霧隠れの狂人   作:殻栗イガ

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華々しき再会

 周囲を包囲していた霧の忍達が木の上から地面に落ちていくのを見て小さく「やった」と呟く。

 いつかの謹慎生活中に造った幻術を組み込んだ"幻刀・白刃抜き"。

 

 鞘から抜いた瞬間に飯盒を開けた時の様な炊き立てのお米の匂いを解き放ち、匂いを嗅いだ相手の食欲を刺激、更に嗅神経から脳へチャクラを送り込み幻術により食欲を睡眠欲に誤認させ眠りへ誘う仕組みを持つ特殊な刀であり、その仕組み故に潜入、追跡など長期の任務にあたり食事が携帯食料などの質素なものになっている者に程絶大な効果を発揮する。

 

 食欲をそそる甘美な香りとそれを睡眠欲へと変化させる幻術、何より新鮮なお米の様に純白な美しい刀身。

 正しく三大欲求を支配する実に背徳的、悪魔的な刀だ…実戦で使うのは初めてだが私はとんでもないものを作り上げてしまったのかもしれないと今更ながら戦慄する。

 

 とにかく、これで当面の危機は去った。

 眠りから覚める前に蔦か何かで…いや、周りを見渡しても人を縛るに適した植物はなさそうだ、仕方ない流石に少々気が引けるが彼らの衣服を剥ぎ取って縄代わりにしよう。

 

 地面に倒れ眠る青さんに近づき彼の上着に手を付け──

 

「──動くな」

「っ!?」

 

 腕を掴まれ、更に背中に刃が触れる。

 

「…幻術に掛かったふりを…流石ですね、青さん、長十郎」

 

 目の前で突然身体を起こして私の腕を掴む青さん、それに背後からヒラメカレイを突き付ける長十郎に感服する。

 しまったな、相手を縛る為にその道具を手に取ろうと水化の術を使えないタイミングを的確に狙われた…幻術に掛かったふりをしていたのならそこに別の刀で攻撃をすれば良かったが──流石にそれは出来なかったな。

 

「お互い霧隠れで相手を正確に狙えない状況で刀は使えん…再不斬のような奴でもない限りはな。奇妙な匂いがした時点でお前の狙いが幻術であることは推測できた」

「貴女の造る刀がまともじゃないのは分かってる…油断なんかしませんよ」

 

 甘く見ていた。

 そういえば長十郎には昔七人衆の忍刀を造った一族としてその意見は参考になると言って色んな刀の試運転に付き合ってもらっていた。水月みたく水化の術が使えない都合怪我させる機会も多かったから強く警戒されていたか…。

 

 それに青さんも白眼による感知に優れた凄腕の忍だ、幻術で挑んだのは失敗だったか。

 

 幸い周りを見渡す限り他の人たちは目を覚ます様子はない。

 地面に倒れ眠っている人は4人…やはり最初に推測した通り忍具を持つ2人だけが水月達の追跡をに向かったらしい。

 これなら事前に託しておいた"小蜃"の蜃気楼でやり過ごせるはずだ。

 

 仮に戦闘になったとしても長十郎もこちらにいるのなら、水月と重吾さんなら多少手傷を負っていても大丈夫だろう。私自身については残念だが、ひとまず役目は果たせたか。

 

 あとは…この2人を少しでも足止めすることに全てを懸ける。

 それが忍の本分、自己犠牲の精神なのだろうが生憎、私は忍ではない。

 自己研鑽こそが私の本分だ、命を懸ける覚悟はしているが命を投げ出すつもりはない。だから──

 

「…降参です。ここで私を殺しますか?」

 

 "白刃抜き"を地面に落とし両手を上へ上げて青さんに向き直ると彼は僅かに逡巡し、私を掴むのと別の手で石を拾って地面で眠る女性の頭へそれを軽く投げ付けた。

 恐らくその痛みで女性に掛けられた眠りが解けたのだろう、瞼の開け閉じを繰り返しながら女性は上体を起こした。

 

「──村雨を捕らえた。この場で情報を引き抜いてくれ…こやつの脳に掛けてあるプロテクトのすり抜け方は覚えているな」

「っ! は、はい」

「…お前は暁の情報源だ。まずはその情報を抜き取って…それが済次第この場で殺す」

 

