元勇者提督   作:無し

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慢心

出撃ドッグ

駆逐艦 曙(青)

 

「艤装、よし!全員準備いいわね!第一艦隊、抜錨!」

 

「…アオボノちゃんすごく気合入ってるね」

 

「ぼのたんは新たな力を手に入れたのです、故に…こう、なんか、うん、そうなんだ」

 

「漣、何も伝わってこないよ…」

 

「…この4人ってのも珍しいよね」

 

「……昔を思い出すってやつね、でも今は違うわ」

 

「うん、今は5人、第七駆逐隊は5人で戦う」

 

「なんかぼのたそらしくなァ"ァ"ァ"!!痛いッ!愛アンクローがいだだだだ!」

 

「漣ちゃん、女の子が出しちゃいけない声が…」

 

「早く出ないと時間過ぎちゃうよ?」

 

「よし、改めて、行くわよ!!」

 

「あ"い"…」

 

 

 

 

 

 

「やっぱりうじゃうじゃいるね、見渡せば必ず視界に入るって…相当だよ」

 

「殲滅作戦よ、どんだけ居ようと関係ないわ!」

 

「あの水平線の向こうまで、走りたくないッ!帰りたいッ!退勤していいですか!?」

 

「だ、だめだからね?というか…うーん、漣ちゃんじゃないけどこの量は…敵だって分かったら酷いことになるんじゃ…」

 

「アンタ達は対空射撃さえしてくれればいいわ…私が全部潰してあげる…!」

 

「よっ!ぼのぼの!」

 

「…漣、黙らないとアンタから黙らせるわよ」

 

水平線に見える敵影

 

かなり遠いけど、ここからわかるだけで…20か、かなり距離を空けてる様子からまるで網を張ってるような…

 

その憶測が正しければ向こうは警備隊みたいなもの…20?そのくらいならこの人数でかかれば余裕…

 

「よし、仕掛けるわよ」

 

「え、本気?ちょっと迂闊じゃない?」

 

「アオボノちゃん、やめておこうよ…」

 

「アンタたちは私の新しい力を知らないからそうなのよ」

 

右手を水に叩きつける

水飛沫を思いっきりかぶる

 

「変身ってね…!」

 

ゲームの身体、やっぱり軽い気がする

 

「…見てなさい、私の強さ…!」

 

「ちょっ!…速っ!!」

 

「待って!1人で行かないで!」

 

「あーもう!追いますぜ2人とも!」

 

双剣を抜く、足場を蹴る、誰よりも疾く

 

「アタシと会ったのが運の尽きだったわね!」

 

眼前の深海棲艦を斬り捨てる

 

 

 

 

 

駆逐艦 朧

 

「もう戦ってる…!急がないと!」

 

「左舷敵艦載機!対空射撃用意!」

 

「低い…!この距離で当たる…!?」

 

「こんな動き今までしてこなかったのに…とにかく撃たないと!」

 

「ぼのたん!背後から敵艦載機行くよ!」

 

「余裕!!それよりアンタ達は自分の安全を考えなさい!」

 

「アオボノ!冷静になって!潮は対空より退路の確保!」

 

「わ、わかった!」

 

「ボーロ!魚雷来るよ!」

 

前方からの雷跡を落ち着いて撃つ

 

「……待って!漣!酸素魚雷が混ざってる!最大戦速にして逃げて!」

 

「ど、どこ…!?…ぁ…」

 

漣の艤装に魚雷が突き刺さり、破裂する

 

「漣!!」

 

「漣ちゃん!!」

 

漣が激しく吹き飛ばされ、水面を転がり滑る

 

「ごふぉっ!がほっ…!だ、大丈夫…!衝撃は逃した!」

 

「よろけてるじゃん!ダメ!アオボノ!聞こえてる!?漣がダメージを負ってるの!戻って!」

 

『聞こえてるわよ!大したことないって言ってるんでしょ!?私は今忙しいの!』

 

話にならない…!こんなこと言うコじゃ無かったのに…

 

「このっ…!潮!提督に撤退許可を求めて!」

 

「わ、わかった!」

 

