ありふれたハジメさんには親友達がいます   作:妖魔夜行@

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第二話「異世界召喚」

 夢を見る。自分が見たことも無い人たちに囲まれている夢を。

 

 

 夢を見る。その周りの人間が自分に親身になっている夢を。

 

 

 夢を見る。仲間を守るために恐ろしい力を持つ相手に立ち向かう夢を。

 

 

 夢を見る。何度挫けても、何度ボロボロになっても、その度に立ち上がり前を向く夢を。

 

 

 夢を見る。祈るように拳を振るう夢を。

 

 

 夢を見る。幼い子供に銃をつきつけられる夢を。

 

 

 夢を見る。死ぬ気でやれば叶わない事などないという夢を。

 

 

 

 夢を、見る。

 

 

 

 夢を──

 

 


 

 

「シュウ! ねえシュウってば!!」

「っ! こ、ここは……?」

 

 目を開けるとそこは見知らぬ場所だった。聞きなれた幼なじみの声に呼ばれ、どうやら目を覚ましたらしい。

 

「分かんない……それより大丈夫? さっきまで魘されてたんだよ。悪夢でも見た?」

「いや、なんかよくわかんない夢を……見たことないはずなのに知っている……知っている……なんだっけ?」

「? まあ平気ならいいけど……それよりシュウ、ここってまさか……」

「というか黒乃は?」

「やあーお二人さんっ。さっきぶりだね。僕に会えなくて涙を流してなかったかい?」

「うん、いつも通りみたいだね。よかった」

 

 雰囲気に当てられてちょっとカッコよく話そうと思った矢先にシュウに出だしをくじかれて黒乃の追撃をくらいハジメは「ああ、もうなんかいいや」と適当に流すことにした。

 

「異世界召喚、だよな。ハジメの部屋にある小説でよく見る」

「あのスマ○太○とデ○マ○郎のアレ?」

「うん、その言い方は止めようか。かなり失礼だからね。あとアッチは転生の方が言葉のチョイス的には合ってるからね」

「ナニヤッテンダミカァ―!!」

「団長を混ぜないで。いや確かにアレも面白いけどさ」

 

 黒乃のボケに突っ込んで話が進まない事に頭を悩ましていると、いつの間にかシュウは周囲を見回しており、それが終わると真剣な表情で話し始めた。

 

「……どうやらドッキリとかの類じゃないようだな。なんかよく分かんないオッサンたちが大勢いるし」

「えっ? うわっ、ホントだ気持ちわる」

 

 緊張感などありもしない言葉で感想を言う黒乃。ハジメが黒乃の視線の先を見てみるとそこには、白地に金の刺繍がなされた法衣のようなものを纏い、傍らに錫杖のような物を置いて祈るような姿勢で跪いている者たちがいた。 少なくとも三十人以上はいるだろう。それを見たハジメは「確かに気持ち悪いなぁ」と黒乃の言葉に共感した。

 

「僕たちだけじゃないみたいだけど……クラスの皆は全員いるの?」

「教室にいたやつらは全員いるな……くそっ! 俺がもう少し早く気づいてれば……」

 

 地面を殴りつけて自分を責めるシュウをハジメと黒乃が止める。

 そうこうしていると跪いている者たちの中から一際位の高そうな老人が前に出てきた。

 そんな彼は手に持った錫杖をシャラシャラと鳴らしながら、外見によく合う深みのある落ち着いた声音でハジメたちに話しかけた。

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者 以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

 そう言ってイシュタルと名乗った老人は、微笑を見せた。

 

 


 

 

 ハジメたちは移動して、大広間のような場所へ連れていかれた。高そうな机が幾つも並び光輝を順にスクールカーストの高い方から上座に座って行く。

 だが「そんなの関係ねぇ!」とばかりに黒乃はシュウとハジメの手を引いて雫の隣に座った。雫、ハジメ、黒乃、シュウの順番で座る。香織は雫と龍太郎の間に座っており、ハジメの方をじーっと見つめていた。

 

 そして全員が着席すると、絶妙なタイミングでカートを押しながらメイドさんたちが入ってきた。こんな状況だと言うのに男子生徒たちは美人なメイドさんたちに目を奪われだらしなく鼻の下を伸ばしている。それを見て女子生徒たちは絶対零度の視線を男子生徒たちに送る。

 

 かく言うハジメも飲み物を入れに来たメイドさんに目を奪われそうになるが背筋に冷たい何かが刺さり、振り向いてみると光のない瞳をこちらに向けた香織が微笑んでいるのが見えたので、ハジメは震える体を抑えながら大人しく正面に向き直った。

 

 一方シュウはと言うとメイドさんを見て「比べるまでもなく黒乃の方が可愛いな」とめちゃくちゃメイドさんに失礼なことを考えていた。

 

「おおー! ハジメハジメ! メイドさんだよ! リアルメイドさんだよ!」

「ちょっと黒乃、静かにしなさい」

 

