元勇者提督 作:無し
佐世保鎮守府
軽巡洋艦 龍田
「うふふふふ〜」
「またMVPか、流石だ」
「この槍、少し重すぎて砲弾を捌き切れませんから困ってしまいますね〜」
「……その割には中々楽しんでいるようだが」
「当然です、力は奮うものですから」
「奮うことを止めはしないが、護るために槍を振れ」
「勿論、そのつもりです〜」
「……戦闘中の姿を見ると怖くて中々信用ならないわね」
「瑞鶴」
「って言うか、龍田さん、聞きたいんだけどさ」
「何かしら〜?」
「………艤装に砲を積んでないわよね」
「必要ありませんから」
「…どうやって砲撃してるの?槍を振ったらどこかから飛び出していくように見えるけど」
「俺も前々から気になっていた、どうやっているんだ?」
「召喚してるんですよ〜?式神タイプの艦載機みたいな感じです」
「ああ、そうなんだ、媒体は?」
「さあ?燃料と一緒に弾薬もタンクに入れてますけど、気にした事はありませんね〜?」
「………怖いな、それ」
「暴発したらどうするの…」
「した事ないから良いの♪」
「万が一が危険だ、念のため確認などもしておいてくれ」
「はいは〜い♪」
「司令官!近海に艦娘が来たので接触した所交戦したと…!」
「何!?こちらの被害は」
「現在陽炎と那智さんが主として戦っています、最初に出会った足柄さんが大破し担ぎ込まれました!」
「…龍田瑞鶴、急ぐぞ!不知火、お前は瑞鳳を出してこい、異常な艦娘の場合アイツの力がいる!」
「了解しました!」
「足柄さん、怪我はないように見えるけど…?」
「…見なさいよ、これ…」
弱々しく服を捲ると青いアザが無数にある
「…!これ、蹴られた後?」
「そう、1発の砲撃もなしに、やられたわ…恐ろしい相手、川内型の神通みたいだったわ……迷子なのかと思って対応してたら、急に怒りだして…」
「感情の暴走、AIDAの症状か」
「急いで…はや…く……」
「ゆっくり休め、なんとかする」
「陽炎!那智!」
「…提督…か」
「……ごふっ…った……!」
「敵は!?」
「海の先に…アレは軽巡洋艦なんて生易しいもんじゃ……!」
「何があったか喋れるか」
「私達、迷子だと思って…声をかけたの、近づいてみたら鉢巻みたいなもので目を覆ってて、足柄がそれを笑ったのよ……」
「………」
「そうしたら急に、雰囲気が重くなって…「誰か私を笑いましたか?」って、すぐに謝ろうとしたんだけど…近づいてくる雰囲気がおかしいから…間に入ろうとしたら急に回し蹴りされて、吹き飛んで……那智さんも…」
「その後、私達は砲撃もしたんだが…一方的だった………ぐっ……骨が折れている、すまん…休む……」
「ああ、龍田、瑞鶴、やれるか」
「はい、お任せくださ〜い」
「そうね、行くしかないわ」
「遅くなりました」
「不知火、瑞鳳、敵は海上を逃走中だ、追ってくれ」
「それが…」
「……相手は、碑文使いです」
「何…?」
「ひぶん…?」
「……私と同じ、力を持ってる相手です、同じ匂いがする…」
「………どうしますか、戦えますか?」
「…リスクは冒せないが…」
「私は行くわよ〜?この槍があるんだもの」
「……行くしかないわね、万が一のための改修班を編成しておいて」
「ああ、頼んだ」
「居た!方位マルサンマル!」
「交戦用意!」
「拡声器で呼びかけて見て」
ziんtう
ああ、また何か来た
『事情が聞きたいの!お願いだから大人しく投降して!』
所詮私なんか、ここで大人しく従った所で…
碌なことにはならない…
…何だ、今の感覚は
「………」
『そう、そのまま、速度を出さないで』
ゆっくりと近づく、この感覚の正体は何?
『そこで止まりなさい!艤装を捨てて!」
艤装?そんなものもとよりないのに何を捨てろと?
私に残されたものは、わずかなのに、それすらも?
「待ってください、あの人艤装がありません…」
「と言うか止まる気配がないわよ」
「……どうやって浮いてるの?高速で水面を蹴ってるのかしら?」
「…くふっ…」
今、笑われた?
