元勇者提督   作:無し

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圧倒的

佐世保鎮守府

提督 渡会一詞

 

「成る程な、だからコレが」

 

「司令官、それは何なのですか?」

 

「……ヴォータンだ、神槍ヴォータン…その槍の先端部だな」

 

「しんは神ですか」

 

「ああ、ニーベルングの指環という話に出てくる神、ヴォータンが由来だ」

 

「…だから神の槍…」

 

「本来は神様そのものだがな…ふむ、コレならズレることはないだろう」

 

「重くないのですか?」

 

「いや、かなり重い…だが、問題はないな…ふっ…」

 

やはり重い、体が振られる様だ

 

「司令官が槍を持って戦うような状況にならない様に、私たちがいる限り絶対に防いで見せます」

 

「…ならば不知火、お前がコレを持つか?」

 

「…何ですか、この重さは…」

 

「折れない様に柄も一番重いものを使っている」

 

「成る程…だめです、振ったらその勢いで私が飛んで行きそうになります」

 

「……ふむ、龍田を読んできてくれ、アイツなら扱えるだろう」

 

 

 

「お呼びですか〜?」

 

「要件は聞いたはずだ」

 

「うふふふふ〜、その槍、まだ慣れてないみたいね〜、今なら勝てるかしら〜?」

 

「…つい先程まで入渠してた奴とは思えん口振りだな」

 

「あら〜、乗り気で嬉しいわぁ〜!」

 

本気で殺しにきているな

 

「お前の艤装は当たれば死ぬというのに…訓練用の槍を持て」

 

「提督のソレも当たれば死んじゃいますよ〜?」

 

受け流しては見せるが、時間の問題か…それも悪い方だが

 

「本当に勝てそうね〜」

 

「!」

 

龍田の癖だが下段の突きを放ち、そして振り上げるという行動をとるとき、必ず槍を半回転させる、切り上げるとき峰では無く刃を当てるための行動だ

そして今、それをとった

 

「うふふふふ〜♪」

 

下段への突き

それに合わせて龍田の槍を固定する様に槍を突き立てる

 

その時だった

 

「な、何かしら…!?」

 

「くっ…これは…!」

 

眩い光を放ち、龍田の槍の先端部が消滅する

 

「あ、あら〜…?やりすぎじゃないかしら…?」

 

「殺しにきてたお前がいうのか…しかし…これはデリート…」

 

神槍ヴォータンはただの槍ではない

本来、ゲーム内の全てのプロテクトを無視し、対象を消去する、まさしく神の槍…

 

 

「まさか現実にこの槍が出てくるとは…いや、だが…コレを持ってきたのは誰だ?」

 

「佐藤だとか名乗ってましたよ」

 

「…黒のビトか…話を聞く必要があるな」

 

「何処へ?」

 

「佐世保バーガーでも食べてる頃だろう、直接会いに行く」

 

 

 

 

 

 

倉持海斗

 

リョースから受け取った書類を眺める

もう読むことは読んだ、あとはただ眺めている以外は価値がない書類だ

 

艦娘、簡単に言えばこれは電子生命体である

放浪AI、つまり意思を持ったAIか何らかの弾みに現実に出てきたものがコレとなる

 

血も流すし、物も食べる、好みも違えば感情もある、これについては九竜トキオがネットの中で食事を取り、味を感じたことからそれと同様とすればわからない話ではないのだろう

 

ヘルバの調べていた事はその先に到達していた

 

海と妖精についてはもともと海軍が調べていたテーマだが、それもハッキングしたらしい

 

海はモルガナが溶け込んだその瞬間から密度の低いデータの塊となった、そして段々とその密度が上がり、今では高密度のデータ…まさに電子の海といった有様らしい

 

さらに妖精について、僕たちの目に見えない妖精は、まだ未熟なAIで、現実において体をハッキリと保つためには艦娘の艤装や周囲でしかそれができない、そのために妖精は艦娘にしか見えない様に見える