 メイドさんにはしゃいでいた黒乃を雫が窘めると黒乃は少し不満そうにしてたが「はーい」と言って静かになった。

 

 それからイシュタルによる長ったらしい話が始まるのだが要約すると、

 

 

【今まで戦争してた魔人たちが魔物使い始めてマジやばい】

 

【人間たち弱いから太刀打ちできない】

 

【そしたら神様が勇者呼べばおkって言ってきたからハジメたちを呼んだ】

 

【勝手に呼んだけど君たちには魔人族と戦ってもらうからよろしくたのむ】

 

 

 とのことである。

 

 これを聞いたシュウとハジメと黒乃の三人は呆れを通り越して自分たちを呼んだイシュタルたちを馬鹿なんじゃないのかと思った。そして場の空気に流されて戦争に参加しようとしている光輝たちをシュウと黒乃は冷たい目で見ていた。

 

 すると社会科担当教師の畑山愛子先生、通称愛ちゃん先生が立ち上がって抗議し始めた。

 

「この子たちを戦争の道具にさせるなんて私が許しません!! 早く私たちを返してください!!」

「うむぅ、お気持ちはお察ししますが現状、貴方たちの帰還は不可能なのです。先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな……貴方立ちが帰還出来るかどうかもエヒト様次第なのです」

「そ、そんな……」

 

 愛子先生が脱力したようにストンと椅子に腰を下ろすと今まで黙っていた生徒たちが一斉に騒ぎ出す。

 

「嘘やろ? 帰れないってなんやねん!」

「いやん! 何でもいいから私たちを帰してよ!」

「あ゛あ゛!? 戦争なんて冗談じゃねぇ! ざっけんなよ!」

「帰してくれよ……俺の家に帰してくれよォ!!」

「笹食ってる場合じゃねぇ!」

 

 周りがパニックになる中、シュウは極めて冷静だった。イシュタルが話す内容の節々から何となく帰れないことは察していたし、なによりハジメが貸してくれた小説の中でもこのような展開になる小説もあったので帰れなくて当然だろうと思っていた。むしろ何故逆に帰れると思ったのか、とパニックになる生徒たちを見て溜め息をついた。

 

 黒乃もシュウと同じくハジメに借りた小説のおかげで帰れないことは察していたので取り乱すことは無かった。が、幾ら大人びていても高校生。やはり家に帰れないという恐怖やこれから命の取り合いをするという恐怖があるらしく肩を震えさせてシュウの腕に抱きついた。

 

「シュウ、ごめんよ……僕は少し怖いよ……怖いよ……」

「……安心しろ。俺は黒乃とハジメを守るために今まで鍛えて来たんだからな。何があろうが守ってやる」

 

 シュウは黒乃の手を握りながら黒乃にだけ聞こえる声でそう言った。それを聞いた黒乃は震える声で小さく返事をした。

 

 未だパニックが収まらない中、光輝が突然テーブルを叩き、注目を集めてイシュタルと話し始めた。自分たちが魔人族を倒せばエヒト様とやらは帰してくれるのか、と光輝が聞くとイシュタルは魔人族を倒した救世主の頼みなら聞いてくれるだろうと答えた。

 

「ハジメ……どう思う?」

「うん……百パーセントじゃないけど八割くらいの可能性で嘘だろうね。 だいたい、僕たちを呼んだ神様がそんな融通の利く神ならまず僕たちの前に現れて説明とかしてくれるだろうしね」

「スマホの爺さんを見習えって欲しいよな、そのエヒトってやつも」

「その話はよそう。止めよう」 

 

 黒乃を挟んでイシュタルたちに聞こえないようシュウとハジメは話し合う。最初は真面目だったのだがシュウがネタを挟んできたのでハジメは話をやめた。

 

「うん、なら大丈夫だ。俺は戦うよ。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。俺はお前の背中を守るために鍛えていたんだ……俺もやるぜ?」

「龍太郎……!」

「それしか、ないのよね。気は向かないけど……アンタたち二人に任せ切りになるくらいなら私もやるわ」

「雫……!」

「え、えっと、雫ちゃんが、皆がやるなら私も頑張るよ!」

「香織……!」

 

 シュウとハジメが話を止めると、ちょうど光輝がカリスマを発揮させていつもの三人と一緒に戦う意志を見せていた。

 それを見てパニックになっていたクラスメイトたちは落ち着き、光輝たちがやるなら自分たちも! じゃあ俺も! 私も! と一斉に賛同し始めた。

 

 愛子先生はオロオロと「ダメですよ〜」と言っているのだが誰も耳を貸さない。場の雰囲気に流されて、酔っているのだ。

 

 そして、この空気を容赦なく切り裂く者たちがいた。

 

「盛り上がってる所悪いが……お前ら馬鹿だろ」

 

「君たちちゃんと今の状況を理解してるのかい?」

 

