元勇者提督   作:無し

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欠片

呉鎮守府 

提督 三崎亮

 

「かぁー…クソッもうなんもやる気がしねぇ…」

 

「と言いつつ仕事は早いクマ」

 

「……やらなきゃならねぇことは多いからな…次コルベニクとやりあうとしたら…2人で当たる必要がある、俺と…神通か川内」

 

「那珂はどうしたニャ」

 

「…あれ以来碑文が使えなくなったってよ…」

 

「AIDAは戦力にならんかクマ」

 

「お前ら4人がいて漸くパワーの落ちた那珂を仕留められた訳だろ?じゃあダメだ、無理して死なれるのは嫌だからな」

 

「………ニャァ…」

 

「もう少し気の利いた言い方を、とも思ったが…まあ、通じる仲なので許すクマ」

 

「そいつはなんとも…大井は?」

 

「………自分の力不足を知ったらしいクマ…でも、それよりも精神的に成長して欲しいクマ…」

 

「…精神の成長はAIDAを強くする、心配ねぇよ、アイツが強くなればなるほど…アイツは成長していく」

 

「……なら良いけどニャ…」

 

「川内はストイックになった気もするし、神通は頼もしくなっていく…那珂だって一瞬は誰にも負けない力を手に入れた…戦うことが運命の艦娘からすれば…川内型は羨ましい存在クマ」

 

「他の奴らの前で絶対にいうなよ、ただでさえAIDAを使いたいって問い合わせが山ほど来てるんだからな」

 

「……ご飯でも食べるニャ」

 

「今日のメニューはなんだ?」

 

「牛丼汁だくネギ豆腐入りニャ」

 

「誰がお前の食べる特別メニュー言えって言ったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

埼玉 ネットカフェ

渡会一詞

 

「どうぞ、コーヒーです」

 

「……ん…やっぱコレだな、よく淹れられたな」

 

「…昔散々飲まされましたからね…俺も修羅場の時はコレがないとやり切れなくなりましたよ」

 

泥みたいに重いコーヒー…とことん苦く、眠気も飛んでいく…まるで催眠術のように、体が強ばり、仕事をしなくてはという気になる

 

「……でも、やっぱマズイなぁ…」

 

当然だ、ただただ不味いコーヒーだ、飲む奴が如何に働くかだけを考えたコーヒー…

 

「…一番美味いコーヒーってわかりますか」

 

「ああ、よく知ってる、昨日まで飲んでた味だからな」

 

…この人にとっては、娘が淹れてくれたコーヒーが一番美味いということか

 

「……お互い、頑張りましょう、美味いコーヒーを飲んだ方が仕事もしやすい」

 

「ああ…」

 

「………」

 

「……チッ、網張ってんな…」

 

「当然でしょう、下手に触れば一発で俺らの居場所がバレます…」

 

「……よし、次行くぞ」

 

「……もう六軒目です、埼玉を出ましょうか」

 

「じゃあ先に足を用意しとけ、俺が仕掛けたらすぐに逃げるぞ」

 

「わかりました」

 

 

 

 

 

「東京で頼む」

 

「…本気ですか、向こうの口の中に入り込むなんて…」

 

「安心しろ、引っ掻き回すだけ引っ掻き回してきてる…物ってのは直すより壊すほうが難しいんだ、そろそろ、こっちから仕掛けても良い頃合いだ」

 

高速に向かってタクシーを走らせる

 

「………」

 

俺は瑞鶴を、艦隊のメンバーを信頼し、留守を任せた…だが、海軍という大きな会社の中で、俺は中間職に過ぎない…

 

元帥が相手となれば…アイツらはどうするのだろうか

俺は、帰らなくても良いのだろうか…

 

「…やっぱお前、帰れ…」

 

「………徳岡さん、俺は…」

 

見透かされてるか…

 

