ブルックからフューレンまでの移動距離は馬車で約六日。魔物が少ない日の出前に出発し、魔物が活性化する日の入り前には野営の準備を行う。これを繰り返すのも、もう三日目になる。
冒険者たちはそれぞれパーティごとに別れ、互いの持ち場につき周囲を警戒しながら食事をとる。こういった護衛以来は日数をまたぐことが多いので基本的に食事は乾パンや干し肉といった日持ちするものが多い。その食事代も自腹なので少しでも安く済む携帯食料品を持ち込んでいるパーティが殆どだ。
殆どということはそれに当てはまらないパーティもいるということだ。そう、我らがハジメパーティ……またの名を『ルール・ブレイカーズ』である。
「出来ましたよ〜。今日はシチューにしてみました!」
「おおー! 美味しそう!」
「お代わり分も十分だな!」
「下ごしらえは私も手伝ったのかしら!」
「味付けは私……!」
彼らは周りがパサついた固い肉やパンを齧っている横で出来たてほやほやのシチューを器に盛り付けている。
流石と言うべきか、女子力が高いシアは料理上手で彼女が旅に着いてくるようなってからはずっと料理当番を担当している。というのもシア以外にまともに料理できる人間が居ないのだ。
ハジメは出来なくはないが所謂男料理というもので、調味料や食材の切り方が大雑把なのだ。しかしシュウ曰く、「それでも偶に食べたくなってしまう中毒性がある」とのこと。
シュウは見た目通り出来ない。シュウの調理方法の辞書には『焼く』という言葉しか書かれていないらしい。味付けは『塩』オンリー。焼き鳥屋もビックリだ。
ユエは王族らしく料理などしたことはない。包丁の持ち方すらおかしかった。だがハジメという恋人が出来てからは『好きな人のために料理が出来るようになりたい』と思い、シアに料理の先生を頼んだ。現在は飾り切りに挑戦中だ。
レイシアもユエと同じように料理をしたことがなかった。けれど知識だけはあったのでシアの指導の元、料理の勉強をしている。勉強の成果もあり、今では簡単な料理なら一人でも作れるようになった。
とまあ女性陣は成長してきているがそれでも幼い頃から料理を嗜んでいたシアにはまだまだ敵わない。ハジメたちの胃袋はすっかりシアに掴まれている。
「おい見ろよ……今日はシチューだってよ」
「うわぁ〜美味そう〜。なあなあ、お前も作ってくれよ」
「馬鹿言わないでよ。私だって作って欲しいくらいなんだから」
周りの冒険者たちはシアの料理を羨ましそうに見つめる。シアはその視線を受けて気まずそうに眉を八の字にしている。
「あの〜ハジメさん。料理も結構な量作りましたし、他の冒険者の皆さんに分けて上げてもいいですか?」
「うん? あ〜……流石に気になる?」
「はいぃ……だってもう三日目ですよ? 毎回毎回あの視線を向けられると流石に心苦しいですぅ」
ウサ耳をしょんぼりとさせて目を伏せる。ハジメはシアの優しさに思わず緩んだ頬を抑えて頷いた。
「まあいいんじゃないかな。一応同じ依頼を受けた仲間同士だし。皆もいいかな?」
「てっきり俺のお代わり分かと思ってたんだが……お前らがいいならいいぜ」
「いいんじゃないかしら。そもそも私たちだけじゃ食べきれないかしら」
「ん。私もそんなに食べれない」
「皆さん……! ありがとうございますぅ!」
「早速渡してきますぅ!」と言い鍋を持って意気揚々と他のパーティの所へ向かって行った。野太い歓喜の声をBGMにハジメたちは食事を続けた。
それから魔物の大群が攻めてくる……なんてことは起こらず、たまに数匹の魔物を蹴散らしたくらいで商隊は無事フューレンに辿り着いた。
何も無くて拍子抜けだったが、何も無い方がいいことだと言うことを思い出しハジメは苦笑をこぼす。トラブルに巻き込まれ過ぎたからか、いつの間にか平穏という言葉を忘れていたようだ。
