元勇者提督   作:無し

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失策

重巡用艦 摩耶

 

「提督、ちょっと来い!」

 

「あ、摩耶、どうしたの?そんなに慌てて」

 

「急いで戻る、泊地が襲撃されるぞ!」

 

「襲撃…?ど、どういうこと?」

 

「…あまり大きな声では言えねぇが、大淀と会った、ここには佐世保や呉、舞鶴と色んなとこのトップが集まってる、主力が抜けてるところもあるだろ、このタイミングに敵は仕掛けてくるらしい」

 

「そんな…!不味いな…僕はすぐ泊地に連絡をする、摩耶は帰る準備をしてすぐに戻って」

 

「おい!戻らないつもりか!?」

 

「…ここで戻っても大本営に付け込む隙を与えるだけ、結果苦しむのは泊地にいるみんなだ…今の僕にはなんの力もない…それなら君たちを頼るしかないんだよ」

 

「…本気かよ…」

 

「……その話が間違いという可能性もあるからね…」

 

確かに冷静さを欠いていたのは間違い無いが、嘘とも思えない…

本当に襲撃があるとしたら…帰らなきゃいけないのは…戦力になるアタシって訳か…

 

「…そっちも無事に帰ってきてくれ、大淀は明日自分でここを襲撃するつもりらしい」

 

「……本気なのかな…」

 

「……大本営の秘蔵の大和型を倒すって言ってたぜ…あの目はマジだ」

 

「………止めないと…」

 

「そっちこそ本気か…!?大本営に殺されたんだろ、アンタの仲間は!」

 

「…大本営を倒しても、誰も帰って来ない…それどころか国が崩れてしまう、メリットなんてない」

 

「腹がたたねぇのか!?」

 

「……怒ってはいるさ…許せない気持ちはある……でも、拓海は僕に託した…この先を…そして大淀を…」

 

「……止められんのか」

 

「わからない、だけどやらなきゃいけない」

 

「…そればっかじゃねぇか」

 

「そういう物なんだよ、だけど、何より良いと思えることをやらなきゃいけない、そうする事でしか…僕らは前に進めないから」

 

「……じゃあ、アタシもここに残る」

 

「…それは無理だ、曙たちだけじゃ荷が重い…敵の襲撃があるとしたら、本当にこのタイミングを狙うとしたら…きっと一箇所じゃないからね」

 

「………チッ…!本当にちゃんと帰ってこいよ!!」

 

「わかってる」

 

 

 

 

 

提督 倉持海斗

 

「三崎さん」

 

「なんだ、仕事モードって訳か」

 

「ウチの摩耶が大淀と接触しました、簡潔に言えば各地の主力や提督がいない今を狙った攻撃が計画されていたそうです」

 

「…つまり情報が漏れてる…?いや、それよりも戻らないと不味いか…」

 

「確証が無い以上、こちらは摩耶を帰らせて各自の判断で動かせるつもりです」

 

「…なるほどな、…大井!」

 

「なんですか」

 

「川内と戻れ、艦隊の指揮権はお前に預ける…襲撃に備えろ」

 

「襲撃…!?」

 

「本当にあるかすらわかってねぇ、だがお前なら任せられる」

 

「…そういうことでしたら川内さんは置いていきます、供回りは必要です」

 

「…俺のことを気にかけるな」

 

「艦隊の指揮権は今は私なんですよね?言うことを聞く理由はありません」

 

「おい!」

 

「貴方が死ねば私たちは有象無象、ならば貴方の護衛は必要です、話は終わり、それ以上口を開かない」

 

「このっ…!」

 

この2人も、お互いを大事に思っているのだろう…

 

 

 

 

急いで伝えて周ってみたが、他の提督も帰ることはせず、連れてきていた艦娘だけを戻らせた

これならば誤報だったときもまだ取り返しがつくだろう

夜が深くなる前に解散の運びとなり、残ったのは軍人だけだ、そして明日の葬儀の為に段々と増える軍人

逆にこの時間からが問題に感じる

 

まるで何かの会食のように飲み会する者もいる、明らかに死者を悼むつもりはなさそうだった

 

 

「…マナーもクソもねぇな」

 

「…下手したら顔も知らない相手、だろうからね」

 

