぁそうだ…霧の方々に会えたら確認したかったのですが――父は元気にしていますか?」

「ッ!何が元気にしていますかだ!白雨殿が里抜けしたお前の助命にどれ程奔走したと思っている!!」

 

 青さんの憤怒に満ちた声が右側から響く。

 しかしそうか、どうも霧側の追手が大人しいと思ったらやはり父が…むしろ腑に落ちたが、だとすると私は父の想いを蔑ろにしていたということか。

 

 ――申し訳なさがないわけではないが、お陰で青さんの存在が割れた。

 以前から父と交流があり、その実直な性格故に腹に据えかねたのだろうがお陰で青さんの存在を確認できた…2つの意味で父には感謝しなくては。

 

 さて…そうなるとやはり彼らの包囲を突破するのは困難だ。

 たとえ一時振り切ろうと白眼があってはすぐに追跡されてしまう…

 

『白雨殿はお前の里抜けをずっと自らの責任としていた…にも拘わらずお前は木ノ葉で狼藉を働き、更には大蛇丸、暁との関係性まで持った…最早見逃すことは出来ない、抵抗するようなら抹殺の許可も出ている!…これが最後のチャンスだ、大人しく霧隠れに戻れ!!』

「――だ、そうだがどうする?今ならまだ助かる道もあるそうだが…」

 

 青さんからの最後の警告が下され重吾さんがこちらに視線を向ける。

 今降伏すれば処刑は免れる…か。しかし霧隠れに戻れば確実に自由はなくなる。いや、ここまで好き勝手した後だ、刀造りさえ許されなくなる可能性もあるだろう。

 

「たとえ私の命だけが助かっても意味はない、それに今はサスケ君の救出が最優先です」

「…何か手があるってのか?」

 

 サスケ君救出という言葉に顔を上げた香燐さんに小さく頷くと小声で策を口にする。

 

「霧隠れで目は利かなくても香燐さんなら相手の位置が分かる…林の中というのは厄介ですが、包囲の薄い方向さえ見抜いて頂ければあとは重吾さんの推進力を活かした高速移動なら木々を薙ぎ払って一時の突破は可能だと思います」

「待て、相手の包囲に隙なんてないぞ。今もチャクラもかなり練っているし出て行けば狙い撃ちされるだけだ」

「それに青の奴がいたんじゃ重吾が仙人化しようとしたらすぐに見抜かれる…仮に何とか突破しても白眼で追われるだけだって」

「うん…だから青さんを含め、包囲している何人かを惹き付ける囮役が必要」

「囮役か、確かにもうそうするしかないかもしれないが…まず命はない、誰が…って、おい、重吾は脱出の移動役、ウチは感知役として外せないとして…なら囮役って…まさか」

 

 既に確定している役目の都合で4人のうち2人が消える、つまり残された2人の内どちらかが…となった時、それが誰かを察して香燐さんがちらりと水月に目線を送り、水月もこちらの意図を察してか顔を真っ青にさせた。

 

「ねぇええ!?自信満々に作戦会議始めたと思ったらボクに全投げする気ィ!?」

「どうして!?俺がやるってなんで…」

「言う訳ないだろマジでボクがぶっ殺すよ!?」

 

 水月が割と本気めで怒りを露わにする…まぁ当然だが。

 最悪、最期になるかと思うとつい軽い冗談を言ってみたくなったが加減を間違えたらしい…らしくないことはするべきではないと痛感する。

 

「冗談はともかく――囮役はもちろん私が行く」

「な!?お前が囮役って!?」

「私が一番適任です。そもそも彼の目的は私です、だから私が出て行けば青さんと他4人、…もしかしたら長十郎も合わせて6人誘導出来るかもしれません」

「…どういうことだ?やけに人数が具体的――」

「なるほど、そういう事ね」

 

 水月は察した様だが彼らは私と水月を良く知る霧隠れの人間だ、水月に対して口寄せ動物で雷遁攻撃を仕掛けた様に私に対する対策もきっちり練ってきている。――その証拠に香燐さんが感知した8人に対して私が感知出来るのはヒラメカレイを持つ長十郎を含めて3人だけだ。

 

 忍なら本来多少は持つであろう手裏剣もクナイも持っていない人が5人もいる。

 それはつまり、霧隠れの中でも刃物の気配で持ち主の位置を割り出せる私への対策だ…だが逆に考えれば忍具を持たない5人は対私用の戦力と見て良い。

 