 残念だ、霧隠れの里まで連行などの処置ならばまだ猶予もあったはずだろうが情報班もきっちり同行させていたとは抜かりない。

 

「…でも、それを聞いて安心しました」

「なに?」

「──えい」

 

 重心を一気に後ろに動かし仰向けに倒れる様に背中に突き付けられたヒラメカレイに向かって後頭部と背中を落とす。

 

「なっ!?」

「ッ! ダメだ長十郎、ヒラメカレイを動かすな! そいつは──」

 

 情報抜き取りを阻止する為の自害、それを防ぐ為に長十郎は咄嗟にヒラメカレイの側面を上にし──私の身体を受け止めようとする。

 

 チャクラを集束し形態変化、切味、破壊力、攻撃範囲を増大させるヒラメカレイ…その高密度のチャクラの攻撃は恐らく水化の術でもダメージは負う。

 だが咄嗟の挙動でチャクラの供給を断てばそれはあくまで"名刀"に成り下がってしまう──水の身体でならば容易くすり抜けられる。

 

 ヒラメカレイをすり抜けて最初に落とした"白刃抜き"を回収し長十郎の足元を潜り抜けて彼の背後に走り抜けてこの場から脱出を──しようと駆け出した瞬間、"白刃抜き"を掴む右腕に異様な重さが伝わり足が動かなくなる。

 

 まさか…ありえないと思いながらも振り返ると青さんが掌から血をドクドクと流しながらも"白刃抜き"の刀身を直接握り絞めていた。

 

「──は?」

「先輩!?」

「……お前なら、自分が落とした刀を放置して逃げることは出来ないと思っていたぞ」

「無茶をしますね」

「ヒラメカレイに頭から突っ込むお前に言われたくはないがな…お互い、意地を貫くのも楽ではないな」

 

 まったくその通りだ。

 さて、今更"白刃抜き"の柄を手放し逃げることも出来ない…ここまでか。

 

「すみません、先輩。ボク…」

「だから、必要以上に謝るなといつも言っているだろう。…生け捕りにしようとしたのは俺だ。だが…前にお前が言った様に殺した方が良さそうだ、こいつはそんなに甘くはないと今はっきりと分かった」

「はい──ボクが」

 

 長十郎はそう言ってヒラメカレイに再びチャクラを集束しチャクラの刃を形成する。

 水化の術でも避けられない超高密度のチャクラの刀…だがそれは僅かに震えていた。

 

「村雨さん」

「怖がらないで長十郎。大爺様の傑作である"双刀・ヒラメカレイ"、そしてそれを完璧に使いこなす長十郎の一太刀なら私の痛みは一瞬で終わる。…忍刀七人衆として立派になった、でもこれからも研鑽はやめないで。これからも今まで通り、その作品に相応しく生きて欲しい」

「……貴女のことはずっと分からなかったし苦手でした。…でも嫌いにはなれなかった」

「そう…良かった」

 

 昔は良く泣かせちゃってたから反省していたのだが、最期にそれを聞けて良かった。…でも嫌われてなかったのならもっと積極的に関われば良かったとちょっと後悔してしまう。

 

 後悔といえば前に自来也さんとおでん屋で会った際に、無鉄砲な生き方を続けるとろくでもない最期を迎えると釘を刺されていたな…その通り、目標の刀造りは志半ばで水月には申し訳も立たないし、今だって貴重な素材を抱えたまま死ぬなんて耐えられないが…決して最悪という程ではないかもしれない。

 

 心残りは多い。

 色々な事を思い出しては死にたくないと脳が叫ぶ。

 だけど──それでも私は必死に生きられたと目を閉じる。

 

 

 

 振り降ろされるヒラメカレイの一太刀を待ち──不意に聞こえた呻き声に目を見開く。

 

 

 

「うっ…ぐ…ぅぅ」

 

 長十郎、青さん、それに情報班の女性が皆地面に膝を着いて苦しんでいる…彼らは皆傍の木々から身体を伸ばした蛇に身体を噛み付かれていた。

 カランと音を立ててヒラメカレイが地面に落ちる…長十郎達は皆誰も息を絶えさせてはいないが意識を保つことも出来てないようだった。

 

