元勇者提督 作:無し
鎮守府近海
朧を旗艦にいつものメンバーで近海の哨戒
曙2人が複縦列の先頭につく
「敵右舷!打ち方用意!」
「緑のキラキラ視認!例のやつだよ!」
「出現率が明らかに上がってる…やるしかないね」
「うてー!」
爆音の中に小さくガラスの割れる音が響く
「…今の聞こえた…?」
「うん、何か違うよ」
「………やれるかもしれないってことなのね」
「やってやるしかないのよ、やるわよ!」
「次弾装填!」
「装填よし!うてー!」
異変はその時起こった
ただの弾薬を放ち、薬莢が溢れるはずだった
キュイ…イィィィィィィ
「え!?何、動作不良!?」
「こっちも!変な音がして…」
「砲を捨てて!早く!」
捨てようにも間に合わない
砲塔に青く、透明で虚げな球体が現れ、そして射出される
一か八かで狙いに合わせ続けた漣以外は狙いを外れ、彼方へ飛ぶ
そして、大きな爆発が彼方に見える
そして漣の発射した球体は確実にイ級をとらえ、確認するまでもなくな消滅させたと確信した
「………ナニコレ…」
「…明石さんが何かしたのかな…」
「いや、ktkr!これご主人様の言ってたやつでしょ!」
「……あー…?」
「だとしても…え?これ自由に動かせるの…?怖いんだけど」
曙が二人揃って大きく息を吸い込む
「「ちゃんと説明してけーー!このクソ提督ーー!!!」」
「息ピッタシ…」
離島鎮守府
執務室
「…なるほどねぇ…」
「艤装にとくに異常は見られませんけど…」
「でもあんなのが出るなんておかしいじゃない!どう考えも!」
「って言われても…」
「よーく考えて?心当たりがあるんじゃない?私たちを脅かそうとか…」
「ないですって!というか私結構アナログなので、話聞く限りもはやオカルト説を推したいんですけど…」
「……ま、容疑者一位は寝たまんまだし?」
「試しにぶち込んでみる?もしかしたら起きるかもよ?」
「いいわね、乗った」
「いやダメですよ!?」
ドタドタと走ってくる音がする
「…同じことが起きたに賭けるわ」
「私は倒せないから逃げ帰ってきた、ね」
「明石さん!わ、わ、私の艦載機がぁぁぁ!」
「今度は艦載機かー…」
「赤城さん落ち着いてー!!」
「なるほど、弓を引き絞ったら鏃のあたりに何かが現れて…」
「そう、青やみどり色の図形のようなものがいくつも出てきて輪を作ったんです、そのまま放つのはまずいと思って戻したら消えたんですが、引き絞ったらまた…」
「放ったんですか?」
「…敵艦隊が消滅しました」
「………怖っ」
「あぁっ!?そんなに離れないで!私をひとりにしないで…!」
「冗談は置いておくとして、演習はできませんね…」
「演習相手を消し去るなんてとんでもないですからね」
「にしても、わかんないことだらけだよねー、いきなりこんな恐ろしい兵器が手元に現れて、それを渡したと思われる提督は昏睡状態…いや、もはや脳死状態…」
「北上さん!」
「言葉がすぎてるのはわかってるけど、医者の言ってることってほぼそういうことじゃん、さて、私たちがやるべきことは、提督を叩き起こすことなのか、それとも深海棲艦を叩き潰すことなのか、どっちだと思う?」
「………このわけのわからない力を、何もわからないまま奮って良いのでしょうか?」
「…提督を起こす方法を探る必要もあるのよね…私が連れて行かれたところに行ってみるわ…動かないよりマシよ」
「とりあえず、その力を安心して使えるようにならないと危ないよねぇ…」
「北上さんは出撃はしてないんですよね」
「ん、私は非番だったからね、でもこの分だと私の魚雷も恐ろしいことになってるのかなぁ…よし、試してきますかぁ!」
「百聞は一見にしかず、明石さんも良ければどうですか?」
「……いえ、気になることがあるので私はそっちを探ります」
駆逐艦曙
『もしもし!』
元気な女の子の声…
病院の電話番号じゃなくて家の番号ってわけ?