実際は近寄り、本当にいる場所を見れば小さな光点があり、それが妖精だと思われる

演算や状況把握などを手伝っている様で、妖精の多い艦娘は高レベルな戦闘を展開しやすい

 

簡単にまとめればそんなところか

 

例えば僕がこの世界を再誕させたとして…艦娘は消えるのだろうか

そんなわけがない、もやは彼女たちは仲間なのだから、決して消えない様にしなくてはならない

 

手元にある資料をまとめる

 

別に誰かに見せたい訳では何が、彼女らに見せるにはややショッキングだろう

 

「…そろそろか」

 

バスが止まる

ここから少し歩けば舞鶴鎮守府、か

 

 

 

 

 

佐世保

提督 渡会一詞

 

「うまいか」

 

探していた男はすぐ見つかった、包み紙を見るに3つ目のハンバーガーを勢いよく食べている

 

「ええ……とても…ふむ、私たちの拠点のそばにはチェーン店しかありませんからね」

 

「…さっさと本題に移そう、黒のビト」

 

「碧衣の騎士団団長、双星のアルビレオに知られているとは光栄です」

 

「…俺はもうデバッガーじゃない」

 

「その割には、最近槍を使った様ですが」

 

「………八相という存在にヴォータンを防ぐプロテクトがあるとは思わなかった」

 

「それだけ超常的な存在なのです、現実だろうと、ネットだろうとね」

 

「俺に何をさせたい」

 

「武器を差し上げただけです、お好きにどうぞ?」

 

「…どうやってあの槍を作った、あれは現実に存在して良いものじゃないだろう」

 

「艦娘、深海棲艦…その二つにだけ、あの槍は有効です」

 

「何?どういう意味だ」

 

「そのままの意味ですよ、彼女らはAIですから」

 

「…AIだと?」

 

「……電子生命体と言うべきかもしれませんが…彼女らはもともと現実の存在ではありません」

 

納得がいく話だ、今までこんな存在があるなんて、と何度も思ったのだから、今までを思えば…

彼女たちは人間ではないと思えば…ほとんどのことに納得がいく

 

「おや、驚かないんですね」

 

「…驚いている」

 

「ではもう少し感情表現をされるべきかと」

 

「……それで?」

 

「彼女らに触れればあの槍は容赦なくデリートするでしょう」

 

「…ヴォータンはデリートしてはいけないものはしないようにできている筈だが?」

 

「そうですね、使用者が望まなければデリートする事はないでしょう」

 

つまり俺は龍田の槍を危険だと思っていたから消した、ということか

良い判断だったのだろうな、あれは確かに殺すつもりだった

 

「あれを何故俺に?」

 

「貴方は道を違えない、と考えまして」

 

「わからんぞ、俺は家族のためなら進んで道を違える」

 

「……こう言うと良くないですが…我々がご家族を保護しました、と言えば?」

 

「…保護だと?」

 

「我々は完全に大本営、海軍と敵対しています、貴方方の敵でもありますが…まあ、ご家族を付け回したいた奴らは病院のベッドの上ですよ」

 

「………俺はどっちにも退けない立場にされた、というわけか」

 

「御理解早くて助かります、貴方は大本営からも、我々からもマークされ、両方から脅される立場…」

 

「……大丈夫なんだろうな」

 

「保証します、ご家族の安全は」

 

「……それで」

 

「我々に情報を流すだけで構いません全くもってそれ以上は望んでおりませんので」

 

 

 

 

 

「厄介な事になったな」

 

すぐさま大本営に問い合わせたが、そんな事実は把握していないと

何より俺の家族を人質に取った事実すらないと言い出す始末だ

 

このまま野放しにすれば後から毒の様に俺を苦しめるだろう

 

何かいい対策はないものか

 

「提督さん、何考えてるの?」

 

「瑞鶴か、大したことではない筈だ…お前は気にしなくていい」

 

「えー、何それ、ところであの槍ってなんなの?」

 

「……危険な兵器だ、龍田に練習の槍をもっと重い鉄製のものにしろと伝えてくれ…アイツがあれを使う事になる」

 

「提督さん、槍壊しちゃったんだっけ?いいよ、でもそんなに重いの?」

 

