元勇者提督   作:無し

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東雲

佐世保鎮守府

重雷装巡洋艦 大井

 

「この度はうちの鎮守府の者が大変ご迷惑を…」

 

「いや、急にそんなことをされても困る、頭をあげてくれ」

 

応接室に通され、相手型の提督が出てきたと同時に4人揃っての土下座

まあ、この反応になるわよね

 

「今回の件については説明責任があることは分かっているのですが、こちらとしても不確かな部分があまりに多く、よければそちら側からのお話も伺いたいと…」

 

「つまり説明できる事がないと言う意味か?」

 

「…いいえ、そちらを襲撃した神通と同時に、もう1人…那珂も消息を経っており、同じような状態になってると思われます」

 

「……それだけか?」

 

新人って聞いてたけど…嫌なプレッシャーね…

 

「…はい、こちらが持ってる情報は全てです」

 

「………」

 

頭を抱える動作をされたか

何も言えない…

 

ノック音

 

「提督、瑞鳳です…」

 

「入れ」

 

瑞鳳…コイツが北上さんを…?

 

入ってきた瑞鳳はこちらに一礼し、佐世保の提督に近づき何かを耳打ちする

 

「…うちの瑞鳳がそちらの姉妹に酷いことをしたらしいな、それについては申し訳ない」

 

「申し訳ありませんでした」

 

…まさか

 

「その件とこの件は話は別だ、だが同じ海軍同士しこりを残すのも問題がある、良ければそれで痛み分けということで話をつけてもらいたい」

 

そう来るか…

呉鎮守府としてはありがたいことこの上ない話…

だけど、私個人からすると…

 

「……大井、違えるなクマ…」

 

「北上は納得して受け入れたはずだニャ」

 

「……ありがとうございます、その様にさせていただきます」

 

「感謝する」

 

手打ちにする、と言っても…恩を売られたとしか言えない

私達は瑞鳳を責めることはできないし、破格の条件で話をつけられたのだから借りができた

 

腹が立つ…上手くやられた…

 

「……提督」

 

「なんだ」

 

「少し…」

 

「……申し訳ない、少し席を外す」

 

佐世保の提督がその言葉の通り席を外す

足音が遠ざかっていくのが聞こえる

 

「………どう言うつもりですか?あなたは私達があなたを殺したい程に憎んでいる事がわかってるようでしたけど」

 

「…そうなっても、構わないので」

 

「は?」

 

「大井、クールダウンだニャ」

 

「…話し合う必要があるクマ」

 

「………」

 

言うに事欠いて殺されても良い?

 

「…私は北上さんの記憶を持っています、あなた方との大切な時間を知っています、それだけに、私は自分の罪を深く理解しているつもりです」

 

「記憶は戻せないのかクマ」

 

「…この力を使うことで、逆に北上さんを傷つけない保証がありません、リスクが大きいと思います」

 

「……無理か…」

 

「申し訳ありません」

 

「……」

 

「………ぇ…?」

 

瑞鳳の体にピンク色の紋様が浮かび上がる

 

「…なんだそれはクマ」

 

「タルヴォス…?待って…ダメ、何を…!」

 

紫色の泡がブクブクと噴き出す

 

「コイツ感染者かニャ!」

 

「クソッ!艤装なんて持ち込んでねぇのに…!」

 

「…最悪…!」

 

「あ…ダメ!」

 

泡は部屋中を駆け回る

 

「ぐま"っ!?」

 

「に"ゃ"っ!?」

 

「ゔっ…!」

 

「うぉっ…!」

 

4人揃って感染者とか…笑えない冗談よ…!

 

「あ…あぁ……せめて説明の時間とか…もう…」

 

「何1人で落胆してやがるクマ…!とんでもねぇ事しやがったクマ…!」

 

「………仲間に迷惑かけるくらいなら死ぬしかないニャ…!」

 

「ま、待ってください!そのAIDAは害なす物じゃなくて…えっと、北上さんに寄生してたAIDAで…」

 

「どう言う意味…?確かに何も異常はないけど…」

 

「ああ、確かに俺らの体に異常はない…」

 

「ええと…その………あーもう…」

 

 

 

 

 

 

「つまり、簡潔に言えばこのAIDAは害のないのAIDAで、北上と一緒に戦っていた、それがなぜか球磨型全員に興味を持って寄生した…クマ?」

 

「ニャ?」

 

「その認識で構わないです」

 

「………はぁ…」

 

「やべぇ、わけわかんねぇ」

 

「せめて記憶も持って行ってくれればよかったのに…」

 