 …その5人の中に青さんは確実に含まれている、先程の青さんの怒声の内最初の方は出所がはっきりしていた。恐らく私への怒りのあまり声の方向を隠すのを忘れていたのだろう。

 そしてその方向からクナイなどの忍具の気配は一切しない…つまり青さんは忍具を持たない対私用の方だ。

 

 唯一ヒラメカレイという専用の武器を持つ長十郎だけは動きは読めないが、彼は感知タイプではない…仮に水月達の追跡側になろうとも直接の戦闘にさえならなければ何とかなるはずだ。

 

「――口寄せの術」

 

 最後に小蜃を口寄せし、水月に抱えさせる。

 

「包囲を振り切ったらこの子の蜃気楼で身を隠しながら逃げて。物理感知以外ならやり過ごせるからたとえ青さんが追い付いても見つからないはず…白眼だから絶対とはいえないけど雷の国の国境まで辿り着いたら追跡も消えるはず」

「ちょ、こいつは君の緊急避難の切り札だろ!?」

「お前、死ぬ気か!?」

 

 驚き目を見開く2人に小さく微笑むと袖の内側から刀を二本取り出す。

 どちらにしてもさっき口寄せの術を使った時点でこちらに抵抗の意志ありと伝わった、もう動かなくてはならない。

 

 意図を汲んでくれたのか、何も言わず仙人化を進める重吾さんの巨大化した右手に乗って印を結ぶ。

 

「――"忍法、霧隠れの術"」

 

 霧隠れの術の中で更に霧隠れの術を重ね掛けする。

 当然、私の霧隠れの術はそう大した範囲を持たないが、それでも濃度が変われば相手の術者の方も私達の細かい位置は分からなくなる。

 

 これで準備は出来た。あとは――

 

「水月、2人をお願い」

「……何がお願いだよ。君が一ッ番手の掛かる奴の癖にさぁ」

「そんなことはないと思うけど…」

 

 手が掛かると言ったら例えばハレンチ博士の口寄せ動物であるマンダさんなんかは呼び出した途端に生贄を100人要求したりと随分と手の掛かる様だったし…いや、よくよく考えてみれば何で比較対象が人でない上にあんな巨大な生物なんだ…何だか凄く悲しくなってきた、早く次の人の話に切り替えよう。

 

 誤魔化す様に視線を水月から外して香燐さんへと向かい合う。

 彼女の表情は焦燥感に染め上げられていた。

 

 …想い人であるサスケ君の命を救うには早く雲隠れの里へ潜入し、八尾を確保しなくてはならないというのにこんなところで足止めされているのだから無理はない。

 このままではサスケ君も自分達も助からない、その不安は尋常ではないはずだ。

 

 だからこそ――

 

「香燐さん!必ずサスケ君を助けましょう!!」

「っ!こ…この状況だってテメーのせいなんだ!礼なんか言わねぇぞコノヤロー!」

「……はい」

「…礼なんか言わねぇから、死なれたら後味悪くなる。…だから死ぬんじゃねぇぞ」

「はい!」

 

 香燐さんの言う通り、この状況だって私の問題だ…それでも、香燐さんとほんの少し仲直り出来た気がして勝手だけど嬉しくなる。

 

 そんな嬉しさとちょっとの申し訳なさを感じたまま忍具を持つ3人の内2人、ヒラメカレイを持つ長十郎を避けて残り2人に向かって両手の刀を投擲する共に、更にその2人の内青さんに近い右側の人の方向へ投げ飛ばしてもらう。

 ――出来れば青さんと遠い側が良かったが、青さんだけは必ず私が引き付けなければならないのだからそこは仕方ない。

 

 刀を投げられた2人を除く周囲の人達が一斉に術を放ってくる――が、重吾さんに投げ飛ばされたことでおよそ人が出す速度を越えた速さである為殆どの攻撃をすり抜けていく。

 その速度故に全身の骨が砕けるであろう地面への激突を水化の術でやり過ごすとその勢いのまま一気に駆け出す。

 

 一方で残念ながら真っ直ぐに飛ぶだけの刀の投擲は簡単に躱されるが、一方で彼からの攻撃ない。

 忍具を持つ側の人の狙いは私以外の3人であること。

 重吾さんに投げ飛ばされたことで想像以上の速度で飛び出してきたこと。

 そして霧の里出身であるが故に私が投げた"なんの能力もない刀"に対しても強い警戒心を持ってしまったこと。

 

 それらの理由で彼からの攻撃は一瞬遅れた。…何故か青さんからの攻撃も遅かったのが気になるが背後で重吾さんがチャクラを放出し木々を薙ぎ払いながら飛んでいく爆音が聞こえたことで意識を切り換える。