そんなハジメの元にモットーがやってきた。
「はあ、モットーさん。何度言われてもシアは渡しませんよ」
「おや、まだ何も言っておりませんが?」
「口調口調、商人としての素が出てますよ。あと目」
「おやおや。長年染み付いた習慣というものは中々取れないものですな」
ほっほっほと笑っているが、この男、護衛以来の道中でことある事にシアを売ってくれないかと交渉していたのだ。回数を重ねる毎にハジメもうんざりして来て対応が適当になっていたのだが、これが最後のチャンスということで今回はかなり執拗い。
「単刀直入に言いましょう。貴方の所有するその『宝物庫』のアーティファクト、そして兎人族の少女……是非売っては貰えないでしょうか? 一生遊んで暮らせる金額を支払いしましょう」
「何度言われても答えは変わりません。いくら積まれようが釣り合いなんか取れるわけないでしょう?」
「ですがそれだけの希少価値を持つアーティファクトに兎人族、フューレンに入ればトラブルに付き纏われるでしょう。しかも貴方は隠すつもりが全くない。トラブルに巻き込まれるのは嫌でしょう?」
「確かに面倒ですけど多少のトラブルはブルックの街で慣れているんですよ」
会話をしているうちにモットーの目が怪しく輝き始めた。商人としてプライドが疼くのだろう。その目には『殺してでも奪い取る』といった感情がありありと浮かんでいた。
「……今ここで手放しておかないと彼女たちにも危険が及ぶかも知れませんよ? なっ──」
「へぇ。それってつまり、『渡さなきゃ殺す』って言いたいの?」
ハジメの顔から人当たりのいい朗らかな笑みは消えており、表情筋がピクリとも動かない能面のような表情になっていた。絶対零度の視線と押し潰されるプレッシャーに晒されたモットーは膝を着く。口の中が乾き、喉から発せられるのは辛うじて絞り出された呻き声だけだ。
そんなモットーに目を合わせ、ハジメは言葉を続ける。
「ねえ、どうなのさ」
眼帯で隠されたはずの瞳が妖しく輝く。震える体を必死に抑えてバラバラになった言葉をパズルのように繋げていく。
「ぐっ……わ、私はただ……そういったことが、起こる可能性が……高いと、ここは……裏組織が……くっ……多く、存在しているので……」
「ふぅん。まあ、いっか。今回だけは見逃して上げます。ただ……次はありませんよ」
「ふう……勿論です。いやはや私も耄碌したものです。欲に目が眩んで手を出してはいけない深淵を掴もうとしてしまうとは……」
「商人なら分からなくもねぇけどな。相手が悪かったな、ちなみに俺も半ギレしてるぞ」
「……本当に耄碌したようだ」
先程から妙に静かだと思っていたらどうやら怒りが一周して悟りの境地に至ったようだ。その顔は般若を超えて阿修羅が如し。左は憤怒、右は悲観、真ん中は無表情と最早化け物である。そう言えばステータスは化け物だった。
滝のように流れていた冷や汗を拭い、モットーはヨロヨロと立ち上がった。
シュウの言う通り、『宝物庫』もシアも商人なら喉から手が出るほど欲しい存在だろう。それにモットーは優秀な商人、夢物語だと思っていたお宝が目の前にあれば我を失ってしまうのも仕方がない。だからといって恋人に手を出されてはたまったものではないのだが。
「今回は無様なところを見せてしまいましたが、我がユンケル商会は回復薬から煌びやかなドレスまで幅広く取り扱っております。ご利用の際は是非、我が商会をご贔屓に。勉強させて頂きますよ」
「……商売根性が逞しい」
「商人ですから」
ユエの呟きにも堂々と胸を張って答えるモットー。ハジメたちに頭を下げてから商隊と共に街の中へ入って行った。モットーが街に入ってすぐ店を構えている店主らしき人間に取り囲まれた。どうやら敬われている様子だ。
「……もしかしなくても、かなり有名な人だったんですかね?」
