沈丁花に祝福を   作:佐藤れい

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俺たちは日中の任務を終えた後、先生の奢りで寿司を食べることになった。釘崎は回らない寿司にしばらく拗ねていたが、いざ店を前にするとどこか落ち着かない様子でそわそわしていた。

 

 

「先生ー、まだ入んねーの?」

 

 

着いてから数分経っても入らないことを不思議に思い、先生の方を見る。すると先生は楽しそうな顔をして電話をしていた。

 

 

「伏黒、先生誰に電話してんだ?」

 

 

「…多分哲邇さんだな」

 

 

「“哲邇”?」

 

 

「まぁ来れば分かる」

 

 

そう言うと、伏黒は手元のスマートフォンに視線を落としてそれ以上は何も言わなかった。

 

 

 

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電話から十分くらい経った頃、一台の綺麗な青色をしたバイクが店の駐車場に入ってきた。

 

 

「来たみたいだね」

 

 

手すりに腰掛けていた先生が立ち上がる。釘崎と俺は、到着したその人物への興味よりもようやく夕飯にありつけることへの喜びを感じていた。

 

その人はヘルメットを取る。その下からはバイク乗りとは思えないほど綺麗な顔が飛び出した。

一体なぜ、こんなにも綺麗な人が呪術師なんてやっているのだろうか。

これが、俺虎杖悠仁が抱いた蘆屋哲邇、否、蘆屋終への第一印象だった。

 

 

「哲邇さんにバイクやめろって言ったんじゃなかったんですか」と、伏黒が先生を睨みつける。

 

 

「いやぁ言ったんだけどね、断られちゃって」と、先生は笑った。

 

 

伏黒は大きくはぁ、と大きな溜め息を吐いた。

 

 

それから短い自己紹介を終えた俺たちは、ようやく都会の回転寿司を満喫したのだった。

 

 

 

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月も大分上がってきた頃、虎杖と釘崎、恵は寮に戻っていった。恵はともかく、呪術師としてのデビューが間もない二人も随分と逞しそうな印象があった。

 

 

「今日私を呼んだのはあの宿儺の器を見せるためだろう」

 

 

隣に立って三人に手を振る五条に問う。五条は笑みを浮かべたまま「そうだよ」とあっさり肯定した。

 

 

「宿儺なら奴についても知ってると?」

 

 

「その可能性は少なくないと思わない?

 あれも宿儺も千年以上存在する呪霊だ。何か知っていてもおかしくないでしょ」

 

 

___両面宿儺。

それは千年以上も昔、かつて最凶最悪と呼ばれた“呪いの王”だ。何人もの呪術師が束になってかかっても祓いきれなかった邪悪そのもの。

確かに、あれなら奴についても何かしらは知っているかもしれない。

 

 

「まぁ、まだ悠仁もあの身体になってから日が浅い。そういう話はもう少し経ってからじゃないと危険かもしれないが、仲を深めておくのもアリだろ」

 

 

「五条、私は仲間は要らないと言ったはずだ」

 

 

語気が強くなる。五条も黙った。

 

 

「もしもこのまま解決できなければ、私にかけられたこの“呪い”は永遠に解かれない。そうなれば_____」

 

 

言葉が詰まる。まだ覚悟ができていない証だ。

もう夏も近いというのに指先が冷たかった。その指先を温めようと一人で手を握る。

 

 

「終」

 

 

その手の上に大きな手が被せられた。昔から見てきた慣れた手だ。

 

 

「心配するな。そうなる前に僕がどうにかするから」

 

 

そう言った悟の真意は、マスクのせいで分からなかった。

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