 まさかこんなところに彼らが昏倒する程に強力な毒蛇がいて、たまたま私を除く人達が偶然同時に噛まれるなんてとんでもない奇跡もあったものだ…なんて思えるはずもない──

 

「…お久しぶりです。ハレンチ博士」

 

 そう呼びかければ頭上の木の枝からパチパチと拍手の音が響く。

 それはこの状況を起こした人物を言い当てた正解を褒め称えているのではなく…自らの腕の完治を殊更に主張しているようだった。

 

 頭上の枝を見上げようとした瞬間にそれより先に黒い影がすぐ傍に飛び降りてくる…それが誰かなどは、敢えて言うまでもないだろう。

 

「久しぶりね村雨。暫く見ないうちに随分と諦めが早くなったんじゃないかしら?」

「見ていたのでしたらもっと早く助けてくれても良かったのでは?」

「暫く見ないうちに随分と怖い服装にもなっていたからね…私の敵かもしれないじゃない?」

 

 仮に私が敵でもハレンチ博士からすれば吹けば飛ぶ様な存在だろうに…相変わらず妙なところで意地が悪い…。

 

「…あ、でも本当に助かりました、ありがとうございましたハレンチ博士」

 

 なんであれ助かったことは間違いない。

 死を受け入れようとしていたが同時にまだまだやり残したことも多いんだと再認識も出来た、ならばこうして助かったのならば死んでなどいられない。

 だからこそ助けてくれたハレンチ博士には深く感謝しなくては。

 

「フフ、まぁこちらも大きな借りがあったからね、そう気にすることじゃないわ」

「…両腕の回復、おめでとうございます」

「まさか貴女があの封印を解いてくれるなんてね、どうやって木ノ葉から抜け出した上にあの封印を?」

「木ノ葉では…酔っぱらっていたのであんまり覚えてないですが封印については香燐さんに死神のお面をつけてお腹を斬って」

「こんな酷い話を聞かされるなんてね…」

「聞いておいてそんな…あ、そうだ。香燐さんと言えばハレンチ博士に確認したいのですがサスケ君は?」

「サスケ君? あぁ、彼は無事よ、少々飲み込むには難しい話をしたから塞ぎ込んでしまったけどね。今は考えが纏まるまで安全なところにいるけれど…それがどうかしたかしら?」

 

 …やはりそうか。

 サスケ君の身柄を確保したという話がどうもキナ臭く感じたが…マダラさんの話は私達を従える嘘…しかも、八尾を確保すれば解放するという一度きりの条件からして…私達を今回の仕事の一回で使い切ろうとしているわけだ。

 

「何かそっちも訳ありの様ね…少し情報の共有をしたいのだけれど良いかしら?」

「勿論。…あ、でもその前に、出来たら青さん達の毒を何とか…死なない程度にしていただけないでしょうか」

「心配せずともただの痺れ毒よ。暫くは猛威を振るうけど、時間が経てば後遺症も残さず症状も消えるわ…私は別に構わないけれど、貴女が霧の忍を殺すというのは後々面倒が残るでしょう」

「何から何まで、助かります」

 

 霧隠れの部隊にせめて他里の手勢に見つからない様に草木を被せ、刀を掴み負傷した青さんの掌にも止血を施すとハレンチ博士の先導に従いその場を後にする。

 幾分か離れた場所で都合の良い倒木を見つけてハレンチ博士が腰を掛けたのを見てその隣に失礼する。

 

 こちらは手短に済むというのでハレンチ博士の話から伺うとやはりサスケ君とイタチさんの戦いの最中、疲弊したサスケ君がそれまでハレンチ博士を取り込み抑え込んでいたチャクラが弱まったことで復活を果たしたらしい。

 

 ただ、その際に本来はそのままイタチさんの排除とサスケ君を今度こそ取り込むつもりだったとのことだが、丁度その時に私がハレンチ博士の両腕の封印を解いたことで色々と事情が変わったのだという。

 詳しい理由は伏せられたがその後はイタチさんと取引を結び今に至る…と。

 

「肝心な事が何もわからない…どうしてハレンチ博士がイタチさんと?」

「それは秘密よ。真実を知る人間は可能な限り増やさないというのも取引の一部でね」

「…分かりました。とにかくハレンチ博士もサスケ君も無事、私にとってはそれだけで十分です…また会えて嬉しく思います、ハレンチ博士」

 

