ありふれたハジメさんには親友達がいます   作:妖魔夜行@

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 新年明けましておめでとうございます!(激遅)


第二十一話「おいでませブルックの町」

 樹海からどれだけ車を走らせただろうか、目を凝らすと街が見えた。あちらからは視認できない距離だろう。トラブルを避けるために降車して『宝物庫』に車を仕舞い、そこからは歩いて向かうことにした。

 魔物の侵入を防ぐための門の隣に、小さな詰所がある。そこから冒険者のような風貌をした門番らしき男が出てきた。

 

「止まってくれ。街に来た目的と、ステータスプレートを」

 

 門番としての定型文、言い慣れていそうだ。ハジメたちは素直にステータスプレートを渡す。勿論ステータスや技能は隠蔽済みだ。無用なトラブルは起こさないよう徹底している。

 

「そちらの嬢ちゃんたちのは?」

「少し前に魔物の襲撃にあってしまって……その時に紛失してしまったんですよ。後ろの兎人族は……分かりますよね?」

 

 ユエ、レイシアに視線を向けて顔を赤くしたあと、後ろに控えているシアにも目を向ける。兎人族にしては珍しい青みがかった銀髪、そしてお姫様顔負けの容姿、騎士団顔負けの筋骨隆々とした肉体、見事なポージング、そこから導き出される答えは──

 

「うん、護衛か。通ってよし!」

 

 門番の思考回路はショートしてしまったようだ。

 

 


 

 

 あのあと正気に戻った門番から魔物の素材を換金できる冒険者ギルドの場所を聞き、一行はそこを目指して歩いていた。 街はホルアドのように露店が大勢並んでおり、活気溢れる声が飛んでいる。

 しかし、やはりと言うべきか、すれ違う人の視線はユエやレイシア、シアと言った女性陣に集まり二度見、三度見されることもしばしばあった。 次にくるのは嫉妬の視線、美女に囲まれているハジメとシュウに向けられているものだ。二人は何処吹く風と流しているので、それも相まって視線はどんどん剣呑なものに変わっていく。

 ユエとレイシアが見せつけるように腕を組んでいるのが原因でもあるのだが。

 

 視線を纏ったまま歩き続けているとギルドに到着した。想像していた荒くれ者の住処とは違い、清潔感のある市役所のような場所だったことにハジメは驚いていた。

 食事スペースはあるようだが、誰も酒は飲んでいない。飲みたければ酒場へいけということだろう。

 ハジメたちがギルドに入ると一斉に視線が向けられる。ここに来るまでの道中に感じていたものとは違い、好奇心や興味といった種類のものが多かった。

 

 カウンターまで向かいハジメが受付嬢のオバチャンに話しかける。

 

「冒険者ギルド、ブルック支部へようこそ。今日は何の用だい、色男」

「色男って……素材を換金したいんですけど」

「買取だね? ならステータスプレートを見せておくれ」

「あ? 買取にステータスプレートが必要なのか?」

 

 シュウの言葉にオバチャンは「うん?」と言った表情をして首を傾げる。

 

「アンタら冒険者じゃないのかい? 冒険者と確認出来れば一割増で売れるんだよ」

「へえ。そりゃ凄いな」

「他にもギルドと連携してる宿屋やら食事処の割引もあるからね、登録しといた方が得だよ。登録料として千ルタ必要だけどね」

「うーん……今持ち合わせが少しもなくてですね。買取金額から引いて貰えませんか?」

「なんだいこんな可愛い子三人も侍らせといて、ちゃんと上乗せしといてあげるから不自由にさせんじゃないよ」

 

 オバチャンのかっこよさに思わず見惚れてしまう。これが大人の余裕というものか、ハジメは間違った知識をひとつ覚えた。

 ステータスプレートを差し出してすこし待つ。

 

 女性陣のステータスプレートを発行することも考えたが、三人ともハジメやシュウに劣らず化け物じみたステータスのはずなので、そんなものを作ってしまえば面倒なことになってしまうだろう。シュウの『超直感』もそう反応している。

 

 戻ってきたステータスプレートを見てみると、天職の隣に職業欄として冒険者が追加されていた。今はまだルーキーの色である青色の点が施されているが、依頼をこなしギルドからの評価を上げていけば赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金と色が変わっていく。これはこの世界の通貨であるルタの色と一緒で、今のハジメとシュウには一ルタの価値しかないと言われているようなものだ。天職を持たない冒険者が上がれる限界は黒らしく、上位四桁に入ることから天職ありで金ランクに上がったものよりも賞賛を受けるらしい。それほど冒険者にとって色は重要なのだ。