…所詮私なんて…そんなもの……
「今、私を笑いましたね?」
「え!?今のアウトなの!?」
「今私を笑った人は誰ですか?」
「ちょっ!と、止まりなさい!」
「くっ…やらせません!」
「待ちなさい!不知火!」
駆逐艦…?プレッシャーは一丁前ですが
「貴女ですか?」
まだ弱いですね、簡単に蹴りが入る程近づくなんて
「ッ…!?…ぐふぉ…!」
「それ以上やらせないわよ…!」
槍を持った、軽巡洋艦?
「それとも貴女ですか?」
「速い…ッ!!」
鉄の感覚…防御の速さ
蹴りの軌道が見られてる…か
「くッ…フェイント…!?きゃあっ!」
「あの目隠しで見えてるの…?龍田の構えをすり抜ける蹴りなんて…」
「……見えてる、と言うことだと思います…瑞鶴さん、邪魔です、下がっててください」
軽空母…?
にしては…
「貴女を笑ったのは私、貴女の相手も、私」
……この感じ…やっぱりそうだ
「どうやってソレを?」
「…復讐心から…産まれた産物」
「よっぽど恨んでいたんでしょうね?」
「何が言いたいの」
私にはよく見える
「随分と迷ってるように見えますよ、貴女」
「…!…だったら何…!」
「一緒に地獄に落ちませんか?きっとそんな迷いなんて無くなります」
「冗談じゃない、変な宗教と変わらない…」
「あら、期待外れですね」
せっかく仲間が増えると思ったのに
「……瑞鳳、押して参る!」
「わざわざ近づいてくるなんて、見てなかったんですか?」
ハイキックを防がせる
「瑞鶴さん!さっさと二人を連れて行って!」
「こんな状況で退ける訳ないでしょ…!」
「ふっ…は!」
脇腹への膝蹴りのフェイントから足を引いての回し蹴り
「本当に艦娘…!?艤装は無いの…!?」
「あんな物邪魔です、己の肉体以上の武器はありません」
後ろの七面鳥はうるさいですね
「…本当に?これでもそう言える!?」
紋様…!
「ッ!…重い…ー!」
見えなかった、今のは拳打?
「……一発貰っただけでもうお終い?」
「…まさか…!」
蹴りのコンボを叩き込む
連続で、大きく蹴る
…おかしい、反撃をしてこない、隙を見せてるはずなのに
「ぐっ…!あぁっ!」
回し蹴りが完全に顎に入り、水面を転がる
立とうとしているが、立てるわけがない、両手をつき、嘔吐
完全に沈黙させた
「瑞鳳!…よくも…!」
「まだ…まだ、終わってない…!」
…立った?あれをくらって、脳震盪を起こしてるはずなのに?
「…次で寝かせてあげます」
「……」
ぐらつきながら、私に向けて右手を突き出す
「…何を…」
手の甲を見せ、中指を立てて笑われた
「クソ喰らえ、一撃で死ね…!」
「……私を…笑いましたね、二度も…!
詰め寄り、飛び蹴り
「タルヴォス!!」
また紋様…!
今度は見えた、手を包んでいる何か…何だこれは、籠手…?
さっきとは比べ物にならない重さのパンチが叩き込まれる、意識が明滅している、体の一部が吹き飛んだように感覚がない
今私はどうなってる…?
軽空母 瑞鳳
「…くらいすぎた…完全に入ってない…!」
膝をつく、全力の拳は敵を捉え、吹き飛ばす事はできたが…完全な沈黙には至っていないと確信していた
「…つ…追撃を…!」
「…わかってる…!」
頭上を艦載機が飛んでいく
「ねぇ…あの艦娘…体千切れ飛んでるけど…!」
千切れ飛んだ…?