「…すいません、そちら曽我部さんのお電話で間違い無かったでしょうか?」
『ン…?はい、合ってますけど、どちらサマ?』
「私、以前腕の事で診てもらった曙と言うものですが、曽我部さんにお伺いしたいことがあってお電話差し上げました、曽我部さんはおられますか?」
『腕…?リュージ!電話だよ!』
『あー、はいはい、もし回し、変わりましたよっと』
「私、この前みてもらった曙なんですけど」
『あー、曙ちゃんね、その後どう?おじさんに電話してきてくれるなんて嬉しいなー』
「そういうのは良いわ、単刀直入に行くけど、脳に受けたダメージは治せるの?」
『脳にか…俺をスーパーマンと勘違いしてるなら訂正しとくけど、俺には無理な話だな、っていうか何が起きてんの?そっち』
「…どこまで聞いてんの?」
『お嬢ちゃんたちが正義のスーパーヒーローってとこまでなら…あ、おじさんも実はヒーロー』
「そ、艦娘なのはわかるのね…というかどこまで話せば良いのかしら…」
『おじさん無視は悲しいけど、そっちに遊びに行っても良いかな?電話口じゃわからない事も多いし』
「………クソ遠いわよ?」
『日帰りコースでよろしく…ってももう夕方か、そっちに豪華なホテルはない?ロイヤルスイートに泊まりたいねぇ、もちろんそっちの奢りで』
「…機械まみれの倉庫か普通のベッド付きの個室くらいなら」
『あ、良いなぁ、おじさんこれでも機械はイける口で』
「じゃあ移動費は負担するから港までよろしくね」
『横須賀から送ってもらっちゃおうかなぁ…あそこ近いじゃん』
「軍施設をタクシー乗り場にしないでくれる?それにできれば極秘がいいの」
『でも聞くところによると横鎮のトップとあんたらのトップって仲良しらしいじゃん、話くらい通してみてくれよな!おじさんからのお願いだぜ!』
「そのトップが落ちたのよ」
『…マジかよ』
「大マジよ、準備しておいて、どこの港にするかはこっちから連絡するから」
『いや、待ってくれ、だとしたら尚更横須賀を頼るべきだ、あそこの上と面識はないが、連絡は取れる』
「本部の犬に頼る余裕なんかないんだけど…」
『ま、黙って大人を信じてな、お嬢ちゃん』
「…切りやがったわね、あの不幸そうなおっさん…」
「まさか本当に横須賀を味方につけてくるとは思わなかったわ」
「な?な?俺の言った通りになったろ?」
「そうみたいね…」ウデクミ
「なんだ、腕動くのか?」
「…提督が治してくれたわ、何をしたかは知らないけど」
「ほえー…やるなぁ…」
「あんたもやるわね、ついでに誘拐もしてくるとは思わなかったわよ」
「誘拐なんてされてないヨ!」
「社会見学に娘連れてきちゃいけなかったか?」
「むすっ…そ、そう…」
「あ?なになにぃ?おじさまに惚れちゃった?」
「…娘さん?ちょっといい?」
「リーリエでいいヨ?あ、ハリセン使ウ?」
「……頂いておくわ、次からは容赦なく行かせてもらうから…」
「…命がいくつ合ってもたんねぇ気がしてきた」
「ふーん…なるほどねぇ…マジで死んでんじゃん」
「まだ死んでません!」
「おっと悪いねぇ、口が軽いもんで、それよりこいつ診てる医者は?」
「本土に帰ったわ、なすすべないってね」
「…ま、俺も匙を投げたいとこだけどな、なんでこうなったか気になる…リーリエ?」
「ちゃーんと持ってきてるヨ、VRスキャナー」
「よし、お嬢さん方はしばらく席外しててくれるかな、今から忙しいんで」
「…治るんですか?」
「診察するだけだからまだなんともね」
「信用できるんでしょうか」
「提督は信用してたわよ…何かの有名な人みたいだけど」
「んー…わかんないや」