 

「男なら頑張って黒を目指しなよ。さて、買取だったね。あたしは査定資格を持ってるからここで構わないよ。素材を見せておくれ」

「オバチャンすげぇな……」

「こらシュウ。すみません、お願いします」

 

 シュウの言葉に気にした様子は見せず、寧ろ溌剌とした笑みを浮かべる。なんでも「男はそれくらい正直な方がいい」とのことらしい。ユエたちだけではなく、後ろの受付女性陣や女性冒険者たちが深く頷いていたことを見るにどうやらその通りなのだろう。

 ハジメは軽く謝罪した後、予め宝物庫から出しておいた素材が入ったバッグから魔物の爪や牙、皮、魔石といった素材をカウンターに置く。

 その素材を見てオバチャンの顔付きが険しいものに変わっていく。

 

「これは、樹海の魔物かい。凄いのを持ってきたね……でもここでいいのかい? 中央ならもっと高く売れるよ?」

「構いません」

 

 買取査定額はキリよく六十万ルタ。中々の大金だ、なんでも樹海の魔物は珍しく良質なものが多いらしく、ここらではとても貴重なものなのだとか。

 

 そのあと天職が『書士』だというオバチャンから精巧な地図を貰いオバチャンの有能さに戦慄しながらハジメたちはギルドを後にした。

 

 地図に書いてある『マサカの宿』という料理が上手く、防犯付き風呂付きと文句のない宿屋に宿泊することにした。ちなみに風呂が決め手である。

 

 宿屋に入ると、本日三度目の視線による集中砲火を受ける。そろそろウンザリしてきた。

 それらをスルーしてカウンターに向かい、十五歳ほどの受付嬢に声をかける。

 

「この地図を見て来たんですけど、一泊お風呂付き、食事付きでお願いします」

「かしこまりました! お風呂は十五分百ルタとなっています! この時間帯が空いてますけど、どうしましょう?」

「どれくらいにする?」

「一時間半とかでいいんじゃねえか?」

「えっ!? そ、そんなに!? あっ、えっと、お部屋はどうされますか?」

 

 こちらの世界の住人にとっては長く風呂に入ることは珍しいのだろう。しかし日本人である二人にとってこれだけは譲れない。

 

「二人部屋ひとつと三人部屋ひとつでいいかな?」

「ん。私とハジメ、その他三人」

「ちょっと待ってエロ吸血鬼。俺とハジメ、その他三人に決まってるだろ?」

「いや、私とシュウ。その他三人かしら」

「えー! 私とハジメさん、その他三人に決まってるですぅ!」

 

 ザワり、今まで様子を伺っていた食事スペースから声が上がる。そして視線の種類が嫉妬、怒り、殺意といった視線へと変質した。

 

 ハジメはこうなることが大体予想出来ていたからパパパッと済ませようとしたのだが、結局回避することが出来ず頭を抱える。

 

「……五人部屋ってありますか?」

「一体どういう関係なの……!? あっはい、ありますよ!」

「じゃあもうそこで、ほら馬鹿やってないで行くよ!」

 

 いつのまにか『誰がハジメと寝れるかジャンケン選手権』が始まっていたので容赦なくゴム弾を打ち込んで四人を引きづりながら案内された部屋へ向かった。

 部屋に入り鍵を閉める。四人をベッドに投げ捨てたあと、ハジメも寝転がり意識を手放した。

 

 夕食の時間になり起こされ、食事スペースに行くとチェックインの時にいた客がまだいた事や、少女の視線がなんというか思春期特有のものに変わっていたりと思わず引きつった笑みを浮かべてしまったハジメは悪くない。

 

 


 

 

 食事を済ませたハジメたちは男子と女子で別れてそれぞれ行動することになった。ハジメとシュウはお互いの武器の新調、整備などで、ユエ、レイシア、シアは少女らしく可愛い服を見繕いたいとのことだそうだ。

 

 二人に送り出されて街をぶらぶら歩く三人。男性陣がいないことも相まってか邪な視線を感じる。

 