なら、相手は死んだ…?だとしたら、何だこの胸のざわめきは
ポォォォン
何かの音がした
それがとてつもなく嫌な予感がした
「速く消しとばして!」
「え、でも…」
「速く!!」
もう遅いのはわかっていた
ピチャリピチャリと音を立てて近づいてくる
千切れ飛んだ?どこがだ
五体満足、傷一つないそいつが近づいてくる
「……ああ、軽く見てしまいました…お陰で、とても痛い目を見ました」
「…それは………どうも……」
傷はないながらも、消耗しているらしい事はわかる、肩で息をしているし、顔色も悪そうだった
「…何をしたんですか…」
「……碑文の力…そっちも、そうでしょ…」
第七相復讐する者タルヴォス
その名の通り、私の復讐心の産物…
そして、さっきの攻撃は、受けた攻撃の分の復讐
「………アハっ…」
ぞわりと背筋を何かがなぞる
「アハハハハハ!……ふぅっ…」
消耗していたはずだ、なのにもうそんなプレッシャーを放てるのか
ゆっくりと、ゆっくりと近づいてくる
確かな殺意を携えて…黒い泡を携えて
ヒュンッと音を立てて一閃
「あらあら〜?当たらなかったかしら」
「…いいえ、腕は落ちましたよ…また……またこんなに痛い…でも、お陰様で冷静になってしまいました」
「………消せなかったのねぇ…仕方ない…」
槍をクルクルと回しながら、私とソイツの間に入ってくる
軽巡洋艦 龍田
「…まだ、やるつもりかしらぁ…」
「………また別の何か、と言うわけですか…」
無くなった腕を振るって新たな腕を出現させた…
「あら〜、それってそうやって生えてくるのね」
「…その槍、何ですか」
「……神の槍、ってところねぇ〜」
「………神…?」
「うふふふふ〜、で、やるの?」
おそらく、踏み込んでくる…その瞬間を狙う…
「……あぁ…最悪です、最悪の気分です…所詮私なんか…ああ、呑まれそう…」
「あら〜?」
踵を返して去って行く、何故…
まさか槍の力に気づいた…?
「…助…かった…?」
そう言いながら瑞鳳ちゃんはうつ伏せに倒れるし、もう限界ってところかしら
「轟沈者はいなくても、不知火ちゃんも瑞鳳ちゃんもボロボロよ〜、速く帰りましょ?」
「……曳航が必要ね…龍田も」
「…あら、バレてたのね」
脇腹より上の…肋のあたりを蹴られた
運が悪ければ肺もやられてるかも…
「最上たちを呼んだから、もう少し我慢して」
「……そうさせてもらうわぁ〜♪」
でも、今は気分が良い、私も守れたんだから
呉鎮守府
提督 三崎亮
「おい!大丈夫か!」
「クソッ…最悪だ、なんでこんな事に…!」
「木曾、落ち着きなさい.、みんな同じ気持ちよ」
「……球磨型全員、何が起こったか理解する前にやられたクマ」
「隕石の雨が降り注いだニャ…火傷とかはしてないけど…アレは何か…関わっちゃいけない物だニャ…」
隕石、か…現実のものではない事な確定だな
「……お前らがそこまで手ひどくやられるとはな…敵は」
「…変な帽子を被った小さな子供みたいな感じだった…本を待ってた、宙に浮く、変な本だった」
望…中西伊織…ゴレの碑文使い…
意識不明の、被害者…
「クソッ…神通も那珂も見つからない上にあんな敵と出くわすなんて…!」
「木曾、焦らないで」
「…戦える相手じゃなかったクマ…」
「強い弱いじゃなくて、土俵が違うニャ」
そう、土俵がちがうなら…同じ土俵に立ってるやつをぶつけるしかない
旧 離島鎮守府跡地
『〜♪』
誰もここに居ない
『〜♪♪』
だから、ここでは何をしても許される
ゆっくりと歩き回って見た
足元に綺麗に削られた石がある、名前…
ああ、墓石か
『………』
なんてたくさんの人数…
『〜♪〜♪』
怖くなんてない
恐れるものは何もない
『でも、少し寂しくなってきた』
仕方ない、ここに誰も居ないのだから
水に足をつける
ゆっくりと歩きながら、どこへ行こうか
宿毛湾泊地
駆逐艦 曙
「……ダメ、全然ダメ…明石さん、やっぱりお願いしていいですか?」
「わかりました、でも、まさかこんなものを作ろうとしてたなんて」
「実は最近ここに通ってたのも加工の仕方を知りたくて…」
「え、そうだったんですか?そのぐらいいつでも教えるのに…」
「まあ、もう知る必要なくなりますから」
「そうですね、よし、じゃあ早速」
ここに来た目的は複数あるが、表向きの理由は対空用の機銃を単装式にし、その銃身を伸ばす為
いつも使ってるものでは数で攻められた際の対応に手を焼きかねないからだ
「こんな感じでどうですか?」
「……なるほど、少し重いですね…」
「切り詰めます?」