「………ここが襲撃されるって話は先にして欲しかったぜ、俺も逃げ出せば良かったか」

 

「……本当に襲撃するかわからないけどね、でもやるなら明日…元帥の到着時」

 

「…だろうな、チッ…夜風に当たってくる」

 

 

 

 

 

 

呉鎮守府

重雷装巡洋艦 大井

 

「それ本当なの!?」

 

「はい、民間の漁船に被害が出ています!急いで出撃します!」

 

「…戻ったばかりでこうなるとはね…木曾!私と出るわよ!」

 

「わかってる!球磨姉と多摩姉は先に現地に向かってる!」

 

「……まさか日本海にいきなり敵が出てくるなんて…佐世保は何してたの…!」

 

「佐世保の方は敵が出てないらしい、急ぎ援軍を送るそうだ」

 

「………待って、敵が高等な作戦を立てるとしたら?」

 

「………狙いは佐世保の方か…?いや、まさかそんなことできる訳…」

 

「敵のことなんて何一つ分かってないのよ!甘く見てはダメ、佐世保の援軍は断るわ、私達で蹴りをつけるわよ!!」

 

「キツイ戦いだが…アリだな…!」

 

 

 

 

佐世保鎮守府

正規空母 瑞鶴

 

「って事で出撃した奴らはすぐに哨戒に変更、絶対に離れないように」

 

『了解しました、今の所敵影はありません』

 

「そりゃそんなすぐそこまで来られてたら困るわよ…鹿屋にも連絡しなさい、基地航空隊を動かして……全く…本当に大丈夫なのかしら」

 

 

 

 

舞鶴鎮守府

軽空母 鳳翔

 

「はい、今の所問題はないようです」

 

『じゃあそのまま頼む、何かあったらすぐ連絡してくれ』

 

「かしこまりました、そういう事ですので、今日は出撃の用意だけ済ませて大人しく過ごしてくださいね」

 

「「「「「はーい!」」」」」」

 

 

 

宿毛湾泊地

重雷装巡洋艦 北上

 

なんだか騒がしい、松葉杖をつき、壁に寄りかかりながら部屋の外に出る

 

「いいか!第一艦隊は東の海哨戒する!交戦できるように入念に用意しておけよ!」

 

「明石、アンタはどうするつもり?」

 

「超長距離砲を用意しておきます、といっても…これから戦闘になるなら夜戦ですから、あまり撃てませんが」

 

「空母も仕事はあまりありませんね、夜食におにぎりでも作りましょうか」

 

「とりあえず、アタシらは出撃するぞ!旗艦はアタシだ!摩耶様の力見せてやる!」

 

「アオボノさんは第二艦隊を率いてください、まだ出撃はしなくていいので、少しでも休んでおいてください」

 

「わかってるわ、だけどこんな話聞いてからじゃ眠れる気がしないわね、クソ提督もなんで戻って来ないのかしら」

 

「戻るのは最善の手ではない、というだけでしょう、私たちでやれることをやらないと」

 

あの人間は戻ってきてないのか…

艦隊の指揮くらいしかやれることは無いはずなのに…なんでこんな慌ただしい時に居ないんだろう、怯えて逃げ出したのか、それとも…

 

「それでは各自動いてください!」

 

ドタドタと慌ただしくみんな動き回る

私はそれを見ていることしかできないのかな

 

「…北上さん…そんなところに立ってどうしたんですか?」

 

[何か手伝えることはある?]

 

この子は阿武隈さんか…

 

「……私は出撃の予定がありませんし、よければみなさんの夜食を一緒に作りませんか?」

 

ここに住まわせてもらってる以上、拒否するつもりは毛頭ない、首を縦に振って頷く

 

「決まりですね、こっちに寄りかかってください、歩きにくいですよね」

 

促されるままにする、話を聞けば私はよく戦い方を教えていた、らしい

 

「北上さんが最初は罪悪感から私に戦い方を教えてたのはわかってるんですけど、それでもすごく嬉しかったんですよ」

 

私が今まで何をしたか、どんなことを言っていたかを聞かされても…わからない、全くわからない

 

私がどうすれば良いのか、私は…みんなの記憶の中の北上を演じるしかないのか

 

「うーん、ここも広くて良いんですけど、まだ慣れませんね」

 