「しっ! 思ってても言わない方がいいかしら!」
まだ街に入ったばかりだというのにトラブルに巻き込まれる気しかしないのは、ハジメの気のせいでは無いだろう。深く、それはもう深くため息をついた。
早速フューレンの冒険者ギルドに赴き、嫉妬の視線を受け流しながらリシーという女性の話を聞く。何も口説いている訳では無い。彼女はギルドで働く『案内人』という職に着いているのだ。街の詳しい情報を教えてくれる彼女の存在は充分代金を支払う価値がある。ハジメたちはリシーと共に昼食を摂りながら話を聞いていた。
観光に来たのなら観光区に、住居を求めてきたのなら中央区に、武器や防具が欲しいなら職人区に、雑貨や情報品などを補充したいのなら商業区に、と大分噛み砕いて言葉にしたがこの程度ではリシーが話した内容の一割にも満たしてない。それくらい彼女は話し上手で説明上手なのだ。
「──と、言ったかんじですわ。あとは宿ですが、これは観光区の宿をオススメしますわ。観光客を客層としているのでお客様の幅広い要望に応えられます。中央区にも無くはないのですが、どちらかと言うとあそこは仮眠を目的とした宿が多いので」
「なるほど。じゃあ観光区で決めよっか」
「要望があれば言ってください。その要望にあった宿をリストアップしますので」
「俺は飯が美味いとこがいいな」
背もたれに身体を預けているシュウが昼食を平らげてそう話す。ウンウンと頷きながらリシーは頭の中で宿を絞る。ただ流石に食事の評判だけでは数は減らない。
「他にはありますか?」
「お風呂は外せないよね」
ハジメの意見を聞いてさらに絞り込む。あとひと押しでピッタリの宿をオススメ出来るだろう。
「ふむふむ……他にはありませんか?」
「ん……防音性が高い宿がいい」
「あとは大部屋がいいですぅ!」
「それならお風呂も混浴できる所がいいかしら」
「なるほどなるほど。防音に大部屋に混浴…………えっ? へっ!?」
急に増えた検索ワード、その意味を理解してリシーの顔は沸騰したかのように熱くなる。この五人は
盗み聞きしながら食事をしていた周りの男たちの視線が嫉妬により凶悪になる。その類の視線すっかり慣れてしまったハジメとシュウは呑気に食後のコーヒーを飲んでいる。と、嫉妬と殺意ばかりの視線に一際不快な気持ち悪い視線が混じったことに気づく。
「うげっ! 豚男爵!」
「キャラ崩れてますよ、リシーさん」
営業スマイルが消え去ったリシーの視線の先を見れば肥えた肉体、脂ぎって汗ばんだ肌、無駄に高そうな服に身を包んだ男がいた。デブ、チビ、ブスと不快要素スリーアウトだ。本人はそう思っていないのだろう、自信満々にハジメたち、いやユエとシア、そしてレイシアの元へ真っ直ぐ向かってくる。
「ふひっ、おっ、おい小僧ども。100万ルタやる、ふっ、その兎を寄越せ。女たちは、私の妾にしてやる。いひっ、一緒にこい」
この男の脳内では既にユエとレイシアは自分のものになっているらしい。妙に高い不快な声で鳴きながら汗ばんだ手をユエとレイシアに伸ばす。
直後、男は情けない悲鳴を上げながら後方に倒れ、必死に後ずさりしてユエたちから距離を取り始めた。周りで様子を伺っていた冒険者たちも椅子からひっくり返ったり持っていたスプーンを落としたりと怯えた反応を見せる。
「ひっ、ひぃ、ひぃいいいいい!!!!」
何が何だか分からないリシーは男と冒険者に視線をいったりきたりさせている。当然だ。彼女からすれば不快極まりない言葉を吐いていた男が急に悲鳴をあげ逃げ始めたのだから。しかも股間にシミを作るアンハッピーセット付きだ。
何故こうなったかと言うと答えは簡単、ハジメとシュウが殺気をぶつけたのだ。それも気を失うかどうかの絶妙なラインで、ついでとばかりに嫉妬の視線を送っていた冒険者にも少し軽め*1の殺気を当ててやった。