『朧!まさかこんなトコで帰るつもり!?私達の仕事は海域の解放よ!』

 

「仲間の命が第一!戻ってきなさい!アンタの為に戦ってるんじゃないの!」

 

「提督から撤退の許可出たよ!」

 

「よし、漣を挟むように陣形を変更、変わらず単縦陣で対空射撃!」

 

『私はまだ帰らないわよ!こんなところで帰るなんてありえない!』

 

「…いい加減にして!」

 

「ボーロ!言い合ってる場合じゃないよ…!あれ…!」

 

漣の指す方向には雫型の一対の石板

明らかに異質、この場に似つかわしくないそれは間違いなく

 

「八相…!ダメ!逃げないと!曙!!」

 

『八相ですって?いいわ…!やってやる!!』

 

「馬鹿!逃げるのよ!潮!」

 

「緊急信号送ったよ!最大戦速で撤退開始!」

 

「漣、潮に続いて!曙は私が連れて帰る!」

 

「お、朧ちゃん…無理しないでね…!」

 

「わかってる」

 

もちろん無理してでも連れて帰る…七駆は欠けない

 

 

 

「曙!!」

 

「何!今余裕はないのよ!」

 

「逃げるよ!早くしないと囲まれる!」

 

「囲まれても全部倒してやるわよ!!」

 

会話中だと言うのに敵は御構い無しに艦載機を飛ばしてくる

こっちには余裕がないと言うのに…!

 

「曙!やめて!早く帰るよ!」

 

「うるさいのよ!今更その名前で呼ばないで!」

 

「曙!!」

 

まるで話を聞く気がない…

 

「全部私がやる!!さっさと死になさい!」

 

金属音が鳴り響く、曙の方を見る余裕はないが、何度も切りかかっているのが見ずともわかる

 

「あと何機…!」

 

自分に迫る敵機が全て落ちる

 

「待たせたわね、朧、第二艦隊合流、これより戦闘開始!朝潮!」

 

「大潮!満潮!荒潮!左右に展開してください!敵潜水艦が居ます!」

 

「全体単横陣に、阿武隈さんは私と2人を救出に向かいます」

 

「敵潜水艦発見!爆雷投下!」

 

綺麗な連携で敵と戦い始める

 

こうするべき、と言うことがよく分かっている、全員がやるべきことを知っている動き

 

『こちら第三艦隊摩耶、漣にと合流した!気絶はしてるが大丈夫だ!』

 

漣が気絶して…?なんで…?潮がそばに居るはず

 

「摩耶さん、潮は…?」

 

『潮?見てないが…おい!近くに潮がいるはずだ!龍驤探してくれ!』

 

嫌な可能性が頭をよぎる

違う、ダメだ…あっちゃいけないことだ…

 

「曙!撤退するわよ!」

 

「何言ってんのよ!手を貸しなさい!ここでコイツを仕留める!」

 

『あのさぁ…そろそろ鬱陶しいんだよねぇ…』

 

『そうですねぇ』

 

石板からゴツゴツとした顔が浮き上がり喋り始める

 

「喋っ…!?」

 

「何か不味い…早く逃げなさい!」

 

『そうだよねぇ…』

 

『やってしまいましょう!』

 

石板の頂上部から光線が射出される

光線が交差し、爆炎に包まれる…曙ごと

 

「このっ…!ぐっ…!あぁぁぁぁ!」

 

「曙!」

 

「朧待ちなさい!巻き込まれるわよ!」

 

「曙!曙ぉっ!!」

 

曙が…曙が…死ぬ…?