頭に浮かぶビジョンは私達の戦う姿

しかしそれは到底私の及ばない動き…

あの急浮上する魚雷を交えた私の姿…

 

「クマ…記憶というか…体の使い方というか…戦い方は頭に入ってくるクマ」

 

「………まるでこう戦えと言わんばかりニャ……北上のやつ、まさか全員分の戦い方を考えてたニャ?」

 

「いや、多分私達が最も良い動きをした想定で、イメージの中で戦うという感じじゃないですか?自分を伸ばすこと第一でしたし」

 

「だろうな、この微かな感じだけでも………自分のものにすればどんだけ強くなるか…」

 

自分にできない動きが急にできそうになる

思考領域が広がるような感覚

 

「…酔いそう……」

 

「ヤベークマ…気持ち悪いクマ……」

 

「ニャ…」

 

ドアが開く音でも致命的なダメージを受けるレベルだ

 

「長く外してすまない、続きを………何があった?」

 

「……パワーアップ?」

 

 

 

 

 

「ようやく落ち着いたニャ」

 

「何よりだ、早速話を進める、この資料を見てほしい」

 

重巡洋艦足柄と書かれた付箋のついた写真

腹部と背中だろう、青あざが無数にある

そしてその跡を作ったのが靴底だという事がすぐ理解できる

 

「………全部蹴りの跡かクマ」

 

「このアザは…ひでぇな……」

 

「蹴りに固執したスタイル、理由に心当たりはあるだろうか」

 

「……元々肉弾戦ができるやつだったニャ、それ以外は思い当たる節がないニャ」

 

「でも蹴りのみの戦い方はしませんでしたし、肉薄することも多くはなかった……なにより、この写真…」

 

「………この黒い目隠しはなんだ?というか、目を隠したまま戦ったってのか…?信じられねぇ…」

 

「蹴りにも色々あるクマ、この足の底で蹴る足底って蹴り方は…リーチを理解してないと威力が出にくいクマ」

 

「…見えてるのか?じゃあ目隠しはサングラスみたいなもんか?……全員で仕掛ければなんとかなるそうなもんだが…」

 

「………甘く見るニャ、那珂も同じようになってたらかなり苦しいニャ」

 

「神通さんが明確に敵意を持って戦っている以上…殺すくらいの気持ちでやる必要がある……」

 

こちらの覚悟ができてなければ、協力を得ることも…なにより助ける事もできない

 

 

 

 

 

 

「いやー、理解ある方でよかったクマー」

 

「ニャ」

 

「謝りに行ったのに、力を得て、さらに情報や協力の約束、か……こいつはデカイな」

 

「早く帰りましょう、ただでさえアポとかで2日かかってるのに」

 

「そんなに焦らなくていいクマ、メールしたら土産を買ってこいと言われたクマ」

 

「………危機感がないのかしら」

 

「とりあえず、あと一日かけるニャ」

 

 

 

 

 

 

呉鎮守府

提督 三崎亮

 

「………あー、これ…マジ…か…?」

 

アトリ…日下千草から送られてきた資料を広げ、驚愕した俺は即座に本人に電話をかけた

 

『はい、職場に流石に籍を置き続ける事もできそうにないので』

 

かけずに届かなかった事にしていない自分を恨んだ

 

「…だからってなんでここに履歴書を送ってくるんだ?頭イカれたか?」

 

『で、採用ですか?不採用ですか?』

 

「………採用します…」

 

なぜ俺が日下千草を採用したか…

まず、ここには給糧艦がいない、というのも其々の好みがあまりにも違いすぎた為に以前いた伊良湖が「ここではやっていけないと」転属したからだ

それ以降は比叡や川内、由良等自信があると言ってのけた連中に交代でやってもらっている

 

しかし全員出撃があり、特に川内は姉妹の面倒を見る事もあればスケィスのせいでより忙しい

 

そしてアトリは高校の卒業後料理の専門学校に行き、調理職に就いていた…

在籍する人数的に1人では難しい現場だ、それを承知で来るのなら…かなり助かってしまう

 

「………川内、今すぐ来い」

 

こうなったであろう原因を呼びつける

 

「川内参上、化け物との戦闘ならお任せ!」

 

「ちげーよこのバカ」

 

「あ、お礼が言いたいの?」

 

「………いや、確かに助かるけどよ…」

 

現代日本において、艦娘の認知度は人とは違う何か、海から出てくる化け物を倒せる人型の化け物でしかない

迫害を受けないのも一般人が艦娘にあまり興味を抱いてないからだ

 