「……リシーさん、ありがとうございました。これ食事代とお詫びのチップです」
「え? あ、はい。え? いいんですか?」
「いーよ。じゃあな姉ちゃん。ほら、さっさと行くぞレイシア」
「はいはい」
未だに狼狽えているリシーに食事代とトラブルに巻き込んでしまった詫びとしてチップを払い席を立つ。シュウはレイシアの肩を寄せて、ハジメはユエとシアの手を握ってギルドの入口へ向かう。
と、悲鳴をあげ後ずさりして小便を漏らすという無様欲張り三点セットをキメていた男が未だ震える声を精一杯張り上げる。
「れ、れれれレガニドォ!! そのガキを殺せぇ!! かっ、金ならいくらでもやる!! だから早く殺せぇぇぇ!!!」
「……だ、そうだ。悪いな坊主ら。俺の金のためにちぃっとばかしお眠りしててくれや。なぁに殺しはしねぇよ。まあ嬢ちゃん方は……悪いが諦めてくれ」
男に名前を叫ばれハジメたちの前に立ちはだかるレガニドという男。ハジメとシュウをただの子供だと思っているのだろう。確定された報酬に顔がニヤケている。
「レガニドって黒の『暴風』だろ? なんだってあんな奴の護衛なんかしてんだよ」
「金払いがいいからだろ。『金好き』のレガニドだしな」
どうやらレガニドは上から三番目のランクに位置する冒険者らしく、二つ名があることを見るに実力もそれなりにあるらしい。だからといってハジメたちの敵ではないのだが。
ため息をつき、ハジメが物理的対応をしようと一歩前に出た。だがそれをユエが制し、逆にハジメの前に出る。
「どうしたの?」
「……守られてばかりの女だと思われたくない」
その顔は無表情だがハジメには分かる。ユエが少し、いやかなり怒っている。
ハジメとシュウの実力を下に見られたこと、そしてハジメと自分の仲を引き裂こうとしたこと、他にも気色悪い視線や言動とまだまだ上げたりないが、兎に角ユエの怒りは頂点に達していた。
「……万死に値する」
「私もやるかしら」
レイシアがユエの横に並ぶ。彼女もユエと同じように憤っていた。憤怒が冷気となってレイシアの身体から漏れている。ギルド内が急に冷えたことに冒険者たちは困惑していた。
「もちろん私もやるですよぉ!」
普段温厚なシアも出張ってきた。強くなったとはいえあまり争いごとには乗り気じゃないシアがこうして出てくるのは少し珍しい。しかしそれくらい想われているのかと思うと同時に嬉しくなる。ハジメの頬が緩んだ。
レガニドは自身の前に立つユエたちを見て爆笑する。
「おいおい! 嬢ちゃんたち、なんの真似だ? 相手って言うのは夜の相手のことかい?」
「……黙れ」
「怖いねぇ。可愛い顔が台無しじゃ──」
言葉を続けることが出来なかった。何故ならレガニドの股間を掠めるように『風球』が飛んできたからだ。もう少し上だったら男としての象徴が潰され再起不能となっていただろう。たらりと汗を流し黙り込むが、脳内ではユエが今どうやって魔法を唱えたのかを必死に考えている。どれだけ考えても分からないが、一つだけ分かることがあった。それはユエの実力が高いということだ。
腰に差していた長剣を抜き、構える。
「坊ちゃん、悪いが傷のひとつやふたつは勘弁してくれ」
「剣を抜いたのは評価するかしら。それでも敵わないでしょうけど」
「へっ、抜かせ!」
一歩踏み出し跳躍する。レガニドはユエに狙いをつけたようだ。この中で一番実力のある者から倒していこうということなのだろう。ユエが魔法を使ったことから接近戦は不得意だという予想も付け加えられる。
「峰打ちだ、勘弁しな!!」
「──狙いはいいですけど、相手が悪かったですね」
「なっ!?」
振り下ろした長剣をいとも簡単に素手で受け止められ、目を剥く。シアはそのまま長剣を握り潰すとレガニドの腹に蹴りを入れた。
「かっ──がはあっ!?」
