濃霧が充満する樹海を虎の亜人に先導されながら歩き続けること一時間半。一行はようやく亜人の国、【フェアベルゲン】へ辿り着いた。
門をくぐり、巨大な木が立ち並ぶ光景に圧倒される。
木の中をくり抜いて住居としているようで、木の幹に空いた窓からランプの光が溢れている。木のつるや枝を利用した天然の階段や、加工して作られたであろう木製の水車、そして樹と樹の間を縫うようにして設置された滑車のエレベーターなど、ファンタジーさながらの光景にハジメたちはぽかんと口を開いたまま見蕩れていた。
「ほっほっほ。どうやらフェアベルゲンを気に入ってくれたようで何よりだ」
出会った当初は険しい顔付きだったアルフレリックの表情が緩んでいる。ハウリア族を始めとした他の亜人たちも誇らしげな表情をしている。
そんな彼らの様子を見ながら、まずレイシアが口を開いた。
「ええ。本当に素敵かしら……こんなに綺麗な街並みを見れて感動してるわ」
「ん……同感。幻想的で、御伽噺の世界みたい……」
やはり女性陣はこういった風景が胸にくるようで、うっとりとしていた。対する男性陣も二人の言葉に同意するように頷く。
「本当に綺麗ですね……思わず圧倒されちゃいましたよ。それに、空気も美味しい。自然の中だとやっぱり違うんだね……」
「まさに調和だな。自然と触れ合い、共存しているからこその美しさ……こりゃスゲェや」
お世辞ではなく、本当に心の底から思っている言葉に亜人たちは笑顔を浮かべる者と照れてそっぽを向く者に別れる。だが共通して言えるのは、全員シッポや耳が嬉しそうに動いていることだ。
ハジメたちは好奇や困惑、憎悪といった視線を浴びながらアルフレリックが用意したという場所へ向かった。
お互いに向かい合いながらハジメたちとアルフレリックは話をしていた。内容は、オスカーが話していた解放者や神についての話と、ハジメとシュウが異世界から来た人間であり、元の世界に帰るために神代魔法を探しているといった話だ。
アルフレリックはハジメたちの問いに、自分が分かることは答えるようにしていた。それが伝わる口伝であり、掟に繋がるからだ。
七大迷宮のいずれかを攻略した者が現れたら敵対してはならない。そしてその者を気に入ったのなら、望む場所へ連れていくこと。この二つは長老たちに伝え継がれてきた口伝なのだとか。
迷宮を攻略した者はそれだけの力を持っているため、争ってはこちらの国が滅びてしまう。【ハルツィナ樹海】の大迷宮の創始者であるリューティリス・ハルツィナがそう語り継ぐようにこの地に住んでいた者たちに伝えたのだとか。それはフェアベルゲンという国が出来るよりずっと前の話だ。
オスカーの指輪に刻まれていた紋章は、大樹の根元にある石碑に刻まれている紋章の一つと合致するらしい。だからこそ、ハジメたちを攻略者と認めたのだ。
しかし、このことを知るのは長老たちなどの一部の者のみ。他の亜人たちは知りえぬ話であるため、今後の話をする必要があった。
と、下の階が騒がしいことに気づく。現在ハジメたちは最上階で話し合いをしており、その下の階ではハウリア族が待機していた。だと言うのに明らかに争っている声が聞こえる。アルフレリックと共に階下へ降りると、そこには様々な亜人族がいた。
大柄な熊の亜人族や虎の亜人族、狐の亜人族、背中から羽を生やした亜人族、小さく毛むくじゃらのドワーフなどが剣呑な眼差しでハウリア族を睨みつけていた。
カムがシアや仲間たちを庇うように一歩前へ出て対応しているが、その頬は赤い。既に殴られたあとなのだろう、同様にシアの頬も赤かった。他のハウリア族は部屋の隅に固まり、震えていた。
その光景を見たアルフレリックが声をあげようとすると、それに被せるように熊の亜人が激情を抑えつけながらアルフレリックに話しかけた。
「アルフレリック……貴様、一体全体これはどういうことだ? 何故ここに人間族がいる。何故ここに兎人族がいる。返答によっては貴様を長老会議で処罰することになるぞ……!!」
「何を言っておる。私はただ口伝に従っただけだ。お前たちも長老の座に就く者なら従え」
「口伝だと!? そんなもの、建国以来一度も実行されたことなどない眉唾物の話ではないか!! こんな小僧が資格者などありえん!!」
「しかし事実だ。ジン、長老ともあろうものが掟を軽視するな」
淡々としたアルフレリックの言葉にジンと呼ばれた熊の亜人がくってかかる。そしてギロリとハジメたちを睨みつけた。