「ちょーっと失礼、えーと、曙ちゃん、きてくれ、話が聞きたい」
「…行ってくるわ」
「はいこれ、まずかけて」
「…メガネ?」
「VRスキャナ、前使った装着型VR機器の小型軽量版ね、で、こっちでキャラメイクはしといたから、はいログインと」
「ちょ、私はゲームしてる暇なんか」
「さって、腕をよく見せてもらおうか」
「…明らかにデータに異常があるネ、ゲームの中なのに、現実で動かなくなった腕を無理矢理ゲームのデータで直したからかナ?」
「まあその線が濃厚だな、ただ、改変の跡が全く診られない…つまり」
「データドレイン?」
「そう、その可能性も非常に高いと思うね、俺は」
「でもデータの膨張の理由にはならないヨ」
「ゲームの中から外に出てきたって仮説も、信じ難いけどなぁ…正直カイトのデータも開きたいくらいだ」
「あれ触ったラみんな吹っ飛ぶかもしれないよ?」
「それが怖ぇんだよなぁ…しかし、恐ろしいことをしたもんだぜカイト」
「何かわかったの?」
「…腕輪のコピーを作ってやがる、今すぐ破壊したいくらいだが、手が出せねぇな…」
「……それは不味いネ、絶対に知られないようにしないと…」
「データドレインを擬似的に再現する試みはもうされてるが、本物が出てきちゃ…敵わねぇからな」
「どうする?」
「どうにもできねぇよ、お手上げだお手上げ、嬢ちゃん、もう良いぜ」
「なんだろう、こんなものに没頭してしまった自分が恥ずかしいわ…」
「ゲームなんだから楽しめよ、うら若き…何才?」
「…さあね、で?何がわかったのよ」
「まあ隠すつもりはないからさっさと本題に入るんだけどな、お前さんはすごく危険だ、特にその腕、お前さんの気持ち一つで世界が滅ぶくらいな」
「なにそれ」
「お前んとこのお偉いさんは人選が上手いねぇ、お嬢ちゃんなら世界を救ってくれるって思ったんだろうぜ」
「……そりゃ世界を救うためにもう戦ってるわよ」
「なら、あとはきっかけか、その腕大事にな、怪我とかやめてくれよマジで」
「何それキモいんだけど…」
「ま、そう邪険にすんなって、な?」
「で、結局この腕がなんなのよ」
「勇者の力が宿ってるって話だよ、次世代の勇者サマ」
「………ワケワカンナイ」
「…ところでリーリエどこ行ったか知らない?」
「確か訓練を見に行くって…「リュージ!すごい!すごいよここ!人が大砲撃ってて!」帰ってきたわね」
「…せっかくだし見学してっても良いか?」
「…良いんじゃない?知らないけど」
「勇者の力、ねぇ…そんな特別なもんいらないわよ…」
「いやー、悪いね、案内してもらっちゃって」
「ほんとに巻き込まれたら困りますからね…」
「…なんかあっちの方派手じゃない?えらく爆発してるけど…」
「あー…あそこは空母の人たちの…」
「空母って飛行機飛ばすやつだよネ!?見たい見たい!」
「ご期待には添えないと思いますけど…それでもよければ」
「んー…?」
「…何あれ」
「…空母の訓練風景です……」
「いや違うよねあれ、別の何かだよね、弓からエネルギー弾はなってるけど」
「………やっぱりそうですよね、私もそのようにしか見えません」
「紋章砲かナ?」
「…やっぱそれだよなぁ…」
「何か知ってるんですか?」
「んー、俺もあんま詳しかないけど、超火力のデータ兵器みたいなもんだな」
「…あれの解除の仕方とかは…」
「そこまでは」
「……そうですか」
「加賀さん、如何ですか?」
「…ダメですね、やはり何度やっても艦載機は飛ばないわ」
「発艦すらしてないから、減ることはないんですけど…」
「飛ばさなければ腕が鈍るのに…」
「こうなったら私たちもこれで戦いましょうか」