 

『何が起こってやがる!おい!報告しろ!おい!』

 

「相当不味い…朧!落ち着いて!流石にあの程度で死んでたら興醒めもいいトコよ…!」

 

大きく吹き飛ばされ、こちらに曙が転がってくる

 

「曙!息は…してる、生きてる…!」

 

「こちら第二艦隊旗艦曙より、曙、朧の回収完了、撤退戦に移行、敵は八相、第三艦隊には後方にて待機を願う」

 

『第三艦隊了解、潮は今捜索してる、どうやらこの辺にも潜水艦が居やがる、イムヤ1人じゃキツくなってきた!』

 

「急ぐわ、最速で撤退開始!」

 

「朝潮は4人で曙を曳航して、殿は私と阿武隈さんで」

 

「はい!」

 

『アッハッハ!』

 

『ハハハハ!』

 

「…この石板、ムカつきますが…中々賢いようで」

 

「……」

 

 

 

 

駆逐艦 曙

 

『私達は禍々しき波』

 

『我等は悍ましい策謀家』

 

ふーん、コイツらがアタマか…

自分たちで名乗るようじゃそのオツムは見た通り薄っぺらいわけね

 

「悍ましいのはそのツラだけにして欲しいわね」

 

『一切の容赦無く、お前達を殺してやろう』

 

『一切の油断なく、殲滅してやろう』

 

「…それで?」

 

『私達は勇気と知恵ある者を待っている』

 

『我等は真実へと辿り着くものを待ち侘びている』

 

「真実?」

 

『其れは貴様ではない』

 

『賢さと知恵は違う、貴様は賢い、しかし其れは知恵とは違う』

 

何が言いたい?時間稼ぎ…では無い、敵の姿はない…コイツら以外は

 

『伝えよ、真実を求めよと』

 

『我等は意志ある波、そして力ある波』

 

「…協力の姿勢のつもり?仲間に手を出しておいて…」

 

『協力?意味を違うな、これは慈悲也』

 

『私達は敵、然し私達は望まぬ駒でしかない』

 

今を望んでない?

 

「…此処は退かせてもらうわ、その慈悲とやらに感謝してね」

 

『全ては進みだした』

 

『勇者は我らの敵なれど不利益な存在ではない』

 

『影持たざる者は宵闇の世に沈む』

 

『常闇は存在せず、夜明けの先に我等は消えん』

 

「何が言いたいのか知らないけど、次は死んでもらうわ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宿毛湾泊地

提督 倉持海斗

 

「……損害は、潮1人…」

 

「…遂に、出てしまいましたか…轟沈者が」

 

「まだ確定じゃない…」

 

「残念ながら、艤装は回収されました、提督…」

 

「………曙は」

 

「修復剤を使い営倉に入りました、それでも完全に怪我が治ってないので八相の攻撃によるダメージもあったようです…営倉入りの理由でしたが…隊を乱し味方を危険に晒し、結果として…とても擁護できる内容ではありませんでしたので…」

 

「…そう…考えが甘かったかな、きっと間違わないと…扱えると思ったけど」

 

「強すぎる力は…人を惑わせます」

 

「…人、か…」

 

「………提督は、私達をなんだと思っているんですか?」

 

「……わからない、人として見ていいのか」

 

「…それは、私たちがAIだから…?」

 

「……過去に、AIの仲間と共に戦った、僕にとって大事な仲間だった、本当に本当に大切な…」

 

「…失礼しました、てっきり私たちを軽んじられてるのかと」

 

「それはない、だけど…君たちの考え方を思うとき、少し感情を差し置いて考えたりしてしまうこともある…君たちの考え方より、気持ちを優先すべきなのにね」

 

「………どうしますか?」

 

どうするか、か、もう止まるつもりはない

犠牲はもう既に出ている、どんな形でも止まることはできない

 

「眼前の敵を叩くだけだ、でも戦い方は改めよう、艦隊を四つに再編成、第四艦隊を対八相部隊にして、それ以外は六人で戦ってもらう、報告から考えると…八相は、というより、交戦したらしいゴレは積極的に戦おうとしてるとは思えないんだ」

 

モルガナに操られてるのを拒否してるかのような…

 

「近海の確保だけでも、急がなくてはどうなるかわかりませんものね…」

 

「摩耶にもまず交渉をするように言って見て、僕は僕でやれることをやるつもりだから」

 

「…また何処かへ?」

 

「……うん、まあ、また話すよ、それより建造の方は?」

 

「正規空母2名と軽空母3名、軽巡3名駆逐艦4名、全員送り出しました」

 

「予定通りにことが進んだんだね、まあ、これでしばらく資源は苦しいか」

 

「……提督は目の敵にされてますから」

 

「こっちの戦力拡充は?」

 