「俺は、親である事を一度捨てちまった、取り返しのつかない事をした最低なやつだよ…自分の仕事のために…やりたい事のために…家族を…娘を、何もかも捨てたんだ、そんな最低な奴にお前をする訳にはいかねぇ……今ならお前だけなら見逃されるかもしれねぇしな…」

 

「…徳岡さんは…」

 

「……ま、アイツらなら上手いこと取り入って生き残れるだろ!おっさんの事なんか忘れちまってさ…何しろ、モノねだるのが…上手い奴らだからなぁ……」

 

「………貴方の部下は、きっと貴方のことを…」

 

「………だと嬉しいが…見ての通りアイツらはガキなんだよ…年上で小遣いくれて、面倒見てくれるおっさんを親だと勘違いしちまうような…それに、俺に限る必要はねぇ…きっと俺が帰れなくても…どっかの誰かが代わってくれるさ」

 

「……俺にはそうは思えません…」

 

「……そう思わなきゃならねぇんだよ、此処からは…捨てる覚悟がいる…」

 

いや、違う…

 

「……いや、此処から必要なのは…守る覚悟と、信じる覚悟です…俺は、部下を、信じます」

 

「…カミさんと子供はどうすんだよ」

 

「…部下が守ってくれます…それに、俺が…きっと止めてみせる、絶対に手は出させない」

 

「……後悔するぞ」

 

「…お互い分かってて選ぶ道ですから…すいません、そっちの道に…そう、そこで止めてください」

 

路地に入らせてからタクシーを降りる

 

「車を替えましょう…どうにも、つけられてる気がする」

 

「……いや、俺らがネカフェを出てからほとんど時間が経ってねぇだろ…?それに、出たのも網に触れてから僅かな時間だ、読まれてたとしても…流石に…」

 

「………既に泳がされていたら?」

 

タクシーが走り出す

 

「…意味がわからん、何が言いたいんだ」

 

「………」

 

タクシーの進行方向で大きな音がする、何かにぶつかったような…

 

「…運転手の無事だけは祈っておきましょうか」

 

「……薄情な奴だな、俺は保険が適用されることも祈っとくぞ」

 

「そんなの適用されて当たり前ですから」

 

どれだけ持つか

すぐに追いつかれるだろう、路地を利用して撒くしかない

 

「で!?どうする!」

 

「考える暇なんてありませんよ…俺らは殺されるくらいには邪魔なんでしょう…!」

 

「クソ!自分らの悪事棚にあげやがって!」

 

「こういうピンチにはゲームなら助けが来るものですが…」

 

曲がり角を曲がったところで待ち伏せる

 

「そういうのは期待できねぇな!」

 

「全くです、しかし…つい最近まで憲兵隊に所属してた奴相手にステゴロとは中々舐めたものだな…!」

 

 

 

 

 

 

「おー、怖え怖え」

 

「…きっちり拳銃まで持ってますね有難い話だ」

 

「お、おいおい、俺らが持ってていいのか?」

 

「俺たちは身分のはっきりした軍人です、銃刀法違反とは行きませんよ、警察を買ってるなら俺らには勝ち目がないだけです」

 

「……軽く言いやがる」

 

「そうしないと持たないだけです、しかし、このままでは…いや、頼りはあるか…」

 

「なんだぁ?お前、何する気だ?」

 

「………人を頼るだけです」

 

 

 

 

 

 

 

月の樹

 

「なるほどな、闇の住人ってやつか、まさか生きてる内にヘルバをお目にかかれるとはなぁ」

 

『勘違いしないことね、月の樹はもはや政府の施設…貴方達を支援することができるのは私の個人的な力が及ぶ範囲だけ』

 

「充分すぎます、ありがとうございます」

 

『…カイトはああ言ってたけど、私にとっては貸しがあるのよ』

 

「………理解しています」

 

「なんだ?なんの話だよ」

 

「…いろいろあるんですよ」

 