わざと大きく笑ってこっちを安心させようとしてくれている、記憶がなくなる前の私はよほど愛されていたのかな

私はどうすれば良いのか、まるでわからない

 

 

 

 

 

提督 倉持海斗

 

「…もうすぐ昼だ」

 

「深夜に襲撃は流石になかったか…どうする、来ちまうぞ」

 

「…………」

 

「大淀は見つからねぇ、もうすぐお偉方も来やがる…」

 

「…ここに一般人はもう居ない、というのが救いだね…」

 

外に人が集まり始めたな…

 

「間に合わなかった、か」

 

「……決して手にかけさせちゃいけない、誰も殺させない」

 

「無理だな」

 

「…そうだね」

 

無理だ、だけどやらなきゃいけない

 

「諦めた顔するくらいなら無理ですって言い切りやがれ…情けねぇ…」

 

「………」

 

わかってる、僕がカイトを手放した瞬間から自分が無力な存在になる覚悟はしていた

だけどそれは目を背けただけなのかもしれないし、現状を維持するという逃げの姿勢なのかもしれない

 

実際、どうすれば良いのかなんてわからない、何が正しいのかわからない戦いを強いられてるんだ、だけどそれは僕が選んだ道なんだ

 

「…アンタは目だけ死んでねぇのに、なんでそうなっちまったんだ?」

 

「…今は取り返すことより守ることの方が大事に見えるから、かな…」

 

「俺の勘だが…それ以外に、ちゃんとした敵が見えてないんじゃないのか?」

 

思えばモルガナとの戦いに消極的になってからみんなに負担をかけてばかりな気がする

はっきりとした敵なはずなのに…

 

「俺はアンタの作戦を支持するつもりは一切ないけどな、そんな状態で苦しむのはアンタんとこの艦娘達だろ」

 

「………もうすでに苦しめてたよ、ありがとう、最近目が覚めることばかりだし、本当に夢現を彷徨いっぱなしだ」

 

「どうするんだ?」

 

「戦う相手をちゃんと見定める時間が必要、だね…」

 

「モルガナは」

 

「………あのモルガナは…いや、モルガナを倒して全て解決するのかな」

 

「……」

 

「大淀の事を止めたい、でもなんで大淀は仕掛けるんだろう」

 

「恨み以上の何かがあるのか?」

 

「…もしかしたら、だけどね」

 

「…………見殺しってのは良い気分じゃねぇ、川内…また居ねえ…」

 

「僕は今のうちに拓海が何かを残してないか探る」

 

「俺は大淀を止める、お互い頑張ろうぜ」

 

 

 

 

 

呉鎮守府

軽巡洋艦 木曾

 

「クソッ!!全然減らねぇ…本当にここで抑えてれば良いのか!?」

 

「わからないって言ってるでしょ!このまま戦い続けるしかないの!」

 

「おい!神通!前に出過ぎだクマ!」

 

「問題ありません!!私はやれます!」

 

「陣形を崩すなって事だよ!姉さん、合わせてくれ!!」

 

「わかってるクマ!」

 

どうしたものか、神通は戦果を焦ってるように見える

 

「大井姉!サイドを頼む!」

 

「わかったわ!!」

 

なら満足するまで仕留めさせるしかない、削るだけ削り…

 

「仕留めます!!」

 

神通に仕留めさせる

 

「佐世保より電文!佐世保に巨大な化け物が出現したと!」

 

「やっぱり…!本隊は向こうって考えても良いけど…だとしたら向こうはもっと数がいることになる…!」

 

「宿毛湾にもここ同様に大量の深海棲艦が押し寄せているらしいです!」

 

「なんでこのタイミングにこんな…!」

 

やっぱり合わせてきてる…か

 

「木曾!前!」

 

「わかってる!!」

 

「敵魚雷!来ます!」

 

「陣形そのまま!速度落とすな!」

 

「…待て!酸素魚雷が混ざってるクマ!!」

 

「嘘!?」

 

「神通!どけ!」

 

神通と魚雷の間に割って入る、我ながら無謀なことをするものだ

 

「木曾!!」

 

「ッッ…あー…クソ!!まだ動けるがこれ以上は耐えられそうもねぇな…!」

 