「……俺が振ったら体が持っていかれそうになるくらいだ」

 

「うげぇ…それかなり重々じゃん」

 

「そう言う事だ、だがアイツなら使えるだろう」

 

「……私も何か欲しいなぁ〜?」

 

「…はぁ……なんだ、何が欲しい」

 

「え、受け入れてくれるとは思わなかった!また考えとくね!」

 

「……藪蛇だったか…」

 

 

 

 

 

舞鶴鎮守府

倉持海斗

 

「すいません、わざわざ時間を取っていただいて」

 

「いんや、別に構わねぇさ、それで、用事ってのは?」

 

「…カイトを島風から返してもらおうかと」

 

「………そいつは…」

 

「コレからの為に必要なんです」

 

「……ま、とりあえず呼んでくるさ…おーい、五月雨、お前はお茶汲みに行くなよ…あ、待て!おい!」

 

 

 

「てーとく!どうしたの?何か用事?」

 

「わざわざごめん、ちょっとお願いがあるんだ、島風、あのキャラを返して欲しい」

 

「…キャラを…?…どうして?」

 

「……僕が戦う為に必要なんだ、キミには代わりのアカウントも用意するし、迷惑はできるだけかけないから…」

 

「…………ヤダ…」

 

参ったな、断られるとは思ってなかった

 

「…理由を聞いてもいいかな?」

 

「だって提督が戦うんでしょ…?強いかもしれないけど、死んじゃうよ…」

 

「え?」

 

「…私たちは命懸けで戦うのが生きる理由…でも提督は違うでしょ…?」

 

こんなに、人の事を思いやる、そんな小さな子達を僕は命懸けの戦場に送り出している…

何度思い知ってもいい気分ではないな

 

「僕も君たちの仲間だ、仲間が命懸けで戦ってるのに安全なところで見てられないよ」

 

「………もう私は違うよ」

 

「そんな事ない、キミはいつまでも仲間だよ」

 

「…………死なないでね」

 

「わかってる」

 

 

「鳳翔」

 

「あら、もうお帰りですか?」

 

「…仕事は多いからね、鳳翔、キミはどう?無理してない?」

 

「はい、ご心配なく」

 

「………赤城達も気にかけていたよ、いつでも戻って来ていいからね」

 

「……ありがとうございます」

 

「…僕もキミが心配なんだ、いつでも帰っておいで」

 

「ふふっ…最初からそう言ってください」

 

 

 

 

「お帰りか?」

 

「徳岡さん、ボロボロですね」

 

「…ここじゃお茶汲みに行くやつによっては酷いメに合うからな…」

 

「成る程、ご愁傷様です」

 

「………お前さん、どうするつもりだ?」

 

「終わりを決めるのは僕じゃないんです、今は与えられた事をやる、敵は目の前の敵だけを見る」

 

「…背中には気をつけておけよ」

 

「背中は仲間が守ってくれますから」

 

 

 

 

 

 

 

 

日本海 

駆逐艦 島風

 

「にゃ〜…しぃ〜…」

 

「流石に冷え込む…っていうか…こんなとこに敵出てくるのー…?」

 

「急に発見され始めたらしいっぽい?」

 

「成る程、じゃあ私たちがいっちばん活躍して駆逐しちゃおう!」

 

「駆逐艦だけに?つまんないにゃ」

 

「モッチー、帰らない?」

 

「流石島風、判断が速くていいね〜、かえりたいよ〜」

 

連装砲ちゃんもついてきてくれてるけど、やっぱり何だかなぁ…

私のことは認めてくれてないせいか、思った通りに動いてくれない…戦闘も不安だし…

 

 

 

「もう充分探したの!いなーいのー!」

 

『わかったわかった、帰って来い、菊月が鍋にするってよ』

 

「お鍋!?いっちばーん食べたかった!」

 

「流石に気分が高揚します的な?」

 

「早く早く、帰ろ!」

 

「うん」

 