 シュウと黒乃だ。二人はクラスメイトたちを冷たい目で見ながら響く声で全員にそう言った。

 

「……どういうことだ? 澤田。俺たちをバカだなんて……皆で帰るために、力を合わせるために団結してるじゃないか。 それに黒乃、状況を理解したからこそ俺たちはイシュタルさんたちを助けることにしたんだぞ?」

「そこまで言うなら天之川、お前は人を殺せるんだな?」

「は?」

「人を殺せるんだな、と聞いているんだ。天之川だけじゃない、お前ら全員だ。お前らには人を殺す覚悟があるんだな? いざと言う時に出来るんだな?」

 

 そう、シュウたちは考えていたのだ……魔人族について。魔人、人という漢字が使われているのだ。多少違うところはあるかもしれないが見た目は殆ど自分たちと変わらない存在なのだろう。それを前にして光輝たちは果たして戦えるのか、否、それは無理だとシュウは判断した。

 

「今さっきまで俺たちはただの高校生だったんだ。そしてわけも分からない所へ突然呼び出されて、わけも分からん奴らと戦争するからそいつら殺してくれと頼まれる。それをお前らは疑いもせずに了承した。それは勿論、人を殺す覚悟があるからそう判断したんだな? 親や兄弟、恋人、友たちがいるかもしれない人を、殺すんだぜ……?」

「うっ……」

「まさかとは思うが……お前ら、敵はゲームなんかに出てくるモンスターとでも思ってたのか? あの爺さんは魔人族って言ったんだぜ……魔人……つまり人だ。敵も俺たちと同じ人なんだよ。しかも今まで殺人なんかしたこともないヤツらが殺すか殺されるかの戦場に赴くんだ。それ相応の覚悟があって、言ったんだよな?」

 

 シュウの言葉を聞いて先程まで盛り上がっていた光輝たちはお通夜みたいに静まり返った。

 そして畳み掛けるように黒乃が話し始める。

 

「凄いね君たちは、僕にはとても真似出来ないよ。出会って一時間も経たない老人の話を鵜呑みにして戦争に参加しようとするなんて、ね」

 

 その言葉に更に空気が重くなる。

 

「ねえ香織っち、雫っち。そこの頭が天之河な彼はともかく君たちは理解できないのかい?」

「……どういう……こと?」

「今そこの老人、えーっとイシュバールさんだっけ?」

「イシュタルだ黒乃」

「おおそうだったそうだった。そのイシュタルタルソースさんは君たちにこう言ったんだよ? 『君たちは自分たちより強い。だから自分たちの駒となって敵を殺せ』ってね。 凄いね、僕たちに出来ないことを平然とやってのける君たちに痺れも憧れもしないけど軽蔑するよ」

 

 トドメとばかりに黒乃の言葉が響く。

 

「え、なにこの空気。おっも、重すぎやしないかいちょっと」

「まあ十割俺たちのせいなんだけどな。でも間違ったことは言っていない。ハジメもそう思うだろ?」

「え? あ、うん。そうだね」

「はいハジメの言質いただきましたー」

「へっ……あっ」

 

 ここぞとばかりにクラスメイトの視線が、ついでにイシュタルたちの視線もハジメに突き刺さる。ハジメからは壊れた蛇口のように尋常ではない量の冷や汗が滝のように流れ出る。

 ああ。胃が痛い──ハジメが異世界に来て初めて味わった痛みであった。

 

 シュウと黒乃の忠告も虚しく、結局光輝たちは戦争に参加することを決めた。そして自分たちは参加すると言っていないのに何故か仲間のカウントに入れられたシュウと黒乃は額に青筋を浮かべながらニコニコしており、ハジメはそれを見てガクブルになっていた。

 

 シュウたちは今いる【神山】という場所にある教会からハイリヒ王国という国へ行くために下山した。

 その際にイシュタルが魔法を見せるとそれを初めて見た生徒たちはキャッキャッと騒ぎ出す。

 これから命懸けの日々になるかもしれないと言うのに呑気だなぁ、とシュウはクラスメイトたちを冷たく見ながらこれからの事を考えた。

 

 

 

 

 


 

 シュウ「異世界あるあるステータステンプレに乗っ取るようクラスメイトたちのステータスはチートそのものだったようだ。

 俺もチートのうちの一人だったけどハジメと黒乃の顔は青ざめていて……どうしたんだあいつら? まあ可愛いからいいか! 

 

 次回ありふれた親友、

『天職判明! チート、グレート、ステータス!』

 

 熱き闘志を、チャージ、イン!!」

 




 実際、あの場で光輝の「俺はやる、人々を救ってみせる!」の話を否定できる人間は殆どいないと思う。空気に飲まれてダチョウ倶楽部になるか怖いわー戦争怖いわーって感じでビビってるかのどっちかだと思うノーネ。だからこの作品の主人公サイドは異常者だってはっきりわかんだね(辛辣)
あと二次創作でも異世界ラノベ優秀すぎて草生える。
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