受身を取る暇もなく壁に打ち付けられる。かなり手加減されたのだろう、今のシアの蹴りは、いや蹴りとは言えない。今のはただ足で押し出しただけだった。
本気で蹴られていたらどうなっていたのか、痛む体を根性で抑え、黒の冒険者としての意地で起き上がる。
「“ 獲物を狙う氷の蛇が、愚者の喉元を食いちぎる”『
「ぐおおお!!?」
周りの目がある以上、詠唱をしないわけにはいかない。適当に思い浮かんだフレーズを唱えた。蛇を模した氷がレガニドの体にまとわりつき身動きが出来ないよう凍りつく。
「……“風に抱かれた人形は、為す術なく弄ばれる”『
凍りついたレガニドの周囲を風が取り囲み檻を作る。『風舞』ほ全方向から『風爆*2』を飛ばしタコ殴りにする魔法だ。身動きがとれないレガニドは為す術なく攻撃を受け続け、風が収まる頃には白目を剥いて意識を失った。
執拗に股間を狙われたのだろう、何故かそこの部分だけ一際ボロボロになっている。風で見えなかった分、恐怖感が増している。
止めに入ろうとしていたギルド職員も傍観していた冒険者も全員が硬直している中、ハジメが口を開いた。
「……あーっと、シュウ。どうする?」
視線が向かう先は先程喚き散らしていた太った男。その視線に気づいた男が悲鳴を漏らす。
「うん? ああ、あいつか。殺すか」
まるで『ああ、あのゴミ? 捨てとくよ』みたいなノリで殺害発言をカマすシュウに全員が『うっそだろお前!?』と言った視線を送る。
カツカツと足音を響かせて男の元へ歩く。
「ひっ、ひぃいいい!! やめ、やめろ!! わっ、わたっ、わたしは! 誇り高きミン男爵家のプーム・ミンだぞ!」
「だからどうした。つーか……ムー〇ンに謝れ豚野郎があああ!!!!!」
「ぎゃあああああああああ!!!!???」
「沸点そこ?」
炎を纏った蹴りがプームの腹に突き刺さった。服が焼け焦げこんがりときつね色に焼きあがった三段腹が顕になった。
本当はレイシアとユエ、シアのために怒っているのだが照れ隠しで怒りの方向を変えていることをハジメは知っている。そう、ハジメは気づいているのだ。ちなみにレイシアもユエもシアも全員気づいているので皆ホッコリとした笑顔を浮かべている。周りの人間の顔は青ざめているが。
息も絶え絶えになったプームの目線に合わせるようにプームの顔を覗き込む。
「ひぃ……ひぃ……! ひぃい!?」
「あのさぁ、僕も気が長い方じゃ無くてさ。こういうことをさ、何度もやられると流石にウザいんだよね」
「ピギャア!!?」
顔面を踏みつけ床に押し付ける。ミシミシと万力のように締め付けられプームの口から悲鳴らしき呻き声が上がる。
「だからさ、今のうちに釘刺しとくね。その少ない脳みそによーく刻みつけるんだよ? ──金輪際、二度と僕らに関わるな。直接的でも間接的でも、お前が関わってたことが発覚したら、殺す」
「プギュアアアアア!!!!??」
靴の底にスパイクを錬成して再度踏み付けるとびっくりチキンのような叫び声を上げた。やることがえげつなさすぎて周りの人間はドン引きしている。ついでにその光景を見て「ははは、おもしれ。文字通り釘刺してんじゃん」と笑っているシュウもドン引きされている。
「さあて、帰るか!」
「そうだね!」
「ちょ、ちょっと待って下さい! 事情聴取にご協力お願いします!」
「あ?」
帰るか、のルビに『ズラかるか』が着いているように聴こえたのは多分気の所為だと思いたい。我に返ったギルド職員数人が慌てて呼び止めに来たのだがシュウが人睨みすると全員ビクリと体を揺らす。
「事情聴取だぁ? 先に難癖つけてきたのはあっちだろ? なのに──」
「なんですかこの騒ぎは」
「ドット秘書長! 良かった! 実は──」
どうやらまだまだ拘束されるようだ。結局トラブルに巻き込まれてしまい、同時にため息をつくシュウとハジメだった。