わかひな派の人は許して・・・!
とある暑い日、6月にも関わらずセミが鳴いているのを珍しいなと思いつつも、ただボーっと、窓の外の夕焼けに染まる景色を眺めていた。
鳴き声がうるさいとは思わず、ただ時間だけが過ぎていった。
その時、「7・30天災の悲劇から、後一月半ほどで四年になろうとしています」
という、テレビからニュースを告げるアナウンサーの声が耳に入ってきた。
その声に、思わずテレビの方へ顔を向ける。
そこに、一人の少女が映っていた。
それが彼女との初めての出逢いだ。
"たとえ地獄に落ちようとも、鮮明に思い返すことができるだろう"みたいなアニメやマンガであるような大それたものではない。
だけど、今でもその姿を鮮明に覚えている。
彼女は美しかった。ただ端正な顔立ちをしていたからではない。
青い装束を纏い、刀を携え、胸を張り、大人たちに、いや四国の人々に語る姿があまりにも勇ましく凛々しかったから…。
「私たちはあの日、多くのものを奪われました。人命、国土、自由に見上げることのできる空。あの日、空から出現した人類の天敵たちは、あまりにも強大でした。ですが、私たちは決して無抵抗で終わりませんでした。力は弱くとも、人間には智慧と勇気という、他の何者も持たない武器が――」
彼女は拡声器を使わず、自らの肉声で語り続ける。
「――そして今、敵もまた自らの力を強化し、再び人類は苦境に立たされています。勇者・土居球子と伊予島杏は、戦いの中で命を落としました」
『勇者の死』という事実に、聴衆の表情が曇る。
彼女は一際、声を大きくして告げた。
「しかし、我々はまだ敗北していない! 必ずや、奪われたものを取り返すことはできる!! そのために今、大社と私たちは対策を講じています。間もなく戦況を覆す方法が見つかるでしょう!」
彼女の演説は半時間ほどで終わった。
彼女を赤く染めていた夕日はとうに沈み世界は、自分の部屋は、いまや暗闇が支配している。
彼女の演説を聞き終わった後、体の奥底からふつふつと湧き上がるモノがあった。
多分、コレは"怒り"だ。
彼女に対してではない。彼女たちのような自分と同年代の"女の子"が"勇者"として戦わなければならない事実に対して、その"勇者"を偽りの希望の象徴として祭り上げようとしている大社、聴衆の大人たちに対して、そして、そんな現実に何も出来ない無力な自分自身に対してだった…。
神世紀2年 6月
あの日から3年の時が経つ。
彼女たちの戦いは終わりを迎え、人類は平和を手に入れた。………人々の間では。
本当は、6人の巫女の生命を代償に神に赦されただけのまさに、"仮初めの平和"だという事実は大社…名を改めた大赦たちによって隠蔽されている。
何故そんなことを知っているかって?
それは、俺が大社に名を連ねる家系の一つである、十六夜家の次男坊だからだ。親父や兄貴たちから話は聞かされていたし、生贄となった巫女の中には幼馴染もいた。
3年前のあの時、中学生のガキだった俺は、彼女と再び出会うことになるとは思わなかっただろうし、まさか俺なんかが"乃木家の婿養子"になるなんて想像すらできなかっただろう。
これは勇者の物語ではない。
輝ける星たちを道しるべとし、希望と共に歩いて行く誰かの物語だ。
(つづくかは、わから)ないです。