「あー…わかった、大井でしょ?」

 

何故だろう、冷や汗が噴き出した

 

「いやー、ずっと思ってたんだけど2人とも似てない?若干重いとこ」

 

「………お前、言いたい放題だな」

 

「で、似てない?」

 

「……正直、最初思った」

 

「ほらー!」

 

「………いや、マジで大井に帰ってこられたら胃が死ぬ…」

 

「秘書艦古鷹と由良に頼んどくね」

 

「比叡が死ぬから片方にしとけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

横須賀鎮守府

駆逐艦 曙

 

「初めまして、駆逐艦曙と申します、元帥殿」

 

椅子に踏ん反り返った男を見る

背後の2人は…戦艦……大和型か

 

「お前の功績についてはよく聞いている、お前には神戸に作られる警備府に着任してもらいたい」

 

舐めてるのか?新しく作られる警備府とは

話が違う上に…そんな目で私を見るとは…

 

「………お言葉ですが、私は貴方の後ろの2人より強いでしょう」

 

「ほう?大和型二隻にそんな事を」

 

後ろの戦艦が声を上げて笑う

下品な奴らめ

 

「なんでしたら、実際に試していただいても結構ですが」

 

「くくっ、いや、結構、実に結構だ、おい、やってみろ」

 

ニヤついた顔で近づくな、品のない

 

「演習場を使わせていただきます」

 

「補給は」

 

「結構です」

 

 

 

 

 

 

「チッ…話にすらならない」

 

圧勝だった、鈍い上にデカイ

狙ってくださいと言わんばかりの砲塔の中に一発ぶち込めば一瞬だった

 

借り物のオモチャではしゃぐ事しか知らない癖に、戦艦は生まれた瞬間から強者で、生存競争すら無かったのだろうが…

 

「貴様…こんな事をしてタダで済むと思うなよ……!」

 

「こんな事?ただ演習で勝利しただけでしょう」

 

下した相手に睨まれたところで全く怖くない

 

「成る程、口だけはある…いや、それ以上だ、貴様を私の側付きにしてやろう、曙と言ったか」

 

「その名で呼ばないでください、虫唾が走ります」

 

「む…貴様…」

 

「この世に曙は幾つおりますか、有象無象と一緒にしないでいただきたい」

 

「ほう、いいだろう、では何と名乗る」

 

「東雲とお呼びください」

 

「東雲か、しかし貴様は綾波型であろう」

 

「型なんて関係ありません、強者が望むようになるのが世界です」

 

「気に入った、よかろう、東雲」

 

「はい、元帥殿」

 

口角を釣り上げる

やはり、力は必要だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海上

     naか

 

『ナンデ?ナンデナンデナンデナンデ?』

 

『……言葉を喋ってくれるかな?日本語でお願いしたいんだけど』

 

『ワタシは強クナッタのニ…!』

 

『そんなに弱いのに、何処が強いの?』

 

『ウルサイ!ウルサイウルサイウルサイ!…ゴレ!!』

 

『感情に流されちゃダメだ、その力は、感情を導いて使うんだ』

 

『死ネ………!』

 

 

 

『話もできない…か…僕じゃダメみたいだよ」

 

「そんな気は…してた…」

 

『このままじゃ少し状況が悪い、一度帰ろう』

 

「わかってる…でも、早く協力者を見つけないと…」

 

『…少なくとも、あの子は………ダメだと思うな」

 

「私も…そう、思う…」

 

「………怒ってる?」

 

「え?…怒ってなんかないですよ…?」

 

『待テ…!逃ガサナイ!』

 

「…しつこい子は嫌われるよ」

 

 

 

 

 

 

呉鎮守府

提督 三崎亮

 

「川内!」

 

「あーもう!無理!限界!」

 

「つべこべ言うな!」

 

「私さっきまで太平洋で神通探し回って次は日本海で探せ!?頭おかしいんじゃないの!?」

 

「那珂の目撃情報が出てる!行くしかない!」

 

「あー!!もう!!」

 

と言っても、正直こっちもあっちもてんやわんや

このペースで仕事を続けるのは限界か

 

「て言うか、別行動してる訳?」

 

「らしいな、だから場所さえ掴めれば俺とお前で1人ずつ叩く」

 

「ならもっと状況整理してからにしようよ…疲れた…」

 

「………チッ、仕方ねぇか…」

 

「やった…夜の海に出なくていい…」

 

「は…?うぉっ、こんな時間か…」

 

「今日の私たちは頑張ったはずだよ」

 

「…だとしても時間はねえよ」

 