『…貴方達、そこの施設は好きに使ってもいいわ、壊しても、デコイにしてもいい…その代わり何をするつもりか言いなさい』

 

「……黒い森をぶっ潰すんだよ」

 

『命知らずってことね、早死にするわよ』

 

「…死ぬつもりはない」

 

「もう四十だ、俺は十分長生きしたつもりさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐世保鎮守府

軽空母 瑞鳳

 

『行くわよ瑞鳳!』

 

『………』

 

碑文の力を使った演習、瑞鶴さんから提案してきた、それに私は乗った…

 

『はぁぁ…!』

 

『式神…!?』

 

この演習は碑文を使ったものなのに…何を…しかもあれは式神タイプの艦載機…

 

『遠慮なんかしないからね…発艦始め!』

 

身の丈を超える杖を振り、滑走路を幻出させる

そしてそれを滑るように…

艦載機が次々発艦し始める…

 

『……そんな…!』

 

『さあ!くらいなさい!!』

 

出鱈目な方向へと飛んでいく

慣れてない事をするから……いや、だとしたらあの自信の意味がわからない…

 

『……違う、多い!』

 

瞬きをする間に空を埋め尽くさんほどの艦載機が現れる

 

『上ばっか見てる場合じゃないわよ!レイザス!!』

 

光が、形を持って迫る

危険信号が鳴り響く

 

『ッ!!』

 

ガードしなかったら死ぬんじゃないかという鋭さ…

遠慮なしというレベルではない…

 

『今度は上がお留守ね』

 

艦載機が近づいてくる

仕方ない、もう少しギアを上げよう

 

『…はぁぁ…はッ!』

 

『えっ?えぇ…?何それ、波動拳?』

 

『気功!って!言うんですよ!!』

 

空間を殴りつけるようにして衝撃を飛ばし、艦載機を撃ち落とす

 

『気功ってそういうものなの…?』

 

『タルヴォスに聞いてください!獅子連撃!』

 

打撃で此処まで艦載機を撃ち落とすのは向こうにとっても想定外な…は…ず…?

 

『攻撃がすり抜けた…?これ……幻影か…!』

 

『そういう事、ほらほら、まだまだ行くわよ!』

 

『タチが悪い…でも、幻影と分かったなら…もう何も恐れるものはない…』

 

『え?』

 

幻影を無視して、本物だけを叩く

 

『…分かってれば、簡単…本物からは匂いがしない』

 

『なるほどねぇ…ならこれはどう!?』

 

幻影が連なって大きく旋回しながら海面ギリギリを飛んでくる

 

無駄な事を…いや…匂いはしないけど…

何…この音…この違和感は…

 

『…わからない!わからないけどとにかくマズイ!』

 

艦載機の隊列の中から光の矢が飛び出して水面へと消えて行く

 

『さっきの…これの目隠しか…』

 

『そゆこと、どう?降参しとく?』

 

『……』

 

随分と調子に乗ってる…

負けるつもりも負ける気もしないけど、私の打撃は加減しても後に響くだろうし…

 

『はい、降参します』

 

下手にやり合ってお互い傷だらけになるよりはいいか

 

『そう?いやー、まだ隠してる手もあったんだけど…』

 

チッ、鬱陶しいなぁ…

 

『…お互い様ですよ』

 

『え?』

 

足の艤装で水面を叩く

 

身長を遥かに超える、水柱が当たる

 

『……何、まだまだやる気じゃない』

 

『いいえ、降参します、早く護衛に戻りましょう』

 

『……はいはい、アンタは御利口さんですよっと…』

 

「あ、居た!2人とも早く来なさい!岩川が交戦状態に入ったわよ!」

 

『…どういう事?」

 

『とりあえず早く行きましょ」

 

 

 

 

 

 

 

提督 倉持海斗 

 

「つまり、曙にはその時意識がなかった、本来曙は潜入の目的で横須賀に向かってたんだ、だから決してみんなを裏切ったわけじゃない事を理解して欲しい」

 