戦闘になった時、私は連装砲ちゃんと一緒にちゃんと戦えるのかな…

前の戦いで私はボロボロにやられた

敵がおかしかったことはそうだけど…それだけじゃない

あのゲームみたいな力があれば、私にも力があれば…

 

「今日の海は冷たいね」

 

「そうだにゃ〜」

 

水飛沫が体に触れるたびに冷たさが染みる

 

ギュッと握った手には何か感触があった

 

「…え?」

 

短剣が右手に握られていた

 

あのゲームの中の、短剣が…

 

瞬きをすればまるで水になった様に、大量の水が私の手足にかかった

 

「ぉぅっ…つ、つめた…」

 

「………ジャージ着たら?提督もいいって言ってるんだし…」

 

「…それよりヒートテックがいい…」

 

「わかる」

 

……なんであの剣が…気のせい…なのかな?

 

「島風…?」

 

「島風ちゃん、大丈夫?」

 

「あ、う、うん、大丈夫だよ」

 

 

 

 

 

 

重雷装巡洋艦 木曾

 

「どう言うことだ?」

 

「強くなったところで悪いがお前は出撃させない、理由はお前の隊列を乱す様な戦闘などの問題行動だ、3回目は言わねえぞ」

 

「いや頼む、戦わせてくれよ、俺も戦いたくて仕方ないんだ」

 

「知るか、それよりも北上に会いにいかなくていいのか?大井達は荷物をまとめてたぞ」

 

「荷物だと?」

 

「環境などが悪い様なら連れて帰るそうだ、つーか向こうの誰かとやりあって来いよ、許可さえ貰えばお前1人が演習する分には構わねぇから」

 

「………6対1か…燃えるね、いいぜ、やってやる!!」

 

 

 

 

 

「なあ、なんで俺に手錠がかけられてるんだ?」

 

「アンタが勝手な行動するからでしょ?」

 

「木曾だキソーって言えニャ」

 

「クマー」

 

「………そのバックの中身、見せてくれね?」

 

「…ほら」

 

「いや、そんな気はしてた…中身全部拘束具だしそのバック前見た人が入るやつだろ、ほら、顔だけ出るやつ」

 

「…そんなやばいやつなのかニャ…」

 

「あれはそういう芸であって、誰でもできる訳じゃないクマ」

 

「でも姉さん、私北上さんをこれに入れて一生愛したいんです!1人で何もできない北上さんを!」

 

「……別に姉さんの性癖は興味ないんだけどさ、いい加減提督にアタックかけなくていいのか?川内もそうだけと最近きた春雨ってやつもなかなか仕掛けてるぜ」

 

「ふふ、手を出したら刺すわ」

 

「うにゃぁ…」

 

「くぁ〜…クマァ〜…」

 

「2人揃ってあくびしてる場合か?上官を殺害宣言してるぞ」

 

「あら?木曾は提督が私以外に手を出すと思ってるのね」

 

「………吐きそうになってきた、胃が痛い」

 

「あ、見えてきたクマ」

 

「………なんか騒がしいニャ、演習中かニャ」

 

「まあ何にせよ急ごうぜ、時間がなくなっちまう」

 

 

 

 

宿毛湾泊地

工作艦 明石

 

「はー…まさかタイミングずらすなんて想定外でした」

 

「でもうまく乗り切れましたね、良かったです、うどん食べに行っておいて」

 

「曙さん、私達が査察の後始末とかしてる間にそんなに良いものを……」

 

「香川のうどんはコシが違いますね」

 

「くぅ…私も食べたいっていうか私頑張って盗聴器と隠しカメラ全部潰したのに……!」

 

「んー、本当に全部潰せたという証明は?」

 

「………悪魔の証明を…しろ…と…?」

 

「え?いーえ?そんなことまぁったく思ってませんけど」

 

「くっ…!いいですよ!もう一回探知機持って練り歩きますから!!」

 

最近性格悪いなぁ曙さんも!!