 アジトに木ノ葉隠れの方々が来た際に勢い任せに行動してから会えず終いのまま死に別れだと思っていただけにこうして会えただけで嬉しいものだ。

 

「私にそんな事言うのは貴女くらいのものよ…。そんな事よりも、そっちの事情はどうなの?」

「木ノ葉から死神のお面を持ち出して脱出したまでは良かったのですが、その過程で身なりに少々問題が出まして物乞い目当てに火の寺へ、そこで偶然暁の角都さん飛段さんとお会いしてその流れで暁の方々と顔合わせして、服を貰おうとしたらどうしてかこの衣装を頂いて気が付けば正規のメンバーになりました。その後クシナダの実戦運用を果たし三尾を捕獲したり、リーダーさんに呼び出されて雨隠れの里に行ったり、忙しいながらも充実した日々を送っていたのですが、ついさっきマダラさんからサスケ君を人質に八尾捕獲を命令されて向かっている時に霧隠れの特殊部隊に遭遇して今に至ります」

「なんで少し間を開けただけでこうも情報が溢れてくるかしらね、貴女は」

「あ、そういえば角都さんが重傷を負った際に柱間細胞を使って治療を試みたのですがその際にハレンチ博士のアジトの設備を使わせて頂きました、当時はハレンチ博士が死んだものと知らされていたとはいえ勝手にお借りして申し訳ありません」

「まだあるのね。どこで柱間細胞なんてものを見つけてきて…私の遺品でも漁ったのかしら?」

「巻物類は色々と。…あ、でも柱間細胞は別口から入手したのですが…ひょっとして別の場所にストックが!?」

「…忘れなさい」

 

 残念だ…こんな事ならハレンチ博士が復活する前にもっと徹底的に調べ尽くしておけば…。

 

「まぁ良いわ。頭の痛くなる情報ばかりだけど…マダラについてはもっと詳しく教えなさい」

「橙色の渦巻模様のお面をした男性です。…素顔を見た訳ではないですが、うちは一族族長のみが持つ団扇と写輪眼を持っているのを確認しました」

「なるほど…天地橋にサソリと来たあの男ね。…サスケ君を人質というのは?」

「お面の穴から見えた本人の写輪眼とは別に、保存用の筒に写輪眼を入れて私達に見せてきました」

「そう…そして貴女達に八尾捕獲を…ねぇ」

 

 ハレンチ博士は何かを考え込む様子を見せる。

 慎重派だがその分思考が速いハレンチ博士が考え込むことからしてもかなりの大事なのだろう。

 

「…サスケ君はハレンチ博士が保護していらっしゃるなら水月達に早く追い付いて3人を止めた方がいいのでしょうか?」

「八尾の人柱力はかなりの手練れ、そうした方が良いでしょうけど…そうなるとマダラが貴女達を狙うかもしれないわよ?」

「…一応確認したいのですが、ハレンチ博士に同行して頂くことは? それを私達が打ち倒したということにすれば穏便に済むやも…」

「そうすると今度は貴女達は用済み。結局始末されることに変わりはないわ。それに、私は私でその内ちょっと古巣に遠出しないといけなくなるかもしれないしね」

 

 古巣? どこか遠くのアジトだろうか? 

 良く分からないがハレンチ博士もお忙しいということか、助力は望めないとなると結局手詰まりか。

 

 …それでもサスケ君の無事は分かった。

 ならばマダラさんの命令を蹴って身を隠すか、それとも命令に従った上で捕えた八尾を交渉材料にして見逃してもらうか…そもそも八尾に勝てるか不安というハレンチ博士の見立ても合わせて水月達と冷静に話し合って決めた方が良いだろう。

 

「まぁ今回ばかりは慎重に決めることね。相手があのうちはマダラなら私でも到底及ばないでしょうからね…そいつが本当のうちはマダラなら…ね」

「それって…」

「勘違いしないことね。仮にそいつが偽者だとして、うちはマダラの名を騙ろうなんて、その男も只者ではないわ、本物だろうと偽者だろうと底の知れなさに変わりはないわ」

 

 そう言ってハレンチ博士は倒木から腰を上げる。

 