「地図によるとこの辺りみたいかしら」

「楽しみですぅ! それにしてもキャサリンさんってすごい女の人ですね! 受付に査定、加えてこんな立派な地図まで作れるんですもん!」

「ん、人は見かけによらない」

 

 店に到着し、店内を物色する。流石はキャサリンがおすすめする店だ。品揃えも品質よく、機能的なものばかり置いてある。もちろん見た目も忘れないという良店の中の良店だった。

 

「あらあ〜! いらっしゃあ〜い♡ウフッ、可愛い子たちねぇ〜ん! 来てくれて嬉しいわぁ〜、お姉さん、いっぱいサービスして、あ・げ・る♡」

 

 ただ一つ、化け物がいることを除けば。

 

 その肉体はマッスルモードのシアにも劣らず、いや寧ろ勝るほどの筋肉を有しており某世紀末漫画のように濃い劇画調の顔、そして功夫の心得を持っていそうな超人のような髪型をしている。クネクネと体を拗らす動きがなんともおぞましい。

 

「ひ、人は見かけによらない……」

「で、ですぅ……」

「か、かしら……」

 

 ユエは先程自身が呟いていた言葉を再度唱え、言葉の意味を思い出す。そう、人は見かけでは無いのだ。大事なのは中身、例えガワが化け物でも中身が善良な市民ならば問題ない。

 

「あらあ? どうしたの急に固まって、も・し・か・し・て……アタシの美しさに見惚れちゃったかしら♡」

 

 耐えきれなかった。神話生物も裸足で逃げ出すほどの不気味さ、ジョークを話す顔も恐怖でしか無かった。ハートマークがつくことでさらにおぞましさは加速する。オーバーキルである。

 

 くらりと目眩がして思わず額に手を当てる。シアは地面にへたり込み白目を向いており、レイシアはここにいないはずのイマジナリーシュウを生み出して会話していた。重症だ。

 

 結局、三人は化け物改めクリスタベル店長に服を見繕って貰い店を後にした。以前から着用していた服も似合っていたが、流石は美少女。今着ているファンシーガーリーな服装も似合っている。

 クリスタベルはそんな三人の姿を見て満足したのか愛嬌のある笑顔を浮かべて「またいらっしゃあ〜い」と手を振って見送ってくれた。

 

「いやあ〜……いい人でしたね、クリスタベルさん。怖かったけど」

「ん……いい人だった。怖かったけど」

「かしら。怖かったけど」

 

 本人が聞いていたらまたSAN値直葬しそうな形相に変貌してしまいそうだが、もうクリスタベルには聞こえない距離まで移動していたので助かった。

 

 次は道具屋を回ろうと話している最中、冒険者らしき男たちがユエらをぐるりと取り囲んだ。パッと見でも三十人程はいる。

 白昼堂々と人攫いでもするつもりか、そう考えたユエとレイシアはすぐさま戦闘に入れるよう臨戦態勢に入る。二人を見てシアも気付いたようで、いつでも飛び出せるように『身体強化』を発動させる。

 

 だが男たちがとった行動はユエの予想を外れ、対話だった。

 

「ユエちゃんとレイシアちゃん、それにシアちゃんで合ってるよな?」

「……? ……合ってる」

「なんの用かしら?」

 

 てっきり戦いを挑まれることになると思っていた三人は敵意を感じない男たちの様子を見て訝しげな視線を送る。よく見てみれば冒険者だけでなく、エプロンを付けたそこらの店の店員らしき者たちもいた。

 

 話しかけてきた男が周りの男たちに視線を送ると、それぞれ深く頷き覚悟を決めた顔つきで一歩前に出た。

 

「「「「「ユエちゃん!!!!! 俺の恋人になってくれ!!!!!」」」」」

 

「「「「「レイシアちゃん!!! 俺の女になってくれ!!!!!」」」」」

 

「「「「「シアちゃん!!!!! 俺の奴隷になってくれ!!!!!」」」」」

 

 三人は気づいていないが、ここにいる大半の者がマサカの宿の宿泊客だ。

 つまりはそう、一目惚れである。だとしてもいきなり大勢で囲って告白というのはどうなのだろうか、状況を理解した三人の目は冷たいものに変わった。

 

「……ユエさん、レイシアさん。私お腹が空きました〜」

「あら、道具屋はいいのかしら?」

「キャサリンの地図を見る限り、もう少し歩けば着く……店内を少し見てから、ご飯にする?」

「そうですね、そうしましょう」

 