「早く撤退しなさい!こちら大井!誰か1人こっちによこして!」

 

「言われなくても帰るっての…!」

 

今日の戦いは明らかにおかしい、敵がこんなにいる事もそうだがどうやって湧いてきたのか、あの魚雷はなんなのか…

嫌な予感しかしない

 

俺だけ無事に帰るなんてことにはなりたくない

カミサマでもなんでも良い、みんなを助けてくれる何かを…

 

鎮守府にはスムーズに戻ることができた、待機していた妖精にバケツをひっくり返され、高速修復材を頭からかけられる

 

どうする?どうすればいい、俺はどうすれば…

 

「おい!艤装を交換してくれ!こっちの魚雷を中口径の連装砲にしてくれ!」

 

どうすればみんな無事に帰れる?

どうすればこの戦いを乗り越えられる…?

 

「………そっちと、ソレもくれ、御守り代わりに持っていくさ」

 

前に提督からせしめた馬鹿でかい剣…

盾くらいにはなるだろう、これが使えるほどの距離に行くとしたらあの川内型位だ

それから、神通があの離島鎮守府からもらってきたデータ兵器と呼ばれる謎の武器…使えるもんは全部使う、この不安を消せるならなんでもやる…

 

「よし!もう一度だ…本当の戦闘ってやつを見せてやる…!」

 

 

 

 

 

宿毛湾泊地

工作艦 明石

 

「キリがない…!」

 

「潜水艦隊で仕掛けてくるなんてなかなか味な真似をしてきますね…」

 

「赤城さん…東に出た第一艦隊は?」

 

「囲まれたそうですが、今のところ問題はないそうです…摩耶さんが蹴散らしながら戻ってきていると…」

 

「戻ったら戻ったで本土への被害がでますね…第三艦隊を臨時編成、摩耶さん達に合流し、連合艦隊として南東の海の防衛を!」

 

「編成はどうしましょう、アオボノさんも摩耶さんもいない…曙さんは暁ちゃん達を保護に向かいましたし…」

 

「………北上さんはダメ……阿武隈さんなら…?」

 

「彼女は実力は充分ですが、率いる側となると…まだ経験不足では…?」

 

「……では、加賀さんを第三艦隊に移動、赤城さんは第二艦隊に加わってください、阿武隈さん、山雲さん、大潮さん、荒潮さん、霰さんを連れて行くようにと…いや、待って…」

 

ここは手薄になることは無い…けど…軽巡洋艦、駆逐艦、空母のみの編成で合流まで持ち堪えられる…?

 

高尾型は全員第一艦隊で居ない、青葉さんは未だに目覚めない…第二艦隊も駆逐艦ばかり…

 

「第二艦隊から金剛さんと天龍さんも連れて行ってください…ここは死守します」

 

「わかりました」

 

あの潜水艦隊は私達を倒すためとは思えない…つまり陽動……

ならば第一艦隊を狙っている?

それとも…

 

 

 

 

 

横須賀鎮守府

提督 倉持海斗

 

「うん、情報があるなら欲しいんだ」

 

『月の樹の方は今大規模なクラッキングを受けていてな、測ったようなタイミングだ…』

 

「ヘルバも無理そう?」

 

『…私はここのトップだ、一応だがな…情報の方だが、浩司にUSBを持たせる…受け取れ、私達なりの解釈も含む』

 

「…リョースもすっかり言いなりかぁ…」

 

『冗談を言っている場合では無いのだがな』

 

「ごめん、ありがとう」

 

『………私にも子供がいる、子供をも殺すような作戦はお断りだ…』

 

「………」

 

『だが、何もせず世界の終焉を待つのは私が子供を殺すようなものだ…狡い話だが、同じ死ぬなら…とは思ってしまう』

 

「…そうだね」

 

『お前に罪を被せたいわけでは無い…まだ道を模索するつもりだ』

 

「こっちもだよ、だけど敵ははっきりさせることにした…それじゃあ」

 

どうするかな…まだ何も分かっては居ないけど

 

外から大きな音がする、叫び声も

 

始まってしまったか

 

「カイト!!」

 

「三崎さん」

 

「そんな事よりも不味いことになった!フィドヘルが現れた!」

 