 

 

 

「ぁ…うわ、あったし…しかも工廠…もう二周くらいしておこうかな…とほほ……」

 

 

 

 

 

 

駆逐艦 曙

 

「そうですね、まあ忙しいというより…騒がしいんです、色々ありすぎて」

 

「…悪い時に来ちまったみたいだな、と言うか演習の時以来か?」

 

「そうですね、改めまして綾波型の駆逐艦曙です、よろしくお願いします」

 

「………なぁ、姉さん」

 

「…球磨もそうクマ」

 

「ニャ」

 

「……あなた変わってるって言われない?」

 

「………ちょっと失礼します…もしもし、曙?私の心が持たないから早く来て」

 

「あ、悪い、傷つけたかったわけじゃなくてだな!?」

 

「…それで、北上さんでしたか…今は執務の手伝いをしてると思いますよ」

 

「…なぁ…本当に記憶喪失なのか?」

 

「あなた方の知っている記憶喪失とは少し違います、自然に治ることはありえないそうです」

 

「…どういう意味ですか?」

 

「まず、この記憶喪失の原因は北上さんと別の艦娘との間にある因縁です、その相手の艦娘は北上さんと勝負し、その戦いの最中、相手の攻撃により記憶を吸い取られました」

 

「吸い取られた?」

 

「………その相手の艦娘は?」

 

「順番にお答えします、相手の艦娘についてはお答えできません、本人が望まない事ですから…」

 

「私達がそれで納得すると?」

 

「関係ありません、あなた方が無理矢理記憶を戻して一番傷つくのは北上さんですよ」

 

「………それで?」

 

「データドレイン、ご存知ですか?」

 

「…たしかAIDAを取り除くのに提督が使ったって言ってた技の名前が…」

 

「確かそうだクマ、記憶すらも抜き取れる…とは驚きだったが……クマ…」

 

「通常の記憶喪失は…まあ、色々ありますが、要するに忘れている状態、では今の北上さんの状態は完全に無いんですよ、思い出すものがない」

 

「………ならまた作ります」

 

「ご自由にどうぞ、止めるつもりはありませんので」

 

「………さっきから仲間のことのはずニャのに偉くぞんざいじゃないかニャ…お前…」

 

「…それは申し訳ありません、ですが私は北上さんをもう仲間として見ていませんので」

 

「…アナタ、よく私の前でそんなこと言えるわね」

 

「私は北上さんを尊敬していました、何度もあの人の動きを真似、理解し、繰り返してその結果あの人にできて私にできない動きは、艦娘のできる動きの範囲内なら、無いと言って差し支えありません」

 

「……何?」

 

「つまり、出し殻には用がないと」

 

「………北上さんが悪いんですよ、提督を悪く言うから」

 

「どういう事ですか?」

 

「北上さんは、私の目標で、とても頼りになる仲間でした、なのに記憶がなくなったからと言って提督を悪くいうなんて私は許せません」

 

「…成る程な、コイスルオトメってやつか」

 

「……タチが悪いのは、北上さんも記憶がある時は同じ人を好いていた、と言う点でしょうか」

 

「………成る程な、クマ」

 

「北上さんは私の恋のライバルでもありました、私は北上さんのことは好きでしたから、最初止めました、記憶が戻ったら後悔すると……ですが、少し前、提督と北上さんが2人で応接室に入るから何事かと思い、よく無い事だと分かっていながらも立ち聞きしました…」

 

「………そこで北上さんが、ってわけね」

 

「性格にはわかりません、北上さんは声も失っているので」

 

「声も…」

 

「………」

 

「筋力も低下しており、艤装の装着も負担になるからと今は事務仕事を始めてもらっています」

 

「………で?」

 

「…まだ庇うというのであれば、お好きにどうぞ」

 

「…………なぁ、ストレス溜まってんだろ」

 

「だとしたら?」

 

「……北上姉にできる動きが全部できるんなら、俺と闘ろうぜ」

 

「……馬鹿な方ですね、あなたは今の話を聞いていて、何故私と戦えると?」

 

「俺がやりたいからだよ、それ以上なんかねぇさ」

 

「………本物のバカですね、あなたなんて…阿武隈さんにはまず勝てないとして、曙や明石さんにも勝てない……ふむ…赤城さんとやって負ければ満足しそうなクラスですか」

 