どうやらアルフレリックは口伝や掟などを重要視するタイプらしい。しかし長い時を生きてきた森人族の価値観と、他の亜人族の価値観が同じかといえば首を横に振るだろう。現に、ジンを初めとした他の亜人族の長老たちもいい顔はしていない。
「ならば、今この場で試させてもらう!!」
そんなアルフレリックと何食わぬ顔で自分たちの国にいるハジメたちに怒りが限界にたちしたのか、ジンは咆哮を上げて突進して来た。
あまりにも突発的な行動に流石のアルフレリックも想定してなかったようで目を見開く。瞬時に間合いを詰め、丸太のように太い腕がハジメに迫る。誰もが挽肉になるハジメを幻視しただろう。
しかし、ハジメに危害を加える者を絶対に許さない男がここにいる。
そう、シュウだ。
ジンとハジメの間に割って入り、その豪腕を片手で受け止めた。
「何っ!?」
熊人族は亜人の中でも特に耐久力と腕力に優れた種族で知られており、その豪腕は巨木を易々とへし折る程だ。その中でも長老の座に就くジンともなれば、腕力は他の熊人族と一線を画すだろう。しかし、シュウはその一撃を軽々と受け止めた。しかも片手でだ。その光景に周りの亜人たちは驚愕に目を開きポカンと間抜けに口を開くことしか出来ないでいた。
まさか自分の一撃を受け止められるとは思っていなかったジンも動揺する。直ぐにシュウを威圧するように睨みつけ、腕を引き抜こうとする。が、まるで縫い付けられたようにピクリとも動かない、いや、動かせないでいた。
「な、何だと!? ぐううう! 離せぇッ!!?」
「ほらよ」
パ、と態々手を大きく開いてこれみよがしに離してみせる。ジンは握りしめられた腕をまじまびと見たあと、信じられないものを見るように今しがた自分の拳を受け止めた男を見た。
瞬間、灼熱が襲いかかる。
体が焼け、体表が燃え、簡単に肉を溶かす。骨だけになったかと思えばその骨すら炭と化し、炭となった自分は燃えカスすら残せずに燃やし尽くされた。
「──かっ」
肩を叩かれた衝撃で意識が戻る。どうやら今のはシュウから発せられた濃密な殺気からくるイメージだったらしい。そのことに気付くと、先程まで燃えるように熱かった体が急速に冷えていき、震えが止まらなくなる。まるで身一つで極寒の大地に投げ出されたようだ。ジンは守るように自分の身を抱きしめ膝を着き蹲る。
「ジン!? 貴様ぁ! ジンに何をしたっ!」
「何をした、だと?」
ジンの親友である土人族の長老、グゼが駆け寄りシュウを睨みつける。がシュウは何処吹く風でその視線を受け止める。
その態度に更にグゼの怒りを買い、彼は言葉を続けようとするが、シュウから放たれる威圧感に口を噤む。
「逆に聞くが、その熊野郎はハジメに何をしようとした? 殴りかかろうとしたよな?」
「ぐ、う……」
「別にお前らが人間族に恨みを持とうが殺意を持とうが知ったこっちゃないんだよ。俺たちはお前らに興味なんざないからな。けどよハジメたちに手を出すのは違うよな? だからさ……」
ぐっとグゼと鼻先が触れ合いそうになるほど距離を縮め、瞳を覗き込む。光を消した瞳で、シュウは楔を打ち込むように言った。
「次ふざけた真似したら殺す」
殺意が重しとなってグゼの体を押し潰す。グゼだけでなく、蹲っているジンや他の亜人族にまで降り掛かった。
「テメェだけじゃねえ、テメェの家族、友人、血縁、全員殺してやる。分かったら──」
「やり過ぎだし言い過ぎ。見なよ、全員気を失いかけてるじゃんか」
段々とヒートアップしていくシュウだったが、頭をチョップされたことで正気に戻る。辺りを見回すと、白目を向いている者や口から泡を吐いて倒れている者などばかりだった。
死屍累々とした光景を見て、シュウは困惑した。
「何でコイツら倒れてんだ?」
「貴方のせいかしら……」
呆れたようにレイシアはツッコミをいれた。
長老たちがまともに話せるように回復するまで一時間程かかった。目が覚めてシュウの顔を見た長老たちは一斉に体を震えさせ小さく悲鳴を上げたが、レイシアに手を繋がれ大人しくなっていると説明され落ち着きを取り戻すことができた。約二名程はそれでもビクついていたが。
再び話し合いが始まる。ひと段落着いたあたりでアルフレリックが内容はまとめた。
『襲いかかろうとした無礼を許して欲しいこと』、『その為に叶えられる範囲の願いなら叶えること』、『ハウリア族の身柄引渡しについて』の三つだ。
まず一つ目と二つ目についてはアルフレリックが頭を下げて懇願した。張本人であるジンも渋々ながら頭を下げた。
