百回目のハロハピ   作:学学 学

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侵食

 

 

なにが辛いのか、それは中途半端に忘れていることだ

 

覚えていることがあるから、なにを忘れたかが分かってしまう

 

いっそのこと、全てを忘れてしまえれば良いのに

 

 

 

 

 

 

 

百回目のハロハピ

 

第三話 侵食

 

 

 

 

ハロハピ動物園。

この計画において最も大切なことは、3つだ。

 

一つめは土地、

動物園だけで無く、何をするにも必要な場所の確保だ。

これが無くても話にならない。

 

二つ目は動物だ。

動物園なのだから動物が必要だ。

しかし、その辺のカラスを捕まるのは犯罪だし、犬や猫を買うのにもお金がかかる。

 

三つ目が"その後"だ。

動物園を開いたとしても、その後が大切だ。

動物園として長期的に維持するとしても、誰かに引き渡すにしても、

動物達がその後どうなるのか、責任は重大だ。

 

「はい、皆さん、わかりましたか? この3つをどうにかしてクリアしなくてはなりません。」

 

美咲の言葉に、4人は頷いた。一部完全には理解できているかは微妙なところはあるが、それでも、動物園を開く難易度が理解できたようだ。

その様子を見つつ改め気を引き締めた。

 

(それに加えて、時間がない。どうにかして、あたしが、あたしであるうちに……、)

 

「動物さん達が暮らせる場所を探せば良いのよね? だったらあの遊園地なんてどうかしら! きっと、あそこなら動物さん達も楽しくて笑顔になるわ!」

 

こころのその言葉にはぐみや、薫も頷いた。

 

「遊園地に動物園? うん!すっごくは楽しそうだね、こころん! それに、あそこなら間違いなく、動物さん達も楽しめるよ!」

 

「ああ、動物達も楽しめるように、か。ああ、こころ、なんて儚い提案をするんだ。ならば、あの遊園地なら間違いない。」

 

そんな2人の様子に美咲はため息をついた。

 

(いやいやいや、あの遊園地って、花咲川スマイル遊園地のこと? いや、無理だから。いくらなんでも、迷惑はかけられないから!)

 

花咲川スマイル遊園地、以前、ハロハピが盛り上げ、ある意味で救ったと言っていい場所だ。現在ではそれなりに人も溢れ、経営も()()()()()()()()だろうが、少し前までは人っ子ひとり居ないような場所だったのだ。

そんな、無理が通る訳がない。

というか、人様に迷惑をかける訳にはいかない。

 

(けど、今、あたしには時間がない。それに、確かに楽しそうだ。)

 

美咲は小さい頃に行った、埼玉の遊園地を思い出した。

もう、名前も忘れてしまっているが、動物園と遊園地の両方楽しめた覚えがある。

最後なのだやるからには最高のものにしたい。

 

「分かった。聞いて見るだけ聞いてみよう。」

 

その日は、どのような動物園にしたいかなどを話し合い、お開きとなった。美咲としてはもっと決めておきたかったが、他のメンバーにも予定がある。

慌てる自分をグッと押さえ込み、美咲は帰路についた。

その道すがら、花音は美咲と2人きりになったタイミングで話しかけた。

 

「美咲ちゃん……。その、無理してない、よね?」

 

花音のその言葉は素直に心配からくるものだ。

しかし、それが分かったからこそ、美咲は心臓を鷲掴みにされたような気分だった。

 

「いや、その、勘違いだったたらごめんね? でも、最近の美咲ちゃん、いつもよりも……その、頑張ってるみたいだったから……。」

 

花音は慌てた様子でそう付け足した。それを聞いて美咲は少し安堵した。

 

(——敵わないなぁ)

 

松原花音は一見頼りなさそうだが、ハロハピにおいて支柱と言っても過言ではない。本当に誰も何もできない時、1番頼りになるのは間違いなく彼女なのだ。

そのため、美咲も無意識のうちに花音を頼りにしている節もある。

だからなのか、つい、

 

「………。もし、もしですよ。あたしが居なくなったら、ハロハピのこと、お願いしますね。」

 

そう言ってしまった。

このまま全てをぶちまけてしまいたい。彼女ならばきっと、戸惑いながら受け止めてくれる。美咲はそう確信していた。

だからこそ、美咲は慌ててそれ以上言うのをやめた。

花音とも出来るだけ長く、平穏で慌ただしい日常にいたいから。

 

「え? 美咲ちゃん? それって……。」

 

「冗談ですよ! あたしは午後から部活があるので急ぎますね。」

 

そう言って美咲は駆け足でその場をあとにしようとした。

しかし、花音は美咲の手を掴んで引き止めた。

 

「美咲ちゃん、何かあったら相談してね。」

 

そういう花音に泣きそうになるのを堪えながら頷いた。

 