立つことができないため、買ってきてくれた車椅子に座りながらの朝会

台座にも乗ることができないからこっちが見下ろされてて、緊張する感じだ

 

「じゃあ、何か?最後の大暴れは?」

 

「ストレス解消って事でしょ、あのアホンダラ…」

 

「………何にしても、よかったわ、裏切ったわけじゃなくて」

 

「いえ、楽観視するわけには行きませんよ、脳にチップを埋め込む…とても許されるやり方ではありません、差し詰め…提督、脅されているのでしょう?」

 

「…加賀、何が言いたいのかな」

 

加賀が近寄って来る、すぐそばで見下ろされる

 

「余計なことはするな、と言われたんじゃないですか?と言い換えます」

 

「…それは言われてないね」

 

「つまり、別の言い方で脅されたということね」

 

「…オイオイ…!」

 

「……私たちが重荷になってるって事ですよね…」

 

「それは違う!それだけは…違う…!」

 

「違う?どこが違うんですか、提督、冷静さを欠く事は誰にでもありますが…そこまでいってその言葉、最早正気の沙汰ではありませんよ」

 

「赤城さん、言い過ぎよ」

 

「どこがですか、私は賛同します、さっさと入院してください」

 

「………」

 

「そういう事よ、クソ提督、アンタは大人しく前線を離れるしかないの」

 

「……ダメだ、それだけは…僕だけがここから去るなんて事は…」

 

「私達は自分の身を自分で守れるんですよ、少なくとも貴方よりは確実に」

 

「……わかってる、わかってるさ…僕には力も、何もない」

 

あの戦いを、僕は見てしまった、何の力もない僕にも、見えてしまった

 

ハセヲは、AIDAも、碑文も使えた

 

たくさんの碑文使いや、AIDAの適合者が居た

 

曙にも腕輪がある、島風に至っては…何故あんな姿になれたのか…僕にはわからない

 

僕には、何が残されてるんだ?仲間とか、物とかじゃなくて…力が、残ってない

 

何の力もない

 

「…提督、諦めがつきましたか?」

 

「…………」

 

此処に居ても足手まといなのは分かってるんだ、僕は何かを打ち倒す力はないし、みんなを指揮することも決して優れてない…

だから僕は力が欲しいのに…

 

僕には、力が必要なのに…

 

いや、もういい、せめて仇だけでも討とう、それだけでもやらないと…顔向けができない

 

「………提督?」

 

「…なんかおかしくないですか?」

 

相手も人間だ、銃弾が当たれば、死ぬ…

ナイフが刺されば死ぬ…

 

「おい!提督!聞いてんのか!?」

 

「え、あ、うん…」

 

「………提督、今何を考えてました?」

 

「…いや、ちょっと貧血でくらっときちゃって」

 

病院に連れて行かれるのなら、うまく抜け出す策を考えなきゃいけないな…

 

「明石さん、早く病院に連れて行きましょう」

 

「そうですね…」

 

「…ちょっと失礼します…提督、こっちを向いてください…ほら」

 

顔を無理やり向けられる、青葉の目が僕の目を見ている

たまらなく情けなくなる、目を合わせることができない

 

「…こんっのクズ!目を合わせる事もできないの!?」

 

「…いや…」

 

「ウジウジしないでよみっともない!」

 

「霞、やめなさい」

 

「あの屑が悪いのよ…!」

 

心が冷え切るような、締め付けられるような…

悲しくて嫌な気持ちで…青葉の目を見る

 

「……提督、そんな目、しないでください…提督は私と同じ目をしちゃいけないんですよ」

 

「…え?」

 

「…人殺しの目をしてます」

 

見透かされたような、貫かれたような感覚

 

「………」

 

「…ほら、やっぱり…提督は…」

 

「……邪魔、しないでよ…」

 

「え…?」

 