「…襲撃は自分の手でじゃなかったのか…!」

 

「いや、大淀はフィドヘルの碑文使いとして開眼してる…」

 

「碑文使いだって…!?」

 

「現れたフィドヘルは石板みてぇな奴だから大淀が操ってるわけじゃねぇ…んだが…このタイミングだ、操ってないにしても協力してる、と見て良いんじゃねぇか」

 

「……どうすれば…とりあえず外に出よう!」

 

 

 

 

 

「…これは……」

 

要人の護衛のために連れてこられたであろう艦娘が応戦しては居たものの、フィドヘルには攻撃が一切歯が立たず、降り注ぐ雷や水面を駆け回る炎にいいように弄ばれていた

 

「水上で戦うのは無謀だな、と言うよりここは放棄して逃げるべきだ」

 

「うん、早く他の人を非難させなきゃ…」

 

…待てよ、もしこの戦いが想定内なら何故大淀は居ない…?

もう要人はどんどん逃げ出して行くじゃないか、今を逃せばチャンスは無くなるのに…

 

「御偉方はもう車で出たらしい、俺たちも急ぐぞ!」

 

「………ダメだ!急いでその車を止めないと!」

 

恐らく大淀は避難の為に此処を離れたところで襲撃をかける

艦娘だからと海に近い場所のみの前提だったが…仕掛けるならそっちか

 

「…成る程な、狙いはそっちだったのか、だがもう間に合わねぇ…此処に取り残されてる奴らだけでも逃すぞ!」

 

「……ゲームの体なら戦えたのにな…」

 

「全くだ、お前ら!さっさと逃げろ!戦うだけ無駄だ!」

 

 

 

 

 

軽巡洋艦 大淀

 

「…まさか…ここまでとは…」

 

世界が音を立てて崩れていく

淡いセピア色の世界が、私の世界が

 

「……こちらの台詞だ…我々が此処までやられるとは思わなかった…!」

 

ああ、やはりあの予知は正しかった、認めたくはなかった

摩耶さんには勝てると息巻いてしまいましたが…やはり相手は大和型、分の悪い戦いだったか

 

「この新兵器がなければ手も足も出なかったでしょうね」

 

大和型用の新兵器か…

まさかフィドヘルにも通用するとは思っていなかったのだが

私はここで死ぬ、だとしてもただ死ぬわけにはいかない

 

「…また、大和、まだ何か仕掛けてくる気だ」

 

「………」

 

残忍な目をしていたのなら

私たちと違う存在であったなら

戦うことに躊躇うことなんてなかったのに

 

ここは海沿いの道路、少し先は断崖絶壁

身投げには持ってこい…か

 

「貴女方も、自分のことをもっと良く知るべきです」

 

タダでは死なない

 

「貴様!」

 

「待ちなさい!」

 

この戦いは碑文の奪い合いだと言われた

ならばこのフィドヘルは貴女達には渡さない

 

「…フィドヘル!!」

 

「まだ出てきたか!化け物め…!」

 

『裁きの矢、全てを切り裂くであろう…!』

 

「な、何が!?」

 

データドレインを頭上に放ち、そして自分からソレに当たる

 

私の意識は混濁し、海へと堕ちる

 

「馬鹿な…ここまできて自殺だと!?」

 

「つ、捕まえないと!」

 

ああ、消えていく、今私の中からフィドヘルが消えていく

 

次の宿主の元へと

 

あの子の元へと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………馬鹿で勝手な人です」

 

「ん?何か言った?」

 

「あ、いえ、なにもありません」

 

順番が回ってきてしまった…次は私、か

 

 

 

 

 

横須賀鎮守府

提督 倉持海斗

 

「…フィドヘルが消えた…か」

 

「……目的を達成された、と言うことらしいな」

 

「いいようにやられたって訳だ…」

 

何もできなかった

手放した力が急に惜しくなった

 

「力があれば、か…」

 

「…その先にあるのは破滅、誰が言ってたっけな」

 

「………破滅が確定してるんだ、今から力を求めてもバチは当たらないはずだ」

 

「…どうするの?」

 

「さぁな…わかんねぇ…アンタこそどうするんだよ」

 

「…戦うよ、とりあえず僕自身が戦うための努力をする、そのために一度帰る必要がある」

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