「伝えるべきことは伝えたわ。悪いけど暫く私達は身を隠しつつ動くから貴女達には関わらない。…香燐達にはよろしく言っておいて」

「分かりました…また会える日が来ることを願います」

「あら、また会いましょう…なんて言わない辺り意外と不安になっているのかしら?」

「…不安? …そうですね、香燐さんを斬ってしまったり青さんに見抜かれたり省みる点が見えた気もして…」

「省みる…ククッ、残念だけどそれは無理ね、反省なんて自分の選択を後悔している者にしかできないものよ」

 

 いや、香燐さんにやったことは申し訳ないと本当に思っているし、折角造った"魂刀・屍鬼切"がお蔵入りになりかけたことは間違いなく後悔しているつもりなのだが…。

 

「フフ、人のフリをするのはやめなさい、面白くないから」

「人のフリって…」

「そうね、じゃあ一つ乗らせてあげるわ。──もし、次また会えたら"十拳剣"を貴女にあげるわ」

 

 フツリと自分の中から何かが沸き上がるのを感じる。

 衝動、欲望…そんな心地の良い何かだ。

 

「……本当ですか?」

「私が貴女に嘘をついたことがあったかしら?」

「いいえ一度も。なので今回もそのお言葉を信じます」

 

 倒木から腰を上げ、手荷物からコンパスを取り出し方角を確認する。

 

「雲隠れは向こうだけど、どこか別のところに行くつもりなの?」

「角都さんに協力をお願いします。別れる前に"魂刀・屍鬼切"分のお金を引き出しに行くと言っていたのでまだ近くの街にいるはずです…あとは刀の気配で見つけます」

「動いてくれる保証は?」

「あの人まだお金未払いですから…それでも渋る様なら3億両私が肩代わりします」

「交渉の最初が強請り、その次が3億払いなんて極端な子ね…まぁ良いわ、漸く見たかった顔になったようね」

 

 それは何よりだ。

 折角の再会だというのに望んだ表情を見せれていないというのは寂しい話だった。

 

「では、私はもう行きます。色々ありがとうございましたハレンチ博士」

「えぇ…じゃあ精々頑張りなさい。期待し──」

「あ、そうでした。ハレンチ博士、こちらどうぞ」

「……何かしら? この包みは?」

「お土産です…出来ればお一人の時に見て下さい。では!!」

 

 遅くなったら角都さんがいなくなる。

 そうでなくとも遅れると水月達も危うくなる…でも彼らの方には幸か不幸か、霧隠れの忍が2人程追跡している。

 つまり慎重に行動しているはずだ…これなら準備を整えた上で追い付けるかもしれない。

 

 ハレンチ博士に一度頭を下げると近くの木々に飛び移り、別れる前に角都さんが金を卸し行くと言っていた街へ向かう。

 枝から枝へ飛び移り、全速力で駆け抜けることを数分、漸く街の姿は見えなくともその喧騒が微かに聞こえだした時──目の前に見知った人物の姿が現れた。

 

「こんなところにいたとはな…マダラの指示で雲隠れに向かったと聞いていたが──村雨?」

「リーダー…さん」

 

 橙色の髪と身体中に刺した黒いピアスが特徴の暁のリーダー、ペインさん。

 マダラさんに霧隠れの人達、ハレンチ博士に続いてリーダーさんまで…どうも最近次から次へと思わぬ人と会うものだ。

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

 

 村雨が立ち去った後、大蛇丸は彼女から手渡された布の包みを不思議そうに見下ろしていた。

 中に入っているものの重さからして刀ではない…村雨の土産としては意外だが、いくつかの筒の様なものが何本か入っているようだった。

 

「出来ればお一人の時に…ね。丁度今私だけなんだけれど」

 

 勿体振られるのも煩わしい、折角だ、さっさと確認してしまおう。

 包みの結びを解いて中の物の見る──否、見られていたのは自分だった。

 

 包みに覆われ真っ暗な闇の中、紅く光る瞳が8つ。

 それぞれ保存液入りの筒に入れられ一同にこちらをジッと見つめていた。

 

「──は?」

 

 唐突に腕が治ったあの時と同じぐらい間抜けな声を上げてしまった。





次回遂に100話到達。
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