「…あれ?何この封筒」

 

「アメリカから来るお偉いさん主催のパーティーがある、その招待状だ」

 

「パーティー…つまり夜会かぁ…」

 

「心配すんな、昼にあるやつだがお前を連れてくつもりはない、マナーは大井の方があるだろうしな」

 

「…聞こえるくらいの声で毒吐いてあ、ごめんなさーいっていやるあの大井が…?」

 

「お前ホント刺されるぞ」

 

「はいはい怖い怖い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宿毛湾泊地

提督 倉持海斗

 

「やあ明石、気分はどう?」

 

「…最悪ですよ、むしろなんで提督はそんな感じなんですか…」

 

工廠の奥で不満を垂れる

以前ならこんな事はなかったが、相当ストレスだったらしい

 

「…こうなるって思ってたからね」

 

「いつからですか?」

 

「曙が仕掛けた時」

 

腕輪の報酬自体は実際あるのだろう

だけど、曙はまだ何か隠している、そう感じた

だから僕は仲間を信じる

 

「……やっぱりわかりませんよ…夕張達や暁ちゃん達、天龍さんに青葉さんに翔鶴さん、潮さん…あまり戦いを好まない人は全員観てただけ…でも、それ以外の全員がかかったんです、それをたった1人で…」

 

「強かったね」

 

結局無傷のまま、1人で全員倒してしまった時は正直困ったけれど

 

「…みんなと同じメニューしかこなしてないはずなのになんで…」

 

「同じメニューって?」

 

「…訓練のメニューですよ、体力トレーニングとか射撃演習とか…」

 

「……そう言う意味なら明石は大間違いだね、0点」

 

「何がですか…」

 

「曙はここにいる誰よりも努力家だよ、北上以上にね」

 

北上の努力だって、よく知ってる

比べるべきじゃないけど、その密度は間違いない

 

「…北上さん以上…?北上さんも結構適当な所がありますけど…?」

 

「……そっか、明石、君にとって北上はたまたま手に入れた力でのし上がったと思ってる?」

 

「…そんな事は…」

 

言い淀んだか…

 

「……いや、少しだけ…元々の頑張りを知ってはいますけど…」

 

「本音が聞けてよかったよ、阿武隈を訪ねてみたら?」

 

「阿武隈さんを?」

 

「明石は総員起こしの前に起きたことある?」

 

「…まあ、何度か…」

 

「その時に外に出た事は?」

 

「いいえ、寒いですし…」

 

「じゃあ明日は1時間前に外に出るといいよ」

 

「………まさか、1時間前にトレーニングを開始してるんですか?」

 

「違う」

 

「じゃあ何なんですか?」

 

「3時間だよ」

 

「…え?」

 

「北上は、総員起こしの3時間前には起きて、トレーニングを始めてる、僕の知る限り一日もかかした事はない」

 

「…だから普段からあんなにダウナーな感じに…」

 

「阿武隈は2時間か1時間半かな、そのくらいにはやってるよ」

 

「そう、ですか…」

 

「じゃあ改めて問題です、曙はいつ努力してる?」

 

「…北上さん達と一緒に…?」

 

「違う、北上とはライバルに近い関係だったと思うから…答えは、就寝時間の後」

 

「就寝時間後の出歩きは違反じゃないですか…」

 

「僕が何かの違反を咎めた事はないからね」

 

「………」

 

「明石、曙は確かに才能があったんだと思う、強さの理由はそこかもしれない…でも、それだけじゃないと僕が言い切る程に誰にも知られず努力をしてるんだよ」

 

「提督は知ってるじゃないですか」

 

「そうだね、何でだろうね」

 

「……はー…馬鹿みたい……」

 

蹲って、酷く悔しそうな顔をする

 

「バカなんだから良いんじゃない?」

 

工廠のドアが開く、藤色の髪の曙が入ってくる

 

「ッ!」

 

明石が艤装を手に取る

心の底から憎んでるのかもしれない

 

「やあ曙、染めたんだね」

 

「…戻さない理由はないし…何より…私にカイトは重いのよ」

 

「あ、アオボノちゃんでしたか…」

 

「……前は一瞬で気づいたのに、みんな間違えるのよね、どんだけ頭に血を上らせてるのかしら」

 

「曙、僕はもう、2度は言うつもりはないよ」

 

「………やっぱりダメ?まあ良いわ、もう少し頑張らなきゃいけないとは思ってたし…それに…これを望んだのは私自身だしね」

 

「…やっぱり曙らしく無い色かもね」

 