 触らぬ馬鹿に祟りなし、三人がとった行動は無視だった。当然といっちゃ当然である。

 しかし男たちにとっては決死の告白、塩対応どころか対応すらされないなんてあんまりだ。

 

「ま、待ってくれ! せめて! せめて返事だけでも!!」

「断るに決まってる」

「ありえないかしら」

「逆になんであれでOKを貰えると思ったんですか」

「うぐぅ……!」

 

 当たり前だ。シアの言葉通り、なんであれで成功すると思ったのか、甚だ疑問である。

 膝を着く者、項垂れる者、反応は様々であったがそんな者たちの中でも諦めきれない男がいた。ギラりと目を光らせ三人に飛びかかった。

 

「だったら、力づくで俺のもんにしてやる!!!」

「シア」

「はいですぅ!」

 

 ユエに答えてシアが一歩前に出る。そして、筋肉形態(トゥルーフォーム)を解放した。

 単眼の巨人(サイクロプス)顔負けの筋骨隆々の肉体、その肩は山岳のように大きく、また隆起していた。

 いきなり美少女がマッチョに変貌したことに脳がフリーズする男たち、飛びかかってきた男はその体を片手で受け止められ先程までシアたちがいた店の前に投げられる。

 

「ぐっはぁ!?」

「あらあらぁ〜ん? 一体何かしら〜?」

「クリスタベルさあーん!! その人とここにいる男の人たちが私たちを襲おうとしてきたんですぅ!!」

「その声はシアちゃん……なんですって?」

 

 痛みとシアの姿で混乱していた男の眼前に化け物基クリスタベルの顔面がドアップで映し出される。クリスタベルは乙女の味方、乙女に仇なす者には容赦はしない。

 

今の話はホントかゴラァ!!!

「ひぃいいいい!!!?? ばっ、化け物ぉぉぉおお!!!!!?」

「だぁ〜れがニャルラトホテプも関わろうと思わない化け物だゴラァあああ!!!!

 

 どこから取り出したのか、麻縄で男の手足を器用に縛っていくクリスタベル。助けを求めていた口に猿轡をされた男は店の奥へズルズルと引きずられて行った。

 

 その光景を見ていた周囲の男たちは顔を真っ青に染めて膝を震えさせる。中には余りの恐ろしさに腰が抜けた者まで出る始末だ。

 

 店の奥からクリスタベルが出てきた。男たちから悲鳴が上がる。

 

「シアちゃん、ユエちゃん、レイシアちゃん。ここにいる全員が貴女たちを襲おうとしたの?」

「う〜んと、奥にいる人たちは違いますね」

「ん……そこからそこまで」

 

 人差し指で十人前後の男を指していく。男たちにとっては死刑宣告のように感じたことだろう。話を聞いたクリスタベルは舌をペロリと出して舐め回すように男たちの体を見定める。

 

「……そろそろ店舗を増やしたかったのよねぇ〜。それに合わせて従業員も増やしたかったから……丁度いいわね♡」

「「「「「ひ、ひぃいいいい!!!!!」」」」」

「クリスタベルさん、あとは任せてもいいのかしら?」

「ええ♡ここはお姉さんに任せて、お嬢ちゃんたちはショッピングを楽しんでいらっしゃい♡」

「ありがとうございますクリスタベルさん! 今度私の好きな人と一緒にお店に行きますね!」

「ん!? ハジメと買い物に行くのは私が先……!」

「私はシュウと行くかしら! またね、クリスタベルさん!」

 

 キャーキャーと言い争いながら三人が去って行く様子を微笑ましそうに見つめ、クリスタベルは男たちに向き直る。

 

「さ♡て♡と♡、アンタたちはこっちよ!!!