「……舐められてんな、俺だって改二なんだ、なぁ、やろうぜ」

 

「…………私が直接相手する気は全くありません、というか赤城さんもここならかなり高練度な部類なのですが………いや、話の続きをしましょう」

 

「続きをしたければ、闘れよ」

 

「…………貴方達の妹ですよね」

 

「…正直言って、お前の物言いに球磨達全員イラついているクマ…事情は理解できるが、歯に衣着せず言い過ぎだと思ったクマ」

 

「……だから殴り合いで解決しようと?」

 

「…怖いのかニャ」

 

「………はぁ…私、遠征から帰ったばかりで疲れてるんですけど…阿武隈さんでも似た様なことできるので阿武隈さんじゃダメですか?」

 

「貴方の言葉の責任です、貴方が取るべきだと思いますよ」

 

「………こういう時に限って曙は遅いし……いいですよ、海に行きましょう」

 

 

 

 

 

 

「へー、頑張りなさいよ」

 

「……別にアンタがやってくれてもいいのよ?アタシは疲れてるんだから」

 

「讃岐うどん、私も食べたかったわ〜」

 

「……チッ、腐れ青髪が…」

 

「最近アンタ口悪く無い?」

 

「おい!!さっさと来いクマ!それともそっちも来るか?2人に増えても全く構わんクマ」

 

「艤装を運ばせただけですよ…ったく、ほら、貸して」

 

「北上用の五連装酸素魚雷と、12.7cm連装砲、あとは7.7mm機銃…」

 

「………どうせ20分で終わるわ、今回は目視距離からの開戦だし、ただ、あのヘンテコな剣…アンタ何か感じないわけ?何に使う気かしら…盾…か…?」

 

「この髪は探知機じゃ無いのよ」

 

「……舐めた真似してきたら、5分で終わらせてやる…」

 

「…珍しく頭に血を登らせちゃってまあ………ま、いいか、頑張りなさいよ」

 

「言われるまでも無いわ」

 

 

 

 

 

 

『演習開始!』

 

「………予想通りすぎるわね」

 

重雷装巡洋艦2からの大量の魚雷…

破壊する必要もない

 

「こっちも魚雷を見せてあげる…と言っても、最初から全部見せるつもりはないけどね」

 

5発の魚雷を発射管から取り出す

 

ぽいと海に捨ててみせた、あまり深く沈めずに、そして相手の魚雷と接触しない程度に

 

「………これワイヤーついてたっけ…あー、あった…じゃあこれも邪魔ね、機銃とまとめて浮かべておけば後で取りやすいかしら」

 

艤装を海に浮かべてその上に機銃もおく

 

「………よし、行くかー」

 

 

 

 

[あれは何をしてるんですか?]

 

「演習よ、せっかくだし見ていきなさい」

 

[お言葉に甘えさせていただきます]

 

 

 

重雷装巡洋艦 大井

 

「…何あれ、艤装を捨てたわよ、魚雷発射管も…機銃まで」

 

「………舐めやがって、突っ込んで来るぞ!!砲撃開始!」

 

「多摩、挟撃するクマ、全体単横陣クマ!」

 

「…その前に魚雷で終わりよ…!」

 

あと3秒で魚雷に当たる、当たる…

砲撃も迫っているのだ、一瞬で終わり……

 

「何!?」

 

「と、跳んだクマ…!」

 

「クソ!跳ね回りやがって…!神通みたいな事してんじゃねぇ…!」

 

「魚雷全部かわされたニャ…!次!用意するニャ!」

 

「ク…グマッ!?」

 

「姉さん!クソ!大丈夫か?」

 

「………う、動けん…クマ…!機関部と艤装が…クッ…クマッ…!」

 

「…この精密射撃が…くそ!俺が前に出る、後ろに入ってそこから砲雷撃!」

 

「わかったわ、ちゃんとソレ盾にしなさいよ!」

 

「ニャ!」

 

 

 

 

駆逐艦 曙

 

「………やっぱり盾か」

 