「いえ、これに慣れます、同じものを四つ作れますか?」
「七駆用ですか?」
「まあ、それと予備もかねて…あ、でも潮と漣には重いかな…」
多分朧と曙は無理やりにでも使えるようになるだろうけど、この長さだとブレた時が怖い、当たらなければ困る
「……切り詰めたやつも四つ作れますか?」
「いっその事装弾数を増やしたタイプを作る方が…」
「馬鹿みたいに撃たれても困りますから」
「うーん、せめて連装式にした方がいいですよ、他の子は中々当たりませんよ」
「………なら弾幕を張るように…うーん」
それだと消耗が大きすぎる…
「…航空戦で解決できれば楽なんですけど…」
「いいものは手に入りませんからね」
「…あ、そうだ、提督もうすぐ帰ってくるそうですよ」
「本当ですか?」
「はい、潮ちゃんを連れて」
「あ、そっか…今朝方聞いた話なのに…」
「案外抜けてるところもあるんですね、安心しました」
…昨日脅かし過ぎたかな
「……まあ、勘弁してください」
「じゃあとりあえず、1時間ください、精度を揃えるとなるとなかなかかかるので」
「……いや、精度は揃えなくていいですよ、グリップのざらつきを変えてください、これは金属製なので、ラバーとウッドとか」
「…使い分けられるんですか?」
「とりあえず自分のやつだ、これは使い慣れてるやつだってことがわかれば良いですので」
「ああ、よかった…本当に使い分けられるのかと思ってびっくりしましたよ」
「……もしできたら不都合が?」
「…あ、いや、そう言う意味じゃなくて…ごめんなさい、ちょっと…まだAIだの電子生命体だのを引き摺ってしまってて…」
「要するに機械的なのが嫌だ、と?」
「…はい」
面倒な人だなぁ…
「でも優れた人は精密機器と言われるじゃないですか」
「うーん…」
「……まあ、気持ちはわかるんですよ、気持ちだけは…」
「え?」
「恋心を機械として無視されてる感じでしょう?」
私はハッキリ利用すると言われましたけど
「……はい」
「もう少し楽に考えましょう、提督は奥手なだけだと」
「奥手?」
「………押し倒してしまいましょうか」
「うぇっ!?」
「冗談ですよ、半分は…とりあえず、本気を伝えたいならそのくらいの覚悟はいりますよ」
「…………わ、わか、わか…」
「わか?」
「わかりまひひゃ!」
噛んだ…
駆逐艦 曙(青)
「………」
必死の捜索虚しく、潮は見つかることはなかった
まだ見つかってないではなく、見つからなかった
そう感じている
つまり、もう諦めてしまっている
納得できない、自分が許せない事だ
「…………クソ…!」
一番諦めちゃいけない私が諦めてる
絶対に許される事じゃない
「ああ!もう!!」
「…荒れてるねぇ、ぼのたん」
「…ちょっと気が立ってるだけよ」
「なんで?」
「………あたしが馬鹿だったから、アタシのせいで…アタシが潮を…それだけじゃない、みんなを危険に晒したのはアタシ…」
「…何でそうなったかわかってんの?」
「……新しい力を試したくなった、何でもできると思い込んでた」
「そう、最低な理由だね、でもまあご主人様のせいにしないだけ上等かな」
「……できるわけないじゃない…あんなに甘い事言われて……どんなに怒鳴られるより、殴られるより…辛かったわ…」
「…朧ちゃんの顔面パンチより?」
「……それは話が違う、あれは…あの重さは何にも変えられないわ」
「それはよかった、私の拳がそんなに軽いものなのかと思ったよ」
「……朧………そう、そう言う事、いいわ、好きにして」
「…大の字になってなにやってんのぼのたん」
「殺してくれって事でしょ、責任を取らせてって」
「………はー……ぼのたん馬鹿?馬鹿なの?死ぬの?」
「馬鹿だから変な勘違いしてるんじゃない?」
「……」
「責任感じてるのは良いけど何を勘違いしたらリンチされると思い込めるのかなぁ」
「もし本当にリンチするなら二人でやるわけないじゃん…というか、速く食堂行くよ、今日は七駆の日なんだから」
「………わかった」
提督 倉持海斗
「やあ、曙」
「おかえりなさい提督、あれ?」
「ああ、今は入渠ドッグだよ、まだ完全に傷が癒えてないから」
「そうですか…朧も漣も、結局甘いです」
「…キミは許せない?」
「私が旗艦ならあんな事にはならなかったという確信はあります」
「だろうね、君は不足の事態に備える事をやめない」
「……佐世保の瑞鳳には不覚を取りました」
「相手が碑文使いだったんだから仕方ないよ」
「………もう二度と負けません、相手が碑文使いでも、何でも」