「………良いかもしれないわね、資源の消費も減るし、何よりこの火力なら…」
「…でも、これ打つとすごくお腹が…」
「減りました」
「燃費は悪くなるばかりですね」
「力に代償はつきものよ」
食堂 間宮
「…何かものすごい悪寒が」
「間宮さん?顔色が優れないけど…」
「鳳翔さん…食材が消えるような気がして…」
「そんなまさか、神隠しじゃないんだから…」
「そうですよね、あははは」
「なるほど、その紋章砲はそんな力が…」
「でも扱いには気を付けてくれよ、誰かにあたろうものなら、まあ、良くて意識不明は免れないと思うから」
「…こちら執務室、至急空母の訓練をやめさせてください!できるだけ早く!」
「しっかし、恐ろしいなぁ、紋章砲自体データドレインを再現したものだ、そしてそれをカイトが与えたとなるとより近い、もしかしたら改変する力すら持っている可能性もあるわけだしな」
「改変?」
「データドレインってのは、データのプロテクトを無視して全てを書き換える力がある、例えば相手が不死身の化け物なら不死身というところを書き換えれば倒せるだろ?」
「なるほど、ですがそれはゲームの話じゃないんですか?」
「いや、これを現実で使えたとしたら?」
「…そんなわけ」
「ないと思うよ?俺もね、生身の人間には効かないと思うんだけどなぁ…実際アレは効かなかったし…でもこんなもん見せられた以上ないとは言い切れないよねぇ」
ノック
「曙、入室するわよ」
「どうぞ」
「良かったわ、あんた探して歩き回ったの」
「なんだ?嬢ちゃん」
「クソ提督は意識不明者も治したって言ってたけど、それについて何か知ってる?」
「…いや、データドレインにそんな力なんてないはずだが…」
「そう、知らないの、ならいいわ」
「…わからんな、どうやったんだ?なんで意識不明のやつまで治せる?何か見落としがあるのか?……そうか、加護だ、確かあの腕輪には加護があった、データドレインに対する耐性か、納得がいった、だから急な変化があったのか」
「あの…?」
「ああ、悪いね、考え込んじまった、けど多分、その変化の理由がわかったぜ」
「提督が何かをしたんでしたよね」
「ああ、全員に腕輪の加護を付与した、おそらくこれで間違い無い」
「腕輪の加護ぉ?何?また変なワードが出てきたけど」
「データドレインってのは全てのプロテクトを無視するが、完全には無視できないものがある、それが腕輪だ、データドレインに対抗する手段はその腕輪から加護を得る事にあるんだ、そしてその腕輪は、俺の読み通りなら、嬢ちゃん、お前が持ってる事になる」
「アタシ何にも持ってないけど」
「目には見えないんだよ、でもきっと持ってるはずだ、お前さんがそれを使いこなしさえすれば、多分解決するんじゃねぇかな」
「…ワケワカンナイっての」
「まぁ、俺もだ、正直的外れなのかもしれないが、これしか思いつかない、とりあえずおじさんを信じてみなって!」
「…明石、訓練の数増やしといて」
「は、はい…」
?????
駆逐艦朝潮
「……あれ?私いつの間にこんなところに…」
一つのモニターが目の前にある、その中は赤紫の空に、おどろおどろしい森
そして木のない空間に一つのベッド
そしてベッドの上には少女が一人
「…防がなきゃ…アレを…止めなきゃ…こわ、さ…なきゃ…?なんで…?あれ…?」
嫌な感情を振り払うように後ろを向く
「司令…官…?」
クリスタルに包まれたオレンジの衣装の少年
しかしそれが司令官であるとすぐにわかった
「…あ…あれ…なんで……なんで…こんなに………」
そして不思議な感情が湧き上がる
「なんでこんなに憎いんだろう」