 

 重吾さん達が包囲を抜け出す。

 あとは一瞬でも彼らの追跡から抜け出して蜃気楼で身を隠せるかだが…それは相手の出方と私の囮次第、ならば私はとにかく青さん達の注意を引きつけなくては。

 

 すぐに逆方向に走り抜けようとした瞬間デンキウナギの雷撃がすぐ傍を掠め、弾けとんだ石礫が頬を掠める。

 重吾さんに投げ飛ばされている内はともかく自分の足で走る以上水化の術は使えない、すなわち一撃喰らったらお終いだ。

 

 だがやはり重ね掛けされて濃度が増した霧隠れの術のお陰で正確な位置が掴まれていないようだ――ならばチャンスだ、重吾さん達が十分離れた今巻き込んでしまう心配もない、"この刀"を鞘から解き放ち周囲の霧の忍全員の動きを封じることも出来るやも――

 

 1人でも取り逃せば一巻の終わりだが、ただひたすらに逃げただけでは私の足ではすぐに追いつかれる。

 自分の足と自分の作品どちらを信じるかなんて迷う余地もない――覚悟と共に純白の刀身を解き放つ。

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

 

 霧隠れの上忍、青は自らの失敗に歯噛みした。

 折角の霧隠れの術による包囲下で迂闊に声を荒げ自らの位置を割り出させてしまったこと――それはあまりに迂闊だった…だがそれだけではない。

 

 茂みに隠れた村雨達が何やら策を練っている最中に聞こえた言葉に戸惑ってしまったことだ。

 

『――必ずサスケ君を助けましょう!』

 

(あれは…どういう意味だ?サスケといえば再不斬と白を倒したはたけカカシの部下の木ノ葉の忍…何故村雨がその少年を助けようとしている?)

 

 木ノ葉からの情報では渦柘榴村雨は大蛇丸のアジトで木ノ葉の小隊に亡命する振りをして木ノ葉の里内に入り込み、里内の社からお面を持ち出して逃走したという報告があった。

 大蛇丸の配下としての行動、そしてそれと一緒に彼女が暁の者共との関わりがあるのも確認したともあった――現に今の彼女は暁の装束を身に纏っていた。

 

 どうして大蛇丸や暁といった連中と関わっているのか…それは最早ツッコんだりしない、どうやって取り入ったのかは知らないがあの放蕩娘はそういう奴だ。

 だが村雨が大蛇丸の配下だろうと暁メンバーだろうとうちはサスケは木ノ葉の人間のはずだ、ならば何故村雨がサスケを助けようとしている?

 

 大蛇丸か暁の指示で木ノ葉に害を成したのではなかったのか?

 それとも大蛇丸か暁に脅されての行動だったのか?

 …たとえ後者であろうとも個人で木ノ葉に敵対行為をしてしまった以上霧の里全体の為、処断は免れない、だがもしも木ノ葉の報告が嘘、或いは誤解であったら?

 

 例えばうちはサスケが大蛇丸や暁に囚われて彼を解放する条件として木ノ葉で盗みを働いたとして木ノ葉の忍を救う為の行為を全てこちらの責任に押し付けられようとしているのではないか?

 …あのダンゾウ辺りならやりかねないし、五代目火影の自里で狼藉を働いた村雨の処遇をあくまでこちらに委ねるという甘い対応にも一応辻褄が合う。

 

 

 

 

 そんな思わぬ可能性に一瞬意識が削がれてしまったことに歯噛みする。

 三年以上彼女がいなくなったことで忘れていた――あの娘の周辺で起こることを額面通りに考えてどうする!

 とにかく彼女を捕えて情報班に引き渡す、それ以外に真実を確かめる手段はない!

 

 すぐに最初に決めていた通り、村雨以外の相手に割り振った者達に彼女と別方向に逃げた水月達の追跡を命じて彼女に向き直る。――その直後、霧に映る村雨の影が新たな刀を抜くのが見えた。

 

 それが如何に危険な行動なのかは言うまでもない。

 何が起こるか分からない、だからこそ何が起こっても対処出来る様に白眼にチャクラを集中する。

 霧を晴らす風遁か、水遁使いが多い我々に対する土遁、雷遁…あるいは何か秘伝忍術由来の――あらゆる可能性に警戒する意識に柔らかい刺激が走る。

 

 ふんわりと鼻孔を擽る馴染み深く、心地よい柔らかさ…それは炊き立てのお米の匂いだった。

 

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