「どうせ洗えば色は落ちるわよ…髪の色だけでも、同じにすれば…何かかわればって思ったのよ」

 

「形から入るのは良い事だと思うけど、曙は曙、別人じゃないか」

 

「…そうなんだけどね、簡単には割り切れないのよ、ここにいる全員」

 

「…もしかして誰かに何か言われた?」

 

「いや、そうじゃないけど…ていうか、わかるでしょ?みんな気が立ってるの、6対1ならまだ届きそうな壁に見える、北上がそうだったし、アイツは北上に追いついてみせた…」

 

「でも、追いつくどころか追い越していた」

 

「…才能だと思ったわ、ここまで差がつくなんて信じられない」

 

「……うーん、ここのメンバー以外だったら厳しかったと思うな」

 

「どう言う意味よ」

 

「曙の戦い方は人を真似る事が多いから、例えば阿武隈は接近されたらとことん弱い、判断力に欠ける、ここが弱点だね」

 

「でも射撃は北上に並ぶわ」

 

「うん、それも弱点」

 

「…わけわかんない」

 

「阿武隈は優柔不断で、とことんデータに頼る、綾波型の艤装なら何処を狙えば一撃で仕留められるかを最初に考えていたはず、だから曙は撃たれる場所を計算して、阿武隈が撃つ砲弾の通り道を割り出す」

 

「それを全部撃ち落としたわけ…?」

 

「そう、そして機関部を潰された阿武隈はまだ砲撃ができるにもかかわらず戦意を失ってたよね、あれも曙からすれば許せなかったんじゃないかな、だから態々接近して近接格闘を仕掛けた」

 

「…あれは確か呉の那珂さんのやり口でしたね…」

 

「魚雷を投げつけたり、それを武器のように扱ってたわ、北上といい勝負してたけど、頭が弱い印象があった」

 

「次に朧、朧も今までの経験から機関部をガードしてたね、でも曙の方はそんな事御構い無しに他の急所を狙った」

 

「…知識の差ね」

 

「そして、赤城と加賀を仕留めた」

 

「あの対空射撃…あり得ないわ」

 

「北上もできるよ」

 

「北上さんも…?」

 

「……そう…」

 

「曙は飛行甲板が狙いだったね」

 

「盾にされたせいであれはもう修理しようにもできなくなったし、明石が作り直すほかなかったわ」

 

「うん、盾を使いながらの戦闘、というか隙のない動きは素晴らしかったね」

 

「そして次に摩耶とアタシ…」

 

「2人とも後回しにされてたのは、全力で戦いたかったからだと思うよ」

 

「ブラックローズとカイトの力を使っても勝てなかった、それどころか…アイツも双剣を取り出して来た」

 

「うん、だから魚雷すら持たなかったんだろうね、隠し持つ為に」

 

「……アイツは何の力もないはずなのに、力を持った私たちを圧倒した」

 

「それも曙と摩耶が出せる全力を一蹴して見せた」

 

「…なんであたしは負けたの…!」

 

「なんで負けたかはわからないけど、曙、君だけが曙に傷をつけられた」

 

「そうよ、実際に斬られたし、痛かったわ…だから何よ…次は…」

 

「モノマネに勝つ?」

 

「………」

 

「ニセモノ、モノマネ、お互いに酷い言い様だね」

 

「事実よ、私はカイトのニセモノ、向こうはカイトのモノマネ」

 

「…曙にはカイトの、とは聞こえなかったと思うな」

 

「…どう言う意味?」

 

「…曙のモノマネ」

 

「………違う、私とアイツは別々で…」

 

「あんなに落ち着いてる曙が一瞬取り乱しちゃうくらいだから、相当ショックだった、だから曙にだけやりすぎた…おかしくないと思うけど」

 

「……違う…」

 

「…よかったよ、ショックを受けてくれて…ちゃんと君たちはまだ仲間なんだね」

 

「当たり前よ…何があったとしても、私はアイツを…ここに戻すから、たとえ自分で許さなくてもここに戻してから考えるって決めてるのよ…」

 

「戻して、どうするの?」

 

「……一言謝るわ、その後謝らせる、腕輪の事も何もかも」

 

「そっか、頑張ってね」

 

「…他人事ですねぇ…」

 

「明石もやる気になった?」

 

「…いえ、でも、話を聞いてたら私もまだ仲間だと思ってるのかなって」

 

「じゃあそうなんじゃないかな」

 

「もう、アイツが知ってる闘い方はしないわ、次は必ず倒して、引きずって帰る…今度こそやるわ…」

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