「…提督?」

 

「僕には何もないんだ、君達を守る様な力も…君たちを指揮する能力も、何度も目覚めたように考えを変えた、自分で戦えばいいと思った…なのに、僕には何の力も残らなかった…!」

 

「…提督」

 

「もう邪魔なんだよ!僕は!それなら此処にいる必要がないだろ!」

 

「だから、死なば諸共の覚悟で敵討ちですか?」

 

「…そうだよ…!」

 

「本気な訳!?あ、アンタ…!」

 

「提督、考えを改めてください、私達は貴方なしでは…」

 

「僕が居なくても君たちは生きていける、何で僕が居なきゃいけないのか僕にはわからない、僕にはもう価値はないんだ…!」

 

背後から肩を叩かれる

 

[価値がなきゃ、生きてちゃいけないんですか]

 

「…北上…」

 

[私を生かしてくれてるのは、貴方です、では私の価値はなんですか]

 

…北上の、価値…?

 

「提督、北上さんに価値なんて求めてませんよね?そういう事ですよ」

 

だめだ、此処で押し負けたら、チャンスを失う

 

[ちょっと黙っててください]

 

「あ、いや、私は……ごめんなさい」

 

[提督、私は戦えません、喋れません、電話にも出られないし、料理もすごくモタモタして美味しく作れません]

 

…北上の努力は、ずっと、目に入る

生きているだけで、普通の生活をするだけで大変なのに、散歩と言っては体力を作ろうとしていたり、艤装のかわりの小火器を持とうとしたり、北上なりの努力を、僕は良く知ってる

 

[でも、私は此処に居ます、居させてもらってます]

 

「…君は此処にいるに足る努力をしてるじゃないか」

 

[提督はしてないんですか?]

 

「……」

 

何をしろ、というんだ…

僕は人間で、アスリートになれたとしても…この子達の盾になることもできないだろう

 

そうか、人間の身体が悪いのか

 

「それなら、摩耶」

 

「…なんだよ」

 

「僕をデータドレインで貫いてよ、曙でもいい、どんな手段でもいいんだ、僕をゲームの身体にしてよ」

 

「お前…!!ふざけんな!!」

 

摩耶に殴り飛ばされる、車椅子から転げ落ちるし、身体中が痛い

涙も出てきた

 

「お前…!お前!本気で…クソッ!クソが!ふざけんなよ!…ふざけんなよぉ…!」

 

「…司令官…」

 

「司令さん、お願いですから〜、自分を大切にしてください〜…」

 

自分を大切にしろって言われても、僕には…

 

[提督、私には貴方が必要です、私からすれば貴方と過ごした時間は少ない、だけど、誰より貴方が居ないと私は生きていけません]

 

「…そんな事はない…阿武隈もいるし、他のみんなも…」

 

「じゃあ私は北上さんを守りません!なんでもいいんです!どんな事でもいい!お願いですから…もうやめてください…自分だけ辛い道に進めばみんな幸せになるなんて思わないでください!」

 

「…違う、僕は…全部道連れにしようとしてるだけなんだ…許されない事をしようとしてるだけ…もう、退いてよ…」

 

地べたを這いずり、ゆっくりと、建物を目指す

 

「…そうですね、提督はずっとそういう人でしたよ……なら!提督なんてやめましょうか!」

 

「……明石?」

 

「.全部投げ出して、私達だけで、終わりまでどこかで静かに生きてましょうよ、誰が責めるんですか?火野さんはそんな人じゃないですよね、言い訳に使わないでください、曙ちゃんも提督の事が心の底から大好きですから、絶対に喜んでくれますよ」

 

「そんなわけない」

 

「それは言い訳です、此処にいる全員、1人残らず、貴方がしてきた努力は見ていたんです、今まで、必死に戦っていた貴方を…だから誰も責めたりしない」

 

「絶対にダメだ、僕は、止まっちゃいけないんだ!」

 