信号を送る、そして艤装の巻き取りを開始する

体が少し艤装に引っ張られる

 

「…っ…ちょっと重い…噴出機構付いてないやつか…」

 

「この体勢…いや、いっか、巻き取りやめれば」

 

巻き取りをやめ、大井達の後方から飛び出す魚雷を狙い、放つ

 

「………出てくる場所を性格に把握するの、難しいのよね…甲標的も潜水艦も居ないし」

 

1撃で5発の魚雷を作動させる

前方は守れても、盾では背後は守れない、お粗末な終わり方だ…完全に艤装が停止してない木曾にもう一撃打ち込んで演習は終わった

 

 

 

 

 

重雷装巡洋艦 北上

 

「………っ…ぁ…」

 

なんだアレは、戦いとは呼べない何か

蹂躙、圧倒的な差…

 

「アイツはいいわよねぇ、指揮官としても、兵士としても優秀なんだから」

 

[あれはなんですか?]

 

「アンタの真似よ、どうせアレで仕留め損ねたらまた遠隔雷撃でもやるつもりだったんだろうけど」

 

[訳がわかりません]

 

「………記憶を失う前のアンタは、アレと同じくらい強かったのよ…いや、今アンタに宿ってるか知らないけど…AIDAがあればわからないか…」

 

何を言ってるのかはわからないが、私があそこまで強かった…?

今の私は1人で歩くのに杖をつかなくてはならないのに…あれほどに強かった…?

 

「お疲れ、曙」

 

「中指目に突き立てましょうか、曙、ちゃんと噴射機構ついてるやつにしなさいよ」

 

「そっちは軽巡以上じゃないとダメだって、重いからってさ」

 

「……一言言いなさい」

 

「ごめんごめん、忘れてたわ」

 

なんでそんなに強いのに

いや、強いから戦争をしていても何も思わないのだろうか

 

「………アンタ、また変な事考えてるわね…何考えてるかまでは知らないけど」

 

「………」

 

急いでホワイトボードに、何も考えてないと書き込む

 

「……私は全部聞いてたわよ、貴方と提督のやりとり」

 

「!」

 

この人はあの人間が好きで、私が邪魔だと思ってる、だから…

 

「…………最ッ低ね…」

 

「あ、曙!待ちなさいよ!」

 

「……もう、アンタに記憶が戻ることがないと知った以上…アンタに気を使う気は無いわ、アンタなんか…死んだ方がよかった、なんで仲間をこんなふうに憎まなきゃいけないのよ…!」

 

「………泣いてるの見られるわよ、ほら」

 

私だって、納得できてない、理解できてないのに…1人で立ち上がることすら、こんなに困難なのに…私は…どうすれば良いんだろう?

 

 

 

 

 

 

工作艦 明石

 

「え?北上さんの異動届?」

 

「そう、作っておいてください…呉の球磨型が引き取るつもりみたいだから」

 

「…わかりましたけど、顔洗ってください」

 

「だから言ったじゃ無い、泣いた跡がよく見えるって」

 

「………はぁ…」

 

「みんな心配そうに見てたわねぇ」

 

「…提督は?」

 

「2時間ほどで着く予定だそうです、またゲームの身体を使って戦うと」

 

「…………そう、たとえその身体を使って戦っても自分の体は安全なところにおいて、とか言うんでしょうね」

 

「…言い過ぎよ」

 

「アンタはイラつかないの?」

 

「………思うところはあるわ、いろんな意味でライバルだっただけにね、でも一番可哀想なのは阿武隈よ」

 

「……そうね、必死に元気なフリしてるけど、あの子が一番辛そうだったわね」

 

「阿武隈ちゃんからすれば、憧れで、大事な先輩で、大きな壁で、親友で、簡単には言い表せない存在でしたからね…」

 

「…私は北上が建造されたばかりの艦娘だと思って接してるつもり…いや、できてないのはわかってるわ…だけど、それでも……アイツは…」

 

「やめなさい、もう手遅れだしアタシもだけど…陰口言ってたら最低よ」

 

「……そうね」

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