「……ありがとうございます。」

 

 

数日後、

 

ハロハピ達は花咲川スマイル遊園地に来ていた。

美咲が遊園地に連絡したところ、ハロハピと直接話したいと言われたのだ。

なんでも、遊園地に新たなエリアを新設したいため、ハロハピの意見を是非とも聴きたいとのことだ。

どうして()()()()()()()()であるハロハピをそこまで信用するのか不思議に思いながら、美咲はハロハピの意見をどうにかまとめ上げた。

さて、遊園地だが、休日ということもあり、かなり賑わっている。

親子連れから、カップル、友達グループなどたくさんだ。

 

「人がたくさんいる、頑張った甲斐があったね。」

 

花音はそう言った。

しかし、美咲にはその意味が分からなかった。

適当に相槌を打って誤魔化したが、それでも、何かが引っ掛かった。

よく見てみると、こころ達もいつも以上に騒がしい。

 

(また、何か忘れてる?)

 

そう思うと、背筋が凍りそうだった。

対して、花音は昨日の数日前の美咲の様子を思い出していた。

表面上はいつも通りだが、やはり、花音は美咲の様子が気になって仕方がなかった。

美咲に起きた何事かは解決できたのか? それとも隠しているだけなのか?

 

(美咲ちゃん。言ってくれないと、分からないよ。)

 

花音はどうすれば良いのか分からなかった。

 

「かのちゃん先輩! みーくん! ほら、見てよ!」

 

声のする方を見ると、はぐみたちが手を振っていた。

彼女たちの後ろには大きな壁があり、そこにはたくさんの絵が描かれていた。まるで子どもの落書きだが、楽しそうに沢山の人が記念写真を撮っている。

いわばフォトスポットだ。

そんな壁の絵で1番目を引くのがピンク色の熊、ミッシェルだ。

ミッシェルの周りには5人の少女(人間かどうかも怪しいのも混じっているが)が描かれている。

 

(これって……? ってことは周りに描かれてるのはハロハピ?)

 

なんだか、この絵を見ていると不思議と頬が緩んだ。

大切なことだった気がする。

自分にとって宝物のようなものだったかもしれない。

それがなんだか分からないが、忘れてしまっているという事実が苦しくて堪らなかった。

 

「凄いわ! あたし達の絵で皆んなが笑顔になってるわ!」

 

嬉しそうに飛び回るこころを宥めつつ。美咲は悩んでも仕方がないと割り切ることにした。

 

事務所に着くと軽く挨拶をしたのちにすぐに会議が始まった。

ハロハピはともかくとして遊園地の従業員は仕事がある。無限に時間を取れるわけが無いのだ。

 

「この遊園地もそろそろ、新エリアを作りたいんだ。是非ともみなさんの意見を聞かせて欲しい。電話では動物園を作りたいそうだけど、どのような構想なんだい?」

 

職員の言葉に応えたのはこころだった。

 

「それは勿論、皆んなが笑顔になる動物園よ!」

 

「うん、動物さん達とも遊べる場所がいいよね!」

 

「ああ、無論、儚い動物園さ」

 

「ふぇ〜、美咲ちゃん」

 

「いや、すいません。こちらがそれらを、まとめたものです。」

 

美咲はハロハピの考えをまとめた提案書のようなものを職員に手渡した。3馬鹿では説明するのも一苦労だ。

内容を簡単に説明すると、ウサギや猫、カピパラなどの大人しい動物と触れ合うことが出来るというものだ。

はじめはライオンや象などの大きな動物が良いとハロハピでは盛り上がっていたが、しかし、そこまで大掛かりな動物を用意する余裕はない。(黒服の力を使えば別だが)

しばらく、話し合い、話を詰めて行くと職員は楽しそうに笑った。

 

「確かに面白いかも、うん、これでやってみよう。 なんだか君たちなら、何でもできそうな気がするよ。」

 

その様子に美咲は笑みを浮かべた。

 

(それが、ハロハピなんだよね)

 

 

それからの美咲の毎日は目が回るようだった。

動物園、もといい、ふれあいエリアの設立にあたり、レイアウトなどを決めないといけない。

さらに、その動物園で行うライブの準備や宣伝まで多岐に渡る。

ハロハピ全員の協力を得ても膨大だった。

それらを、時々記憶を無くしながら行った。

しかし、それでも驚くほど順調に進んでいた。

動物達も順調に集まり、エリアも完成、そして、動物とのライブ計画も形になっていった。

もう少し、あと一歩で、花咲川スマイル遊園地にハロハピ動物園が開園し、動物とのライプが叶うところまで来ていた。

 

だが、そんな時、ふと、美咲は思ってしまった。

 

「あれ? なんで、あたしハロハピなんてやってるんだろ?」

 

 

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