「これからです、明日にでもご報告致します」

 

「わかった、それと明石…夕張さんにも頼んで欲しいんだけど、ヘルバと協力して…コレをお願い」

 

「…コレ、なんですか?」

 

「切り札の素、かな、読めばわかるよ」

 

「失礼します………コレ、本気ですか?」

 

「……必要な時が来たってことだよ」

 

「提督、コレは誰が試すんですか、場合によっては死にますよ」

 

「もちろん僕が試す」

 

「………艦隊指揮はあなたの仕事で、責任です、軽々しく命を賭ける真似はやめてください…!」

 

「………もう人も、艦娘も、犠牲になった、僕の立てた作戦で、僕のために死んだのなら……」

 

「提督は、尚のこと生きる義務があります、生きて戦うのならわかりますが、死ぬ事は火野さんはもちろん、他の方のことも裏切る事になる…」

 

「……死ぬつもりは無いさ…僕はやり遂げてくれるって信じて頼んでるんだ」

 

「…………忙しくなりそうですね」

 

「…頼んでおいてなんだけど…やっぱり作っていいものじゃないね」

 

「現代の核兵器と形容できるモノです、それだけ危険だと言ったのは提督ですよ…どうしても戦うんですね」

 

「黙って見てることこそ裏切りだよ」

 

「……私たちが作れるモノなのでしょうか」

 

「データドレイン自体は人の手で作り出すことができるモノだ、過去に作り出した例も存在する…ごく僅かだけどね、それよりも問題なのは制御ができない事だ…それについても僕なりの考えと、対処法になりうるものをそこに記してる、無理かどうかは君たちの判断に任せる、無理なら僕は別の手段を取るよ」

 

「…わかりました」

 

「…曙のところに行く」

 

「優しさはためにはなりませんよ」

 

「……そうだろうね」

 

 

 

 

 

駆逐艦 曙(青)

 

意識が戻って真っ先に朧に殴られた、漣に軽蔑の目を向けられた、曙に…潮が戻っていないことを告げられた…

 

最悪だ、馬鹿だ、馬鹿だった

私が調子に乗ってたから

 

「………」

 

私が、弱かったから…

 

「曙」

 

「……何よ…」

 

「………潮の捜索は、完全に打ち切られた、艤装の発見を持ってして」

 

「っ……」

 

文句の一つも、言えない

わかってる、私のせいだ、私のせいなんだから

 

私が弱かったせいで

 

「何が悪かったかわかるかい」

 

「…わかってる…私はもっと強くなる、アイツらを守れるくらいに…」

 

「………」

 

営倉の扉を開き、クソ提督が入ってくる

 

「…もう一回聞くよ、何が悪かったか、わかってる?」

 

「……だから、私が弱かったから…」

 

パンッと乾いた音がした、何が起きたかはすぐにわかった

 

「な、なんで叩くのよ!」

 

「………曙、仲間は…荷物じゃないよ、足手纏いじゃないんだよ」

 

「足手まといなんて…」

 

「思ってる、言い切るのは良くないんだろう、だけど…曙、君は…朧を、漣を、潮を…足手纏いだと感じてた」

 

否定しきれない、私はそんじょそこらの敵に負けない自信があった、いまならあの時の北上にだって勝てると思った、でも、さっき私は何を思ってた?

 

「………」

 

「………さっさと、しなさいよ」

 

「何を?」

 

「…私から、腕輪諸共…もっていくんでしょ」

 

私にはすぎた力だから

 

「…勘違いしないで、曙、僕はそんなことするつもりもないし、そもそもできないんだよ、今の僕には何の力もないんだから」

 

「………じゃあここで大人しくしてろって?」

 

「…………君はこれから、償いをする事になる、漣の分、朧の分…そして、潮の分も」

 

「………死んだ以上、取り戻せないのよ」

 

言いたくはなかった、でも私が受け入れる必要があった

 

「…明日からまた出撃だ、…カイトを使ってくれて構わない、好きに戦ってくれていい………約束をして欲しい」

 

「何を」

 

「……もう間違えないで、それだけだよ」

 

「…………」

 