「助けてお母ちゃん!!」

「魔王が、魔王がすぐそこに!!」

「死にたくない!! じにだぐだいっ!!」

 

 想いを寄せてた女の子たちに好きな男がいることが発覚し、精神的にダウンしていたところにボディーブローをくらい肉体的にもダウンしてしまう男たち。

 

 数日後、クリスタベルの店は二号店と三号店を出したようでどちらも売れ行きは上々らしい。一つ特徴をあげるとするならば、店員の見た目がクリスタベルのような漢女(おとめ)であるといったところだろう。

 

 


 

 

「どうかなシュウ」

「ああ、悪くない」

 

 そう話すシュウの足には臑当てが着けられており、デザインは籠手と似た黒いシンプルなものとなっている。一つ違うとすれば籠手のように変形は出来ないことだろう。

 

「弓の方はどう?」

「こればっかしは実際に射ってみないと分からないな」

「ですよね。と言うかシュウ、弓なんて使えたんだね。いきなり弓作ってくれなんて言われたから驚いたよ」

 

 ハジメが作業台に使っていた机の上にはダイナマイトのような形をした円柱状の物体が置いてある。臑当て同様、これもハジメが製作したものだ。今は待機状態だが、魔力を流せば弓に変形する。

 

「んー、何となく使える気がしたんだよな。特に深い意味はない」

「ふぅん。ま、何にせよ一先ずはこれで完成かな。んー! 疲れた!」

「お疲れ様ハジメ。アイツらが帰ってくるまでまだ時間あるだろうし、風呂でも入るか? 今なら空いてるだろ」

 

 と、シュウが入浴を進めた直後、勢いよく扉が開かれた。

 

開けろ! ユエユエ市警だ!

「ユエ!?」

「お姉様〜、一体どうしたのかしら〜? 急に走りだしたりして……」

「ん、女の勘。嫌な予感がした。どうやらあたり……」

「なんか俺の超直感に似てきてないか……お前の勘」

 

 ちぇっ、と残念そうに舌打ちすればシュウはベッドに座り込む。その横にレイシアが座れば二人は自然と肩を寄せ合いイチャつき始めた。

 

「その服買ってきたのか? 似合ってるな」

「可愛いかしら?」

「ああ、すっげぇ可愛い」

「んふふ〜♪」

 

 花の咲くような満面の笑み。先程の男たちが見れば鼻血ものだろう。それを羨ましそうに見ていたユエがハジメに擦り寄る。

 

「ハジメ、私も買ってきた……似合う?」

「ああ、うん。似合ってるよ、可愛いね」

「ん……」

 

 頭を撫でられてご満悦なユエさん。するりとハジメの腰に手を回す。ムッツリである。

 

「ハジメさ〜ん! 私は! 私はどうですか〜?」

「シアも可愛いと思うよ」

「はうう! 嬉しいですぅ!」

 

 感激ですぅ! と抱きつきハジメの頬と自分の頬を擦り合わせる。いつもならユエが許さないのだが、今のユエはシア如きに構っている暇などないのだ。酷い。

 されるがままになっていたハジメだったが、弓の隣に置いてある側面に取っ手の付いた円柱状の物体をシアに渡す。シアは頭上に疑問符を浮かべていたが、渡されたモノの重さに驚く。

 

「こっ、これなんですか? 少し重たいんですけど……」

「魔力を流してみて」

「えっと……こう、ですか?」

 

 カション、カションと言いながら円柱状の物体は槌に変形した。しかもシアが以前まで使っていた槌より二回りも大きい。驚くシアを他所にハジメはつらつらと説明を始める。

 

「これはドリュッケン、シア専用の武器だよ。いつまでも急ごしらえの武器じゃ大迷宮なんか挑めないからね、変形ギミックだけじゃなく他にも機能を色々詰め込んでるよ。今はこれが限界だけど……僕の腕が上がり次第これからも改良を続けていくつもりだから、簡単に死なないでね?」

「ん。死にそうになる前に助ける」

「勝手に死んだらぶっ殺すからな」

「言ってること無茶苦茶かしら……シア、照れ隠しだから気にしないでね?」

「ふふふっ、分かってますよ!」

 

 ドリュッケンを後ろ手に持ちくるりと回る。

 

「不肖シア! 皆さんのお役に立てるよう、頑張ります!」

 

 ニパッ、と快活な笑みを浮かべて宣言した。

 

 いよいよ明日、ライセン大迷宮へ挑む。

 

 

 

 

 


 

 シュウ「ついに挑むことになった【ライセン大峡谷】の大迷宮。どんな強敵が待っているのやらと思っていたのに出てくるのは陰湿な罠に罠に罠!俺らのコンビネーションで軽く捻ってやる!

 

 次回!ありふれた親友!

『腹立たしい迷宮攻略! レディ、バディ、セキュリティ!』

 

 熱き闘志に、チャージ、イン!!」

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