「我らフェアベルゲンの長老衆はお前さん方を口伝の資格者として認める。故に、お前さん方と敵対はしないというのが総意だ。それぞれ族長として、可能な限り末端の者にも手を出さないように伝える。だが、知っての通り亜人族は人間族を憎んでいる。血気盛んな……それこそ若い衆は我々の言葉を無視してしまうかもしれん……」
「その時は殺さないで欲しい、と。そう言いたいんですね?」
「ああ。無礼を許して欲しいなどと言った分際でこんなことを頼むのは……随分と都合のいいことを言っていると自分でも思っている。だが、どうか頼む。命までは取らないでやってくれ……」
「態度次第ですね。こっちを殺そうとしなんなら、殺されたって文句は言えないはずだ。それとも何か、亜人族の戦士ってのは自分にとって都合のいいことしか認めないのかな?」
「貴様っ!! 我々を愚弄する気か!?」
飄々とした態度で煽るハジメにジンがテーブルをひっくり返す勢いで立ち上がり怒りを見せるが、それをアルフレリックが片手で制す。
「よさんかジン、元はと言えばお前さんが南雲ハジメに殴りかかったのが原因だろうが。長老会でもその短気は直せと何度も苦言したというのに……」
「ぐぬぅ……!」
言い返せないようで、納得がいかないが引き下がり椅子に座り直す。どうやらジンは短気な性格なようで、それを矯正するよう散々注意されていたらしい。ツケが回ってきたとはこのことだろう。
気を取り直してハジメが話を再開させる。
「えーっと、そもそもですね、何度も言いましたけど僕らは大樹の下へ行ければいいだけなんですよ。そこに行けるんだったらこれ以上この国に関わることもないですし関わろうとも思いません。でも殺意を向けられるなら話は変わる」
「……お前さんの言っていることはもっともだ。しかし、しこをどうにか頼めないだろうか」
「アルフレリック、長老がそう何度も頭を下げるな」
「ゼル、しかしな」
ゼルと呼ばれた虎人族の長老が腕を組み悠々とした態度で口を挟む。態度から分かるが、その目にはどこか余裕がある。
「お前らが敵対した亜人族を殺すと言うのなら、こちらは大樹の下への案内を拒否させてもらおうか。口伝にも気に入らない相手を案内する必要は無いと言い伝えられているしな」
その言葉にハジメは首を傾げる。そもそも自分たちはハウリア族に案内してもらう約束を交わしている。つまり他の亜人族の案内など必要ないのであって、ゼルの話はズレているのだ。その話はすでにしたはずだが何を言っているのだろうと困惑する。ニヤニヤと笑いながらゼルは話した。
「ハウリア族に案内してもらうなど考えぬ事だな。そいつらは忌み子を匿い育て続けてきた罪人だ。フェアベルゲンの掟に基づいて処刑する」
「そんな!? 私はどうなっても構いません! ですが家族だけは!!」
「長老会議で決まったことだ。これは覆らない」
「シア、いいんだ。我ら皆、覚悟は出来ている。私たちは家族を見捨ててまで生き延びようとは思わない。お前が気に病む必要は無いんだよ」
カムの言葉に涙腺が決壊し涙が溢れるシア。ハウリア族は皆泣きながら抱き合っていた。家族愛が強すぎだゆえに家族が死んでしまう、なんとも皮肉な結末だ。
「というわけだ。これで貴様らが大樹の下へ辿り着く手段は消えたぞ? どうする?」
「……馬鹿なの?」
「な、何!?」
言外にこちらの言う通りに従えと言ってくるゼルに、黙って話を聞いていたユエが無表情を崩し、呆れたように呟く。ユエの物言いに目を釣り上がらせるゼルと、その様子を思わず注視するシアを初めとしたハウリア族。
ハジメもシュウもレイシアも、同じことを考えているのだろう。澄まし顔でユエの話に耳を傾ける。
「さっきからハジメは言っている……そっちの事情は関係ないって。それにシアたちは今、私たちの仲間……。仲間に手を出すなら、私たちも黙ってはいない」
「それと気になっていたのだけど、そもそも何で魔力を持った亜人をそこまで迫害するのかしら? 亜人族は仲間思いなんじゃなかったの?」
幼い見た目から発せられる言葉は見た目以上の重みがある。長老たちはユエの言葉に思わず息を呑んだ。
そしてレイシアが疑問に思っていたことを聞く。フェアベルゲンは様々な亜人族が集まって形成されている国だ。そこに種族の違いはあれど、亜人族としての絆は確かにあるはずだ。だと言うのに魔力を持つと言うだけで人族と同じ存在だと決めつけ迫害する。それが不思議で仕方がなかった。