わかったとも、わかってるとも言えない…

言葉が出てこない…

 

「………じゃあね、また…今日は悪いけどそこで過ごして、明日から部屋に戻ってもいい…」

 

そう言って、営倉から出て行ってしまった

ドアを開けたまま

 

見張りは誰だろう、なぜ閉めに来ないんだろう…

 

 

 

「…甘いなぁ…司令官…アマアマやわ」

 

「……」

 

龍驤…

 

「………何が僕は多分言い過ぎるから、フォローしてあげて、や……なぁ?甘いと思わんか」

 

「…そうね、甘すぎるわ」

 

「………自分の立場わかっとるみたいでよかったわ、お前のやった事は自分を危険に晒すことやない…周りを危険に晒すことや…お前は自分の姉妹を全員道連れに心中しようとしたんや」

 

朧の判断が遅ければ、潮が連絡を取ってくれなければ…

 

間違いなく全滅していた

 

「……ウチは、お前のことを妹やって言うた…なら、姉は姉として、責任果たさなあかんわな、立って歯食いしばれや」

 

「………」

 

「…覚悟出来とるようやな!」

 

げんこつが頭頂部にめり込む

痛みが染み渡る、足元がフラつく

 

「……朧のが、痛かったわ」

 

「そうや、朧は…潮の事先に知っとった、漣のこともある、お前に何度も帰ると言った……なのにお前は帰らんかった………朧は、誰よりも姉妹を心配しとった…その姉妹への、想いのこもった一撃や、ウチみたいな偽モンと一緒にしたらあかん」

 

「………やめてよ…」

 

これ以上、私の前から、居なくならないで……

 

「………もっかい、目ぇ閉じ」

 

「………」

 

口を結び歯を食いしばり、衝撃に備える

 

ふわりと、暖かく、優しく包まれた

 

「ぇ……」

 

「ウチは、エセや、偽モンやけどな…ほんまは違うのわかっとるんやけどな、こんなにダメでダメで仕方ない妹が大事で、可愛くてしゃーないんや…」

 

そう言って、笑いかけてくれる

 

「………納得してないんやろ?探しにいくで、潮の事」

 

「……あり、がとう……」

 

「………顔がぐちゃぐちゃや、これで拭き…ほら、急ぐで、誰かに見られたらまた鍵閉められて出られへんようになる」

 

「うん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

駆逐艦 電

 

「…いました、トキオさん!」

 

「わかってる!!せーのっ!」

 

浜辺に流れ着いたボロボロの人型を引き上げる

夜中なので人通りもないのが救いだ

頭の中にこの映像が流れてきた時は何事かと思ったが、見てしまった以上は助けるほかない

 

「…脈はある、だけど呼吸は弱い…肌も氷みたいに冷たい…」

 

「衰弱が酷いです…」

 

「………この子も?」

 

「艦娘で…知り合いです、トキオさん、厄介者が1人増えても良いですか…?」

 

「…そのくらい構わないよ、だけどまずは怪我を治さないと」

 

「病院は意味がないのです…一度家まで連れて帰るのです……」

 

「わかった、急ごう、せめて暖かいところに寝かせてあげないとね」

 

「………また床で寝るのです?」

 

「もともとベッドは使ってないしね」

 

 

 

 

 

 

呉鎮守府

提督 三崎亮

 

「まだ見つからないのか」

 

「……ごめん、私の対応が悪かったんだ」

 

「…主力2人が無断で出撃、そのまま帰ってこない………はぁ…」

 

「悩みがあるなら俺に相談してからにして欲しかったんだがな」

 

「……神通…那珂…」

 

「那珂の方は…あまり強さに固執してるようには見えなかったが」

 

「……普段はね、でも、ほら、スイッチが入ると戦い第一になるから」

 

「………仕方ねえ、何処に行ったのか見当もつかない以上…艦隊を動かすこともできねぇしな」

 

「……そう、だよね…」

 

「…悪い」

 

「謝らないで、提督に非は無いよ」

 

「………」

 

「…………出てくるね」

 

「帰って来いよ」

 

「…わかってる」

 

「………行きやがったか…で、お前はいいのか」

 