「流石に碑文使い相手は無理じゃないかなぁ…」
「やる気の問題です」
「流石にやる気で解決できるレベルじゃないけど…」
「…それより、提督、それは?」
「うん、パソコン用のディスクだよ」
「………またゲームですか?」
「そうだね、また1からスタートする事にした…外に出るのは摩耶の事例から自分の力じゃなくてもできる、と思ってね」
「……曙にカイトを与えなくてもよかったのでは?」
「そうかもね、だけど…君もそうだけど、曙だし」
「どう言う意味ですか」
「暁、東雲、曙」
「…夜明け」
「流石、よくわかってるね、僕はこの戦いが終わるには君たちの力は不可欠だと思ってる」
「………私でも良いじゃないですか…」
「…たまたま、なんだよ、たまたま腕輪を持ってたのが曙だった」
「……一番、どうしようもない理由ですね」
「曙、嫌じゃなかったら一緒にやってみる?」
「……お断りする理由はありませんね、ですが誘う動機が罪滅ぼしに近い感情からなら最悪です」
「…お見通しかぁ…」
「せめて否定してください」
「…わかってるなら、傷つけるだけだからね」
「………提督、どっちにしても、その話受けさせていただきます」
「うん、じゃあまた後で詳しく話すよ」
食堂
駆逐艦 曙(青)
「つっかれた…」
「ようやく全員食べ終わったかな、カレー大人気だったね」
「…なんで曙だけいないのよ…あいつも当番でしょ…?」
「まあまあ、良いじゃないの、さ、我々もカレーにありつきやしょうぜ」
食堂の当番をこなしてる間、少しは会話ができた
朧と漣も、邪険にする事なく…対応してくれた
少し、戻ってしまった…私たちの関係が
喜ばしい事だけど、私のせいである以上…
「あ、ごめん、まだ食べても良い?」
「あら?ご主人様とボーノじゃん」
「どうぞ、まあ、洗い物が少し増えるだけですし」
「ありがとう、じゃあカレーをお願い」
「……あれ?ノーマルカレーもう無いの」
またノーマルカレーか
「今日はそもそも作ってないの、私たちがカレー作ったから、日替わりがカレーよ」
「………うどん…」
「カレーうどんとなってますぜボーノ!」
「……おにぎりで…」
「具はカレーでいい?」
朧も漣も逃すつもりはない、なら私も逃げ場を潰す
「麺類はスープがカレー、ご飯ものはカレーがかかるわ、丼もカレー丼だけだから、カレーパンもあるわよ?食パンにかけたやつだけど」
「………チッ……日替わり定食のカレーをもらうわ…」
「し、舌打ちしやがった…ぼのたん、こいつ舌打ちしましたぜ…!」
「赤城用のスパイスかけときなさい」
「よし、5人分できたしみんなで食べよう」
「ん、独特な味ね…」
「あんまり辛くないでしょ、ココナッツミルクを入れたんだぜ!」
「私は魚介の出汁を入れたかったんだけど、和風じゃ合わないだろうからね、具に使う海老の殻と頭をしっかり炒めて、そこに水を入れた海老出汁を作ったんだ」
「タイ風カレーみたいになったけど、中々美味しいはずよ」
「うん、美味しいよ、ありがとう」
「………これならセーフね」
「やったぜ!ボーノのセーフラインに到達!」
「……ん、そうね、コイツが言うなら上等よ」
「あー、良いなー!一口もらって良い?」
「いや、同じものなんだから自分でよそって食べなさい…よ…?」
私の左肩に誰かの手が置かれ、右側からスプーンを持った腕が私のさらに伸びる
黒い髪が目の前にかかるし後頭部にムニョムニョした感触あるし…まさか…
オバケ…
「ひっ!?」
「あ、ちょっ…アオボノちゃんが動くからカレーこぼれちゃった!…あ、でもほんとに美味しいねこれ!」
何だ、潮か…
「ちょっと潮!人の制服よご……さ…え?えっ、あ…化けて…」
呪い殺される!
「あらー、ぼのたん固まっちまいましたなー」
「アオボノ、喜びに感極まった感じだね」
「………いや、顔色的に怯えてるんじゃ…」
「あ、曙…ソレ、生きてるわよ?」
「…へ?」
「ただいま、アオボノちゃん」
「…ほんとに?」
「うん、ほんとに」
「死んで無い?」
「生きてるよ、間一髪だけど」
「……そ……その…ごめ……潮…!」
言葉が出てこない、なんて言えば…
「もう、間違えちゃダメだからね」
「……わかってるわよっ…!」
「よーし、お詫びにカレー全部もらっちゃお」
「ちょっ…あっ!また制服に!」
「行儀悪いから座って食べなさいよ、ほら…装ってきてあげるから」
「これがいい!だからアオボノちゃんの分を装ってあげて!」
「……ウッシーオ少し変わった…?」
「…死にかけたら変わりもするでしょ」
「さ!早く食べよ食べよ!」