レイシアの問いに、狐人族のルアが狐耳をピコピコと動かしながら答える。
「確かに僕らは助け合いながら生きている。だけど忌み子は別なんだよねぇ。魔力を持つということは人族側に与して産まれてきたということ、そして強大な力を持つということになる。いつ我々に牙を剥くか分からないのなら、芽が出る前に摘んでしまった方がいい」
「今までもそうだ、例外なく忌み子には処罰を与えてきた。そしてこれからもそうだ」
ルアの言葉に翼人族のマオが続く。そしてじろりとハウリア族に視線を向ける。
話を聞いても考え込み唸るレイシアにマオが聞き返した。
「何がそんなに引っかかる? これは我らフェアベルゲンの掟であり決まりである。よってこやつらは処罰される。それでいいだろう?」
「……いや、よくないかしら。やっぱりおかしいもの」
「だから何がだ」
認めないレイシアに苛立ち少し声を荒らげるマオ、そんな熱くなったマオの頭に冷水を浴びせるように話した。
「だって、それじゃあ貴方たち、やってる事は人族と一緒じゃない」
その言葉を聞いた長老たち全員が言葉を失う。レイシアの言葉を理解するのに少し時間がかかったのだろう。数秒後、アルフレリックを除く長老たちが怒りに顔を歪ませてレイシアを睨みつけた。それもそうだろう。散々自分たちを虐げて、苦しめてきた人間と自分たちを同列だと言うのだ。亜人族であることに誇りを持つ彼らには最大級の侮辱の言葉だったのだろう。
長老たちを代表してゼルが低く唸り、レイシアを問い詰める。
「貴様……それはどういう意味だ……? 侮辱と受け取りその喉笛を食いちぎるぞ……!!」
「どういう意味も何も、そのままの意味かしら。貴方たちがやってることは、人族が亜人族に対して『魔力を持たない劣等種』と言って迫害するのと変わらないかしら。現に貴方たちは同族に対して、『魔力を持つから人族と同じだ』と言って迫害してるじゃない」
「そ、それは……」
レイシアの言葉に何も言い返せず、いきり立っていた長老たちは全員顔を俯かせる。ただ一人だけ落ち着いていたアルフレリックが溜息を吐きレイシアに頭を下げる。
「すまない。非礼をお詫びする。お前さんの言う通り、我らがやっていることは人族が亜人族に行うこととなんら変わりない……しかしな、魔力を持つ亜人というのはそれは珍しいのだ。人族がその事を嗅ぎつければフェアベルゲンに攻めてくるかもしれん……一を守り全を捨てるか、全を守り一を捨てるか、どちらを取るかと言われたら後者になるのだよ。それが掟なのだから……」
「……でも納得いかないわ。掟、掟、そんなに掟が好きなのかしら? ──貴方たち、見てて滑稽よ」
氷のように冷たい瞳に射抜かれ、思わず呼吸を止めてしまう。まるで肺が凍りついたように苦しい。
動揺する長老たちを無視してシュウが口を開いた。
「そもそも俺らもシアと同じように魔力を直接操れるからな。俺らを資格者として認めんならシアを見逃すくらい今更だろ」
シュウは人差し指を立ててその先に炎を灯す。長老たちはその光景に目を見開き驚愕している。補足するように、ハジメもシュウに続いた。
「貴方たちの掟には資格者がどのような者であれ敵対するなって言われてるんですよね? 掟を絶対遵守するなら化け物であり忌み子である僕たちを見逃さなきゃいけないわけで」
「あ」、と。何かを思い出したようで声を上げる。
「そういえば、そこの熊さんが襲いかかってきたことを許してもらう代わりに『叶えられる範囲なら願いを聞く』って言ってましたよね? それなら今叶えてもらいます。シアたちハウリア族を許して下さい」
「なっ……お前さんは、何故そこまでする? 話を聞く限りハウリア族に恩があるわけでもない。ただ護衛を頼まれただけなのだろう? なのに何故そこまで肩入れする」
信じられないと、心の底から困惑するアルフレリックにハジメは当たり前のように言った。
「約束したからです。僕たちは彼らを守り、助けると」
「それならもうたち成されているだろう? ライセン大峡谷からここまで、凶悪な魔物や帝国兵から守ってきたでは無いか?」
「いいや、それじゃダメです。そもそもここまで守ってきたのに結局殺されるとか……僕らは何のためにハウリア族を助けたのかって話になるでしょ?」
命を捨てさせるために命を守ってきたなどどんな鬼畜シナリオだろうか。どこぞの虚の淵に佇むシナリオライターもそこまではしないだろう……しないよね?