「はい、司令官、私は私の用がありますので…司令官…いえ、楚良って呼びましょうか?」

 

「……なんで人の黒歴史を掘り起こしてんだ、お前は」

 

「私の力の源が司令官の黒歴史って素敵じゃ無いですか」

 

「………どこがだよ」

 

「…AIDAに感染してますよね」

 

「…ああ」

 

「………引き出してみませんか?」

 

「どういう意味だ」

 

「……AIDAの鎧を、纏ってみませんか?」

 

「…余計意味がわからねぇ」

 

「私はAIDAを感じ取れます、そのAIDAは貴方に仇なすモノではありません」

 

「だから、好きにさせろと?」

 

「いいえ、利用しましょう」

 

「何…?」

 

「司令官、いえ楚良」

 

「言い直さなくていい」

 

「楚良としての記憶、私が仙台に負けた時に蘇ったんですよね」

 

「………まあな…できれば永遠に思い出したくなかったが」

 

「…なら、記憶ごと、スケィスも楚良の体にあるはずです」

 

「楚良の体…って俺のことか、その呼び方やめろ」

 

「AIDAを使えば、無理矢理にでもスケィスを引き摺り出せる…かもしれませんよ?」

 

「………成る程な」

 

「乗りますか?この提案」

 

「…悪くねぇ、乗った」

 

「ふふふ、やっぱり同じ記憶があるって素敵ですね、とっても仲良くなれますから…ね、楚良?」

 

「楚良はやめろって言ってんだろ」

 

 

 

 

 

 

駆逐艦 潮

 

「………っ…」

 

「意識が戻った、よかったぁ…」

 

「…て、い…とく…?」

 

「あ、えーと…」

 

「潮さん、お久しぶりなのです」

 

「…い…なずま…さん…?…ほ、本物…!?…っ!…」

 

教えないと、提督に教えないと…

 

「無理しないで、怪我をしてるんだから」

 

「喋れるなら上等なのです、質問するのです、離島鎮守府が襲撃され、完全に壊されたというのに何故あなたの提督は生きてるのですか?貴方も」

 

「…私たちは、大規模作戦の後、宿毛湾泊地に異動が認められて…みんなで…」

 

「………成る程、クソ野郎かと思ってたのですが、違うようで何よりなのです」

 

「い、電ちゃん…?」

 

「次、なぜそんなに大怪我を?」

 

「…撤退中、味方を庇って…」

 

「………艤装すら付けずに、ぷかぷかしてたのです…もはや奇跡なのです」

 

「………」

 

「最後、私の仲間を知ってますか…?」

 

「みんな、居ますよ…暁ちゃん達も、夕張さん達も…」

 

「そ、そうですか…!無事、でしたか……良かったのです…」

 

「……か、帰らないと…」

 

「無茶はダメなのです」

 

「………宿毛湾って四国の南西か……遠いな…」

 

「何処から流されたかは知らないですけど、東京湾まで流れ着くこと自体あり得ないのです、本当に、一生分の奇跡を起こしたのです」

 

「お、お願いします…帰らせてください……帰らないと…曙ちゃんが…」

 

「…こんなぼろぼろで帰って、どうするのですか」

 

「………曙ちゃんは悪く無いって、それだけ言いたくて…」

 

「電話で済むのです…今は余計なことを考えず、横になってるのです」

 

「………曙ちゃん…」

 

「怪我を治すために入渠する必要があるのです…どうにか、修復剤かドッグが必要なのです…」

 

「流石に無いよ…」

 

「………なら、用意するまでなのです…お願いします、トキオさん、手を貸してください」

 

「…って言われてもな…」

 

「……そう言えばここには修理施設がない、というより艤装自体ないのです、それならお風呂に入ればきっと…」

 

「え?」

 

「私たちの修理ドッグはお風呂なのです、だからうまくいけば修理ドッグの代わりにお風呂で代用できるかも…」

 

「………そんな状態で入れるの?」

 

「…大丈夫…だと思います」

 

「まあ、うーん、好きにしてくれてもいいけど……立てる?」

 

「………ごめんなさい」

 

「…まあ、そうだよね」

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