「……じゃあ、今度は私達が手伝う番ですね」

 

「…え?」

 

「よし、じゃあやるわよー」

 

「はいとりあえず提督抱えなさい、部屋に連れてくから」

 

「……こっちのルートかぁ、残念ね」

 

{終末までのんびりするのも、楽しそうですけどね]

 

「み、みんな、何を…」

 

「提督、貴方が戦いたいなら、止める事はしません…無謀な復讐や死なば諸共な考え方以外は」

 

「アタシたちは…アンタの仲間なんだろ?なら…一緒に戦おうぜ!カイト!」

 

「そういう事だから、もう少し待ってなさい、ちゃんと場を整えてあげる…それまで、あと少しだけ待ってなさいよ、クソカイト」

 

「司令官、私達はまだ司令官の全力を見てない、という事でよろしいですか?」

 

「………なんだ…あはは…」

 

「…頭打ったか?悪い…つい本気で殴っちまった…」

 

「摩耶…暴力はダメよ…」

 

みんなを引っ張る必要がある、とばかり思ってたけど…手を引かれるのも、いいかもしれない

 

「わ、うわぁ!泣くなよ!」

 

「そんなに痛かったの!?もう!摩耶さん!!」

 

「…違うんだ…暖かくて…」

 

「こんな冬場なのに…?」

 

「加賀さん、そういう事じゃわないわ」

 

…今なら、あの時のように生きられるかもしれない

 

「…アオボノ、それなんだ?」

 

「摩耶…あんたも…」

 

2人から、何かが零れ落ちる

 

赤く、光り輝く…光球

 

小さくて、本当に、消えてしまいそうな…

 

「…ア…ウラ…?」

 

手を伸ばした僕に、近寄って来るように…

吸い込まれるように、解けるように僕の中に消えていく

 

熱い

 

身体の中が、熱い

 

「…ぅ…ぐ……!」

 

「ちょっ!大丈夫!?」

 

「…今何をしたんですか?」

 

「私にはトマトの拾い食いに見えましたけど」

 

「ふざけてる場合じゃないから!」

 

「…ぅ…あ……ぁ…!」

 

『ア"ア"ァ"ァ"!』

 

「わっ!?勝手に出て来ないで…!」

 

「とりあえず離れてください!どうやら…危険なようです…」

 

「ぅぐ…あ…が……」

 

わかる、身体の芯から、あの時の感覚に戻っていってるのが

熱い、燃えているように熱い

 

ーカイト…ー

 

わかってる…もう、わかったんだ、ごめん、何度も、ずっと迷惑をかけてきて、みんなにも、何度も大変な思いをさせてきて

 

「うわぁぁぁぁ!!」

 

体が、持ち上がる、無理やり立たされている

のけぞりながら、必死でもがく

 

「火がついたぞ!?」

 

「早く水を!」

 

「海に落とせ!」

 

「溺れるわよ!」

 

「………いや…待てよ…それでいいじゃねぇか!」

 

頭から何かが降り注ぐ、口の中が塩辛い

海水…?

 

「…はぁ…っ……はぁ……」

 

「…提督、その姿…」

 

「……」

 

見なくてもよくわかる…

 

「…結局、僕はこの姿じゃなきゃ、君たちと並び立つ事はできないのかもしれないけど…」

 

「……」

 

「それでも、さっきまでとは違う…価値とか、そんな物じゃない、ちゃんと、君たちの思いをちゃんと理解して…その上で…僕は、此処にいる」

 

「……本当に、信じますからね」

 

「…うん、お互いに助け合っていこう」

 

「………クソ、今後はもっと頑張らねぇとな…活躍がとられちまうぞ」

 

「…そうね、上等よ」

 

だから、アウラ…あと一度だけ…もう少しだけ、この力を貸して…

僕自身のために、僕が守りたいものを守るために、取り返したい物を、取り返すために

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