ユエとレイシアに問い詰められ、シュウとハジメに反論を潰され、何も言い返すことが出来なくなったと悟ったアルフレリックはそれはもう深い溜息をついて半ばヤケクソ気味に言った。
「はああ〜…………南雲ハジメと一行は資格者であると認める。が、同時に南雲ハジメ、その一行、そしてハウリア族は忌み子であるシア・ハウリアを匿ったとしてフェアベルゲンへの立ち入りを禁止する。ハウリア族に関しては南雲ハジメの奴隷として捕まったことにして、死んだ者として扱う。以降、南雲ハジメたちに手を出した場合は全て自己責任として好きにして貰って構わない。……以上だが、他に何かあるか?」
疲れきった眼差しから『もうこれ以上面倒事を起こさないでくれ』という気持ちが伝わってくる。ハジメは苦笑いしながら首を横に振った。
「ないですよ。何度も言ってるけど、僕らはただ大樹の下へ行きたいだけですからね。むしろ理性的な判断をしてくれて助かります」
「アルフレリック! 貴様、見逃すというのか!? コイツらを!!」
アルフレリックが言っていることは完全に屁理屈だ。ジンが身を乗り出して抗議する。他の長老たちもギョッとした表情を向けている。
「力に屈して掟を破るなど、長老会の威信は地に落ちるぞ!! それでもいいのか!?」
「なら熊公、俺らを殺すか?」
燃えたぎる声色とは他所に、横槍を入れた本人であるシュウの顔はクールだった。
「だったら俺は構わないぜ。最も、次は気絶だけじゃ済まないだろうがな」
「っそ、れ、は……」
「ジン。いい加減にしろ。すまない澤田シュウ、我らはお前さんらに敵対する意思はない。どうか許して欲しい」
「俺はハジメほど気は長くないんだ。──三度目はねぇぞ」
ギロリ、とジンを睨みつける。眼力だけで魔物も殺せそうだ。
先程のことを思い出したのだろう、ジンはガクガクと体を震わせて黙って席に戻った。
また溜息をつき、アルフレリックがハジメに話しかける。
「何度もすまない。悪いのだが、早々に立ち去って欲しい。我々も口伝の資格者を歓迎できないのは心苦しいのだが……」
「いえ、そちらの心情も分かってるので。ほら、いつまでもボッーとしてないでいくよ、シア」
「ふえっ、わ、私たち……生きてていいんですか?」
「いまさっきそう言ってたでしょ?」
未だにへたり込むシアに困った笑みを浮かべ頭を撫でる。トントン拍子で窮地を脱したこの状況が信じられないのだろう。カムたちも困惑した表情だ。一度決まったことは絶対に覆らない、それがフェアベルゲンの長老会議なのだ。その決定が覆ったことに脳がどう処理すればいいのか戸惑っているのだ。
そんなシアを、レイシアが優しく抱きしめた。亡き母親に抱きしめられたことを思い出した彼女は、レイシアの胸に顔を埋め、噛み締めるように静かに泣いた。自分の服が涙で汚れることも気にせず、レイシアはただ黙って優しく抱きしめ続けた。
シアたちは胸に刻みつけるだろう。ハジメたちという、救世主のことを。彼らに対する感謝の気持ちを。
ハウリア族は、受けた恩は絶対に返す。それはもう相手が過剰とも思う程に。ハジメはそれをすぐに実感することになるのだが、今はまだ知らない。
カム「一族を救っていただき、どうやって恩を返せばいいのか……え? 私たち自信が強くなってくれると嬉しい?
分かりました! このカム・ハウリア! 貴方の望みであればたとえ火の中水の中!
次回、ありふれた親友
『ハウリアの決意、レギオン、レジオン、レジスタンス!』
熱き闘志に、チャージイン! ですぞ!」
未完成で投稿してすまんこ……待って!今の無し!!スマン!!スマンなんだ!!!